@第33話 昨日の敵は今日の友!!
@第33話 「昨日の敵は今日の友!!」
・・・俺たちは上戸鎖に
300体を越える大量の戦闘人形の相手を任せ、
本来の作戦とは別ルートへと進路を変更し、
確実にバーバレスの日本支部へと近付いていた。
だけど、そんな順調に辿り着けるはずはない。
俺はバトル漫画とかで得た知識から
何となく今後の俺らの展開を予想しているけど、
さすがに他のみんなも気付いているはずだ。
「ちなみに、先生。
今のうちにさっきの理由聞いても良いですかー?」
暇すぎた俺は、藤原先生へと無線を送る。
『理由とは何だ?』
先生が運転しているジープから返信が返って来る。
・・・ちなみに、ジープには八重樫ちゃんと
中仙道も同乗しているはずだけど・・・。
「先生がフォーサーになった理由ですよ。」
『あぁ、その事か。』
やけに軽々しく返事が返ってきたかと思いきや、
そこからなぜか10秒くらいためた後に先生は口を開いた。
『・・・2年前の夏休みに、街でたまたま
私のクラスの男子生徒が事故に遭いそうになったのを目撃してな。
私は咄嗟にその生徒を助ける事には成功したが、
右脚が潰れて使い物にならなくなったんだ。』
うわぁ・・・結構重いじゃん!
聞くんじゃなかったわ・・・。
『しかも、その生徒の宝物だった”キーホルダー”は
守る事ができなくて、嫌な思いをさせてしまった・・・。
何やら、彼女さんとお揃いで買った宝物だったらしく、
それが原因で別れてしまったらしいな・・・。』
ふむ、なるほどー。
助けたのにグチグチ文句言われたパターンか。
『だから、私は・・・』
『皆さん、聞こえますか?』
突如割り込んできたのは、
アブソリュート・アーツ社から無線で俺たちをサポートしてくれる
麗華さんの声だ。
『その2kmほど前方に高エネルギー反応が出ています。
しかも、かなり巨大な反応です。』
俺のゴーグルにはサーモグラフィーが搭載されていて、
そのデータはアブソリュート・アーツ社へと送信されている。
バイクで走行中にサーモグラフィーの視界に切り替える事はできないから、
敵の反応などはナビゲート側で教えてくれる事になっている。
どうやら、前に敵が控えているらしい・・・。
『・・・全自動鎮圧システム"ガイアコマンド"。』
突然、蔭山さんの声が入ってくる。
『園原社長が吐いた情報の中に
この反応に近い兵器についての詳細があった。
おそらく、そろそろ木々の間から見えるだろう。』
俺たちは各々スピードを落とし、
敵に警戒をしながら時速10kmほどのスピードを保って進む。
と、戦闘を走っていた藤原先生のジープが停止した。
それに伴って、皆、ビークルから降りて
小走りで藤原先生へと接近する。
「・・・アレだな?」
薄暗い木々の隙間から、無機質な機械のアームが見えた。
耳を澄ますと、機械の可動音のようなウィーンウィーンという音が
ひっきりなしに聞こえてくる。
「全体像は見えないが、高さ5mは軽く越える戦闘マシーンか。」
ブラックマイスターの八重樫ちゃんが呟く。
6足歩行の足の長い芋虫のような形をした鼠色のボディに、
警備用のカメラが多数取り付けられ、上下左右に動いている。
それに加え、脚部の他に6本のアームが伸び、
いかにもヤバそうな雰囲気を放っている・・・。
・・・しかも、それに加え、木々の間から覗くだけでも
その戦闘マシーンは”3機”動いているのが確認できる。
「あのマシーンの戦闘能力が不明である以上、
ここにいる全員で挑むのは危険か。」
中仙道が腕組みをして考える。
「いや、逆に全員で挑みかかった方が良い気がするんだけど・・・。」
ついつい、俺は本音が飛び出した。
正直、この中仙道っていう人は
顔が凶暴そうで怖いから話しにくいんだよなぁ・・・。
