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ブレイキング・ローズ  作者: まるマル太
第5章 何が正しくて、何が間違いなのか
37/42

@第32話 裏切りのコワレタセカイ

@第32話 「裏切りのコワレタセカイ」






・・・あれからほぼ丸1日が経過し、今は18時。




今日は日曜日だった事もあり、

自宅のベッドで横になりながら

色々と考え事をしていたら、

例の上戸鎖かみとくさりという男から電話が掛かってきた。


要約すると、偵察に行った伊集院いじゅういんと連絡が付かない、

ついでに岡本おかもとさんとも連絡が途絶えた。

とりあえず一度集まって会合を開く、

との事。


・・・なんかヤバい事になってる予感はするけど、

バーバレスを倒せないと決まった訳じゃないから、

ここで逃げる気はない。

むしろ、ここからが楽しそうだ。


と、いう訳で俺は今、

都内のとあるミーティングルームを訪れている。


今日ここに集まったメンバーは、

上戸鎖かみとくさり 祐樹ゆうき

中仙道なかせんどう 武雅むが

そして俺のみだ。

他のみんなは忙しいらしい・・・。




「おそらく、伊集院いじゅういん 雷人らいと

 バーバレス基地周辺でヤツらに殺害、

 もしくは拘束され、

 岡本おかもと 龍星りゅうせいは一足先に本拠地へと急いだ。

 この推測に問題はないでしょう。」

上戸鎖かみとくさりはホワイトボードの前に立ち、

伊集院と岡本さんに見立てた丸い磁石を図面で動かし、説明する。


「しかし、あの人でも倒されてしまうなんて、

 正直、俺は信じられないが。」

中仙道なかせんどうは何かを考えるような様子でため息をついた。


「敵は正体不明のテロ組織、仕方がないでしょう。

 しかし、手掛かりがゼロという訳ではありません。」

そう言うと、上戸鎖かみとくさり

机の上のノートPCを持ち上げ、俺らに見えるように

ディスプレイ側をこちらに向けた。


伊集院いじゅういん 雷人らいとのアーマーで

 録画していた映像が送られてきていました。

 彼はおそらく、こうなる事を多少予想していたのでしょう。

 10分ちょっとの映像でしたが、基地の場所、

 それに敵の情報などは少なからず手に入りました。」

上戸鎖かみとくさりは何かを喋ってるけど、

俺と中仙道なかせんどうはPC画面の映像に集中してしまい、

ほとんどどうでも良くなってる。


ビデオは最後の数分が映し出され、

最後には、謎の怪人2名に囲まれた伊集院が

まるで殺されたように激しいノイズが走った。




「蝶のような姿をしたものは、映像内の会話によると

 バーバレス首領のフェロシャス・リゾルバーという怪人です。

 そして、最後に僅かに映り込んだ筋肉質の怪人は

 伊集院が言っていた時柳宋じりゅうそう 衛久守えくす

 ノウベタザンでしょう。」

上戸鎖かみとくさり、お前の力でヤツらの能力などを

 分析できないか?」

中仙道なかせんどうが問うが、

すぐに上戸鎖は首を横に振る。


「やはり、映像越しにでは得られる情報が限られます。

 あなた方と何ら変わりありませんよ。」

上戸鎖かみとくさり

特有のフォーサーの力で分析力に長けているらしいけど、

ビデオだけだとさすがに無謀らしい。


「・・・さて、どうするか。」

中仙道なかせんどうは両手を重ねて

その上に額を乗せる。


今回のミッションが

自分から死にに行くような行為である事は

ここにいる全員が承知していたはずだけど、

いざ作戦が進行すると現実味を帯びてちょっと冷静になる。




「私としては、

 至急、バーバレス日本支部へと向かった岡本おかもと 龍星りゅうせいに合流し、

 共にバーバレスを始末するのが、

 最も成功率の高い作戦だと思いますが・・・。」

「ならば・・・明日か?」

中仙道は気怠そうな様子で頭を上げたように見えたが、

すぐに口元を歪め、笑い声を漏らした。


・・・やっぱり犯罪組織のリーダーともなれば、

キチガイだらけって事だなぁ・・・。

たぶん、ヤツらの基地に行けるのが嬉しいんだろう。




その時、部屋のドアが静かに開き、

高身長の短髪男が入ってきた。

・・・俺の高校の内垣外うちがいと先生だ。


「・・・未だに伊集院いじゅういん 雷人らいととの連絡は?」

上戸鎖が容赦なく問う。


「はぁ、この顔で気付けよ。

