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ブレイキング・ローズ  作者: まるマル太
第5章 何が正しくて、何が間違いなのか
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@エピローグ

@エピローグ






・・・巨大テロ組織、バーバレスの日本支部に乗り込んでから

既に2ヵ月が経過していた。


この私、藤原ふじわら 玲二れいじは、

バーバレス戦で瀕死まで追い詰められたが、

今は無事に退院し、山村高校の物理教員を続けている。


学校自体は今日の終業式で夏休みを迎えるのだが。




・・・2か月前、我々は無事にバーバレス日本支部を壊滅させ、

警察組織に見つかる事なく、撤退する事ができた。


これまで秘密裏に動いていたバーバレスの存在は

一般国民には隠されているものの、

しかし、警察では危険視される事となった。

いや、世界規模のテロ組織である事が判明した今、

各国のバーバレス支部もそう長くは持たないであろう。


それに加え、私を含むフォーサーや、

アトラクターなどを含む”ローズ・ブレイカー”への

風当たりも強くなる事だろう。

いずれ、そう遠くないうちに、

私たちは社会を敵に回す事になるのかもしれない・・・。




・・・今回の作戦で、私自身はあまり力になれなかったが、

私の仲間たちは、結果的にはバーバレスを仕留める事に成功した。

しかも、共にバーバレスを倒そうと集まった仲間たちは、

伊集院いじゅういん 雷人らいとを除き、

誰一人として欠ける事なくミッションに成功した。




・・・そのはずであるが、

私にはどうしても、あの日、”何か”を失った気がしてならない。


退院してから1ヵ月ほど経過するが、

それからはその”何か”についての手掛かりを必死に追い求めてきた。


しかし、ヒントは未だに皆無。


ここまで来ると気のせいであったという方が有力だろうが、

私にはどうもそれで片付ける事が難しかった。


何か、忘れてはならないものを忘れている・・・。

そう思わなくてはいられない自分が確実にいる。




・・・おそらく私はこれからも、その何かを追い求めるのだろう。

死ぬまで、永久に。






















―――――その日の夜、22時過ぎ―――――




「・・・はい。今のところ順調です。

 おそらく全世界のバーバレスも半年以内には解体されるでしょう。」

はかま姿の若い男性が、

何やら狭い部屋の中でスマートフォンを耳に当てて話をしている。


「・・・はい、現状は我々”ゴッド・レジスティング”の思惑通りです。」

はかま姿の男性は、

一切の笑みを浮かべずに話を進める。


「えぇ、我も1週間後にロシアに向かいます故、

 その際、詳しく現状報告を致します。

 ・・・はい、この、惣野代そうのだい めぐるにお任せを。」

そう言い、惣野代そうのだいと名乗った男は電話を切った。




・・・惣野代そうのだいは10秒ほど目を瞑り、

天井を見上げていたが、

不意に椅子から立ち上がると、

不気味な笑い声を漏らし始めた。




「ククククク・・・我を信用するとは愚かな・・・」

先ほどまで真顔だった彼の顔は不気味に歪み、

何度も、勢い良く目の前の机を叩いた。

その怪しく充血した目は、明らかに異常者のそれである。


・・・と、その時、

部屋の入り口の扉がゆっくりと音を立てて開いた。

惣野代そうのだいは笑いを止め、

瞬時にドアを見据える。




「ノックもなしに我の住居に侵入するのは何者か?」

惣野代そうのだいの顔は未だに歪んでいたが、

その人物を見た瞬間、凍り付いた。


「お前とは初めまして、だな。

 占い名探偵の惣野代そうのだい めぐる?」

岡本おかもと・・・龍星りゅうせい!?」

惣野代そうのだいは部屋の中で後退りし、

突然の訪問者から距離を取った。


来客した岡本おかもとは玄関で足を止め、

8畳ほどの狭い室内を軽く見渡すと、

まっすぐに惣野代そうのだいを見据えた。




「フッ・・・これはこれは。

 今、行方不明となっている元アブソリュート・アーツ社、

 社員の岡本おかもと 龍星りゅうせいか。

 わざわざ岩手まで来るとは、我に何の用だ?」

余裕の無くなった惣野代そうのだいからは、

普段の狂言師のような口調が消えている。


「お前を消しに来た。」

淡々とした口調で発せられたその言葉は、

惣野代そうのだいに残る僅かな余裕を奪い去るには十分だった。


「・・・一体何を?

