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恥ずかしさで真っ赤に染まるヨムカ

 工業区メイン大通りの中央で大の男を正座させている少女という図。


「キング・オブ・ファイブは弱小組織です、ハイ。ご迷惑おかけして……いえ、その決して貴女様の髪と瞳を馬鹿にしたのでなく……えぇっと、はい、申し訳ありませんでした」


 キング・オブ・ファイブの兄貴と呼ばれ慕われていた男は、ヨムカの視線から逃れる様に俯き、目を合わせることが出来ずにいる。頭上から見下ろす少女の感情を排した瞳がとても怖いのだ。その恐ろしさは遠巻きでクラッドとフリシアが震える程に。


「別に貴方より酷い罵声を浴びせられて生きてきたので、語彙力の乏しい貴方の罵りなんて特に苦痛にすらならないです。私が許せないのは、周囲が迫害するから自分も倣ってっていうのが一番ムカつくんですよね。迫害するなら明確な理由を持って自分の確固たる意思でしてください。意思が無いのなら関わらないでください」


 淡々とした口調で、小さく縮こまる男の頭上に言葉を降らす。それが、重しのように男はウンウンと頷く。


 ヨムカを忌み嫌っていた者達は本気で罵り、石を投げつけ、集団で袋叩く。そんな命の危険を常に伴っていた。だが、彼等は彼等で神話信仰を崇拝しているのだ。だから、赤色の特徴を持つ者達に対し、疑問を抱くことなく迫害する。それが正義の行いだと信じているから出来る事。


「あいつ、結構怖いんだな」


 別に怖いと思っていなさそうなヴラドは、眠そうにヨムカを視界に映す。


「まぁ、いいです。済んだことなので。それより、貴方達はどうして工業区でお宝を探していたんですか?」

「え! そ、そりゃ……なんとなく?」

「なんとなくで、こんな場所を探すんですか?」

「ヒ、ヒィ! いや、噂になってたんだよ……いえ、なっていたんですよ、ハイ。それで――」

「情報源はどこですか」

「か、勘弁してくれ! これ以上喋ったら殺されちまう」


 本気で怯えている兄貴の瞳。


 ヨムカは口を閉ざす。


「はぁ……もう、用はないので帰っていいですよ」


 ウンザリとした様子で言うと、兄貴は重圧から解放されたようにパッと表情に花を咲かせ、逃げる様に逃走する。が、長時間の正座に千鳥足で滑稽な様を晒して舎弟達が逃げ込んだ路地の奥に消えた。


「あっ、すいません。ようやく終わったので探索しましょう」

「あわわわわ」

「うぅぅぅぅぅ」

「えっ? フリシアとクラッド、どうかしたの?」


 キョトンとするヨムカは二人の顔を覗き込もうとすると、二人は息をのみヴラドの背後に隠れてしまう。


「あ~、説教するお前の眼が怖かったんだとよ」

「そ、そんなに怖かったですか?」

「いえ、そんなことはないですよ。私的にはとても可愛らしかったですけどね」


 軽くショックを受けるヨムカにロノウェがズレたフォローを入れる。


「ロノウェ、お前……ヨムカが好きなのか?」

「ふふ、はい。大好きですよ」

「ろ、ろろろロノウェ副隊長!?」


 目を白黒させあたふたと挙動不審状態になるヨムカにロノウェは、ニコニコと楽しそうに微笑む。


「ヨムカさんも私にとって大切な仲間ですからね。もちろん、ヴラドやクラッド君、フリシアさんも大好きですよ」


 あぁ、そういうことか。


 唐突な告白めいた発言に、取り乱してしまった恥ずかしさが今になって込み上げてきて、顔全体耳まで真っ赤に染まり俯いてしまう。


「……行きましょう。私達の目的はお宝を見つけて金銀財宝を手中に収めることです」


 この恥ずかしさを少しでも早く払拭したい。その一心でヨムカは早足で先陣を切って中央通りを進んでいく。

こんばんは、上月です(*'▽')


次回は城下でちょっとした暴動が起きる話です!

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