「分かっていないようだな。
無駄な犠牲を出すよりかは、
確実なメンバーで戦力を固めた方が良い。
この先、バーバレス基地内に進入できたとして、
何が待ち受けるのかは予想もできないからな。」
話し方はさすが組織の元リーダーって感じだけど、
気迫に圧倒された感があってあんまり好かない。
「・・・ここに残り、あの機械を破壊するメンバーはどうする?」
俺の高校の国語の先生、内垣外先生が
俺らの様子を見て話を進める。
「この中仙道が残ろう。
リヴァイアサンは敵へ攻撃を命中させる事ができれば、
基本的に負ける事はない。」
迷う様子もなく、中仙道が不気味に笑いながら立候補する。
俺は中仙道の戦闘を見た事はないけど、
数回のパンチの衝撃で
レボリューショナイズ社の本社ビルを倒壊させたという事から、
そのヤバさは簡単に予想できる・・・。
「なら、僕も残ろう。」
イケメンの八重樫ちゃんも続いた。
「・・・ここは俺一人で十分だ。
他のヤツはあのデカブツの監視にかからないように進路変更し、
支部を目指せ。」
「お前が常識を超えた馬鹿力を持つのは承知の上だが、
さすがに危険じゃないのか?
どうしてもと言うなら任せるが・・・。」
藤原先生が提案するが、中仙道は既に試験管を取り出し、
戦闘準備に入っていた。
「ここは、どうしても、と言おうか。」
そう言い終わると、中仙道は試験管の中の紫色の液体をグイッと一気飲みした。
見る見るうちに中仙道の身体が左右に膨張し、
青系と緑系の色がグチャグチャに混ぜられた体色の
巨大な海獣、世刑海獣ディザイヤー・リヴァイアサンが君臨した。
・・・俺は初めて見たけど、普通のフォーサーとかよりも一回り大きく、
動きは鈍そうだけどその威圧感は異常だ。
「俺はな、早く戦いたくてウズウズしていたのだ。
バーバレスを早くボロボロにしたくてな。
・・・俺の”おもちゃ”には手を出さないで貰おう。」
くぐもった声でリヴァイアサンはそう言うと、
俺たちがビークルに戻るのを確認してから、
戦闘マシーンの徘徊する森の先へと歩を進めていった。
・・・アイツが戦闘能力未知数のマシーンと戦って
どうなるかはちょっと予想できないけど、
自ら犠牲になるというなら、俺としてはどうでも良い。
『・・・おおまかにですが、NEOやガイアコマンドの配置により、
バーバレス日本支部の所在は把握できました。』
麗華さんが皆に無線を送る。
たぶん、無線の向こうでは中田さんと蔭山さんと麗華さんが
分析とかを頑張ってくれてるんだと思う。
・・・確かに、普通なら基地を囲むように
警備を充実させるはずだから、
逆に言えば、警備の配置で基地の在り処は分かるって事か。
バーバレスも結構アホだな・・・。
『よし、次へと進むぞ。』
俺らの先頭を進む内垣外先生は
ビークルに乗った俺たちに向け、指示を出す。
―――――その頃―――――
「ぐっ!?」
バーバレス基地内で、警備員が腹に蹴りを食らい、
そのまま5mほど背後へと飛ばされ、背中を床に擦り付ける。
その警備員とは対局側にあたる廊下から迫ってきていた別の警備員は
不意の回し蹴りを頭部に食らい、回転しながらその場に崩れ落ちた。
・・・この私、伊集院 雷人は
エレベーターで地上まで上がり、
私の変身道具が収納されているという
倉庫へと向かっていた。
私の脱走を聞き付けて数々の見張りが行く手を阻んできたが、
そもそも、私の筋力はアーマー装着の際に、
自ら身体に特殊な治療を施し、他人よりも人工的に強化しているため、
格闘戦ならば負ける事はない。
高速処理を可能とするツヴァイブレインを失った今、
銃弾を避ける事はできないが、
発砲される前に敵を潰す事ができれば問題ない。
しかし、怪人相手ともなれば、
