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女神の娯楽に巻き込まれて  作者: 下記の種
1章→女神編
1/16

1話/遊ばれて死んだようです

楽しんでいってください

 僕は今年で17歳となりました。

 世界中の17歳を迎え、そして通り過ぎた方は何を考えたでしょう。



 僕が考えたのはやはり将来でした。




◇◇◇◇




 僕が生活をしている家庭“山田家”はそこそこ裕福な家庭です。


 父は謙虚で、計算高い人でした。

 将来のことを考えて貯金を行い、仕事漬けで家庭を蔑ろにしないように上手く仕事を捌き、サービス業の仕事も少し前に任されて数人の顧客をゲットしたと自慢のように語っていました。


 それに加え父は紳士で聡明、とても顔がいい恵まれた男です。

 父が街を歩けば女性が10人中7人が振り返り、父が人助けをすればその場で求婚(プロポーズ)を迫られたりします。

 その度に母に父は“女たらし”と叱りますが、父は怒髪天の母の耳元で愛を囁き仲直りをすると自室に2人で籠るのです。


 ちなみに囁く言葉はこんなものです。


「俺の目に映る女は沢山いるが、俺の愛に映るのはお前だけだよ」


 クサイです。

 これが僕の父、山田 清志郎です。


 僕の母は謎多き人だと今でも考えます。

 母が仕事としているのは雑誌のモデル、女優、主婦の三つです。

 雑誌のモデルには16歳でデビューを果たし、高校生を卒業してすぐに女優としてスカウトを受ける。

 雑誌ではすぐに表紙に載るようになり、ドラマや映画で主役を任される大女優となった。


 それが僕の母、山田 美麗です。


 こんな神様に選ばれたような母と、平凡の少し上を行く父が結ばれたのが不思議で仕方が無いです。

 この事を母に聞くと「運命の赤い糸で結ばれたのよ」と曖昧にしか答えてくれません。


 そして完璧父と、神に愛された母の間に生まれた僕は普通を極めました。

 生まれてすぐに母に色々と習い事をさせられ、それらを普通と見られるまでにこなし、成績を平均まで上げ、運動も定期的に行っていました。


 彼女は中々恵まれませんでしたが、可愛い幼馴染がいて、優しい親友がいて、七光りばかり受けて増長した僕を叱ってくれた恩師がいました。

 

