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ブレイキング・ローズ  作者: まるマル太
第4章 背後に潜む怪しい影??
32/42

@第28話 未来を変えるために

@第28話 「未来を変えるために」




吉澤よしざわ・・・敏生としき・・・。」

アーマーを装着したまま背中から倒れ込んだキャンサーへと

ノヴァイが寄り添い、その上半身を慎重に上げる。


「・・・ハハハ・・・こりゃあ無理だな。」

力なく笑いを漏らすキャンサーを見て、

ノヴァイは声を失う。

僅かながらの希望も、完全に途絶えていた。


「・・・俺さ、戦闘の他は何やってもダメで・・・。

 大学落ちて、親にも見放されて・・・。

 でも、キャンサーを装着して戦っている時が

 唯一、自分の存在意義を感じられたんだ・・・。」

キャンサーを頑なに手放さなかった

敏生としきの意図がようやく分かったが、

もはや手遅れに違いない・・・。


「俺なんかダメで、

 いっそ死ねば楽になると思ってた矢先、

 あんたらがキャンサーを託してくれた。

 俺は・・・本当に・・・嬉しかった。」

敏生としきの声はだんだんと弱くなっていくが、

ノヴァイは一切干渉せず、その声を聞いていた。


「・・・ありがとう・・・ございました。」

キャンサーの声はそこで完全に途絶え、

ノヴァイが支えていた身体は力なく崩れ落ちた。


ノヴァイこと岡本おかもと 龍星りゅうせい

トラウマから来るあまりのショックにうな垂れ、

両膝から落ちる。


「・・・俺は・・・俺は・・・」

そんな隙だらけのノヴァイを眺めていた

対戦相手であるヘネアークリキセラ18は、

右手をまっすぐにノヴァイへと向け、

攻撃体勢へと移行する。


ノヴァイはそれを横目で確認したが、

彼にとってはどうでも良かった。

・・・生きる辛さを嫌と言うほど味わったばかりの岡本にとって、

ここで死に絶える苦痛など取るに足らない。




・・・しかし、3秒ほど経過しても、

ノヴァイがウォータージェットによる攻撃を受ける事はなかった。

不審に思ったノヴァイは立ち上がり、

その方向を確認する。

と、そこには予想だにしない怪人が戦闘に乱入していた。


「・・・ブラッディ・オーバーキラー!?」

2足歩行の全身が血のように赤い狼のような姿をしたフォーサーであるが、

両手首から伸びる各々3本の鉤爪を備えた武器が特徴。


約7か月前、都内で大量殺人事件を起こした張本人であるが、

なぜ今このタイミングで石川県に現れたのかは不明だ。




オーバーキラーは溶液怪人を物凄いスピードで刻み尽くし、

液体であるはずの怪人は身体を分裂し、

数秒で緑色の水たまりとなって地面に流れた。

俺らの驚異となっていた溶液怪人は

あまりにもあっけない最期を遂げてしまった・・・。




「・・・お前、説明しろ・・・。

 俺を助けたつもりか?この殺人狼さつじんおおかみめ。」

ノヴァイこと岡本の当たりは強い。

何せ、岡本がフォーサーに対抗できるアーマー製作に取り掛かったのは、

目の前の狼が原因である事に違わないから。


「フンッ・・・そろそろ真実を知る頃合いだろうな。」

そう言うと、狼はノヴァイへとゆっくり接近し始める。

当然の事、ノヴァイは警戒体勢に入り、

ファイティングポーズを構える。


と、あろう事か狼怪人の赤い皮膚は

見る見るうちに元の人間のそれに変貌していく。

ノヴァイとは一定の距離を保ち、立ち止まった。

岡本よりも確実に若い20歳過ぎに見える男性だ。


「・・・俺の名は、改木かいき 宏太こうた

 2030年からこの時代に来た”未来人”だ。」

ノヴァイは呆気に取られて変身を解除して岡本の姿へと戻るが、

頭の中が整理できないのか、黙りこくっている。