私に勝ち目がないのは目に見えているが、
幸い、このバーバレス基地内で未だに怪人と対峙する機会はなかった。
もしかすると、私の仲間がこの地下基地へと接近し、
内部の警戒体勢が疎かになっているのかもしれない。
「・・・ここか。」
入り口が一際大きい扉の前に辿り着き、
デステニというフォーサーから貰ったタブレット端末で場所を再確認する。
すぐに入り込もうと試みるが、
扉の横にカードをスキャンするようなスリットが用意されており、
個別カード抜きでは入れないような設計になっているようだ。
私は先ほど足で突き飛ばした警備員を締め上げ、
気絶させてから、彼のポケットをまさぐり、
ICカードのようなものを取り出した。
周囲を警戒しながらカードをスキャンすると、
固く閉ざされた扉は見掛けによらず左右へスッと開き、
ただっ広い倉庫が目の前に現れた。
・・・この基地内で徘徊する以上、
自分がいつ殺害されてもおかしくはない。
ここに辿り着くまで、その警戒が頭から離れる事はなかった。
しかし、ツヴァイブレイン、つまりは
頭部に打ち込まれたHR細胞が死滅した以上、
私はもう長くは持たないだろう。
その前兆なのか、目覚めてから頭が割れる様に痛い。
いっそ、捕われずに黙って殺された方が良かったとも思えるが、
私とて私の役目が残っていたのは事実だ。
倉庫内から自分が乗ってきたサイドカー付きのバイクを見つけ出すと、
急いで走り寄り、状態を確認する。
・・・特に損傷した様子はない上に、
キーも元のまま挿されている。
それに、ご丁寧にヘルメットまでもが備え付けてある。
しかし、いくら探しても足りない付属品もあるようだ。
今の私にとって最も必要不可欠な
ドミクロンへの変身道具、DEADチェンジャーである。
誰かに回収されたのか、
またはあの森に置き去りになっているのかは分からない。
周囲を見渡し、バイクへとまたがり、
そのままエンジンをふかすと、
バイクは正常に動き出した。
既に貰ったタブレットで脱出経路は捕捉してあるが、
警備がどの程度厳重なのかはタブレットでは把握できない。
だが、かと言ってここに留まる訳にはいかなかった。
「ここだ!!いたぞ!!」
数人の気配を感じると同時に、
私はバイクを急発進させた。
先ほど入ってきた入り口へと高速で迫ると、
その入り口付近で戦闘体勢に入っていた10人ほどの警備員は怯み、
構えていた銃を発砲する余裕は残されていなかったようだ。
私の乗った専用バイク、インフェルノ・チェイサーは
開発者である私の慣れた操作で器用に10人全員を轢き殺し、
通路へと飛び出した。
その際、警備員1人が握っていたアサルトライフルが
私の手の届く範囲まで飛んできたために、
私は運転しながら咄嗟にそれを掴み取る。
・・・私は左手でバイクを運転しながら、
通路の奥から向かってくる警備員たちを
右手のライフルで次々と撃ち殺す。
その者たちの鮮血がバイクのボディや
私のジャージのような服へと付着していく。
本物の銃を扱う重みは、
私が装着するアーマーを遥かに凌駕していた。
ただならぬ使命感を持ち、
法外な手を平気で用いながら
目の前の敵を始末していく。
以前の自分とやっている行為は変わらないはずであるが、
明確な違いはあった。
・・・目の前の“敵”が”ゴミ”であるという保証はない。
私はゴミとも判別できない者たちを
次々と殺害していく。
無差別な殺人を犯す私は立派な”ゴミ”だった・・・。
以前、ゴミを消す時に得られていたような快感はそこにはない。
もしかすると、以前、園原社長が言っていたように、
この警備員たちも
平和な世界を望んだ人間たちのうちの1人なのかもしれない。
私は何のために人を殺めているのだ?
・・・使命とは一体何だ?