 普通でしたが、それでも幸せだったのです。






 さて、なぜ僕が突然こんな身の上話をしたかというと、一つの誤算に影響されてと言っておきましょう。

 今に満足をしていた僕は死ぬつもりなど毛頭なかったのです。



 その日はいつも通りの朝、いつも通りの登校日、いつも通りの日常の始まりでした。


 僕の朝はとても早く6時に起床、その後顔を洗い母の家事の手伝いをしていました。

 別に母はしなくてもいいと言いますが、ここは親孝行、好きでやっていることですから。


 手伝いが終わり、時間が来たところで僕は学生服に着替え、カバンを持って玄関で待っている幼馴染と学校へ向かいます。

 幼馴染とは小学生の時からの付き合いです。

 近所だからと2人で小学校へ登校して、それが五年続き、今でも幼馴染みと学校へ一緒に登校しています。


「おはよう、ナナ」


「えへへ、おはよう」


 玄関で待つ幼馴染みに挨拶を送ると、一拍を置いて照れたように返事をしてきます。

 学校でトップクラスの可愛さを持つ幼馴染みですから、そんな顔をされると男としてはそれはそれは幸せで。


 学校の友達達によく勘違いをされるが、僕と幼馴染みのナナはまだ付き合ってなどいない、普通の友達です。

 正確には“まだ”ですが。


 そうです、この日僕は彼女に告白をしようと考えていました。


 計画はこうです。

 放課後に親友を通して彼女を誰もいない屋上に呼び出し、そのまま雰囲気で気持ちを高めて告白、それが僕の作戦でした。


 屋上は基本立ち入り禁止なのですが、この日は事前に恩師に理由を説明してこっそりと屋上の鍵を貸してもらいました。

 次に告白のセリフは、僕より早くリア充と化した親友と1時間の会議の末に作り上げた。


 準備は上々、後は告白する勇気と、告白する事だけでした。

 別に振られても構いません、これは僕の気持ちで伝えたいだけですから。

 伝えて一緒になりたいとそう思ったのですから。


 しかし、この日は運命に見放され、神様に遊ばれた。





 それは登校中、とある交差点での出来事。


 朝から元気な幼稚園生ほどの男の子が度胸試しに歩道のない道路を横断していました。

 その男の子は昔の僕に少し似ていて、ガキ大将を気取り、他に見ている男の子や女の子に格好のいいところを見せたかったのでしょう。


「へへ、渡りきったぞ!」


「すごい、けんやくん」


「やっぱりけんやは強いな」


「へへへ、当たり前だぞ。余裕でもう一回だ」


 1度は渡りきった道路をもう一往復しようとした少年、通称けんやくん。

 恐らく周りに褒められ煽てられ、その気持ちは高ぶり、調子に乗ってしまったのだろう。


 1度で止めておけばよかったけんやくんは、欲に負けてもう1度その歩を動かし始めたのです。

 そして、転倒(それ)は起きた。


「えっ、うわぁぁ!へぶしっ!」


 勢いよく転んだけんやくんは、道路の中央で寝転がってしまいました。

 状況の悪さにけんやくんは慌ててすぐに起き上がりますが、右方向から大きなトラックが迫ってきました。


「ひぃ」


 けんやくんは恐怖で足がすくみ、すぐに逃げ出すことが出来なくなってしまいました。

 絶体絶命のピンチです。


「ナナ、カバン持ってて」


「え、ちょ、待って!」


 まあ、ここで大人しく見ている僕ではない。

 隣で呆然としていたナナにカバンを預け、立ち尽くす少年を助けるために僕は駆け出しました。


「待ってろ、今助ける」


「うわああん、早く!」


 トラックとの距離はまだ二十メートル、時速はみた限りだと45キロ程度、少年はすぐ目の前に、これは助けられると確信しました。

 

 が、ここで僕の人生は終わります。

 ここから始まったのは神の悪戯なのですから。



 その1。


 僕が駆け出し、少年との差があと少しとなった時、僕は足を踏み外し空中に身を投げました。

 原因は足元にあった空き缶です。

 

 空き缶が転がっていのには気づいていた僕は確かに避けたのですが、避けた瞬間に頭の中で『物語の強制力〜』と気の抜けた声が聞こえたかと思うと僕の右足は空き缶を見事に踏んでいたのです。


 

 その2。


 そこは神様、良心と慈愛はあったよで、空中に身を投げて体の自由が取れない僕の有り得るはずがない力で少年を歩道まで飛ばすことが出来ました。


 そこは喜びましょう、少年は助かったのだから。

 少年を突き飛ばす前に頭の中で『こいつはいいや、面白そうなのはこっちだし』と聞こえたのは気にしない。



 その3。


 少年の救出に成功した僕ですが、少年を突き飛ばした瞬間に僕の体は見えない圧力に叩かれ地面にめり込んでしまいました。

 頭の中では


『これが神の力だー!』


 と聞こえたのは覚えてる。

 聞き逃すわけがない。


 さらに僕は地面に縫い付けられたように体が動かなくなってしまいました。

 きっと、頭の中の『ふふふ、メインディッシュまで焦らしてやる』が原因だろう。

 この頭の中の声、絶対に後で見つけ出してぶっ殺s───。



 その4。


 地面に固定されて動けなくなった僕に、先程まで少年を捉えていたトラックが目標を僕に変えて向かってくる。

 抵抗をするが動けない。


「くそ、くそ、なんで動けないんだ!」


「──くん!早く逃げて!」


 ナナが心配そうな顔でこちらを見て叫んでいた。

 大丈夫だ、お前に告白するまで僕は死なない。


「え……」


 決意を固くした時、何故かトラックのスピード物凄く、滅茶苦茶に上がり出したのです。


『へ、俺の人生はもう詰んでんだよ!俺の怨みが込められたこの大型自動車、通称トラックで人を、俺は人を』


 そして何故か、トラックの運転手であろう男性の声が聞こえてきました。

 もう狙ってる感がビシビシ伝わってくる。


『すまねぇな、ガキ。だけどよ、俺は見たんだよ』


「何を、だよ」


 トラックの運転手に反応して声を出すが、当然運転手に聞こえているはずがない。

 だが、運転手は返事をくれた。


『ガキ、お前が可愛い女の子とイチャイチャしながら歩いている所を俺は見たんだよ!いいよな、リア充はよ、俺はな、俺はな、童貞なんだぞぉぉおおおお!』


(え……それって、それって)