「2030年、この地球は超巨大テロ組織バーバレスの計らいで

 全面核戦争へと突入する。

 俺はその未来を変えるために・・・5年後の未来から来た。」

「・・・5年後にはタイムマシン技術があるのか?」

岡本はいつものように皮肉を言う様子はなく、

至って真面目に質問を繰り出した。


「公的な技術じゃないが、バーバレスは約4年後、

 極秘裏に進めていたタイムマシン開発に成功する。

 俺は未来でこのフォーサーの身体を使ってヤツらの基地に乗り込み、

 タイムマシンを強奪、使用した。

 もちろん、俺のみの力ではないが。」

「・・・お前の言葉をどこまで信じれば良い?」

岡本はただでさえ、先ほどの仲間の死によって人間不信に陥ろうとしていた。

そんな中で突飛押しもない事をいう者の言葉を信じる方が難しい。


「証拠になるかどうかは分からないけど、

 バーバレス本部と日本支部の正確な場所なら俺は知っている。

 この時代のお前たち”ローズ・ブレイカー”の協力を得られれば、

 バーバレスを壊滅させる事ができるかもしれない。」

「ローズ・・・ブレイカー?」

「あぁ、怪人やアーマー装着者の事をバーバレスの人間はまとめて

“ローズ・ブレイカー”、掟を破る者、と呼んでいる。

 敵ながら分かりやすい呼称だったんでな。

 ・・・ちなみに、今生き残っているローズ・ブレイカーの中で、

 俺のいた未来では殺されているはずの者もいる。

 未来を知る俺の行動で、その未来は既に変わっているんだ。」

そこまで言うと、改木かいき 宏太こうたと名乗る男は

自身のポケットから赤単色のUSBメモリを取り出し、

岡本へと差し出す。


岡本おかもと 龍星りゅうせい

 アンタにこれを託す。

 俺が知っている限りの、この先の”予言”だ。

 文章は少し長いだろうが、知識面では未来人と同等になれる。」

「・・・お前が過去を荒らした事で

 この予言とは違う事が起こる事も否めない。

 そういう解釈で問題ないな?」

岡本の問いに、改木かいきは静かに頷いた。


岡本が改木かいきの様子を見ている限りでは

彼が嘘を並べているようにはとても見えなかった。

その眼光は、以前にもどこかで見た事があるような、

強い意志を彷彿とさせる。




「この俺に・・・未来が変えられるかどうかは分からない。

 だが・・・これからやるべき事は決まった。」

岡本はUSBを受け取り、

まっすぐに改木かいきの顔を見据える。

やはり、そこに嘘を付いている様子は微塵もない。


「バーバレスは、今はまだ無名組織だけど、

 いずれその姿を現し、必ず世界を支配する。

 そうなる前に俺たちでヤツらを止めるんだ。

 オペレーション・・・”ブレイキング・ローズ”。

 俺が、未来の仲間たちから託されたこの作戦名だ。」

改木かいきが切り出したその時だった。

2人は怪人騒ぎで人気のなかった駅前の通りから、

何者かが接近してくる足音を聞き取った。


「・・・これは?」

岡本が違和感を露わにする。

明らかに様子がおかしかった。

敵は数人、なんてものじゃない。


「ヘッ、これはさすがの俺でも驚いたな・・・。」

改木かいきは苦笑いをしながら

その軍勢を静かに見据える。


駅前の角から現れたのは5匹、いや10匹、

いや、総勢100匹を越えるような夥しい数のカエル怪人だった。




「あれは以前、岩手で出現が報告された・・・!?」

「”カオティックフロッグ”のNEOネオだな。

 NEOっていうのはバーバレス独自で開発された

 戦闘用の人形・・・らしい。」

「らしい、とは?」

「俺がいた未来ではそんな技術は存在していなかったんだ。

 本物よりはさすがにスペックが劣るだろうが、

 100体ともなると厳しいか・・・。

 やっぱり俺は・・・バーバレスに目を付けられているようだ。」

オーバーキラーの出現を把握してから

