表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ブレイキング・ローズ  作者: まるマル太
第1章 俺はロイヤル・ハイパワード・チューニクス!!
5/42

@第4話 黙って爆発しろ!

@第4話 「黙って爆発しろ!」





・・・先週の金曜日は、マジで疲れた・・・。


あの後、中二病のアーマーをもらって訓練場で練習させられたんだけど、

もう疲れる疲れる・・・。




しかも、まだアリエスに変身して特訓するなら分かる。


でもなぜか、俺には生身での精神統一的な修行が課せられた。

アリエスで中二病の力を解放した時に

暴走しないようにするために心を落ち着かせる訓練だったのだろう。




昼過ぎから始まった特訓は夕方17時頃まで続き、

そこから俺はもらった大型バイク、シープ・ホーン・フィースに乗って

岩手県の自宅へと走った。


お分かりだろうが、こんなフザけた苦行はない・・・。


新幹線で2時間の道のりは、高速道路を使うならばもっと時間を要する。

結局、俺が自宅へと到着したのは深夜0時過ぎだった。






・・・しかし、悲劇はそこで終わらなかったんだ。






なんと翌日の土曜日、そして日曜日と、

同じプログラムを課せられ”毎日バイクで東京に通う”という、

馬鹿々々しい行為を繰り返すはめになった。


しかも、例の研究室長とやらは相変わらずの多忙らしく、

一度も顔を見せる事がなかった。







・・・そして、そんな疲労感が残る連休明け、今日は月曜日。



俺はこの金、土、日と多忙な3日間の思い出に掻き消され忘れていたけど、

金曜日にこの岩手県でもフォーサーの被害があった。



俺の通う山村高校とは違うけど、

県内一位の入試偏差値を誇る北川高校では

液体状のボディを持ったフォーサーに

数人の生徒が溶かされるショッキングな映像を見せられた。


それはこの近日でニュースでも取り上げられてたけど、

そんな事件が起きたのは、ここ岩手だけではなかったんだ。


金曜日の同時刻、全国の計5か所で

フォーサーと思われる怪人による被害が発生していた。

いずれも死者が発生しており、

その被害はまさに、去年12月に突如出現した

例の”狼型フォーサー”から始まる、

フォーサー本来の恐ろしさを思い出させたように思える。






・・・でもその事件では”とても不可解なこと”が起きた。






全国5か所で発生したフォーサー暴動事件のうち、

3か所ではそのフォーサー達自身の”遺体”が発見されたんだ。


それらは警察が既に回収して検査を続けているが、

彼らがどうやって死んだのか、まではまだ分かっていないと思う。


でも、フォーサーを殺害できる力を持つ人間、といっても、

そう多くはないんじゃないか?


俺のように中二宮Xレアというイレギュラーな手段を持つ人物。

或いは・・・他のフォーサー。






あくまでも俺の予想の範囲ではあるけど、

もしかすると、フォーサー同士の結託というのは

まだあまり存在していないのではないだろうか?


一般人から見れば彼らはひとまとめに驚異以外の何でもない。




でも、フォーサーの中でも

個々人間にはたぶん目的の相違というものが発生せざるを得ないと思う。


だって、自分が簡単に他人を殺害できるほどの能力を持っているとしたら、

簡単には他者の権力に服従しないんじゃないのか?


