新シリーズ【ソーセージ mari & mari】 〜♯1ごみたまり、敬老精神発火
【ごみたまり、敬老精神発火】
電車に揺られているごみたまりはいつも思うのだった。
「電車で座ってもいい人と許されない人って必ずいるワ。
日本も死刑制度を復活させるべきよ」
少々混み合った車両の中である光景が飛び込んできた。
ストライプ柄がキツイジャケット着込んだ中年男が大きく足組んで席を3人分も
使って居座っていた。
大きな風呂敷抱えたおばあさんが座れず電車に揺られて立ちすくんでいる。
ごみたの目がキッと引き締まった。
「ちょっとアンタ! おばあさんが座れないじゃないの。どきなさいよ」
すぐそばにいたおばあさんの方がビックリしてしまった。
「い、いや、あたしは別に‥‥‥」
切り傷らしきものが混じった男の目が色付きメガネの奥からハッキリわかるほど光った。
ギヌロ、と鈍い音が聞こえた気すらした。
「なんだと‥‥‥」
速かった。
その瞬間男の隣に座っていた人々がサーっと立ち上がり消えていった。
「やった! ホラ空いたワ♡」
「なんなら、隣座るかい?」
男は気さくにおばあさんを誘ってみせた。
「いや、ホントにそのあたしは‥‥‥」
してやったりのごみたまりのそばで固まってしまったおばあさんは、
立つことも座ることもできず、早く駅に到着しないか気になっていた。