この短時間でアレを送り込むのは不可能に近い。

おそらく、オーバーキラーの行動をある程度予測して

バーバレスは動いていたのだろう。


気付くと、岡本の隣で改木はオーバーキラーへと変身を完了し、

戦闘体勢に入っていた。

殺人狼は、あろう事か未来から現れたこの世界の守護者。

その事実を、岡本はしっかり受け止めていた。




「・・・俺の”戦闘ヘリコプター”で一斉射撃が可能だが、

 やってみるか?」

岡本が装着するDEADデッド、クリエイター・ノヴァイの専用ビークルとして、

開発者の伊集院いじゅういんはヘリコプターを支給した。


「いや、普通の射撃で倒せるほど

 バーバレスのNEOネオは弱くない。

 それに耐久値の高いフロッグとなると、

 核部分を正確に狙わないと、ただ無意味に街路を破壊するだけになる。」

「ならば、俺たち2人であの100体を相手するとでも?」

「・・・手はある。」

ブラッディ・オーバーキラーは岡本の方を軽く見やる。


「そもそも、俺は未来で

 バーバレスの強大な戦力を無力化して

 ヤツらの基地の最深部まで辿り着き、タイムマシンを奪った。

 そのくらいの腕は認めてもらってもいいぜ?」

岡本は以前、オーバーキラーと戦った事がある。

今の彼の話を聞けば、その際に手加減をしていた事は間違いないだろうが、

異常な俊敏性と高い破壊力を併せ持つ赤い狼は

相当な上位フォーサーに位置付けされる事は確実だ。


「知ってるかどうか分からないけど、

 俺はフォーサーレベルXエックス

 通常のフォーサーの進化態に当たる。

 ・・・俺の戦闘を・・・間近で見てろよ?」

そう言うが早く、狼はアスファルトを蹴り放ち、

前方100mほどに迫っていたカエルの群れへと向かって走り出す。


岡本はその様を見て、驚愕する。

・・・その移動速度は明らかに群を抜いていた。

5秒ほどで戦線へと到達したオーバーキラーは、

両腕を広げながら身軽な動きで身体を回転させ、

一度に4体のカエルを鋭利な鉤爪で切り裂いた。

一撃で核部分を貫かれたのか、

カエルは次々と緑色の液体と化し、散ってゆく。


だが、巨体を誇るカエルも、

その見た目からは考えられないほどの跳躍力を持っていた。

回転しながら地に降り立った狼の背中を、

跳躍した一匹のカエルが瞬時に蹴り飛ばす。


軽量な狼は空中で回転しながら体勢を整え、

衝撃を最小限に留めるが、

全くのノーダメージではない。




岡本おかもと 龍星りゅうせい、今のうちに逃げろ!

 今ならお前を無事に逃がせるくらいの妨害はできる!」

オーバーキラーは後方で観戦している岡本へと叫ぶ。

が、岡本はそれがまるで聞こえないように

右手にDEADデッドチェンジャーを構える。


「フッ、俺はここで逃げるくらいなら死ぬ方がマシだ。」

それはオーバーキラーには届かないほどの呟き。

岡本は少しでも背中を見せようとする自分自身へと言い聞かせる。

現実から目を逸らそうとする自分へと、

必死で"次の希望"を持たせる。






















―――――その頃、都内のとある通りでは―――――




ブラックマイスターのテロ活動により、

休日の昼過ぎにも関わらず、大きな国道沿いの商店街はがらんとしていた。

・・・ただ一部を除いて。


「ヤバくね?無料で取り放題じゃねぇかよ!」

「さすがにもう食えないから・・・。」

「ハハハハハハ、テロ万歳だな!」

国道沿いのとあるコンビニでは、

経営者が避難したのを良い事に

店内を物色する高校生5人組が騒いでいる。


元々、この近辺は怪人が暴れておらず、

建物の損壊などはなかったが、

日頃の腹いせに棚を倒し、お菓子やドリンクを好き放題に漁る高校生たちが

惨めに荒らしていた。


「そろそろ逃げなくて大丈夫か?」

「今日のところは帰ってこないだろ?