 足りないねぇ・・・。」

確かに、内垣外うちがいと先生は今にも死にそうな顔で

俺らを見回している。


「協力希望者を連れてきたんだが、

 今、ちょっと良いか?」

「えぇ。」

内垣外うちがいとは顎で部屋の外へと合図すると、

見知らぬ男性が1人入ってきた。


何だか、猫背な上に

顔がほとんど長い前髪で隠れていて、

いかにもって感じの不審者だ・・・。

姿勢のせいで凄い小さく見えるけど、

雰囲気はおっさんだ。




「どうも、僕の名は

 数宝すほう 日向ひゅうがという。」

猫背の男性は見た目通り、

ねっとりとした口調で自己紹介を始めた。


「僕は内垣外うちがいとと同じDEADデッド使用者。

 これまでも福島を中心にフォーサーやアトラクターを

 それなりに駆除してきた。」

なるほど。

そうなると、伊集院いじゅういん陣営の人物か。




・・・数宝すほうと名乗った猫背が

入ってきたドアを閉めようとしたところ、

そのドアから更に2人ほど人物が通り抜けてきた。

片方は女性、もう片方は男性。

パッと見、どっちも同じくらいの歳に見える。


「あぁ、到着しましたか。」

「え?藤原ふじわら先生じゃん?」

男性の方は、なんと

俺らのクラスの担任だった。


「聞いていたが、はじめもここにいたか。」

先生がここに来たって事は

先生も何らかの戦う手段を持っていたって事か?


「紹介しましょう。

 私の指揮下のフォーサー、藤原ふじわら 玲二れいじです。」

上戸鎖かみとくさりはそう先生を紹介した。

・・・って事は、先生は上戸鎖かみとくさり陣営だったのか!?


「ちょ先生!!どういう事だよ!」

「・・・はじめ、詳しい事は後から話す。」

まぁ、ここで俺たちの話題で持ちきりにするのも悪いか。


藤原ふじわら、そこの女性はどなたでしょうか?」

「・・・どうしても協力したいという事で、

 ここに連れてきた。」

そう言い、先生はその女性を見やると、

緊張している様子でその女性は一度視線を床に落とした。

でも、すぐに視線を上げ、自己紹介に入る。


「・・・岡本おかもと 龍星りゅうせいの妻の

 麗華れいかと申します。」

岡本さんって結婚してたのか・・・。

確かに岡本さんは見た目的にモテそうだけど、

なんかこの麗華れいかっていう人は微妙な気がする。

微妙っていうのはパッとしないって感じかな。

服装も上下黒のメンズファッションだし、

顔もなんか普通の女性。

ブスじゃないけど、絶対美人じゃない。

あとスタイルもデブとかじゃないけど良くもない。

本当に平均的な感じ。




「・・・私はフォーサーでも、アトラクターでもないんですけど、

 皆さんのお手伝いができればって思い・・・。」

あ、性格は良さそうだね。


「・・・何か、と言われても、

 戦えない者は今回の作戦での活躍の場はなさそうに思えますが?」

「私に考えがあります。」

そう言い、麗華れいかさんは

持ってきたバッグから余るくらいの大量のレジュメを取り出し、

部屋の人たちに渡し始めた。


「ほう・・・サーモグラフィーを利用した

 現場の把握方法ですか。」

皆よりも一足早く読み終えた上戸鎖が呟いた。


「はい。昔、龍星りゅうせいたちとの作戦に使った方法です。

 これで周囲の敵を漏らす事無く感知する事ができ、

 遠隔でナビゲートする事ができます。」

「私は周囲の状況の把握能力が高いので不要ですが、

 他の皆さんには大いに有効でしょうね。

 しかし・・・この無線機能が付いた特殊ゴーグルを

 明日までに人数分準備する事は可能ですか?」

上戸鎖の鋭い切り返しに、

麗華れいかさんは黙りこくってしまった。


「そ、それは僕たちで何とかします!!」

突然、部屋のドアが開け放たれ、

見覚えのある人物が勢いよく踏み出してきた。


「中田さん!?」

オドオドノッポの中田なかた あらたさんだ。

そして、彼の背後にはもう一人の見覚えのある人物が。


「・・・アブソリュート・アーツ社の技術力を使えば、

 そんなものは数時間で完成する。」

天然パーマの毒舌男、蔭山かげやまさんだ。


「フッ、盗聴とはこざかしいですね。

 この場所は岡本おかもと 龍星りゅうせいからの情報提供ですか?」

「は、はい。

 岡本さんによれば、彼自身はあまりこの作戦には興味がないらしく、

 僕たちが協力するように、との事でした。」

岡本さんマジかよ!

