カルロの機転に助けられるヨムカ
固く閉じられた扉もカルロの力をもってすれば、所詮はたんなる扉に過ぎなかった。
「さぁ、早く部下に謝罪してください」
ベイリッドは渋々瞳を伏せ、頭を軽く下げる。
「ふん! これで文句はないだろう。貴様も覚悟しておくんだな!」
怒れるベイリッドとの間に意外にもカルロが割って入る。
「ベイリッド卿、それは止めておいた方がよろしいかと。彼女はヴラド――いえ、カッセナール家現当主ヴライ殿のお気に入りです。下手にコトを起こせば……」
カルロがベイリッドに根も葉もない虚言を耳打ちすると、その脂ぎった顔は青ざめ、異常なまでの冷や汗が衣服を濡らした。
「こんな子供相手にお家と地位を危険に晒してはいけません。我がシュタンベルク家と共に未来を歩む為にもどうか賢明な判断を」
ヨムカがたんなるヴラドの部下であったならば、貴族の権力で暗殺や国外追放なんてことも容易であっただろう。国内で最大権力を持つカッセナール家当主のお気に入りとなれば話は別だ。
「ご……ゴホン。ええと、確かヨムカ君と言ったかな。今回の護衛任務、実に見事な活躍ぶりだった。うん、キミがわが身を危険に晒し、ワシの命を守ろうとしてくれたコトは一生忘れんぞ。そうだ、今回の報酬には是非とも色を付けさせてくれ。今この場にワシの命があるのはキミ達のお陰だからな」
盛大な手の平返しだった。
その態度の変化から、カッセナール家がどれほどの力を持ち合わせているのか、少し理解できたような気がした。ベイリッドは色を付けると言っていたが、これは間違いなくヴラドに対する口止め料として考えていいだろう。そう、いま彼の中ではヨムカがヴラドに色々と喋れば自分の全てを失うことになるのだ。それは、焦らないわけがない。
だから、ヨムカは少しだけ懲らしめてやろうと、カルロにアイコンタクトを送り、程々にという小さなジェスチャーで許可を得た。
「私って忌み子で災いを運ぶ悪魔なんですよね?」
ならば、今だけは災いを運ぶ悪魔になってやろう。
「ヒッ……いや、あれはそのぉ。そうだ! よく見たら赤ではなく綺麗な夕日色じゃないか。いやぁ、年を取ると眼も悪くなって敵わないな。ははは」
ははは、なんて笑ってはいるが、その眼は一切笑っていなかった。
「私は国に帰って平穏に暮らせないんですか?」
「えぇ!? いや、それは……その――」
「はいはい、ヨムカ君はそれくらいにして。さぁ、ベイリッド卿そろそろ帰国いたしましょう。この人数ですから野党の襲撃を注意しなければなりませんからね」
ベイリッドが泡を吹いて卒倒しそうなところで、またもやカルロが仲裁した。
その後は特に襲撃も受けずに無事国へ帰ることができ、ヨムカ達の報酬は本来の額を遥かに上回り、逆に素直に受け取っていいのかどうかと躊躇った。
カルロの虚言をより一層信じ込ませるために、ヴラドに協力してもらい週に二日ほどカッセナール家に足を運び、昼食を共にとる生活がしばし続いた。
こんばんは、上月です(*'▽')
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