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ボイコットをして首都の外へ

 まだ肌寒い夜明け前の冷風が街道脇に茂る草木を揺らす。


「だいぶ歩きましたけど、まだ歩くんですか?」

「まぁ、馬車使っても良かったんだが、家から逃げてきたからな。それに、これから会う奴の機嫌を損ねると面倒くせぇし、このままのペースを維持できれば昼前くらいには着くと思うぞ」

「昼前……ですか」


 首都を出たのが午前四時前くらい。


 それからひたすら街道を歩くこと二時間。遥か先にそびえ立つ山からは朝日が顔を覗かせようと、山頂部分が青白く夜を照らし始めていた。


「ん、会う? 会うって誰と会う予定なんですか?」

「う~ん、会ってからの楽しみってやつで納得してくれ。少々気難しい奴だが、心根は悪い奴じゃないから安心していいぞ」

「は、はぁ……そうですか。まぁいいです。せめて、どうして私を先輩の言う良い所に連れて行こうと思ったんですか?」


 明確にされていない理由。


 神と悪魔の在り方についての持論をしたヨムカに、ヴラドが良い所に連れて行ってやると言ったのだ。学院をボイコットしてまでも行く価値があると。話の流れからして遺跡や教会といった神の在り方を解明する場所なのかとも思っていたが、どうやら誰かと会う為に、今こうして街道を歩いているらしい。


「今から南大陸の神話信仰がどんだけ馬鹿げた嘘っぱちかってな。ちゃんと知ってもらおうと思ったわけだ」

「神話信仰なんて最初っから信じてません。だから、別に……」

「いいんだ。たまにはボイコットしたついでに、話しを聞きに行けばいいだろう?」

「先輩がそこまで言うなら付いて行きますけど、今日の分の勉強の面倒を見てくださいよ?」

「え~、めんどくせぇー」

「…………」

「睨むな、睨むな。わかった、冗談だ。お前はクラッドと違って物覚えが良いから、教えるのも楽そうだしな」


 夕日色に発光する瞳で、ジッと見上げるヨムカの迫力に押されたヴラドは、両手を軽く上げて降参だという意志を見せる。


「もしかすると、その夕日色の事も何か知っているかもしれないな」

「えっ! ほ、本当ですか!?」

「たぶんな。アイツも中々変な事に詳しかったりするからな」


 街道に一筋の光が差しヨムカとヴラドを照らす。


 早朝の肌寒い風も幾分かはマシになり、ヨムカの瞳も消灯した。


「ちなみに、今から向かうのはあの山の麓の森の中だ」

「あの山って……先輩、もう一度聞きますけど後どれくらいで着きますか?」

「……夕方くらいか?」

「さっき昼前くらいって言ったじゃないですか!!」


 声を大にして反射的にツッコミを入れた。



 


こんばんは、上月です(*'▽')


次回の投稿は20日の夜を予定しております

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