「ただの嫉妬じゃねえかぁぁああああ!」


 そして目前に迫った鉄の塊は僕の体を容赦なく打ち、砕き、曲げ、潰し、吹きどばした。

 バキボリブキャアリャア、と聴きたくもなかった、人生では中々聞けないR-18の効果音が聞こえ、僕の体は弾け飛んでいた。


「─くん!」


 吹き飛んだ僕の傍に走ってきたのはナナだった。

 掠れた視界に写った彼女は涙を流し、目元は赤く腫れ、鼻水はジュルジュルで、僕の名前を呼んでいた。


「兄ちゃん!」


「だ、大丈夫ですか!?」


 ナナの後ろには僕が助けた少年けんやくんに、その友達らしき子供たちが立っていた。

 皆それぞれ目元に涙を含ませ、僕のことを見ていた。

 若干2人の少年はすぐそこの地面で嘔吐していた。


 その2人は口々に「グロい…………」と呟いていた。

 どんな状態なんだ僕は。


「いや、いやよ、死なないでよ」


「な、ナ…………」


 僕を抱えて制服を血で汚しながら泣くナナを、僕は安心させるように笑顔を作り、名前を呼びながら彼女の頬に手を添えた。

 実際は痛みで表情は引き攣ったように痙攣を起こし、言葉も話せているか聞こえなくなった耳ではわからず、頬に置いた手は血だらけで彼女の顔を汚すことしか出来なかった。


 だがナナは僕の手を取り必死に、声を荒らげる。


「死なないで、死なないで。こんな所で死んじゃったら私の告白の準備がダメになっちゃうじゃない」


「……ぇ、……ぅえ?」


「私ね、私、ずっと君の事が好きだったの。ずっとずっと小学校の時から──くんの事が好きだったんだから」


「……まじ、か」


 ナナの突然の告白に僕は驚いてしまった。

 告白をしようとした相手から告白をされたのだ、泣いてしまうほど嬉しい。


「実はね、今日君に告白しようと考えていたんだ。ぅぐ、ひぐ……太一くんにね手伝ってもらって、川先生にも手伝ってもらって、君に告白するために練習までしたんだから!」


 川先生は僕の恩師で、太一は僕の大事な親友だ。


「作戦はねこうなの。太一くんに緊急の事だからって君に屋上に上がってもらうようにしてもらって、先生には君に屋上の鍵を自然に渡すようにするの」


「…………ぁ、あ」


「そこでね、何も知らない君に私が扉からいきなり飛び出して驚かして、そして、そして大好きでしたって言おうと思ったの」


「…………」


 どうやら親友と先生に僕は嵌められていたらしい。

 僕は告白をしようとして逆に告白されるように誘導されたようだ。

 だから、太一は必要以上に告白の日を今日にするように言ってきたり、先生が簡単に僕に鍵を渡すわけだ。


 僕が告白の作戦を伝えた時のあの先生の顔はこういう理由だったのか。


「だからね、だから、君は死んじゃダメなんだよ。私が待っている屋上に来てもらうんだから……ぅぐ、私が好きって言うまで死んじゃ嫌だから、だから…………」


「な、な゛……」


 僕はそっともう片方の手を彼女の頭に乗せて撫でる。

 幼い頃、彼女が泣いていた時に使っていた手だ、よく効くからずっと十八番だったっけ。


 そして僕は、潰れかけた喉から掠れ掠れの声を張り上げる。


「おれも、お前のことが好きだった」


「──!」


「だ、から……泣かないでく──」


 手が地面に落ちる。


「え、何て?ねぇ、ね、起きてよ、お願いだから」


 落ちた手を握り、必死に抱きしめながら声をかけるがそれは答えない。

 とうに尽きた命、神の気まぐれで本当は無かった筈の延命時間。


 これはただそれだけの物語だった。




◇◇◇◇





「お悔やみ申し上げます。あなたは先程死んでしまいました」


「…………あぁ」


 そして僕は綺麗な女性の前で椅子に座っていた。


 僕はあの時、本当に死んでしまったのだろう。

 想像を絶する展開ではあったものの、死んでしまったのは事実。