 我が何をしたというのだ?」

惣野代そうのだいの言葉に、岡本は僅かに口元を歪ませた。


「お前には両親がいないのだろう?

 4年前、レボリューショナイズ社で働いていたお前の両親は

 何者かによって殺害された。

 違うか?」

惣野代そうのだいは真剣そうな顔付きで黙っていたが、

岡本の言葉に対して「ほう」とだけ漏らした。


「・・・我についてある程度は調べたようだな。

 我はその両親を殺した犯人を捜すべく、

 ネットから依頼を受け付ける探偵となった。」

「お前の台本の中では、の話だろう?」

惣野代の顔付きが若干であるが強張こわばった。


「・・・どういう意味だ?」

「もうお前はその犯人を知っている。

 何せ・・・本人がここにいるのだからな?」

惣野代の両目が大きく見開かれる。

そして、5秒ほどの沈黙の後、

彼は口を開いた。


「ククククク・・・よくそこまで辿り着いた。

 岡本おかもと 龍星りゅうせいよ!!」

惣野代は冷静な様子を取り乱し、

口調も荒々しいものに変化する。


「邪魔だったんだよ!!

 我が・・・生きるためにいいッッ!!」

「そこでお前は、大量のHR細胞をレボリューショナイズ社から盗み出し、

 自己管理で研究、投与を繰り返していた。

 更には、若くして両親を殺害した事でバーバレスにも目を付けられ、

 何事もなくテロ組織へと入団を果たした。」

岡本の言葉を否定せず、

惣野代は頷きながら黙っている。

しかし、その顔は、邪悪なピエロのようなそれだ。


「そのテロ組織からの支援金で

 HR細胞の人体実験も進めていた。

 社会に被害が及んだ例としては、

 都内の西岡刑務所から脱出した湯原ゆばら 海斗かいと

 イノベイティブ・コンクルーダー。」

「そこまで調べたのか!

 凄いぞ!その通りだ!!」

岡本の口はまだ止まらない。


「お前は体内に大量のHR細胞を打ち込んだ。

 おそらく、50個を軽く越える数をな。

 そこで、お前は体内で”世界”を再現し、

 あらゆる事象を予想できるようになった。

 ・・・違うか?」

「ククククク・・・全く、その通りだ。」

惣野代は満足気な顔で岡本を見据えた。


「しかし、いくら調べても不確かな事がある。

 1つは、お前が両親を殺害した理由。

 そして2つ目は、お前の目的だ。」

「良いだろう・・・。

 そこまで知ったなら教えてやろう。」

惣野代は棚から日の丸の扇子を取り、

自身の顔を扇ぎながら説明を始めた。


「我は元は大人しい子供だった。

 だから、学校で仲の良い友達なんてできる機会もなかった。

 その上、定期的にいじめを受け、

 ますます我の周りからは人が逃げていった。

 しかし、家に帰っても両親は仕事で帰りが遅く、

 誰にもその事を相談できなかった・・・。

 そんな時、私に居場所を与えてくれた組織が

 “ゴッド・レジスティング”だった。」

「その組織については・・・俺も辿り着けなかった。」

「その組織の最初の命令は、

 我が自身に大量のHR細胞を注入する事だった。

 しかし、そのためにはレボリューショナイズ社の研究施設から

 細胞を盗み出す必要がある。」

「お前は両親よりも、その組織を取った、という事か。」

岡本の視線が鋭くなる。


「そういう事だ。

 そして、未来を自動的に予測する事ができるようになった我は、

 組織に重役を任されるようになった。

 バーバレスへのスパイ活動もその一環だ。」

「お前は以前、中仙道なかせんどうのブラックマイスターに所属していたな?