警備員を1人、また1人と撃ち抜く度、
自分の信念が揺らぐのが分かる。
今は頭の整理ができない。
それに、仮に整理が完了して、私がここで立ち止まる事の方が
私にとっては心残りである気がしてならない。
そうなれば、今は何も考えずに突き進むしかない。
私が”ゴミ”である事の証明は後回しでも良い。
・・・私は近いうちにきちんと裁かれる。
先ほどからずっと、そんな予感がしていた。
ならば、私を裁く者よ・・・。
せめて私の使命を全うさせてはくれないか。
私はそれに人生の最後の時間を掛けよう。
―――――その頃、同じくバーバレス基地内では―――――
「・・・何をしているのですか?
伊集院を逃した上に部外者の接近までをも許すとは・・・。」
バーバレス日本支部、地下10階にある
10畳ほどの作戦会議室では
2人の人間が立ったまま話し合いをしている。
「しかし・・・奇妙ですね。
我々が正面ゲートにコマンダーを配備しない訳など有り得ない。」
小柄な可愛らしい容姿をした女性、
バーバレス幹部のアンブレラが顎に手を当てて考える。
今も、部屋の雰囲気にはそぐわない白いワンピースに身を包んでいる。
「現実を見るべきだとは思いますが、
どう考えても正面ゲートの見張り不在はおかしいのですよ・・・。
まるで・・・”存在そのもの”を世界から抹消されたような・・・。」
バーバレス首領、ドラスティックこと
池田 和也は苛立ちを隠さずに、
金属質の壁を拳で叩く。
「なぜ・・・なぜ我々バーバレスがここまで追い詰められる?
私が主だって立てた計画に狂いはありません。
それなのになぜ・・・。」
ドラスティックはうな垂れ、歯ぎしりをした。
「その原因は、私には分かります。」
アンブレラが淡々とした口調で言い放つと、
どうにも違和感を覚えたドラスティックは
顔を上げ、アンブレラを睨み付けた。
「アンブレラさん、それはどういう意味でし」
その瞬間だった。
ドラスティックはアンブレラの異変に気付き、
反応しようと試みたが、コンマ数秒の遅れが命取りとなった。
彼は痛みを我慢して自分の腹部を確認すると、
白い傘の先端のようなものが、自分が着ていた紺色のスーツを突き抜け、
血がドクドクと溢れ出してきていた。
その傘を目で辿ると、アンブレラの右手へと辿り着いた。
「・・・な・・・なぜ・・・?
なぜ私を裏切る・・・アンブレラあああッ!!」
「フフフフ・・・今言ったはずですよ?
あなたの計画が間違っていたからです。」
アンブレラはそう言うと、小柄な女性とは思えない力で
右手の傘を押し付け、ドラスティックを部屋の壁に叩き付けた。
ドラスティックは苦しそうに唸り、咳き込むが、
抵抗する様子はない。
「・・・改木 宏太の名に聞き覚えは?」
アンブレラは怪しげな笑い声を漏らすものの、
表情は真顔と言って良いほど変化が無い。
「・・・ブラッディ・・・オーバーキラーですか?」
「その通り。彼は未来から、この世界の運命を変えるべく
この時代に現れました。」
「なぜそんな事が・・・分かるのでしょうか・・・?」
アンブレラはドラスティックがそう言うと、
持っていた傘をより強く彼の腹部へと押し込んだ。
「ぐあああッ!!」
「私は・・・改木 宏太と同じ瞬間に、
未来からタイムリープしてきた人間ですからね。」
「何!?」
ドラスティックは目を見開き、アンブレラを見るが、
彼女はなぜか目に一粒の涙を浮かべていた。
「現在、ここの地下15階の研究施設で進められているタイムマシン計画は、
いずれ成功します。
しかし、その影響力は組織の人員が把握している以上にとんでもない。」
「・・・まさか、アレが成功するとは・・・」
ドラスティックは驚きの表情を見せる。
どうやら彼の考えとして、
タイムマシン計画というのは無謀な研究であったに違いない。
「私は・・・私はとある組織のスパイです。
でもそんなものはもうどうでも良い!」
彼女が傘を握る右手が震え出す。
「改木のいない世界に用はない!!」
次の瞬間、傘から銃撃音が響いたかと思うと、
ドラスティックの身体が肉片となり、凄まじい量の鮮血と共に弾け飛んだ。
彼のかけていたメガネは血に染まり、
床へと叩き付けられる。
「・・・改木・・・守れなくてごめん、ね・・・。
私には・・・こういう事しかできない。
そして、まだやる事がある。」
アンブレラはそう言って涙を拭くと、
突然顔を上げ、自分たちの首領の肉片を踏み付けながら部屋を出ていった。
―――――その頃―――――
・・・バーバレス日本支部へと着実に接近していた俺たちは、
サーモグラフィーで前方の状況を調査した結果、
既に基地の周辺は防衛が手厚く、
好き勝手に入り込める隙間が無い事が分かった。
そうなると、もう強行突破以外に手は残されていない。
『・・・いよいよです!皆さん!