確かに、先週に何回か開かれた会議にも全然来なかったしな・・・。


「ぼ、僕は・・・岡本さんを

 アブソリュート・アーツ社に連れ戻したいんです!

 このままだとあの人は・・・。」

「私はもうあの男には興味がないがな。

 しかし、次に出会う適切な指導者を・・・私は止めてみせる。」

俺には何の事かさっぱり分からないけど、

2人には何かしら大変な事があったんだろう。


すると、蔭山かげやまさんの後ろから

ガッシリとした体格の見た事ない男がキョロキョロしながら入ってきた。


「あぁ、こっちは新上あらがみ 臣道しんどうだ。

 裏中二宮Xレアの使用者として会社に協力している。」

蔭山かげやまさんの紹介に、

新上あらがみと呼ばれた男は静かに一礼した。

・・・なんか無口っぽくて怖いけど、

体格的には明らかに強そうな気がする。




一段落ついたのを見越して、

上戸鎖は席から立ち上がった。


「・・・それでは、メンバーも増えてきたようなので、

 ここら辺で詳細な計画を練りましょう。

 この作戦の名前は、オペレーション”ブレイキング・ローズ”です。」































―――――それから数時間後―――――




時刻は午前5時過ぎ。

この俺、岡本おかもと 龍星りゅうせい

バーバレス基地周辺まで迫っていた。


未来から来た改木かいき 宏太こうたこと

ブラッディ・オーバーキラーから託された作戦、

オペレーション”ブレイキング・ローズ”を

他の仲間たちと共に実行に移すのは、正直、気が引けた。


・・・俺はおそらく、もう他人を信用できない。

信用できるのは、完全なる”思想”のみ。


そこまで退化してしまった自分に対して、

虚しさや罪悪感を覚える事はなかった。

・・・むしろ、俺は自身の進化とも解釈できる。




俺は薄暗い森の中を

専用バイクPPSパーマネント・ピスケス・スラッシャーで進行しているが、

不意に進行方向に人影を捉え、ブレーキをかけた。

その人間もこちらには気付いているようで、

俺を凝視しているのが分かる。


そのままフルフェイスヘルメットを外し、

謎の人影へと近付くと、

その人物もこちらに向かって歩み始めた。


・・・そして30mほどの間を開けて互いが立ち止まると、

俺はその人物に見覚えがある事に気が付いた。




「お久しぶりです。岡本さん?」

その声は10年前から変わっていない。

そして、特徴的なメガネをいじる動作も含め。


「・・・池田いけだ 和也かずやか。」

彼は高校卒業直前、両親を殺したとして裁かれた。

しかし、それから社会的に行方不明となり、

同級生の中でもその話題は禁句となっていた。


・・・忘れ去られたはずの同級生が

こうして目の前に出てきたという事は

何らかの形でバーバレスに関与しているという事だろう。

しかし、そういった予想外の事態に

慣れてしまうくらいには

既に精神を摩耗していた。




「こうして会うのは約10年ぶりでしょうか。

 当時はお世話になりました。」

「・・・細かい事情を聞くつもりはないが、

 お前とここで会った事実から多少は察しておこう。」

そう言うと、池田は身体の角度を90度変え、

“どうぞ”といった様子で平手で誘導する。


「いくら私でも、直接旧友を殺すのには抵抗があります。

 この先に進めば我々の”地下基地”に続く入り口に見張りがいます。

 その見張りを倒せば、基地の中に入り込めますよ。」

あぁ、分かった。と言わんばかりに手を軽く挙げ、

俺は自分のバイクへと戻った。


「・・・さようなら、岡本さん。」

池田が何かを呟いたのは分かったが、

耳を傾ける必要はないと判断し、

俺はそのまま彼の横を走り去った。




・・・それから5分ほど木々の間を走行すると、

池田の言っていた通り、数名の怪しげな人影が目に入った。

バイクの音で皆気付き、俺の方を向いている。


急いでバイクから降りると、

ポケットからDEADチェンジャーを取り出し、

コマンドを入力し、構えた。


・・・そう、俺は勝たなくてはならない。

"世界の平和"のために。




「シング・アゲイン!!」




























―――――その頃―――――




・・・ここは、天国か?

