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再び感じる闇夜の視線

 どれほど探しても見つからない。


 一般人ではまず見つけ出すことは出来ないだろう。例の宝は黒い表紙の魔導書だという。魔導書とは魔術を記した力ある異物だ。魔術師であればその内包する魔力を感知して見つけ出すことが出来るのだが、魔術学院生はもちろん宮廷魔術師すらも未だに見つけられていない。


 太陽は地平線に夕暮れとなって沈んでいく。


「あ~あ、一日目が終わりっすか。明日までに見つけなきゃ報酬が貰えないんすよね」


 疲労の色濃く溜息を吐き出すクラッド。


「えぇ、そうですね。それと明日の宝探しなのですが、申し訳ありませんが私は参加できませんので、後はよろしくお願いしますね」

「ロノウェ副隊長、何か予定があるんですか?」


 ヨムカの問いに微笑む。


「家の都合ですよ。貴族の長男というのも何かと多忙の身なんです。ヴラドも将来の為に貴族会議には出席しておいた方が良いですよ」

「あんな慣れ合いの酒席に出るくらいなら読書してた方が有意義だ。そもそも、顔色伺いの三流貴族の相手すんのが面倒くせぇ」

「はぁ……貴方はいずれ家督を受け継ぐんですよ。国家の守護を――」

「あ~、はいはい。分かった、分かったから。今度顔だけ出すから小言はもう勘弁だ」

「しょうがないですね。ヨムカさん、クラッド君、フリシアさん。明日の昼食はヴラドがお支払いしますので、好きなのを食べさせてもらってくださいね」

「なっ、お前……まぁ、いいけどな」


 てきとうなやりとりを終えて解散する事となった。


 街を夜闇が包み込み、心許ない外灯と民家の灯りが夜道を照らす。


「明日こそ、絶対に見つけてやるんだ。それにしても、一体誰が国家最重要魔導書なんて持ち出したんだろう。でも、宮廷魔術師でも一日総がかりで見つけてないとなると……」


 色々な憶測がヨムカの脳内を飛び交う。


 誰が何の目的で魔導書を欲しているのか。その誰かは厳重な警備を容易く突破する実力を持つ。そして、盗み出してなおこの国に滞在する理由。


 考えれば考える程に思考の方向性は定まらない。


「国家の崩壊……やっぱり、今回の犯人が?」

「おや、国家崩壊とは不吉な事を言いますね。ヨムカさん」

「えっ、あれ……ロノウェ副隊長、どうしてここにいるんですか?」

「母上にお土産を買っていたら、目の前からヨムカさんがブツブと喋りながら歩いていたので……それで、私の聞き間違いでなければ国家が崩壊すると言っていたようでしたが?」


 不審に眉をひそめるロノウェに、ヨムカはどう返したらよいかと脳をフル回転させる。


「ヨムカさん。もしかすると、魔導書を盗み出した犯人が国家を滅ぼそうとしている、とお考えですか?」

「あ、はい。私はそう考えてます。危険を顧みずに魔導書一冊を盗んで終わりなんて事は無いと思います。きっと、大掛かりな何かをしようとしているんじゃないでしょうか?」

「確かに盗まれた魔導書はそこら辺の代物とは別格のようですが、それがどうして国家崩壊だと?」

「えっと……それは」


 言葉が詰まる。


「まぁ、そう思っても不思議ではないですよね。強大な力を得るのですから、国家一つで済めばまだいい方です」

「もしかして、大陸全土ですかっ!?」

「落ち着いてください。いま、私達が憶測で語ってもどうにもなりません。私達に出来ることは、一刻も早く盗まれた魔導書を見つける事です」

「そう……ですよね」


 勝つために、報酬を貰うために参加していたつもりだ。


 憶測の域だが、国家だけに留まらず南大陸を始め全大陸が消滅しうる可能性だって否定しきれないのだ。全てが終わってしまってからではもう遅い。いや……すでにもう盗まれている時点で遅れているのだ。


 こんな事態になってお金だなんだと浮かれている場合ではないと現状を改めて認識したところで、ロノウェが微笑みながら顔を近づけてきた。


「わわっ! な、ななな何ですか、ロノウェ副隊長」

「ヨムカさんの瞳がきになってしまいましてね。あっ、変な意味ではありませんよ。ただ、本当に暗闇で発光しているんですね」


 世闇に薄く光るヨムカの夕日色の瞳。


「あ、え~と、ロノウェ副隊長。その、まじまじと観察されると」

「おや、とても綺麗な瞳をしているのですから、もっと自分に自信を持たれた方が良いですよ」


 覗き込んでいたロノウェはスッと身を引く。


「さて、そろそろ私は行きますね。ヨムカさんも帰り道は気を付けてください」


 ロノウェと別れ、彼の姿が繁華街の方面に消えた瞬間に感じた。


「……ッ!」


 まるで、タイミングを見計らっていたかのような視線。


 これは、不味い。


こんばんは、上月です(*'▽')


今週の日曜日に読み返して、修正できるところは修正していきたいと思います。



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