前方1km以内に10体ほどの熱反応があります。』
「どうせこうなる事は理解してたけどねぇ・・・。」
内垣外先生の声が無線に入り込んだ。
10体、ともなると、
量よりも質を重視した配置にしてきたのかもしれない。
こっからは強敵エリアっぽいな!
戦わずして敵の本拠地に入れるとは思っていない。
それは俺も同意見だった。
でも、ちょっと不思議な事がある。
先にこっちに向かっていたはずの岡本さんは
どこに行ったのかな?
この分厚い警備をたった一人で突破したとは思えないし、
あの人の性格的に逃げたとも思えない。
残念だけど、途中で殺されたと捉えるのが
今のところ最有力なのか・・・?
『皆さん、そこで一度止まり、戦闘に備えてください!』
麗華さんの指示で俺たちは一旦バイクや自動車から降り、
それぞれが変身の準備を開始する。
最初に変身したのは八重樫ちゃんこと、
ブラックマイスター所属のイケメンだ。
彼が紫色の試験管に入った溶液を一気に飲み干すと、
見る見るうちに彼の身体は黒い皮膚に覆われ始め、
上下共に黒いダボダボの服装に身を包んだ、
閉神ターミネイト・ロキが出現した。
顔は頭から長いニット帽のような装甲で覆われており、
感情を含まない口元しか露出していない。
その黒い服には上から散乱するように黄色のラインが刻まれている。
次に変身したのは謎の伊集院陣営の人物、
数宝 日向。
電子辞書の様な変身道具、DEADチェンジャーを
腰に巻いたベルトのバックルにセットすると、
彼が乗ってきたショベルカーのような自動車から
アーマーパーツが次々と飛来し、
身体へと装着されていく。
装着が完了した彼の姿は、まるで紺色の兜を纏う戦国武将、
シュレディンガーニューだ。
背中に接続されたユニットから
5本ほどのロボットアーム武装、
旋填絶機SCリカバラーが伸びていて、
何だか武将好きに怒られそうなデザインになっている。
次は新上 臣道という謎の男が
タブレットを自身のバックルへ装填すると、
彼が乗ってきた黒を基調としたバイクのシート部分から
ゾディアックコンダクターと呼ばれるアルミ缶のふたサイズのユニットが飛び出し、
彼の正面に”しし座”を形作る。
すぐにアーマーパーツが装着されていき、
両肩と胸部に白黒のライオンを備えたしし座の裏中二宮Xレア、
滅裂銃士ディコンポーズ・レオが出現。
続けて、内垣外先生は両肩にガトリング砲を備えた
迷彩柄の戦士、モガナオメガに、
藤原先生は全身が褐色の岩のフォーサー、
グラビティロードへと変身。
それを見た俺はいよいよ伊集院から貰った
電子辞書型の変身機器、中二DEADチェンジャーを取り出し、
画面を開いてコマンドを入力した。
同時に、専用のベルトも巻いておく。
《Hello world!! Excuse me?