・・・それとも、地獄か?


いや、どちらでもないようだ。




・・・私はうっすらと目を開けると、

無機質な金属の天井が映り込んだ。

一瞬、自分の研究室かと錯覚するが、

すぐに異変には気付いた。


5畳ほどの狭いスペースには

今寝ているベッドや洗面台、便器などが置かれ、

入り口は鉄格子付きの分厚そうな扉に閉ざされている。


「まだ楽には、なれなかったという事か・・・。」

私は上半身を起こすと、

すぐに激しい頭痛に襲われ、思わず両手で頭部を押さえる。


・・・伊集院いじゅういん 雷人らいとはバーバレスに囚われた。

その事実認識が正しいであろう。


着ていたはずのジャケット、スラックスは剥がれ、

Tシャツにジャージのようなものを着せられている。

おそらく、私が隠し持っていた装備は全て

没収されてしまったのだろう。


・・・ひとまず、ここからの脱出を図るか。




私が部屋の中を見回し、

作戦を思案し始めたその時、

入り口からカチャカチャという奇妙な音が聞こえてきた。


次の瞬間、重そうな扉が開くと同時に、

謎の人影が牢の内部へと入ってきたのだった。

・・・それは薄暗い室内で、顔の一つ目を赤く光らせる、

機械染みた身体を持つ謎の怪人だった。

紫色のローブに身体を包んでおり、

怪しげな雰囲気を漂わせている。


「・・・貴様は誰だ?」

「”おれ”の名前は・・・コンセキュエント・デステニだ。

 お前はここから出たいのだろう?」

・・・その名前に聞き覚えがある。

確か、ブラックマイスターに協力していたフォーサーであったはずだが。


「貴様はブラックマイスターに加担していたと聞いたが、

 なぜこのバーバレス基地内にいるのだ?」

「フフフフ・・・そんな簡単な問いの答えが分からないか。

 “おれ”はバーバレスへの協力者だぞ。」

なるほど。

何らかの目的があってブラックマイスターに協力していた訳か。


「・・・私をここから出して貴様に何の得がある?

 れっきとした組織への裏切り行為だが。」

「裏切り・・・!!」

私は目の前のデステニと名乗るフォーサーが

必死に笑いを堪えているのが分かった。

・・・どうやら、奇妙なヤツに違いないようだ。


「・・・失礼した。

 おれにも何らかの得がある、とだけ言っておこう。」

「ほう、ならば、手伝え。

 私は死ぬ前にすべき事がある。」

「了解した。

 お前の変身道具とバイクはここに置かれている。」

そう言いながら、デステニはローブで隠れた懐から

基地内の地図と思われる画面が映し出されたタブレットを取り出し、

こちらに手渡してきた。

予想を遥か上回る広大な基地内のマップに驚いてしまった。

ここはどうやら地下の7階にあたるらしい。


「そのタブレットはお前にやる。

 ここから出て、右に曲がったところにあるエレベーターで地上まで上がり、

 そこから左へ600mほど行ったところにある倉庫内に保管してある。」

「それが真実だという保証は?」

「保証はない。」

ハッキリ言い切るデステニを信用すべきなのかどうか迷ったが、

選択肢が絞られた以上、この怪人に騙されて殺害されるのも

運命でしかない。

そう捉える事にした。




私はベッドから立ち上がると、

デステニと共に、ゆっくりと出入り口のドアへと近付いた。

・・・外から人間の気配は感じられない。

思い切って、私は部屋から一歩歩み出し、

すぐに左右を見回すが、やはり見張りはいなかった。

・・・いや、もしや見張りは

この背後にいるデステニというフォーサーだったのか?


蛍光灯で明るく照らされた幅5mほどの廊下は

何事もない普通の廊下である。

見慣れない設備などは見当たらないが、

あげるとすれば左右に連なる牢獄、だろうか?


