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ブレイキング・ローズ  作者: まるマル太
第1章 俺はロイヤル・ハイパワード・チューニクス!!
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@第2話 フォーサーって何?

@第2話 「フォーサーって何?」




・・・一体、何だったんだ?

俺達が乗車している東京行きの新幹線が突如緊急停止した。

急ブレーキのせいで激しい前方向への力が掛かったが、

パッと俺の席周辺を見回したところ、

出血したりだとか骨折とかの重症なケガ人は出ていないようだ。


「おいおい・・・何が起こったんだ?」

「線路にデカい石でも置いてあったんじゃないですか?」

「ここは新幹線の線路だぞ?」

そんな事を話していると、俺たちの車両前方のドアが開いた。



「・・・皆様ご無事でしょうか?」

ん、何だアレは?



全身を黒のタキシードで包み、頭部には黒いシルクハットを身につけた

高身長の男性が入ってきた。

顔はまるで白顔のピエロのようだ。

「何かのサプライズ企画・・・でしょうか?」

「私は何も聞いていないが?」

「いやいや、何も聞いてないからサプライズって言うですよ。」


「初めまして。」

その黒服ピエロが再び口を開く。

とは言っても、ピエロの口は動かない。

音の発生源は確実にピエロだが、

奥から少しこもった声が聞こえてくるだけだ。

「ワタクシは、レボリューショナイズ社のHR細胞により生み出された怪人、

 フォーサーの『ミスターインバラス』と申します。」

なるほど!

半年前に街で大量に人を殺害したあの赤い怪人のシリーズか!




・・・・・って、は?




やっぱり、あの怪人以外にもHR細胞のせいで生み出された怪人がいたのか!?

ウソだろ!?

いや、すぐ目の前にいるし!

俺の周りの席からも、どよめきや叫び声が止まらない。




「・・・静粛にお願いします。

 別にあなた方を殺害しに来た訳ではありませんので。」

・・・じゃあ目の前のピエロ怪人は何しに現れたんだ?

ってか、そもそもコイツは本当にそのフォーサーってヤツなのか?

にしては全然弱そうなんだが・・・。


「今日はあなた方にワタクシ達フォーサーについての知識を

 深めて帰っていただきたいと思っております。」

知識を深めるって何をするんだ?


「ちょっと、このモニターをご覧ください。」

ミスターインバラスとやらはそう言うが、

どこにもモニターなんか見当たらない。


「・・・あの、どこに画面があるんですか?」

前の方の席で通路側に座っていた若い男性が恐る恐る訊く。


「ここですよ。」

ピエロが自分の手のひらをこすり合わせると、

なんとそこに、どこからともなく

30インチほどの巨大なタブレットが突如出現した。

・・・見た目から考えると、手品師のつもりだろう。


「起動するまでしばらくお待ちください。

 それまで少し、フォーサーの紹介を。」

それにしてもこの手品ピエロは随分ベラベラ喋るな・・・。

まったく怪人らしさが出てない。

でも、さっきのタブレットの手品とこの余裕な態度を見ると、

コイツは本当にフォーサーっていうヤツなのかもしれない。


「昨年12月、ブラッディ・オーバーキラーというフォーサーが

 一般人を大量に殺害した事件はご存知でしょう?」

・・・あの事件の映像に残っていた赤い狼怪人の名前は

ブラッディ・オーバーキラーというのか?


「アレで恐怖を感じない方はいらっしゃらないと思いますが、

 別に彼が特殊と言うわけではなく、フォーサーは全員、

 人を殺害出来る程度の手段は何かしら持ち合わせています。

 現にワタクシも、一応この黒服で怪人形態なので

 パワー重視のフォーサーではないのですが、

 幾分かのアイテムを持ち合わせています。」

そう言って手を突っ込んだヤツのポケットから出てきたのは

・・・1枚のカード?

はっきりとは見えないけど、トランプのジョーカーに見える。




「そうですねぇ・・・このカード1枚でこの車両程度ならば

丸ごと爆破できます。」

オイ何だって!?

爆発機能が付いているカードなのか・・・?


「おっと、モニターの準備が整いましたね。

 それでは、ご覧ください。」

そう言い、ピエロは通路に立ち、

車両内の皆に見えるようにそのタブレットをセットした。

モニターに映し出されたのは・・・学校の廊下、だろうか?