Answer、Answer、Answer、Answer・・・》
チェンジャーからガイダンス音が流れ始める。
声紋でユーザー判別が行われる、と聞いた気がする。
「ハイパー・・・レボリューション!!」
《Certified!!》
認証を完了したチェンジャーを
腰に巻いたベルトのバックルへと挿入する。
《Forcible execution!!
Identify your identity!!》
専用バイク、SHFのシートが開き、
内部からゾディアックコンダクターが4枚ほど飛び出して、
俺の正面に”おひつじ座”の形に並ぶ。
すかさず、俺の身体には大量のアーマーが装着され、
6本槍を腰に下げた、ロールしまくった角を2本備えるゴツい羊戦士、
夢幻貴王アリエス・ギャランティアーが出現した。
「行くぞ!」
俺は再びバイクへと乗り込み、
雰囲気で先陣をきって進む。
チラッと後ろを見ると、
さすがにこの展開で躊躇うメンバーはいなかったらしく、
素直に俺の後をつけてきている。
グラビティロードなど、車に乗れなくなった人は
自分の車を押しながら付いてきている。
・・・1分ほどで森の木々に囲まれた広いスペースがある場所に辿り着くと、
とっくに俺らの接近に気付いてた様子で
前方から10人ちょいの人影が一列に広がって近付いてきた。
俺たち6人は一斉にビークルから降りて、
同じように一列に並んだ。
・・・最終決戦らしくてクソカッコ良いな!オイ!
「ここまで来たからには、
死ぬ覚悟ができているのだなァ!!」
合計で12人いる敵のうち、
1人が怒声のような声を張り上げる。
「それは違うな。
俺たちは・・・絶対にお前らバーバレスを倒す!!」
・・・決まった。
完全にオイシイ台詞は貰ったぜ!!
「フッ・・・ならば後悔しながら、死ねエエエエ!!」
うるさい男の叫びに合わせ、
他のメンバーも含めて12人の男たちが一斉に怪人へと変身した。
彼らの体色は黒と水色という決まった配色だけど、
身体のサイズや輪郭の形はそれぞれ異なる。
象やワニを模したような怪人もいるし、
カマキリやクワガタムシなどの虫をモチーフとしているヤツもいる。
「・・・基、ここは俺たち5人に任せて
先にある基地の入り口を目指せ。
早く行かないと先に行った岡本が危ない。」
隣にいたグラビティロードが小声で囁いた。
・・・岡本さんは生存が微妙だけど、
確かに、可能性を考えれば最善を尽くした方が良さそうだ。
「数的には結構こっちが不利ですが、大丈夫ですか??」
俺は自動で操れる槍を6本持っているため、
最高では一度に7人の敵を相手する事もできる。
むしろ、俺が先に行けば他のメンバーがヤバい気がするけど・・・。
「私たちを信じろ!
必ず、お前に追い付く!」
ロードは敵にも聞こえるぐらいの大声を張り上げて
決め台詞を残した。
・・・さすがは藤原クオリティ。
「フザけるな!!ここをただで抜けられると思うな!!」
案の定、敵の怪人がキレて、
俺の方に走り寄ってきた。
「基!!行け!!」
いや、ここはアンタが俺を庇って行かせるべきだろ!
なんでセルフサービスなんだよ・・・?
