暗転の先、非日常世界
パラノイアとの幻想的な空間での茶会は思ったより有意義なモノだった。
「へぇ、パラノイアさんの世界はとても技術というものが進んでるんですね」
「ああ、そうだ。俺の世界はね、魔術なんていう技術が存在しない代わりに、電気や熱量……機工技術が優れていてな。だが、目覚ましい技術の発展は一つ過ちを犯せば急激な衰退、文明の消失に繋がる」
ヨムカの見聞にない他世界の技術や生活。
この南大陸での魔力が生活に欠かせないように、パラノイアの生活には熱量や電気といった各種の他エネルギーが生活基盤となっているらしい。その生活ぶりを空想に思い描くことも出来ないが、彼の話す言葉の一つ一つには魅力的な色が宿っており、ヨムカの好奇心を一々刺激してやまない。
「俺は、そんな科学技術が進んだ世界で疑似魔術師として肉体の大部分に改造を施した。もう、生きているという実感すらないな」
「肉体改造……そんな、非人道的な」
「そう思うか? だが、そうでもしなければあの腐敗した時代を生きていくことは出来ない。あの忌々しかった暴走した化け物を殺すには、な」
ヨムカの言葉が声帯で作られることを拒んだ。
パラノイアの言葉に滲んだ怒りの情が、ヨムカの好奇心と探求の欲を抑え込んでしまった。怒りと同時に感じた悲しくもは儚ない悲しみが芽吹いたが、瞬きの後には先程と変わらぬ冷静さを纏っていた。
「時間だ。もう、お前は異物と関わるべきではない。何者かの強い意志が働いているらしいが、俺は関与するつもりはない。自分で何とかするんだな。さぁ帰れ、あるべき世界に。守るべき日常に」
「ま、待ってください! 私はこの後どうすればいいんですか。貴方が言っていた欲望に呑まれて世界を破壊するものについては!」
「自分で考えろ。私は別世界の人間だ。他世界に深く干渉することは規約違反だ。だが、そうだな。勝手に人様の世界に足を踏み入れてくれたんだ。何か礼をしてやりたいとも思う。が、今は思いつかない。いずれ、此方からお前に接触しよう。それまでは、お前が犯人が誰か、自分が何を成すべきかを考えておくんだな」
パラノイアは席を用意した時と同じく指を鳴らす――目の前の机も座っている椅子も霧散して消えた。
「現実に帰れ。そして、考えて見極めろ。希望色の魔術師――ヨムカ・エカルラート」
パラノイアの言葉が脳裏で反芻する。意識を引き伸ばされた感覚は足元を覚束なくさせた。急激な眠気がヨムカの瞼を閉ざそうと働きかけ、崩れるように眠りについた。
暗転した意識は一筋の光を追い求めるように疾走して――。
こんばんは、上月です(*'▽')
次回から日常が壊れ、非日常へと世界は方向転換します。
次回の投稿は来週中となります!




