魔王と女子トーク
深夜眠りにつく事が出来ず、一人隠れ家の外で自然豊かな空気を吸っていた。
「あれ、ヨムカちゃん。眠れなかった?」
「エリーザさん? ちょっと眠れなくて、そういうエリーザさんは眠らないんですか?」
「う~ん、眠くないかな。せっかく女子二人きりだし、女子トークしようよ!」
魔王と女子トーク。
こんな経験はめったに……いいや、一生に一度出来る可能性の方が低い。それに、一人でこのままボーっとしているのも退屈だ。
「構いません――ッ!?」
「うわぁ、凄い! ヨムカちゃんの眼、光ってる?」
「理由は分からないですけど光ってます」
「ふぅん、ホント不思議な子だよね~。ねぇねぇ、ヨムカちゃんってヴラドとどんな関係なの? まさか、本当に部下ってだけじゃないでしょ?」
「えっ、部下ですけど」
「…………」
「ちょ、どうしてそこで黙り込んじゃうんですか!?」
エリーザは眼を点にしている。まったく動こうとしない。ヨムカは反応に困り、両手でエリーザの肩を揺さぶってやる。
「あっ! いやぁ、まさか本当に部下だったなんて、ね。ははは、愛の逃避行だと思ってたから」
「どうして、愛の逃避行になるんですか!? さっき先輩が言ってたじゃないですか。私に南大陸の神話が馬鹿馬鹿しいっていう事を教える為にって」
「あれぇ? そうだっけ。にゃはは、ごめんごめん。まったく聞いてなかったよ」
邪気なく眼を細めて笑う様は猫の様だった。
「エリーザさん、壁の向こうはどうなっているんですか? 南大陸とはやっぱり文化も建築様式も違うんですか? 本では似たり寄ったりって書いてあったんですけど、やっぱりちゃんと見てきた人の言葉で知りたくて」
「う~ん、文化は国ごとに違うけど、建築様式は何処も似たり寄ったりかな。うん、魔王が住んでいる東大陸は今ちょっとよろしくないんだよね」
「よろしくないって、どうしてですか?」
「うん、魔族狩りを行ってる国が幾つもあってね。魔王の中でアルベールっていう第三魔王がいるんだけど、人間大好き過ぎて人間虐殺派の魔王と対立してるんだよね。はぁ……どうして仲良く出来ないのかなぁ」
驚きだ。
魔王とは人間に恐怖を与えるモノだと相場が決まっている分、エリーザの言葉に興味が惹かれた。そもそも人間であるヨムカと親しく話し込んでいる彼女も魔王なのだが、そのことすら忘れてしまうほど、目の前の少女は普通の人間と違いがない。
「まぁまぁ、ヨムカちゃんも大変だと思うけどさ。もし、あの壁が無くなったら東大陸に遊びに来てよ。色んな場所を紹介するよ」
「壁が無くなったら、そうですね。その時はお願いします」
「うんうん、それまで生きててよね。にゃはは、死んでも蘇らせちゃうから」
「えっ! そんな事が出来るんですか!?」
「にゃは! いくら魔王でも死者蘇生はでき――ッ!?」
「……ん?」
人が変わったように表情が険しくしたエリーザにヨムカは小首を傾げる。
「ヨムカちゃん、ちょっと全員を起こしてきてもらってもいいかな? ちょっと、不味いかも」
理由を問おうとしたが、急を要するとのことなので、チラリとエリーザの視線の先に目を凝らすが、のどかな夜景が広がっているだけだった。
こんばんは、上月です(*'▽')
寝落ちしてしまって23時に投稿できませんでした……(´;ω;`)
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