 それはどちらの組織の命令だ?」

「そのスパイ活動はバーバレスの命令だ。」

「フッ・・・トリプルスパイ。という事か。」

「我はそのスパイ活動を続ける中で、

 “人を裏切る”事に愉悦を感じるようになった。

 信じられていた人間に裏切られる・・・。

 それは我が学校生活で痛いほど経験してきた事だった。

 だから、今度は我がその楽しさを実感する番だという訳だ。」

「ならば、お前の真の目的は・・・」

岡本の言葉が発せられると、

室内は数秒の沈黙に陥った。




しかし、その沈黙を破り去るように、

惣野代は声を張り上げる。


「人を”裏切り”続けるために、

 誰かの味方をし続ける事だ!!」

惣野代はそう言いながら笑い出し、

苦しそうに両手で腹を押さえた。




・・・その様子を見た岡本は、

あろう事か、天井を見上げて大声で笑い始めたのだった。




「ハッハッハッハッハアアアア!!

 それでこそ排除しがいがある!

 お前は俺が出会ってきた中で最高レベルのゴミだ!!」

「・・・我を排除?

 そんな事ができるとでも?」

惣野代の笑いは止まったが、

ニヤついている顔は変わらない。


「安心しろ。

 今日は、お前がこの世界から・・・消える日だ。」

岡本はそう言い、

着ていたロングシャツのボタンを開け放つと、

腰に巻かれた特殊なベルトが露出した。


ベルト部分が黒く、

バックル部分には4つ穴の空いた

黒いカードリーダーのようなものが取り付けられている。

そして、左サイドには

片手の拳が収まるほどのレバーが取り付けられている。




「俺が開発した試作品だが、

 お前で試させてもらおう。」

岡本はポケットから

一回り大きいUSBメモリのようなパーツを取り出し、

バックルの右サイドへと挿入した。


「・・・何だ、それは?」

無意識的にある程度は未来を知覚できるはずの惣野代は

既に、岡本の異常性に気付いていた。


「スキャニング・アーマードシステム。

 まぁ、消えるお前が知る必要はないがな。」

岡本は更にポケットから一辺が8cmほどの電子カードを取り出し、

3枚を順にバックル上部に備えられた挿入口に入れた。




《コネクティング。》

バックルから、暗いボイスの男性ガイダンス音が流れる。

冷静な様子で、DEADの電子音よりも

落ち着いた印象である。




「お前はこの世界には不要な存在だ。

 だから、処刑人を担う俺が排除せざるを得ない。」

岡本はそのまま右手で左サイドのレバーをがっしりと掴む。


「変身!」

握った右手を、右側へとスライドさせると、

コピー機の光が通るような感覚で

バックル上をまっすぐな光の軌跡がなぞった。




《ロードコンプリーション。

 アーマー・アンインストーラー。

 イフェクト・パワード、パワード、パワード。》

ガイダンス音が流れると、

岡本の身体が黒い塵のようなものに覆われ、

すぐさま彼の身体にどこからともなくアーマーが装着された。


・・・全身が黒を基調とした配色で、

胸部や身体のサイドには金色のラインが入っている。

両肩には四角い装甲が取り付けられ、

そこから背中が隠れるように黒いマントがたなびく。

顔面は金色の十字が刻まれたのみで、

他の装飾は見られない。


更には、左手の甲には

1本の針らしき突起を備えたウェポンが装着されている。




「このアーマー名は・・・”エンドレス・デバステイター”。

 まだ試験段階であるが、お前を倒すのに不足はないだろう。」

岡本は自分の身体を見回すようにチェックし、

惣野代が戦闘体勢に移るのを待っているようだ。


「・・・どうやら、お前は常人とは違う存在らしいが、

 それだけで我が怯む事はない。」

惣野代はいつの間にか両手に持っていた扇子を

瞬時に身体の両サイドへ向けて広げると、

すぐさま彼の身体は紫色のメカメカしい皮膚に包まれ、

頭部から無数のチューブが飛び出す。

身体からは紫色のトゲが生え揃い、

チューブは背中や肩など、身体のあらゆる部分に接続されていく。

顔面には赤い点が浮かんでいるのみであり、

時折、機械音にも似た奇妙な音を発している。


「これが・・・我の本当の姿!