「岩手県、北川高等学校の内部です。

 確か県内1位の進学校でしたかね?」


「・・・え?」

思わず俺は呼吸を止めてしまった。

ミスターインバラスが話し終わる前に、

モニターにとんでもないものが映し出されたからだ。


「これは当地の生中継なのですが、いかがでしょうか?」

モニターの中には、黄色と朱色の、

まるで全身がドロドロの溶液のような容姿をした怪人が

北川高等学校の生徒を殺害する様子が映し出された・・・。

溶液とは言っても、人の形を維持している奇妙な液体だ。




「な、なんという・・・。」

「・・・これはいくら何でもヤバくないスか?」


「モニター内の彼もフォーサーの1人です。

 バルガインタリ13(サーティーン)と申します。

 彼は化学物質を自在に操る事が可能なフォーサーでして、

 自身の体内に大量の化学物質を保存しています。

 今のように溶液で人間の身体を丸ごと溶かす事ぐらい容易いです。」

これは・・・さすがにないだろ。

ヤベ・・・具合悪くなってきた・・・。


「どうでしょうか?本日はフォーサーについて

 少しは知識を持っていただけたかと思います。

 知識、というよりは

 ご自分たちが置かれた状況に対する恐怖でしょうが。

 ・・・いくら我々がこのように優位な立場にいるとは言え、

 日頃のレボリューショナイズ社からの

 サポートには頭を下げて感謝しなくてはなりません。」


・・・レボリューショナイズ社?

確か6ヶ月前、レボリューショナイズ社の社長の会見では

そのフォーサーっていうHR細胞の怪人については

全く予想外の事態だと言い張っていたのに・・・。

まさか、やっぱり彼らは故意的にフォーサーを創り出したのか?


「さて、それではそろそろワタクシは失礼します。

 新幹線も普通に動くでしょうからご安心を。」

そう言うと、ミスターインバラスは入ってきたドアの向こうに

ゆっくりと消えていった・・・。

























―――それから2時間後―――




新幹線はダイヤを30分ほど乱しはしたが、

ケガ人等は1人も出さず東京駅に到着した。

緊急事態のため、各駅停車のはずが

東京駅までは一度も止まることは無かったんだけど。


「・・・良かったな!無事到着できて!」

藤原先生が両手を上げて背伸びをしながらそう言った。

本当にそうだな・・・。

一時は死ぬかと思っていた。

まさか・・・フォーサーっていう怪人達が

陽の当たらない社会の裏で動いていたとは・・・。

これはただでは終わらないだろう。


東京駅ホームにはシールドや大きな銃などで武装した警官が

大量に待ち構えていた。

それもものすごい数だ・・・。

俺達が乗車していた車両の人間は、

間違いなくミスターインバラスではないから

そのまま通してもらえた。

というのは彼が前の方の車両に歩いて行ったからだ。


たぶん、ミスターインバラスもあの黒服ピエロの怪人態と

普通の人間態が使い分けられるのだと思う。

ってか例のブラッディ・オーバーキラーだかが出現した後のこの半年間、

一度もフォーサーは見つかっていないから、

それを考えると彼らフォーサーが人間態になれない方が不自然だ。


思い出したが、今頃、藤原先生の出身校である

岩手県の北川高校はどうなっているんだろう・・・。

・・・俺が通う山村高等学校も県内なだけあり十分危険だ。

何で、北の方の岩手にわざわざ・・・。




「ほら、さっさとお目当てのアブソリュート・アーツ社に行くぞ!

 東京駅からは歩いてすぐだ!」

「先生・・・すぐって・・・歩いて20分は掛かりますよ?

 ポケットマネーからのタクシー代を頂戴いたします~」

「・・・だが断る!」

「えー・・・。」

「タクシー代高いんだって・・・分かってくれ!」




・・・それから小走りで15分ほど歩き、

俺達はアブソリュート・アーツ社本社ビル前に到着した。

有名な会社だが、その巨大な50階建て本部ビルを見るのは初だ。

周りのビルもそうだが、東京は建物の背が高くて路地が暗い。

田舎の岩手なんかとは比べ物にならないな。


「遂に来たな・・・。」

「ですね」

俺たちは本社玄関の自動ドアをくぐる。

すると、無駄なほど広い玄関のロビーの奥に

受付の口が3つほど並んでいて、

担当の女性社員がそれぞれ構えている。

ロビーの隅には高級そうなソファとテーブルが数個設置してあって、

待ち客などにも配慮された設計になっているようだ。


「こんにちは。立ち入り許可書を提出願います。」

受付の女性が微笑み掛けてくる。


「はい。送られてきたメールの文面ですけども・・・。」

「構いませんよ。えぇと・・・・。

 陽遊ようゆう はじめさんと

 藤原ふじわら 玲二れいじさんですね。

 本日はようこそいらっしゃいました。

 そちらのエレベーターから8階までお進みください。」

エレベーターは全部で5基も備えてある。

そんなにあるなら俺の家に1つ譲ってくれても良いくらいだよな。























―――――1時間ほど前、岩手県の北川高校では―――――




・・・これでこのバルガインタリ13(サーティーン)様の

邪魔になる同級生らは全員葬ってやった。

ところで、ヤツはなぜ突然俺に暴動を起こす事を依頼してきたんだ?