 こんな機会滅多にないから楽しもうぜ!!」

人気のない道路沿いのコンビニで

ここぞとばかりに酒もたばこもむさぼる高校生たちの

姿を見る者は誰もいなかった。

・・・いないはずだった。


突如、入り口の手押しのドアが外から勢いよく開かれた。

騒ぎ立てていた高校生たちは瞬時に静まり返り、

一斉に視線を入り口に集中させる。


「探索中に何か騒がしいと思えば、

 良い歳で善悪の分からぬゴミ共だったか。」

「・・・?」

現れたのは短髪で整った顔付きの男性。

上下を黒いスーツに包んでいる。

ブラックマイスターのテロ行為を制止すべく動いていた

伊集院いじゅういん 雷人らいとであった。


「おい、お兄さん。ゴチャゴチャうるせぇんだよ。」

5人の中の体格の良い男子が立ち上がり、

ビール瓶を片手に伊集院いじゅういんへと近付く。


酒を飲んでふらつく男子が瓶で殴りかかったその次の瞬間、

その男子の身体はコンビニ側面のガラスへと投げ付けられ、

彼は頭からそれを突き破って店外の駐車場へと転がった。

血まみれの顔を両手で押さえながら、もんどりうつ。


「フッ、愚か者が。

 私の機嫌が悪い時ならば殺していたぞ?」

「ま、マジかよ・・・?」

その様子を見ていた4人の高校生は一斉に立ち上がり、

必死に黒い化け物との距離を取ろうと後退する。

4人で掛かってもその化け物には絶対に勝てないという事は

その場の全員が瞬時に理解したようである。


だが、後ずさりをしても

出入り口は伊集院いじゅういんの隣にあるため、

このコンビニから逃げ出す事はできない。




「貴様らの行為はゴミ同然だが、

 この異常事態で気が狂うのも分からぬでもない。

 ・・・見逃してやる。さっさと消えろ。」

伊集院はそう言い、彼のすぐ隣の出入り口から

一歩だけサイドに移動する。

これで高校生たちの抜け道ができた。


「あぁ・・・あ、ありがとうございます!」

高校生は4人で列を作り、恐る恐る入り口に接近してくる。


1人目は伊集院を横目でチラリと見やると、

急いで店から飛び出した。

続いて2人目、3人目も。


最後の1人が隣を通り過ぎようとした時、

伊集院はその男子へと向けて言葉を発した。


「・・・愚かだ。」

男子は化け物の呟きに身体を震わせ、

思わずその場に立ち止まる。


「なぜ・・・なぜ他人を平気で害する事ができる。

 これではいつまで経っても」

次の瞬間、その男子生徒は勢いよく顎を蹴り上げられ、

店内の床に後頭部から倒れ込んだ。

激しく痙攣する身体は、目の前の化け物に恐怖しているようにも映る。


「・・・私とした事が。」

伊集院には目の前の高校生たちを殺害するつもりは微塵も無かった。

確かに他人を害する不要な人間であるが、

殺害を要する程度にまでは達していない。


そして、伊集院の中には多少の”疑問”があった。

元々、故人である恋人が思い描いた世界のために

密かに殺人を繰り返してきたはずであるが、

殺害による快楽を得るだけで、世界を変えるまでには至っていない。


ゴミを消すごとに社会が浄化されていく感覚が無い訳でもない。

しかし、果ては見えなかった。

それでも伊集院は自身の務めを見失いはしなかったが。




伊集院はふと店外へと目をやる。

と、そこには彼が予想もしていない光景が展開されていた。

思わず、歩を進めて店外へと出る。


「貴様、何者だ?」

コンビニの駐車場に転がっていたのは4人の高校生の死体。

それも無残なまでに切り裂かれたような

残酷な最期を迎えている。


そして、奇妙な事に、

そこに立っていたのは伊集院をただ見つめる謎の男。

ガッチリとした体格で、その筋肉質な身体は

黒にブルーのラインが入ったライダースーツ越しにでも威圧してくる。


「俺様は・・・時柳宋じりゅうそう 衛久守えくす

 バーバレスの幹部だ。」

「バーバレス・・・という事は、私を嗅ぎつけてここに現れたと?」

伊集院の問いに、衛久守えくすと名乗る男は真顔のまま答える。


「いや、偶然、お前に遭遇したというのが正しい。

 俺様が第一に用事があったのは、そこの”ゴミ”共だからな。」

そう言いながら、彼は自分の周りに散乱する

高校生の死体を見回す。


「”ゴミ”とは、存在価値無用のクズ人間、という解釈で問題ないか?」

伊集院の顔は、少しながら緊張の表情を見せる。


「まったく、その通りだ。」

衛久守えくすは真顔のまま返答した。


「さすがは・・・俺様の”原形”とも呼べる存在。

 伊集院いじゅういん 雷人らいとだ。」

「原形だと?それはどういう意味だ。」

「バーバレスは人間の様々な欲望が脳内で発する

