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世界を満たす夕日色の魔術

 長かったようにも思えるロノウェの過去。


 それほどの時間は経っていない。ロノウェの召喚した異界の悪魔の破壊活動がまだ始まっていないからだ。だいたい数秒程で人一人の十数年を体験してきた。常識では語れない現象よりも、彼は意思やくそくによって己を支え、受け入れられない環境が――禁術にまで手を染めさせた。


「ロノウェ副隊長。辛かったですね。記憶をみた私も辛かったですが、自分の手で守り切れない苦悩は、とてつもない程だったと思います。ですが、ロノウェ副隊長を愛して、愛した女性が――フィルナさんが、今の副隊長の姿を見て喜ぶと思っているんですか!!」

「フィ、ルナ……僕は、アァ、我はぁぁぁぁぁぁぁ!! ああ、うわぁぁぁぁぁぁぁ!! 壊せッ! 異界の悪魔、戯言が我を蝕むのだ!」

「お前は黙ってろ! ロノウェ副隊長を返せェ!!」


 ヨムカは激高に尽きかけの魔力を無理やりに生産して、夕陽色の炎を――これまでに見たことのない眩く発光する、炎というよりかは夕陽そのものを生み出した。


「クッ――これって!?」


 脳裏に響く母を思わせる慈愛の声――聞いたことのない言葉。だが、それは耳心地よく意味を理解できた。ヨムカは理解した言語を無意識につぶやいていた。


「照らしなさい、世界の隅々を。暗闇を暴き浄化しなさい。私の役目は真意を暴き、汚れを祓う。黄昏の時に差す希望は世界を抱く――展開:夕陽色に染まる(サーディード・)世界に抱かれて(ワー・カドル)!」


 ヨムカの内包する魔力が――底を尽きたはずの熱量が、己の何かを削り生産されていく。身体から溢れ出す温かい夕陽色の粒子。それらは世界を照らす為、天空に昇る。


 何事かとロノウェの動きを――精霊の力を宿した魔力で拘束していたヴラドだが、あまりの出来事に我を忘れた。それは妄執に取り憑かれたロノウェも、天上へと視線を向けていた。


 吠える悪魔は危機を感じて、粒子を叩き落とそうと躍起になるが、粒子すべてがその巨掌をすり抜けていった。


「これが――夕陽色の希望なんですね」


 ヨムカの言葉は満足した安らぎに満ちていた。


 青空は色液を流し込んだように一面を夕陽色に染め上げた。優しい淡い色だった。恐怖を抱く前に神々しさが勝る。聖性に富んだ希望を望んだ少女が世界に敷いた術式は、既に世界に異変を起こしていた。


「あうぅ、あぁッ! 熱い、我を我を焼くその夕陽いろが忌まわしい!! 必要ない! 必要ないのだ、我の創生せし時代にはッ!!」


 悶え苦しみを上げるロノウェの絶叫は異界の悪魔にも伝播していた。六本の腕を振り回し、その体を透過させていく。


 ヨムカがいた場所は眩い発行によって肉眼では直視できない。この後どうなってしまうのか、というヴラドは、このまま拘束を続ける必要はないと判断し、ヨムカのいた場所に駆け寄った。

こんばんは、上月です(*'▽')


次回の投稿は22日の夜を予定しております。

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