・・・言われた通りに右側に進むと、

ヤツの言った通り、50mほど前方にエレベーターが見えてきた。




「・・・逆だ。」

「何?」

私の背後に続くデステニが独り言のように呟いたが、

何の意味を持つのか私には理解できない。


「この廊下を逆に行ったところに、実験施設に繋がる別のエレベーターがある。

 渡したタブレットで確認しろ。

 遠回りにはなるが、それを利用するのが良い。」

デステニはそう言い、真正面のエレベーターを見据える。

と、同時に、その扉が開き、内部から見覚えのある人物が出てきた。


「・・・時柳宋じりゅうそう 衛久守えくす!?」

黒い高級そうなジャケットを羽織り、

ジーンズを履いた衛久守えくすが一切の笑みを浮かべずに歩み出てくる。


「フッ、だいたい状況は分かった。

 確か、コンセキュエント・デステニと言ったな?

 お前の目的は何だ?」

伊集院いじゅういん 雷人らいとの脱出を図る事、だな。」

「違う!バーバレスへと協力している理由だ!」

衛久守えくすの語気が強くなる。


「おい、伊集院いじゅういん、ここは任されてやる。

 お前は早く行け。」

デステニはそう言うと、

私の横を通り過ぎ、衛久守えくすと対峙する。


それを確認した私は無言で通路を対局側へと走り出した。




――――――――――――――――――――――――――――――




「前々から怪しいヤツだとは思っていたが、

 こうも大胆な行動に出るとは、

 さすがの俺様でも驚きだぞ。」

衛久守えくすは腕組みをしながら

睨み付け、威嚇する。


「おれの行動を予測する事など、不可能だからな。」

「そんな奇妙なヤツは・・・ここで潰してやる。

 ローズ・ブレイク!!」

衛久守えくすは拳を固く握り、

自身の正面で両腕を交差させた。


すると、すぐさま全身が漆黒の筋肉怪人が出現し、

その身体には血管の如く水色のラインが張り巡らされた。

戦闘に特化したフォルムを持つノウベタザンの両腕に

それぞれ漆黒の槍が握られる。




「さすがはバーバレスの中でも

 最強を誇ると言っても過言ではないローズ・ブレイカー。

こうして対峙する時の気迫が違うな。」

「無駄なお喋りは・・・不要だああッ!」

ノウベタザンは瞬時にデステニの目の前へと移動すると、

右腕に握ったランスを敵の顔面目掛け、突き出した。


・・・しかし、その瞬間、信じられない事に

デステニの身体は不自然に右へと揺れ動き、

その突きを避けたのだった。


あまりの衝撃に、ノウベタザンは立ち止まり、

デステニをまっすぐに見据える。




「お前・・・俺様の動きが見えるのか?」

「いや、正確には見えていない。

 だが、見えていると言っても嘘ではない。」

デステニの冷静な返しに苛立ちを覚えたノウベタザンは

2本の槍でデステニの腹部を狙うが、

デステニは後方へとステップを切り、擦れ擦れでそれを交わした。


「・・・何者だ?お前は?」

デステニの動きは一般のローズ・ブレイカーと何ら変わりない。

それをノウベタザンは見抜いていたが、

通常のローズ・ブレイカーに彼の攻撃を避けられる事は

まず有り得ない。

それ故、違和感を覚えずにはいられない。


「おれは・・・いや、我は、特殊能力”ワールド”所持者であり、

 この世界と直結している。」

デステニは突如、狂言師のような口調に変貌し、

顔の一つ目を不気味に光らせて話すが、

ノウベタザンには何の事であるか理解不能であった。


「どういう事だ?世界と直結だと?」

「まぁ、それは我が考案した能力であるが、

 事実と矛盾する点はないのだ。」

そう言うと、デステニは

身体を覆っていたローブを自ら引きちぎり、

その紫色の機械質な全身を露出させる。


「世界は我を求め・・・我は理想の世界を求める!!