 固有の”電気信号”を発見した。

 それは戦闘には非常に有効なものであった。

 ・・・元々、俺様は、アメリカのとある会社の技術で、

 理想とされた優性遺伝子のみを取り入れ、作られている。

 後天的にその電気信号を埋め込む事によって、

 効率的な戦闘マシーンが生み出された。」

「フッ、ならば、お前に埋め込まれた電気信号は

 この伊集院いじゅういん 雷人らいとのものだと言うのか?」

常に余裕な態度の伊集院は、

今回ばかりは一切の笑みを見せない。


「あぁ、そういう事だ。

 それも・・・本物より洗練された電気信号を手に入れた。」

「より有用な欲望を示す電気信号のみを取り入れた、という訳か。」

伊集院は自分の中にある2つの強大な欲望には

前々から気付いていた。


1つは”浄化”。

ゴミを排除して世界を浄化する事に彼の脳は興味を示す。


もう1つは”殺害”。

ゴミを排除する事自体にも快楽を見出す。


伊集院は、自分ではどちらが自分の本当の欲望なのかは

未だに理解できていなかった。




「・・・この日本を、いや、世界を、”浄化”する。

 それが、絶えず俺様の脳が俺様自身に求めてくる要求。」

「ほう・・・。」

伊集院は意外そうな表情を見せる。

戦闘マシーンとして、取り入れるべき欲望は

一見すれば”殺害”欲に見えるが、

バーバレスは”浄化”欲を選んだ。

そういう事になる。


「しかし、どのように私の電気信号を抽出したというのだ?」

伊集院は自分で問いながらも、

既にその高速の思考で考えをまとめてしまっていた。


「お前を10年間閉じ込めていたヤツの協力、と言えば分かるか?」

衛久守えくすの答えは、伊集院の予想に反しなかった。


「何かしら情報があると思い、あの男は泳がせていたのだが、

 まさか謎のテロ組織、バーバレスと直接の関わりがあったとはな。

 ・・・アブソリュート・アーツ社、社長、園原そのはら 紫苑しおん。」




――――――――――――――――――――――――――――――――-




私は元々、園原そのはらには不信感を抱いていた。

あの男の情報網は明らかに異常だった。

私を10年もの間、隔離する理由もはっきりしなかった。


いずれ園原そのはらが隠す何かには辿り着ける。

そう思いつつ、彼の作戦には黙って手を貸し続けていた。


しかし、そのせいで私の才能を利用されるとは思いもしなかった。

おそらく壁などに

その電気信号とやらを計測する機器を埋め込んでいたのだろうか。

・・・早計だった。

謎の組織、バーバレスへと辿り着けたとは言え、

自分の手の内を明かしたという代償は大きい。




「本題に移るが、俺様はお前のやり方が気に食わない。

 ゴミの処理という方針は俺様と何ら変わりないが、

 まるで殺人を楽しむような処刑法には疑問を抱く。」

「残念ながら、私は殺害に快楽を見出す事に間違いない。

 ゴミが消えるのを見る事はこの上ない愉悦だ。」

私はまっすぐに衛久守えくすを見据える。


「その気は知れないな。

 俺様は少なくとも罪悪感に浸る。

 そして、また新たな浄化を繰り返す。」

「殺害という行為に道徳性を見出す事は無意味だ。

 ・・・私たちは”裁き合う”しかない。」

私はそう言い、スーツのポケットからDEADデッドチェンジャーを取り出す。


「だろうな。だが、俺様は負ける気はない。」

そう言うと、初めてそこで衛久守えくすは不気味な笑みを見せる。

すると、彼の露出した部分の肌に

水色のラインが浮き出る。

まるで血管が脈打つように、水色になった皮膚が盛り上がっている。


「ローズ・・・ブレイク!!」

両手で拳を作り、その両腕をXの形に交差させる。

すると、次の瞬間、衛久守えくすの身体は黒い皮膚に覆われ始め、

異常なまでに筋肉質な怪人が出来上がっていく。


「俺様はバーバレスによって作られた怪人、コマンダー。

 固有名称、”ノウベタザン”だ。」

まるで全身が漆黒の格闘家のような姿をした怪人の各所に、

血管のように張り巡らされた水色のラインが一斉に発光する。

身体と装甲が一体化しており、

黒という配色のせいもあって一見すると裸体のように見える。

顔にはXのようなクロスしたラインが光るだけで、

顔のパーツらしきものは見当たらない。




「今後の危険性を考慮して、貴様を始末する。」

《Hello world!! Excuse me?

 Answer、Answer、Answer、Answer・・・》

「シング・アゲイン!」

《Certified!!》


ガイダンス音を確認して腰のバックルに機器をセット。


《Forcible execution!!