例え、その他者っていうのが別なフォーサーだとしても。


それで争い合った結果がフォーサーの遺体・・・。

俺にはそう思える。




危険な状況だけど、ヤツらと戦う手段を手に入れた俺は

正直、テンションが上がっている。

今まで頭の中の妄想だった”ヒーロー像”は

フォーサーと出会うチャンスさえあれば

今日にでも現実になろうとしている。










「お前さ、なんでニヤニヤしてんの?」

突如、俺を現実世界へと引き戻したのは、

同じクラスの友達である月光つきみつ 夏景かけいだった。


常にぼーっとしているような顔付きの男子で、

口調もそれにちなんでどこかトロトロしている。




「・・・今俺ニヤニヤしてた?」


「うん、微かにだけど、お前すぐ顔に出るよ。

 気持ち悪かった。」


「あ、ゴメン。」




そうか・・・。

俺は教室の自分の机で妄想にふけっていたという事だな。

時計を見ると、もうすぐ昼休みが終わりそうになっている。




「どうせ、中二病の妄想してたんだろ。

 お前の事だから。」


「クッ・・・こうも簡単に見破られては

 この俺のロイヤル・ハイパワード・チューニクス、

 かっこRHCとしての立場も危うくなってくるか・・・。

 が、しかし、この俺を差し置いてロイヤル・ハイパワ」


「その長い単語何回も聞いたと思うけど覚えられないよ。」


「フッ、だろうな。

 中二病の力を自在に操れないようなヤツと一緒にされても困る。」


「操ってどうするんだよ・・・?」


俺は夏景かけいの言葉を聞き、思わず中二宮Xレアの事を口にしそうになって

咄嗟に両手で自分の口を押えた。




・・・あの事は、国家権力やアブソリュート・アーツ社の人間など

一部の例外を除き、

絶対に知られてはいけない事なんだ。

もちろん、俺がそれを所持する人間だという事も。






「どうしたんだい?」


「いや・・・何でもない。」


俺がそう返すと、夏景かけいは身体の向きを変え、

自分の席に向かって歩き始めた。


夏景かけいはいつも自分の話したい事を話し終わったり、

話が面倒になってくると、無理やりに話を打ち切る癖がある。


これはいつも通りの事。


たぶん俺の事は何もバレてないと思う。






夏景かけいが前の廊下側の席に着いたその瞬間、

ちょうど物理の先生が教室の扉から現れた。


時計を見ると、既に時計は開始時刻を2分ほど過ぎている。




「おい!お前ら!

 私が遅刻してきたからってこの騒がしさは何だ!」


教室へと入るなり、物理の藤原ふじわら先生が声を上げた。

室内のほとんどの生徒はそれで静まるが、

男子のチャラいグループはそれを聞いてもなお騒ぎ続ける。

これもいつもの事。




「遅刻してきて怒る資格あるんですかー?藤原先生―?」


「う、うるさい!」


どうせ藤原先生の事だ。

スマホゲームか何かが中途半端で時間に間に合わなかったんだろう。


俺は何かと藤原先生には目を付けられ、

職員室に呼ばれているからその様子は簡単に浮かぶ。


俺はだるい宿題は放置だし、授業も後半戦はお昼寝に当てている。


しかも俺のキャラ的に、見せ物として怒り散らすには

もってこいなんだろう。




・・・ったく、フザけんなし。

俺を怒るなら、どう考えてもあのチャラいヤツらが先だろ。

と、いう事で今日も気持ちよく寝ましょうかね。






「おい!はじめ、俺の監視が緩んでるからって寝るな!」


早速バレた・・・。


まだ腕を組んで頭をその腕のクッションに下ろそうとしただけなのに、

物凄い早業だ。


どんだけ俺目付けられてるんだよ!





「はーい、すみませーん。」


「そろそろ私も黙っていないぞ。

 宿題を増やしたりするかもしれないから気を付けろ!」


「どうせ増やされてもやりませんけどね~。」


ついポロッと本音が飛び出してしまった。

教室内では笑いがこぼれる。




「おのれ・・・はじめ!!後で職員室に来い!」


あぁ、だりぃ・・・。



ま、藤原先生は怒っても大して怖くないし

慣れているから別に良いんだけどね~。

























―――――そして、授業がすべて終わり、放課後―――――





俺は学校の駐輪場のマイバイクのシートにリュックを置き、

そのままバイク用のヘルメットをかぶった。


マイバイク、というのは

アリエス専用マシーンのSHFシープ・ホーン・フィースだ。


どう考えても登校してくるにはゴツいデザインで、

しかもフロント内部には専用武器の「オヒツジ・ザ・ランス」が収納されており、

一般人が見れば違和感を覚えずにはいられないバイクだ。




俺だってこんな奇抜なビークルで登校してくるような趣味はない!


でも、幻想覇者げんそうはしゃフィースネス・アリエスへと変身するためには

このバイクが俺の近くにある必要があるんだ。




護身道具は持ち歩くのが普通だろ。

もはや現状、いつどこからフォーサーが襲ってくるのか分からない。


でも、もしも俺を襲ってくるようなアホがいれば、

このアリエスで叩き潰してやる。





「あ、はじめじゃん。」

俺はその声に反応して、ヘルメットを取り外して発生源の方を向く。

すると、そこには見覚えのある顔が2つ並んでいた。


夏景かけい吹雪ふぶきちゃんか。

 今日も一緒に帰んのかよ?」

昼休みの時に話し掛けてきた夏景かけいの横にいるのは、

ヤツとは不釣り合いなくらい可愛い河原かわら 吹雪ふぶきちゃんだ。






そう・・・。

ヤツらは【リア充】!