 感触は覚えている。


 見渡す限りの白い部屋。

 壁などあるのか疑ってしまうほど広大で、目の前には見たことがない程の美女がたっているのだ。

 ここはそういう場所だと考えるのが普通だろう。


「僕は死んだんですね」


「……はい、大変申し上げにくいのですがあなたは悪意を持ったトラックに跳ねられてそこで絶命してしまいた。即死でなかったのが奇跡でしかありませんでしたが、やはり命はそう長くは続かなかったようです」


「そうですか」


 これで予想は確定に変わるだろう。

 後悔はあるが、でも満足だ。


 親孝行は普段果たしているし、人に優しくしろと恩師に諭されてからは困った人を助けることを信条としていた。

 何より彼女に「好き」と言ってもらえたのが何より嬉しかった。

 大きな心残りは少し無くなったのだ。


 でも、あいつは許せない。

 あの頭の中で響いた声に僕は怒りを燃やす。

 僕を殺したことを恨んでいる訳では無い、あの声の内容に憤りを感じていた。

 あの人をバカにしたというより、楽しそうだからと僕の運命を変えた(やつ)


 もし、天国でそんなやつを見つけたら、1発ぶん殴ってやる。

 もし、地上に生きる人なら天罰を願ってやる。

 それだけ僕は怒っていた。


 例えそいつがどんなやつでも、女でも子供でも容赦はしな───


「で、どうだった?私の考えたシナリオは。あはは傑作だったねあそこまで上手く事が進むとは私も思わなかったよ。聞いたかい?あの運転手のセリフ。もう腹を抱えて笑ったよ。あ、君の『死んだのですね』ってやつ、もう笑いを抑えるのに大変だったよ。やめてよね、笑わせて私を殺す気なの?」


 あ、犯人(こいつ)だった。


「って、ふざけんじゃねぇ、このクソ女が!」


 僕は怒りに任せて拳を目の前の女性に振るうが、拳の前に謎の輪っかが現れ、拳は吸い込まれるようにその中にはいり。


「え、がぁっ!」


 僕の放ったパンチは目の前には現れた2個目の輪っかから通された。

 どういう訳か、僕のパンチは瞬間的に移動して僕にヒットしたらしい。


 そして、それをしたであろう女は床で笑い転げていた。


「キャハハハハ、何それ、あんまり笑わせないでよ!『がぁっ!』って、もっとマシなセリフないの?やばい、お腹が、あはは──」


 ああ、とてもこの女を殴りたいです。


「はぁ、やっと収まった。じゃあ改めましてようこそ死後の世界へ」


「何がようこそだよ、殆ど君のせいじゃないか」


 笑いを堪え復活した女は、僕に向かってバカにしたようにそのセリフを吐いた。

 殴りたい。


「まあまあ、ぷふっ、確かに私が手伝ったんだけど、ぷふっ、でもあんなグロい姿にならなくても、ぷふっ」


「その笑い方はやめろ!腹が立つ」


「はぁふぅ、ふふ、そんなに私に歯向かっていいのかな?」


「ああ、何で?」


 突然雰囲気を変えて人が変わったように話し出した女に、少々動じてしまった。


「私の名はアリア、輪廻の管理を任された女神よ」


「はぁ?」


 アリアの言った荒唐無稽な言葉に思わず言葉を失ってしまう。

 輪廻の管理って何?女神?はぁ?


「ふふ、驚くのはまだ早いわよ。君には私の権限で異世界に転移する権利を与える。ほら拍手!」


 すると、どこからとも無く大勢の拍手が沸き上がる。


「て、なんだよこれ…………」


 カオスだよこれ。

 なんで無駄に演出が派手だよ、さっき花火のようなものまで上がってたし。


「まあ、とにかく」


「とにかくって」


「君は異世界に行くチャンスを与えられたんだ喜びなよ。君はあともう1度人生を生きられる」


 これが僕が転移部屋に辿り着いた物語である

 誤字脱字や、訂正箇所がありましたら感想にてお願い致します。

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