 Identify your identity!!》


コンビニの駐車場に駐車していた私の専用バイクから

アーマーパーツが飛び出し、次々と自動で装着されていく。

サイドに赤いラインが入った漆黒のロングコートを纏い、

処刑人、ドミクロンが出現する。




「始めるぞ。伊集院いじゅういん 雷人らいとッ!!」

叫ぶノウベタザンをまっすぐに迎え撃とうと待ち構えていた私は、

次の瞬間、全身で危機感を感じ取る事になるとは思わなかった。


・・・ノウベタザンはその場から”消えた”。


だが、ほぼ同時に私の背後にはとてつもない殺気が迫る。




「ほう。」

私は瞬時に背後を振り向き、

その殺気を迎え撃つ。


打ち出されたノウベタザンの拳を

私は分厚い斬馬刀で受け止める。

が、そのあまりのパワーに私は後退する事となった。




「フッ、これは驚いた。

 私のツヴァイブレインに匹敵するほどの機能を持ち合せるか。」

私の頭は初期型のHR細胞によって

常人には無謀なほど高速で思考する事が可能となった。

また、ツヴァイブレインは私の身体にも影響を及ぼし、

その思考に付いていくための身体を創り出した。


これほどの好条件を持ち合せている存在は他にいる訳がない。

私はそう思い続けていた。

しかし・・・。




「言ったはずだ。

 俺様は選ばれた優性遺伝子の塊だと。

 それが更に”コマンディング・パラサイト”の恩恵を受ければ、

 常識を覆す事も容易い。」

「ほう、そうなると、

 コマンダーというのは”寄生虫”による怪人のようだな。」

「その通りだ。

 コマンディング・パラサイトはある者によって

 自在に宿主へと影響を及ぼす事ができる。」

ある者、というのはバーバレスの首領で間違いないだろう。


優性遺伝子で構成され、

寄生虫も植え付けられ、

なおかつ、私の強力な欲望までも持ち合せる怪物。

・・・意図的に作られた戦闘バカに違いない。


バーバレスは世界中の研究機関の協力を得て

怪物作りでもしているようだな。




「私は正当防衛として貴様を排除する。」

「できるものならやってみろ!

 俺様がお前に負ける理由はない。」

「フッ・・・面白い。

 この処刑人、伊集院 雷人に正面から挑む事を後悔しろ。

 お前のアイデンティティーを・・・確立せよ。」

私がそう言い終わると共に超加速でその場から姿を消すと、

目の前のノウベタザンも私に合せて加速を始める。




























―――――その頃、石川県では―――――




「ああ!!このクズがッ!!」

赤い狼型フォーサー、オーバーキラーは

バーバレスの戦闘人形であるNEOネオを次々と始末していく。


「くそっ・・・!!」

この俺、岡本おかもと 龍星りゅうせいが変身したDEAD、

クリエイター・ノヴァイも、カエル人形を相手にしているが、

正直、戦況はかなり厳しいものがあった。


伊集院から託されたDEADは

アーマーの中では最上位の性能に違いない。

しかし、敵の人形はそれを上回るほどの性能を誇っている。


最初100体を越える多数の軍勢であったカエルは

今や20体前後に減少してきているものの、

その大半を消し去ったのはオーバーキラーだ。




「!?」

ふと見ると、俺の足元へとオーバーキラーが転がってきた。

カエルの反撃を食らい続けたのか、

動きが最初に比べて鈍くなってきている。


「・・・こりゃあ、案の定厳しいな。」

オーバーキラーは苦笑しながら話し掛けてくるが、

そこに余裕は微塵たりとも感じられない。


「退散すべきか・・・?」

「いや、あのカエルたちに背を向けようものなら、

 高速で接近されて背中から止めを刺されるぜ?

 敵を全滅させるという選択肢以外、俺らには残されていない。」

そこまで言うと、オーバーキラーは長いため息を吐く。

明らかに、何かを意図するため息に聞こえた。


「仕方がない!俺は諦める。」

「は?」

オーバーキラーの突然の発言に、驚く。


「勘違いするなよ?”俺は”、と言ったんだ。」

オーバーキラーの恐ろしいまでの冷静さを見ると、

思わず、身体中に寒気が走った。

そして同時に頭の奥を何かで突かれたような

不思議な感覚に陥る。

・・・嫌な予感が止まらない。


「俺は・・・まだ隠している手がある。

 だけどな、それを使えば、たぶん俺の身体は持たない。」

「・・・そんなもの使わずに、逃げれば」

「逃げられねぇって言っただろオ!!」

オーバーキラーの口調が荒くなり、

俺は思わず言葉を失う。


「・・・岡本 龍星、お前を生かす理由はちゃんとある。

 未来から来た俺はその訳を知っている。」

・・・やめろ。


「お前に託すぞ・・・俺の計画も、この世界の未来もな。」

・・・やめてくれ。


・・・これ以上、俺を”裏切る”のはやめてくれ!

・・・もう何も失いたくない!!

・・・これ以上失えば俺は・・・俺は・・・!!




「短い時間だったが、この時代のアンタとも話せて良かった。

 ・・・ありがとう。」

「やめろオオオオッ!!」

俺の泣き声に近い叫びはオーバーキラーには届かず、

彼は両手を大きく広げた。


「サクリファイシング・デイズ!!」

狼はそう言いながら両腕の鉤爪で自分の腹を大きく切り裂いた。

すぐに多量の鮮血が傷口から溢れ出し、

彼は苦しそうに叫び出す。


「うおおおおおおおおおッ!!!」

彼の体色が

赤を通り越し”紅”とも言える濃い色に変化すると同時に、

彼の鉤爪は3mほどにまで伸びる。


「これが・・・俺の全力だあああああああ!!」

狼は苦しそうに言葉を吐き出すも、

その動きには弱っている様子などは感じさせず、

瞬時に一匹のカエルへと飛び付く。

すると、原形が残らないほどにまで敵を切り裂き、

再び他のカエルへと飛び付く。


紅の狼が移動する度に、

その軌跡は鮮血で染まっていく。


あまりの残虐性に、人形であるカエルたちさえも

怯えているように見える。




・・・俺はただただ、

狼がカエルを駆逐していく様を見届けていた。

戦闘能力的にも、精神的にも何もできずに見守る。

ただただ、最初に自分が逃げてさえいれば、という後悔を抱えたまま。

・・・何というザマだ。


結局、デカい目標だけ掲げた俺は

無責任に立ち向かった挙げ句に何も守れない。

必死に誰かを守ろうとしても、誰かを失う。

・・・何というザマだ。


・・・これが高校の頃から”平和”を目指していたヤツの末路か?