「あぁ・・・もう分かりましたよ!」
俺は腰から2本のメカ・オヒツジ・ザ・ランスを抜き取り、
迫りくる4人の怪人を迎え撃つ。
それと同時に他の怪人達も一斉に接近を始め、
戦いの幕は一瞬のうちに降りたのだった。
「ルシャトリエの平衡法則ゥゥゥゥ!!」
「ぐッ!?」
俺は1人で4人の怪人を次々と弾き飛ばし、
ほんの数秒で戦線を抜け、
背中のジェットパックを起動し、飛行しながら森の奥へと進んでいった。
・・・このアーマーのパワーが強すぎるんだろうけど、
さすがに物足りない感はある。
メチャクチャ後ろを振り向きたいけど、
敵が来てても嫌だし、
仮に作戦メンバーがやられるのを見るのも気が引ける・・・。
俺はそのまままっすぐに前を向き、
単独でバーバレス基地の入り口を目指す事にした。
たぶん、超オイシイところは
俺のものになるという予感が俺の脳裏をよぎっていた。
―――――その頃、バーバレス基地内の地下7階では―――――
「ぐはッッ!!」
ノウベタザンの素早い槍の連撃の前に、
謎のフォーサー、”コワレタセカイ”は敗北し、
壁に背中を叩き付けた状態から
人間態に戻って床へと崩れ落ちた。
「世界を・・・世界を・・・倒すとは・・・。」
黄色の袴を着てうつ伏せになった人間は
意味の分からない言葉を吐き出し続ける。
「フンッ、俺様は世界にとっても規格外の存在であったようだな。
まぁ、お前のその”運の良さ”だけは認めてやる。
この占い野郎。」
ノウベタザンの加速は、一般人では目に捉えられないほどのスピードであるが、
あろう事かコワレタセカイはそれを何度も避け続けた。
しかし、その回避性能は100%ではなく、
累積したダメージによって彼は敗れてしまったのだ。
「・・・まだだァ・・・我はまだ終わらない・・・。」
やおら袴を着た青年は立ち上がり、
着ていた着物を破り、上半身を露出させる。
すると、さすがのノウベタザンでも
そこに広がる光景には目を見張った。
「お前・・・何をした?」
その男の身体には数え切れないほど
斑点のようなアザが刻み込まれており、
その数は軽く50、60を越えている。
「HR細胞を取り込んだまでだ。
ただ、一般人が想像を絶する数ではあるだろうが?」
まさかアザの数だけHR細胞を取り込んだとは想像もできないだろうが、
目の前の事実を受け入れるしかなかった。
「お前、本当に何がしたいのか分からないヤツだな?」
「我の目的は・・・我の目的を果たす事、それのみ。」
アザだらけの青年がそう言いながら不気味な笑みを浮かべたその時だった。
突然、基地全体が振動を始めたのだった。
明らかに地震ではない、
何者かによって引き起こされた揺れ。
と、次の瞬間、
地下7階の床が張り裂け、
下から突き上げてきた巨大な物体の上部に偶然にも乗っかったノウベタザンは、
天井を何枚も突き破って地上へ向けて昇っていく。
その謎の物体が移動するスピードは思ったよりも速く、
ノウベタザンは対抗しようにも身動きが取れない。
基地を破壊しながら10秒ほどで地上へと辿り着いた機械は
そのままノウベタザンを振り払い、
機械音とも呼べる凄まじい咆哮を上げた。
あまりの音量に、ノウベタザンは瞬時に
地上を走り去り、謎の機械との距離を取る。
「チッ・・・あんな戦闘マシーン、見た事がないぞ?」
500mほどの距離を取ったノウベタザンは
その10mにまで達するモンスターのような機械を見据えるが、
状況が掴めない。
・・・バーバレスの人員が侵入者の排除のために起動させた
秘密兵器であるのか。
・・・はたまた、コワレタセカイのような裏切り者が
勝手に起動させたものなのか・・・。
彼が迷っているうちに、
その巨大モンスターはノウベタザンが避難した方向とは
逆の方向へと進行を開始した。
6本脚を器用に扱い、森の中を進んでいく。
「面倒な事になった・・・。」
ノウベタザンは周囲を見渡し、
状況を察しようと試みるが、そこで奇妙な事に気が付く。
「・・・アレは?」
ふと、森の木々の間を見ると、
見覚えのある人物がバイクに乗って遠ざかっていくのが目に入った。
・・・その人物を逃しては
自分の存在意義を果たせないほどの人物。
自分に組み込まれた電気信号のソースとなった人物。
ノウベタザンは加速し、
瞬時にその人物が乗ったバイクを蹴り飛ばす。
と、バイクは激しくスピンしながら木々に激突し、
停止した。
バイクのライダーは急いでヘルメットを外し、
バイクから飛び降りる。
「伊集院・・・雷人!!」
その名を呼ばれると、伊集院は鋭い目付きで
目の前の筋肉怪人を睨み付けた。
「時柳宋・・・衛久守か。
まさかもう追い付かれるとは思わなかったが。」
いつも余裕の構えを見える伊集院は、
今は一切の笑みを見せない。
ツヴァイブレインを形作っていたHR細胞が破壊され、
挙げ句に変身道具は行方不明。
そして、運悪く最強の怪物に見つかってしまったのだ。
無理もないだろう。
「諦めろ・・・伊集院 雷人。
ここから逃げるのは不可能だ。」
「フッ・・・そうだろうな。
私を裁くのは貴様でも構わない。
だが、せめてバーバレス滅亡まで待ってはくれぬか?」
「フザけるな!!