この世にいる事さえ許されざる存在だ。


吹雪ふぶきちゃんは、

そもそも男子が苦手なのか、男子とはあんまり話さないけど、

いつも色々な女子と話していてとってもフレンドリーな女子だ。


リーダーみたいなタイプではないけど

黒髪ロングで顔も可愛い、成績も優秀。

彼女がモテると言うなら普通に理解できる。




・・・が、しかし!しかしだなぁ!


あの夏景かけいがモテるのには異議がある!


あんなに無愛想で毒舌で自己チューな野郎が

なんでリア充してるんだよオイ!




しかも、吹雪ふぶきちゃんは慣れた男子とは普通に話せるっぽいから、

学校だと主に夏景かけいとしか話しているのを見掛けない。


つまり吹雪ちゃんはアイツの”独占”状態という訳だ。




・・・許せないだろう、これは!


こんなのはおかしい!






「最近はなかなか一緒に帰れてなかったからね。

 今日は久しぶりだよ。」


夏景かけいが俺に自慢をするような口調で乗り出してくる。


これがまたウザい!


なんでわざわざ自慢しに駐輪場の俺に寄って来るんだよ・・・。




「はいはい、良いですねー!」

俺は適当な返事で流そうと試みる。


が、こういう時に限って夏景かけいは早々には去ろうとしない。




「吹雪ちゃんは僕の宝物だからね。

 いつもの事だけど羨ましいんだろ、お前?」


「はいはいはい!ちょっと黙ろうか夏景かけいくーん!!??」


夏景かけいが隣でさんざんに褒めているにも関わらず、

吹雪ふぶきちゃんは俺の背後の方をジーッと見つめたまま一切動じない。


たぶん、慣れてない俺が目の前にいるから

不自然な感じなのかな・・・?




・・・普段は教室で女子の友達と

笑顔で話しているのをよく見掛ける彼女だが、真顔もまた可愛い。






「ほら、吹雪ちゃんも困ってるだろ!」


俺としては、真顔の吹雪ふぶきちゃんを見ていたい気持ちよりも

夏景かけいのウザさの方が勝ったから、

そろそろ目の前から消し去ってやろうと思った。




「あ、ごめんね吹雪ちゃん。そろそろ行こうか。」


そう言い、夏景は吹雪ちゃんの片手を握り、

俺のサイドに続く道へとさっさと歩いていった。




・・・あぁ、吹雪ふぶきちゃん!

なんでそんな男に付いていくんだよ・・・。






俺は不満を抱きながら自分のバイクへと座り、キーを差す。

エンジンをふかし、スタンドを蹴り上げそのまま駐輪場を後にした。






















―――――――――――――――――――――――――――





・・・僕の人生初めての彼女、

吹雪ふぶきちゃんは間違いなく究極の女子。


断言するよ。


優しいし可愛いし頭良いし、

何より、彼女と仲良くできる特権は僕だけが持っている。

元々大人しい子だから、男子は僕にだけ慣れているみたい。




他の誰でもない、この月光つきみつ 夏景かけいに。





今日は月曜日だけど、

実は”再来週の金曜日”で、

僕と吹雪ふぶきちゃんが付き合い始めてから丁度3か月経つんだ。


まだ誘ってはいないけど、その日は今日みたいに部活のサッカー部をサボって

2人で買い物にでも行く予定。




そして・・・僕にはある『秘密』がある。




中学校まで過度な人見知りで不登校だった僕が高校に入り

自分に自信が持てるようになった理由。


それは2年半前のとある手術だろう。


僕はその手術により、今までとは違った人生を歩む権利を得た。




・・・そう、それは”HRSヒューマン・リィンフォース・システム”だった。






現在は、昨年12月の狼怪人事件、

そしてつい先週の全国フォーサー蜂起事件のために、

完全に悪者扱いされているHRSだけど、

僕にとってはまさに崇拝すべき神の技術と言うべきだろう。


僕はそのおかげで変わる事ができた・・・。


だけど、僕が恩恵として手に入れたのは

自信に溢れる新たな人格のみではなかった。


僕はそこで自分を、吹雪ちゃんを守るための力を手に入れた。




僕はこの力で吹雪ふぶきちゃんを守る。

僕の一番大切なものを・・・。










―――――――――――――――――――――――――――



























―――――その日の夜、21時過ぎ―――――






俺は塾での個別授業を終え、バイクで帰路に付いていた。




すると、人気の無い道をバイクで飛ばしていた俺の視界に、

何だか見慣れない光景が広がり始めた。


遠くてまだよく見えないけど、

あの街灯の下にいるのは・・・?