「死ねええええええッ!!」

狼は最後のカエルを始末し、地に降り立った。

辺り一面、狼の血と、NEOの構成要素である緑色の液体で染まっている。


ブラッディ・オーバーキラーは、

100匹を越えるカエルを一人で片付けてしまった。

・・・自らを犠牲に。


彼が人間態に戻り、その場にうつ伏せで倒れ込むのを見て、

俺は駆け寄り、仰向けの姿勢へと移行させる。

・・・それも反射的に行った行為であり、

もう”仲間”の最期を見届けるのは散々だった。

・・・見たくない。

今すぐ、東京に逃げ帰りたい。

出来る事なら・・・何も失う前の”過去”に。




「これで・・・逃げられる・・・。」

オーバーキラーはかろうじて息をしており、

苦しそうに掠れた言葉を吐き出し始める。


「俺が・・・俺が・・・最初に逃げていれば・・・。」

気付けば俺は泣いていた。

が、咄嗟に重要な事を思い出した俺は、

泣きながら狼へと静かに問う。


「・・・半年前、お前は・・・どうして大量虐殺を行った?」

・・・そう。

アレだけが、彼の行動の、矛盾点である。

世界を守る使命を背負っていた改木かいき 宏太こうたの。


「・・・あの日・・・バーバレスへの

 協力者たちの”会合”を・・・襲撃・・・したんだ。」

つまり、殺された人間は、

偶然に巻き込まれた店員など以外の者は

バーバレスに関係する人間だったという事か。


バーバレスは世間一般の者が知らない組織。

よって殺害された人物たちにその共通点が見出される事はなかった。

だから”無差別”の殺害事件、という事で決着した。

そういう解釈で良いだろう。




「・・・ヤツらは・・・多くの者を・・・味方に取り込んでいる。

 気を付けろよ・・・。

 後は頼んだ・・・岡本、龍星・・・」

改木かいき 宏太こうたは静かに目を閉じ、

それから言葉を発しなくなった。

再び、俺を異常なまでの悲しみが襲う。


「俺は・・・本当に世界を救えるのか・・・?」

泣きながら俺が口にした言葉。

それは悲しみのあまり飛び出した本音。


・・・俺は気が付けば他人は愚か、

自分すらも信用できなくなっていたんだ・・・。


























―――――その頃、都内では―――――




15分ほどが経過していたが、

2人のローズ・ブレイカーによる激しい戦闘は、

留まる事無く続いていた。


あまりに高速であるその様子を目視できるのは互いのみ。

一般人には赤と青の線が激しく行き来しているだけにしか見えない。


「クッ・・・!!」

伊集院いじゅういんが変身するドミクロンが持つ斬馬刀に対し、

衛久守えくすが変身するノウベタザンは2.5mほどの長い2本槍で迎え撃つ。


彼らの武器はあまりに高速でぶつかり合い、

傍から見れば溶接工事のように激しく火花を散らす。




「・・・クッ、お前えええッ!!」

「フッ甘いな。」

ここまで戦闘を継続して、

ノウベタザンは未だに一度もドミクロンへと攻撃を当てる事ができていない。

対して、ドミクロンは何度も斬り付ける事には成功していたが、

鋼の筋肉に決定打を食らわせるには不足していた。


時柳宋じりゅうそう 衛久守えくす

 確かに、貴様は戦闘に有効な手を尽くされている。

 ・・・が、私がただの戦闘ロボットに負ける事はない。

 戦闘は単純なスペック差では決まらない、という事だな。」


伊集院は幼少期に

初期型のHR細胞を頭部に打ち込まれているが、

彼は時間をかけてそれを使いこなしてきた。

更には、彼のアーマー、ドミクロンも

自分が使いやすいようにしっかりとチューニングされている。


対して優性遺伝子で構成されている衛久守えくすは、

バーバレスで体内に寄生虫を植え付けられ、

それを動力源として怪人へと変身するため、

どうしても自分の手では調整できない領域が出てきてしまう。


戦闘能力だけを見れば完全に衛久守えくすが上であるが、

それは伊集院に勝てる、という事を意味しない。




「・・・確かに、お前の方が若干ではあるがスピードも高い。

 このまま俺様のスタミナ切れを狙う気か?」

ノウベタザンは一度手を止め、呼吸を整えながら挑発する。