バーバレスは平和な世界を創るための組織。
我々は世界が求めた理想郷を創造するのだ。
そのために、俺様は全力を尽くす。
この命ですら預ける。
俺様は、適当に殺人を繰り返してきたお前とは違う!!」
ノウベタザンは2本の槍を同時に伊集院へと向け、
威嚇する。
「言い残す事は他にあるか?
5分程度ならば、猶予をやろう。」
ノウベタザンがそう言うと、伊集院は静かに目を閉じ、
ノウベタザンにすら聞こえない声で何かを呟いた。
「何かのお祈りか?
まぁ、好き勝手にしろ。」
ノウベタザンのくぐもった声には耳も貸さず、
伊集院は安らかそうな顔で言葉を続ける。
そのまま彼は2分ほど何かを喋り続け、
静かに目を開けると、まっすぐにノウベタザンを見据えた。
「・・・良いだろう、殺せ。」
伊集院はそう言い終わると同時に、
背後から人が接近してくる気配を感じた。
それは、ノウベタザンも同じく、
黙って出方を窺っているようだ。
・・・木々の間から突如現れた青色のバイクには、
1人のライダーが乗っていた。
バイクは伊集院のすぐ背後で停止し、
ライダーは降りて彼へと接近する。
「お前が・・・時柳宋 衛久守、
ノウベタザンか。」
黒いスラックスに黒いジャケットを羽織った若き研究室長、
岡本 龍星である。
「なぜこんなところにお前がいる?」
伊集院が真顔で問う。
「偶然、と言っておこう。
それに、俺はアンタが黙って死ぬ事は
なぜかは分からないが、気に食わないんだ。」
そう言い、岡本は伊集院にとあるアイテムを差し出した。
「私のDEADチェンジャー・・・?」
「森の中に落ちていた。
・・・共に時柳宋 衛久守を倒すぞ。」
岡本の声が聞こえたのか、ノウベタザンは笑い声を上げた。
「ハッハッハッ!!お前らが俺様を倒すだと?
笑わせるな!!」
ノウベタザンは完全に余裕を見せる。
「伊集院、俺は10年前、
特殊能力を持つアンタを倒したんだ。
あのノウベタザンがアンタの”焼き増し”程度なら、
十分に勝機はある。」
・・・伊集院にとって
10年前の成果がゲーム中の出来事である事や、
ノウベタザンの圧倒的な強さなどはもう眼中になかった。
人間は、真の絶望の中で、
僅かに光る希望を掴まない訳がない。
「・・・岡本 龍星よ。
今だけで良い。手を貸してくれ。
あの化け物を・・・共に倒すぞ!!」
伊集院は岡本の手からDEADチェンジャーを受け取り、
バイク中からベルトを取り出し、腰に巻いた。
『シング・アゲイン!!』
2人の変身コールが同時に発され、
朝の森中に響き渡る。
・・・10年前の最強の敵は、
今は互いにたくましき味方となり、
目の前の新たな敵を倒すために動き出したのだった。
@第33話 「昨日の敵は今日の友!!」 完結