その様子は近付く度に露わになり、

おそらく残り100m程度のところでその状況はだいたい理解できた。


こんな時間に人が道端に2人立って口喧嘩をしているではないか!


どうやらトラブルのようだ。






「・・・だってこれ、詐欺ですよね?」


「詐欺でも何でも良い。

 お前が引っかかるのが悪いんだ!」


女子高校生らしき人・・・と小太りのおっさんが喧嘩してるのか?




いや、笑い事じゃなくてちょっとマズそうだ・・・。




これはあんまり、というか普通に生活していれば見る事がない光景。


要はおっさんの方が不審者だろ?


・・・面倒臭いけど、この状況でスルーは駄目っぽいな。


ちょっと話を聞いてみよう。





俺は突如減速し、わざと彼らに気付かれるように音を出しながら

電柱の脇にバイクを停めた。


案の定、女子高生とおっさんはこちらに注意を引かれ、

口論は一時ストップしたようだ。






「ちょっと、あんたら何やってるんですか?」


「・・・あ、はじめ君!」


突然俺の名前を呼ばれ、慌ててその女子高生の顔を見ると、

なんとその人は

3年D組同クラスの河原かわら 吹雪ふぶきちゃん!




「えーーーっ!?何でこんな時間にここにいるの?

 確か授業終わってすぐに夏景かけいのヤツと一緒に帰ってただろ。」


俺が駐輪場でバイクを出そうとしていた時、

夏景かけいに手を握られて帰っていったのを見た。


なのになぜこんな夜9時過ぎに人気の無い道を歩いているんだ?




「・・・状況は後で話すので助けてください!」


「このおっさんとは、知り合いじゃないのか?」


俺はそう言ってすぐ隣のおっさんを指差す。


遠くからでは分からなかったが、

このおっさんは横幅も広いが背も高い。


推定ではあるけども、180cmを越えていると思う。


俺はノリで指差したおっさんのリアクションが突然怖くなった。





「・・・いや、面識はないさ。

 引っかかったコイツが全部悪いんだよ。」


まさかの小太りおっさんが返答してきた。


俺はふとその人の顔を見上げると、

予想に反してなかなか穏健そうな顔付きをしているではないか。




・・・いや、見た目に騙されてはいけない!

人間、見た目じゃない、中身だ!






「引っかかったって一体何に?」

俺はおっさんではなく、隣で俯いている吹雪ちゃんに尋ねてみる。



「・・・いわゆる"出会い系サイト"的なものに。」

あ、そういう事ね。


顔も見ずに雑談して、気が合う女子だと思って

実際会ったら知らないおっさんだったパターンだね。






「・・・俺はこういう愚かなヤツを殺してやるのが好きなんでね。

 不特定多数の人間を男女構わず殺しているという訳だな。」


オイオイオイ!!


このおっさん度を越えてヤバ過ぎるだろ!さすがに!


めっちゃ悪質じゃないですか・・・。






「そうだ、君も一緒に殺してやるよ。

 このわたり しょう様が!

 ・・・・・変身ッ!!」




え?ちょい待て・・・?


良い歳こいたおっさんが『変身』だって?






すると、その小太りおっさんの全身が突如

紺色の布のようなもので覆われ始め、

顔などの肌が露出した部分は骨を思わせるように

色、材質共に堅そうになっていく。


両肩から幅40cmほどの紺色の布らしきものが

真っ直ぐに何枚も足元まで伸びていて体はそれに隠されているが、

背中に丁度クロスする形で

メタリックブルーの刃をした大きな鎌が堂々と2本取り付けられている。


顔は紺色の布がフードのようにかぶさり口しか見えないが、

ガイコツ・・・だろうか。


不気味な歯を覗かせている。


全体的に「死神」のようなイメージが出ている怪人だ。





・・・って、ちょっと待て待て。


おっさん怪人になっちゃったよ!オイ。

こ、これが噂のフォーサーなのか・・・!?






「さぁ、君たちはこの”インステスキム”様の背中の2本の鎌、

 オミノスサイズで無残に殺してやろう。

 それが俺の殺害という目的の達成にもなる。」


元の印象をほとんど持たぬ怪人態へと変貌したおっさんの口から

くぐもった恐ろしいセリフが流れてくる。




「・・・はじめ君!逃げよう!」


そう言い、吹雪ちゃんは俺の手を握る。




おぉ!これはなんてことだ!


吹雪ちゃんと手を繋げるなんて!!


あのおっさんには感謝せねばならん。




・・・って違う違う!