しかし、ドミクロンにもスタミナというものはある。

長時間の戦闘は本人も未経験であるため、

思わぬアクシデントの発生も考慮しなければならない。


「貴様のスタミナ切れを狙うつもりはない。

 当然、生かして返す気も毛頭ないがな。」

ドミクロンも呼吸が乱れている。

おそらく、双方のスタミナは限界を迎えているのだろう。


「ここで逃げ出すほどのバカではなかったか。

 良いだろう、そろそろ勝負を決めるとしよう。」

ノウベタザンは黒い槍で突き刺すような構えを取ると、

加速を試みて地面を蹴り放つ。

が、そこで彼は不自然に立ち止まった。


「クッ・・・身体は限界か。」

ノウベタザンはすぐさま防御の構えを取るが、

ドミクロンがその隙を突く事はなかった。


・・・ドミクロンも同じように高速移動を封じられていたのだ。




「こうなれば加速無しでもお前を殺す!」

ノウベタザンは伊集院の状況を悟り、

2本の槍を構えながら接近してくる。

ドミクロンは逃げる訳にはいかず、

斬馬刀を構えてそれを迎え撃つ。


「・・・?」

その場の2人はふと、奇妙な気配に気付いた。

・・・それは何者かの接近。

だが、互いに戦闘に集中し過ぎていたために、

察知が明らかに遅れた。


「何!?」

次の瞬間、ノウベタザンは何者かに横から打撃を受け、

コンビニの駐車場を転がった。


ドミクロンでも、ノウベタザンでもない、漆黒の怪人が

その場に突如、出現したのだった。

白いDNA構造のような模様が入った黒いローブに全身を包み、

顔は目の一本線以外が装甲に覆われている。

脳に当たる部分がプラズマのように不規則な模様になっており、

それを挟むようにV字型の装甲が後頭部に向かって伸びる。




「・・・あなたからは、あのNEOと同じような臭いがしますね?」

巨大なローブに全身を隠したような黒い怪人は

雰囲気にそぐわない丁寧な口調で話し出すが、

伊集院にはその声に聞き覚えがあった。


「フンッ、それはどうも。

 俺様もNEOもバーバレスの戦闘マシーンだからな。」

「ならば、上戸鎖かみとくさり 祐樹ゆうきの名をしっていますか?」

「あぁ、あの”ダメ人間”か。

 本部はその男を見放し、関係を切ったと聞いているが?」

「・・・それだけ聞ければ十分ですよ。

 この上戸鎖かみとくさり 祐樹ゆうきは。」

その言葉に反応し、ノウベタザンは戦闘体勢に入る。


「私は・・・トランセンデンタル・オーガナイザー。

 あなたたちが私を見放した事は・・・絶対に後悔させてみせますよ?」

そう言うと、オーガナイザーは右手の平で虹を掛ける様に宙をなぞる。

と、空中には瞬時に黒いブラスターのようなものが20基ほど出現し、

ノウベタザンを囲むように宙に留まっている。


一瞬の出来事に、ノウベタザンでさえも驚き、

周囲を見渡している。




「構成する物質やその物の形、などが全て分かっていれば、

 私は好きな武器を瞬時に生成し、コントロールする事ができる。

 デカンファイナルキャノン・・・あなたには耐えられますか?」

その武器は、上戸鎖かみとくさりが以前、

トレディシオン・ルイナーとして戦っていた時の必殺級武装だ。

そのビーム砲は一撃でフォーサー1体を消滅させる威力を誇る。


「クッ・・・。」

ノウベタザンは逃げ道を探しているのか、

必死に身体の方向を360度変えながら戸惑っているが、

一向に動く様子はない。

逃げても、ブラスターだけが移動し、

自分を始末する事は容易に想像できた。


そうしている間にも、空中10mほどのブラスターの銃身が一斉に

蛍光グリーンへと発光し始める。

《ケミカル・・・ブレイク・・・アップ!!》

《ケミカル・・・ブレイク・・・アップ!!》

《ケミカル・・・ブレイク・・・アップ!!》

・・・・・。


ボイスチェンジで聞き取りにくくしたような

男声の電子ガイダンス音が立て続けに鳴り響き、

辺り一帯が20基ものビーム砲の射撃によって眩い光に包み込まれる。











@第28話 「未来を変えるために」 完結





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