 これぞ、何者も寄せ付けぬ最大効率の事象おおおおおお!!」

狂ったような声の調子で

狂ったような事を叫び出したデステニに向け、

ノウベタザンは槍を突き出すが、やはりステップで避けられた。


デステニの身体はあちこちから紫色のトゲが生え、

左右非対称なボディへと変化していく。

それに加え、頭部から飛び出した無数のチューブが背中や肩へと接続され、

調整中の機械のような容姿を持つ怪人が完成した。


「我はフォーサー、”コワレタセカイ”・・・

 過剰かじょうディスガイズ態・・・。」

コワレタセカイ・過剰かじょうディスガイズ態は名乗るなり

頭から生える無数のチューブを自在に空中で操り、

ノウベタザンを捕えようと動き出した。


ノウベタザンは目にも止まらないスピードで

伸びてきたチューブを切り裂き、壁を伝い、

コワレタセカイを槍で突き刺そうと迫る。

先ほど、難なく避けていたはずのその攻撃を、

コワレタセカイは真正面で受け止めた。


「ぐうっ!?」

コワレタセカイはチューブを荒ぶらせ、後退する。

しかし、その隙をノウベタザンに連続で何度も突かれ、

最後には彼の発達した筋力による拳で顔面を殴られ、

廊下の壁へと激突した。


「フンッ、思ったよりも大した事ないようだな。

 まぁ、言うなれば

 “自分に有利なように勝手に体が動く事もある”、といった感じか?

 大袈裟なんだよ。世界がどうのこうのってな。」

「くっ・・・やはり相手が悪過ぎたか・・・」

コワレタセカイは体勢を立て直し、

両腕に装備されていた扇子の様な半円カッターを握った。


「俺様に喧嘩を売ったって事はどういう事なのか、

 ちゃんと理解できてるよな?」

ノウベタザンは両腕の槍を物凄いスピードで振り回し、

目の前の機械怪人を威嚇する。


「・・・”世界”と同化した我の力、

 存分に見せ付けてやるぞ。」

コワレタセカイの顔面の赤い点が激しく輝き、

再びチューブを高速で伸ばす。



























―――――約40分後、はじめたちは―――――




左手の腕時計を確認すると、

もうすぐで午前6時。


俺たち、オペレーション

“ブレイキング・ローズ”の参加者は

まだ暗い長野県の森林地帯に来ている。


皆、それぞれの専用ビークルへと乗り込み、

ビークルを持たないフォーサーなどは

藤原先生の8人乗りジープに乗り込んでいる。


・・・ちなみに、俺は前に使っていたアリエス専用バイク、

SHFシープ・ホーン・フィース伊集院いじゅういんに改造してもらい、

例の新型アーマーを収納したものに乗っている。

さすがに舗装された道路とかじゃないから乗り心地は最低レベルだけど、

結構幅が広い車でも通れるくらいには道ができている。

・・・たぶん、バーバレス団員が通路に利用しているのか?




『皆さん、聞こえますか?』

俺たちが掛けている暗視ゴーグルの

右の耳部分に取り付けた無線機に、

岡本さんの奥さん、麗華れいかさんの声が入ってくる。

彼女と、オドオドノッポの中田なかたさん、

蔭山かげやまさんはアブソリュート・アーツ社内から

無線でサポートしてくれる事になっている。


「こちらはじめ、聞こえてまーす!」

『バーバレス日本支部、予測区域に入りました。

 情報では周囲7km以内に、ヤツらの基地があると思われます。』

一緒に移動している他の人の無線が入り混じって

キレイに聞こえなかったけど、だいたいは聞き取れた。


『・・・皆さん、前方に熱反応です!』

サーモグラフィーを搭載したゴーグルのお陰で、

俺たちが目で直接見えない対象でも、

その存在を確認できるようになっている。

また、同時に俺たちのゴーグルが映した光景は

アブソリュート・アーツ社へと同時中継され、

的確なサポートをしてもらえるとの事。




一番先頭を走っていた

内垣外うちがいと先生のゴツい装甲車が停車すると、

その後ろの俺たちも止まり出す。


俺はバイクから降りると、

フルフェイスのヘルメットを取り、収納スペースへと突っ込んだ。


・・・朝早い森の中は僅かに鳥の声が聞こえるのみで、

俺たちの足音以外の雑音は聞こえない。

旅行とかでこういう緑が溢れる森に

ハイキングにでも来たなら楽しいだろうけど、

今の俺たちには間違いなくそんな余裕はない。




はじめ、いよいよ始まるな!」

そう言いながら俺の肩に軽く手を乗せたのは

藤原先生だった。

見ると、その顔はたぶん緊張のせいで引きつっている。


「・・・俺をこんな目に遭わせたのは、

 振り返ってみれば先生でしたよね?」


約1ヵ月前のあの日、

俺は藤原先生と一緒に東京のアブソリュート・アーツ社に行き、

中二宮Xレア、フィースネス・アリエスを託された。


・・・思い返せば、異常なほど中身の濃い1ヵ月だったように思える。




「そう言われれば、間違ってはいないな。

 ・・・後悔しているか?はじめは。」


・・・その問いに、俺は即答できなかった。


あの時、俺がヤバいほど拒絶していれば、

俺は今頃普通の高校生として平凡な日々を送っていたはずだ。

いや、ロイヤル・ハイパワード・チューニクスとして、か。


でも・・・何て言うんだろう?

