スアラの正体
首筋に触れた冷たい感触にうわずった声が上がるが、階下ではカロトワ達の魂の歌によって掻き消されてしまう。バッと振り返るが、そこには誰も居らず、キョロキョロと辺りを見渡すが、この高価なソファとテーブル、それと酒棚があるだけの狭いフロアには誰一人存在しない。
「えっとぉ……いま、確かに冷たいものが首筋に……って、えぇ!?」
視線を目の前のテーブルに落とすと、先程まで無かった結露に濡れるビンが、丁寧にもヨムカの目の前に置かれていた。
「喉乾いておりませんか、ヨムカ様?」
「う、うわぁっ!? ス、スアラさん!?」
「はい、なんでしょうか?」
ヨムカの隣りには、控えているかのようにスアラが立ち、ニコニコと可笑し嬉しそうに立っていた。
「い、いつからいたんですか?」
「そうですねぇ、バロックさんとヨムカ様が悪巧みをしていた頃には、このVIPルームに忍んでいましたよ」
「忍んでいたって……気配も悟られずに、背後を取れるスアラさんって、一体何者なんですか?」
「ふふ、暗殺、間諜、何でもござれの、忍者です!」
「に、ニンジア?」
「違います。ニンジアではなく、ニンジャです」
「は……はぁ」
ニンジャや間諜なんて、聞いたことのない単語に困惑するも、暗殺というキーワードから殺し屋的なものかと、ヨムカは勝手に理解しておく。
そんな、話しについていけてないヨムカをお構いなしに、スアラは修道女が祈りを捧げる時のように手を組むが、その独特なポーズに首を傾げる。
「なんですか、それ?」
「ニンニンです!」
あ、はい。
ヨムカは考えることをやめた。
「そういえば、ヨムカ様は学院側として参加なされるんですよね?」
「うん、バロックさんがそっちの方がいいって言うから」
「このイベントの主催者が探してるものについては?」
「まだ、発表されてないから――」
「ですよねぇ! ヨムカ様は探し物が何か知りたくはないですか?」
「知ってるの!?」
身を乗り出すヨムカにスアラは得意げな顔つきで、ニヒヒと笑う。
「えぇ、もちろん。忍者に不可能なコトはありませんからね!」
「……えっと、スアラさん?」
「はい! なんですか?」
スアラという女性は、こんなにテンションが高い人だったか。などと疑問に思うが、それより、今は探し物の方が重要だった。
ここで、その代物を知ってしまえば、他の参加者より優位に立つことが出来るだ。
「うふふ、ヨムカ様だけですよ。くれぐれも同じ参加チームにも口外しないでください。それと、報酬金を少々分けていただきたいのですが」
「うん、もちろんだよ! それで、その品物って?」
「それは、ですねぇ――」
スアラはそっとヨムカの耳元で色香を滲ませた声で、そっと囁く。
こんばんは、上月です(*'▽')
首都内で行われる宝探しゲーム、いよいよ開幕します!
次回の投稿はまだ未定ですが、是非とも一読くださいませ!




