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変化の芽吹き

 三人の魔王はからは威厳というものが感じられない。


 彼等は魔族と呼ばれる種族で――寿命や魔力の量や純度も人間と比べて優れているらしい。


 外見的には魔族も人間族も大した違いは無いので、何食わぬ顔で人間社会に溶け込むことは容易だ。溶け込めるからこその各大陸を物見遊山して遊びまわっているのだろう。


「勘違いするなよ人間。俺はコイツに付き合わされてるだけだ」

「まったく、シラー。貴方はエリーザの共が出来て光栄だとは思わないんですか?」

「ハッ! お前はただ少女愛好者ロリコンなだけだろうが」

「ふふふ、シラーは勘違いをしていますよ。私は少女愛好者ではありません。私が愛するのはエリーザただ一人です」

「うわぁ、それ凄くいい迷惑なんだけどぉ」


 仲睦まじき三人の魔王を少し離れた場所から観察するヨムカ。


 初めて見る魔族――魔王に対して、魔術師の性である探求欲が抑えきれないのだ。


「先輩、魔王ってどれくらい強いんですか? 私程度だと彼等の性格な魔力が測れないので」

「お前が測れないものを俺が分かるわけないだろ? あ~、噂だと魔王一人で一国を簡単に吹き飛ばせるらしいぞ」

「一国の基準が曖昧ですね」


 小国なのか大国なのか、どの程度の規模で彼等を測っているのかが不明瞭だ。


「確かに下っ端の魔王の実力はよく分からねぇな。だけど、第三魔王と第二魔王は本気出せば、世界そのものを消滅させられるとか、なんとか?」

「それこそ漠然としててよくわかりませんよ」

「まぁ、それもそうだな。ははは」


 なんともてきとうなのか。


 誰にも悟られぬように吐いた溜息。神の在り方がどうのこうのという話を聞いた時は、ふざけるなと感情を乱してしまったが、もう段々と正直――どうでもいいかな、と感じ始めていた。


 世間のヨムカに向けられる態度や風当たりはとても辛いが、自分を一人の人間として見てくれる者達も少なからず存在している。


 夕日色は希望の色――パラノイアと名乗る者が告げた、古き文献の一部。ならば自分はいつか、彼等の希望となりこれまでの誤った認識を変えてやった方が、前向きなのではないかとさえ思い始めていた。


「ヨムカちゃん、ヴラド。折角来たんだしゆっくりしていくでしょ? ゆっくりしていくよね。こんばんは此処に泊まって、色々お話しようよ!」

「先輩、学院が……」

「気にすんな、一週間くらい休んでも問題ないだろ?」

「問題ないのは貴族の先輩だけですよっ! わ、私は先輩みたいに記憶力が優れているわけでは無いので、一週間の授業を取り戻すの苦労するんですからね!」

「まぁ、一日くらいいいだろ? お前だって魔王には興味あるんだろ?」

「え、ええ、まあ……」

「んじゃ、いいだろう。おう、一日泊まらせてもらうか」


 ヴラドが勝手に返事をしてしまう。


 返答を聞いたエリーザは嬉しそうにピョンピョンとはしゃいでいる。その姿を見ていると、まぁいいかなという気にさせられた。


「そうですね。魔王という存在や他の大陸の事も聞いておきたいですし」

こんばんは、上月です(*'▽')


一日遅れました!

次回は今週中に投稿します!

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