おっさんがフォーサーだと分かれば、

一般の不審者相手には使えない”中ニ宮Xレア”の出番なんだよ。






「ちょっと待ってて、俺が助けてやるから!」


「助けるって・・・どうするの?」


俺は後方5mほどに停めてある専用バイク、SHFへとゆっくりと近付き、

そのバイクの運転席へと収納してあるバックルを取り出した。




「俺から離れててちょうだい。」


「何をするつもりなの・・・?」


不安そうな吹雪ちゃんを横目に、

そのままバックルを腹部にあてがうと、

俺の腰には自動でベルトが巻かれた。


手際よく、制服の脇のポケットから例のタブレットを取り出し、

自分の身体の前に構えてポーズを決める。


ここで目の前にフォーサーがいるからって焦ってしまってはカッコ悪い。


ヒーローは敵を前にしても平然と名を名乗るくらいの度量がないとね。




「フッ・・・そこのフォーサー。

 インステスキムだかって言ったな!

 俺の前でその姿を明かした事を後悔させてやるよ。」


こんなもんで変身前のセリフは十分だろう。


ただ単に変身してはもったいない。


せっかく敵のフォーサーや吹雪ちゃんに

カッコ良いところを見せられるチャンスなんだ。




「おい・・・さっきから何をしている。

 俺は殺そうと思えばすぐに君たちを諸共もろとも殺せるんだぞ?」


「パワード・・・オンッ!!」


「!?」


俺は自宅で密かに練習してきたイケてる構えを咄嗟に取り、

そのまま腰に付けていたベルトのバックルへと横からスライドするように装填する。




その瞬間、俺の背後のSHFのシート部分が開き、

中からアルミ缶のふたサイズのユニットが4枚飛び出してくる。




それらは宙を舞いながら俺の正面へと牡羊座の形になるように並び、

ユニット同士が電撃の網で覆われ、一時的な耐障壁電磁バリアが発生。


そうなると開いていたバイクのシート部分から

幻想覇者げんそうはしゃフィースネス・アリエス】

のアーマーが次々と俺の身体に装着され始める。


身体はアーマーの重さでどんどん重くなっていくが、

いずれ俺の中二力を使えばこんなもの何の重みでもなくなる。




各部分にアーマーが装着された後、

最後に頭には羊の顔を模したヘルメットが取り付けられ、

それと同時に視覚は

ヘルメットに取り付けられているメインカメラに映る映像へと切り替わる。


そうなるとアルミ缶のふたたちはバイクのシート部分へと帰っていき、

バリアは無事に撤去される。


これでようやく、紫色の羊戦士、

幻想覇者フィースネス・アリエスの誕生だ!!






・・・んで、とりあえずはその場で腕を組み、

変身直後のシャキーンみたいな音が出そうなポーズを決めてみる。


ここまでは自宅で軽く練習をしてきた。

実際にフォーサー相手に戦うのは今回が初めてだけど・・・。




・・・が、この俺を誰だと思っている?


例えフォーサーとは言えども、

このロイヤル・ハイパワード・チューニクスのはじめ様には勝てる訳がない。






「は、はじめ君・・・なの!?」


「何だと?君もフォーサーだったのか!?

 見るところ、羊を模しているようだが・・・。」


えっと・・・フォーサーっていうのは

HRSヒューマン・リィンフォース・システムによって

生み出された怪人のことだから、俺は違うな。


俺が装着しているアーマーはアブソリュート・アーツ社で開発された

中二宮ちゅうにきゅうXレアという対フォーサー用アーマーの部類。




「いや、これは」

おっと、せっかく俺は”正義のヒーロー”になりきれているんだ。


この先もずっと使える決め台詞的なものが欲しいな。


うーん・・・登場と共に叫ぶとカッコ良いような言葉を何か・・・。




「おい、何故黙っているのだ?

 ・・・フォーサーではないのか?」


俺の5mほど前にいる死神が苛立っているが、

そんな事よりも今は決め台詞の方が大事だ。


とりあえず、今回は時間もないし・・・。




「おい!君は何なのだと聞いているんだ!

 早く答えろ!」


「・・・さぁ、追憶ついおくを辿れぇぇぇッッ!!」


「はあ?」


怪人は俺と戦う事を忘れたように首を傾げている。




うーん。

我ながら、この短時間でなかなかカッコ良いセリフを用意できたもんだ!








さて・・・そんではいよいよ始めましょうか。

俺の初陣を!











@第4話 「黙って爆発しろ!」 完結



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