それが幸せだったとも思えるし、

違うとも思える。


中二病患者でしかなかったはずの俺は、

今となっては世界のシステムを変えられるほどの力を得て、

邪魔な敵を倒そうとしている。


それが良かったのか悪かったのか、

また、社会的に良い事なのか、悪い事なのか、

そして、自分が”正義”なのか”悪”なのか、

・・・まったく分からない。

だから俺の答えはこうだ。




「・・・もうちょっと度を超えてから考えようと

 思ってたんですよね。

 後悔とかは、今の時点だと何とも言えない。」

「そうか・・・。」

藤原先生はそう言い、周囲を見回す。

先生としてはどうしても知りたかったのかな?


「ちなみに・・・先生はフォーサーになった事、

 後悔していないんですか?」

沈黙が何となく気まずくて、俺は質問で返した。


「あれ?てか先生は何でフォーサーになったんですか?」

先生がフォーサーである事は

あの上戸鎖かみとくさりっていう男から聞いた。

でも、その経緯に関して俺は何も知らない。


「・・・それは・・・」

「おい、長居は危険だ。早く周囲の操作に回れ。」

俺らの話に割り込んできたのは、

例の凶暴な怖い顔が特徴的な中仙道なかせんどう 武雅むがだった。


「あ、ごめんなさーい!」

なんかガチな話になってきたところだったから

丁度良いと思い、

俺は元気に返事をして歩き出した。

・・・藤原先生は、俺とは逆の方向へと向かっていった。
























―――――同時刻、はじめたちと共に到着した上戸鎖かみとくさりは―――――




私はメンバーと共に目標地点に到着するなり、

すぐにトランセンデンタル・オーガナイザーへと変身し、

周囲の探索に入っていた。


・・・このフォーサーへと変身すると、

五感が異常なほどに研ぎ澄まされ、

通常の人間が不要な量の情報が脳へと流れ込んでくる。


その能力を有効活用し、先ほどから、

2kmほど遠くにいる敵の気配を感じ、

他の仲間とは別行動で森の中を進んでいた。

離れても個別で無線が利用できるために、

連絡手段は問題ない。




「・・・これは?」

敵までの推定距離1.8kmほどの場所で、

私はその敵の質的情報を掴み始める。

この場合は“敵たち”と言うべきだろうか?


「聞こえますか?

 我々の前方に推定300体を越える数の

 NEOネオが配備されています。」

私がそう言い終わるなり、無線の奥が騒がしくなる。

が、そのまばらの質問には答えていられない。


「ここは私が1人で300体を相手しましょう。

 あなた方は当初の計画より左側に3km以上逸れた通路を進み、

 このルートを通らない方法で基地へと接近してください。」

上戸鎖かみとくさり、本当に1人でいけるか?

 厳しいなら俺や八重樫やえがしが共に残るぞ?』

ブラックマイスター首領の中仙道なかせんどう

一際大きい声で返答してくる。


「フッ、我々は敵同士。

 私自ら自分を犠牲にするような作戦を立てると思いますか?

 ・・・必ずあとで合流しますよ。」

『今回の攻略チームの頭脳になるって言ってたじゃねぇかよ!

 ここでその「先に行け!!」台詞キメちゃって良いのかよ?』

何かとうるさい高校生、陽遊ようゆう はじめが割り込んでくる。


「ならせめて、私が合流するまで

 皆さんが代わりの頭脳になってください。

 ・・・無線の応答は一旦打ち切ります。」

そう言い、私は右手に握っていたゴーグルをローブの中へと閉まった。


「さて・・・良い練習相手になれば良いのですが。」

私は草木の地面を蹴り放ち、

周囲の木々に次々と乗り移り、

前方に構えるNEOの軍勢へと高速で接近を始めた。










@第32話 「裏切りのコワレタセカイ」 完結









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