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東大陸の魔王

 真っ赤な夕焼けは一つそびえ立つ山に差し込む。


 木の葉、大地、草木も橙色が薄っすらと混じった赤色に染まる。ヨムカの瞳と髪と同じ色。


 険しい夕日色の山道をヴラドを先頭にして歩く。


「先輩、その人はどうして山なんかに住んでいるんですか?」

「う~ん、そうだなぁ。世俗を捨てたとか言ってたかな。そこんところは本人に聞いてくれ、まぁ答えてくれるかは知らねぇけどな」


 慣れた足運びで、地中から剥き出しの岩や蔦を軽々と越えていくヴラドに対して、その障害一つ一つに足を取られそうななりながらも、置いて行かれないように懸命に歩くヨムカ。


 少しくらいペースを合わせてくれてもいいのではないかと内心で毒づく。が、ヴラドだからこそ気配りがと不得意なのだと諦める。年中小説の事しか考えていない男だ。他人への配慮なんて考えられるはずもない。


「うし、着いたぞ」

「着いたって、ここ……」


 岸壁にどうしてか木製の扉が設置されている。


 その扉は生い茂った草や蔦で上手く隠され、ヴラドがどけてくれなければ誰も気づかない。


「おーい、いるんだろ。ヴラド・カッセナールだ。わざわざ首都からお前に合いに来たんだ。死んでいないなら開けてくれ」


 力強く拳を扉に叩き付ける。そこまで強くノックしなくても聞こえているのではないだろうか。だが、扉の向こうに居るであろう住人は一向に姿を現さない。


 不在なら一度出直したほうがいいだろう。と、ヴラドを止めに入ろうとするが、右手で制される。


「もし、あと三秒以内に出てこなければここの場所を色んな場所でいいふらすからな」

「うっせーぞ、人間。こっちは馬鹿女に振り回されて疲れてるんだ」


 扉を開けて出迎えてくれたのは漆黒の衣装に身を包んだ青年だった。


 気の強そうな鋭い目付きだが、片目は漆黒の髪で隠されている。


「そっちの連れは誰だ? まさか恋人か?」

「いや、俺の後輩だ」

「ねぇねぇ、ヴラドが来たの? だったら、早い所あがってもらいなよ」


 黒髪の青年の背後から聞こえる幼そうで、邪気の無い明るい声。


「よし、ヨムカ。入室の許可が下りたから入るぞ」

「えっ――うぇっ!?」


 手をギュッと握られて戸惑うが、そんなヨムカの乱れた気持ちなどお構い無しに青年の脇をすり抜けていく。


 扉を抜けると大人二人くらいが通るのがやっとの狭い通路が続いている。左右には魔道式照明が点々と掛けられている。明かりに照らされていても通路の最奥が見えない。


「ハッ、所詮は人間の眼力みてーだな。これはちょっとした仕掛けだ」


 青年はヨムカを馬鹿にした口調で笑い、壁の一部を手で触れ――その部分がまるで独立した造りである様に凹み、ちょうど先頭にいたヴラドの眼前に天井から階段が下りてきた。


「さっさと行けよ」


 命令されるがままに二人で階段をのぼる。


 階段の先には見事な大広間があった。部屋の中央には木の机があり椅子が三つある。ぐるりと物珍しい広間を見渡すと、どうやら円形構造をしているらしい。円の縁に沿ってベッドや簡易キッチンのようなものまで配置されている。


「わぁ、可愛い子を連れてきたんだね! へぇ、夕日色の瞳と髪って確かこの南大陸では『災いもたらす者』とか『忌むべき存在』とかって呼ばれてるんでしょ? ほんと、バッカみたいだよねぇ。えっと……名前なんていうの?」

「な、名前ですか? わ、私はヨムカ・エカルラートっていいます」

「ヨムカちゃん。うん、可愛い名前! じゃあ、私の番ね。私はエリーザ・ブリュイヒテール。そっちの目付きの悪いのは――」

「シラー・トゥイークスだ」


 長い栗毛の小さな少女は小さな胸を反らして自己紹介をした。


 この人たちは一体何者なのか。その疑問は直ぐにヴラドの発言により解消される。


「コイツ等は東大陸に生きる十人の魔王のうちの二人だ」

「は……魔王?」


 その単語の意味は理解できるが、現状が理解できなかった。

こんばんは、上月です(*'▽')


今回の話はなんと!『守るべき存在、失われる世界』の登場人物が二名登場しました。

次回さらに一人増えます!もし『守るべき存在』の方を呼んでいただいている読者様でしたら誰か分かると思います。

そう、彼等三人は物見遊山で誰も横断することの出来ない各大陸を見て回っていたので、その中での出会いということになっております。


次回の投稿は23日の夜を予定しております!

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