 コワレタセカイ・過剰ディスガイズ態!!」

「過剰ディスガイズ・・・お前にピッタリの名だ。」

岡本ことデバステイターは短い笑いを漏らすと、

挑発するように人差し指を曲げ、

コワレタセカイを誘導する。


「お前から来い、といった様子だな?

 ならば遠慮なく・・・消させてもらう!!」

次の瞬間、コワレタセカイの無数のチューブが

空中でうねり、デバステイターを捕えようと迫った。


しかし、デバステイターは

背後にある部屋のドアを突き破り、

外へと飛び出した。




「逃がさんぞ!!

 岡本おかもと 龍星りゅうせいえええええッッ!!」

コワレタセカイも急いで自分の家から飛び出し、

獲物を追う。


しかし、次の瞬間、

彼の頭部から伸びる突き進むチューブは

空中でその進行を止めた。




「何?」

見ると、まるでクモの巣に引っ掛かったように、

チューブは動きを封じられている。


「引っ掛かったようだな。」

デバステイターはそのクモの巣の20mほど後ろで

様子を見ていた。


「強化超高圧電磁ネットだ。

 お前が家を飛び出して街路のこのルートを通るのは

 予想できたからな。

 あらかじめ家に入る前に仕掛けておき、

 すぐに起動できるように準備していた。」

「・・・フッ、だが、

 この程度のネットならチューブの力だけで破壊可能だ!」

「ならばその前に・・・」

デバステイターは左手の手首から伸びる針型ウェポンを構え、

急接近する。


「本体を倒せば済む話だ!!」




・・・通常であれば、

コワレタセカイの身体は

まるで未来が見えているかのように

敵の攻撃を避ける動きを見せるはずであるが、

今回はまともにその突きを受けたのだった。




「ぐおっ・・・!!」

腹部を刺したデバステイターの針はすぐに引き抜かれ、

再び腹部に打ち込まれる。

何度も、何度も、同じ傷をえぐり返す。


クモの巣に捕らわれた大量のチューブは

電撃で痺れ、未だにネットを破る事ができていない。




「なぜだ・・・なぜ動きが読めない!!

 我は・・・世界そのものだぞ!!」

「お前の様な偽の”世界野郎”に

 本物は・・・倒せないって事だろうなッ!」

先ほどよりも強い力で、岡本は左手の針を突き付けた。


同じ傷を攻め続けた効果もあり、

コワレタセカイは呻き声を上げながらその場に膝から倒れた。




その弱ったコワレタセカイの顔面を、

デバステイターは何度も膝蹴りで痛め付ける。

しかし、彼はチューブをネットで拘束されているために、

その攻撃を受け続ける事しかできない。


その無慈悲な攻撃は、

明らかに以前の岡本ではできない、

残酷なものだった・・・。




「くそっ!!

 我は・・・我はまだ満たされない!!

 我は最も裏切りたい者を裏切っていない!!」

「それは、さっきの謎の組織の事か?」

「そうだ!!

 “ゴッド・レジスティング”を裏切ってこそ、

 我の人生は完成される!!

 世界!!世界よおおおッ!!この我を見放すのか!!」

「フッ・・・安心しろ。

 お前の人生は、元から存在しなかった事になる。」

デバステイターは蹴りを中断し、

無抵抗の罪人を見下ろした。


「お前は完全に無に帰す。

 存在しないものを誰も評価する事はできない。

 よって、お前は最初から完成した存在となる。

 だが・・・。」

コワレタセカイはようやく冷静さを取り戻し、

目の前の恐ろしい敵を見上げたが、

もはや全てが遅かった。


「お前を知覚する者は誰もいないがな?」

デバステイターは左手の針に力を込め、

まっすぐにコワレタセカイの頭部へ目掛け突き出した。


「お前のアイデンティティーを確立しろ。」

















@エピローグ

ブレイキング・ローズ 共に完結




そして次作、【ジャッキング・フォース】へと続く








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