先ほどのバルガインタリ13への変身者、阿久沢あくざわ 咲哉さくや

怪人態の変身を解き、人間態で静まった高校の廊下に立ち尽くしていた。

廊下には自分が標的としていた同級生4人が溶けた液溜まりができている。


・・・俺は当初、身体が弱くて

小中学生の頃は毎週のように風邪で数日寝込む生活が常だった。

だが、4年前、HRSヒューマン・リィンフォース・システムの治療により、

俺の身体は健常者と同程度にまで丈夫になった。

おかげで成績も上がり、県内偏差値一位のこの学校へと入学した。

だが、HRSによる治療の後、8か月ほど経過したある日、

俺の身体にはある変化が起こった。

なんと液体をまとう怪物へと変身する事ができるようになっていた。

当然の事、家族や友人には何も言っていない。

それに人間と怪物の形態は簡単に切り替えられるため、

これまでその事を誰にもバレずに生きてきたし、

特に優越感による殺害衝動が沸く事もなかった。


ただ、健康になって学校で過ごす時間が長くなると、

嫌な人間との付き合いもだんだんと増えてきた。

俺は他者を圧倒する力を持っている・・・。

気に入らないヤツがいるのならば簡単に殺せる・・・。

だんだんと俺はその力をさらけ出してみたくなってきた。

その我慢が限界を向かえたときだった。

とあるヤツからの連絡が突然俺の元へと届いた。

・・・『私に協力してお前の能力を解放しろ。報酬も用意する』。


俺は今、無事に標的だった4人の同級生を殺害する事に成功した。

後は警察に見つからずに学校から去れば、任務は完了だ。




「おい、そこのお前ぇ。」

突然、背後から名前を呼ばれた。

振り向くとそこには、同学年の男子生徒が

ポケットに両手を突っ込んで立っていた。


「・・・C組の瀬柳せやなぎ じんか。」

直接の関係はないが、学力が高いというのに

不良のような行動をする事で有名な問題児だ。




「まだ避難していなかったとはな。

 どうしたんだ?」

俺はとぼけた様子でそう訊いてみた。

俺の怪人態への変身段階を見られていなければ、

俺がバルガインタリ13の正体だという事を知られる由はない。


「お前こそどうしたんだ?あァ?

 なぜここに残ってやがる。」

瀬柳せやなぎが不適な笑いを浮かべる。


「お前・・・まさか見ていたのか?」

阿久沢あくざわが驚いた様子で尋ねた。


「・・・やっと『対戦相手』が見つかったから、

 他のヤツらが全員避難するまで待っていたんだよ。

 待ちくたびれたぜ・・・。」

そう言うと、瀬柳せやなぎと呼ばれた男は右手の5本指を

まるで獣が爪を立てるように曲げて、

そのまま前へと突き出した。


「対戦相手・・・何の事だ?」

「・・・変身ッ!!」

突然、瀬柳せやなぎの身体が銀色の表皮で覆われ始める。


「まさか、お前も・・・?」

瀬柳の身体は完全に獣らしき表皮に覆われ、

遂にその変身後の怪人態が姿を現す。


「お前は・・・ザフラストレイター!?

 ヤツから情報を得ていたが、

 まさか俺と同じ高校の同級生だったとは・・・。」

瀬柳が変身した姿は、一言で言えば銀色の熊だ。

が、その体毛はやけに鋭利で、

一本一本がまるで桐の先端のようにぶら下がっている。

「針熊」というのが分かりやすいだろうか。

熊と言えども、サイズは変身前の人間と同じだが、

その底なしの殺傷力は見た目で判断できる。




「お前もヤツの命令を受けたのか?

 ならば、お前が俺と戦う理由はないと思うが。」

「・・・早く変身しろ。

 俺はなぁ・・・対戦相手をずっと探していたんだよ!」

目の前にいる熊の口から瀬柳の声が聞こえてくる。

変身後、熊はまだ一歩も動いていないが、

その物凄い殺気は十分に伝わってくる。


「となると、ヤツはお前には命令を下さなかったようだな。

 よく分からないが、まぁ良いだろう・・・変身!」

阿久沢あくざわがそう言うと、阿久沢の身体にも変化が起こる。

一瞬のうちにドロドロの溶液に包まれたフォーサー、

バルガインタリ13がその場に姿を現した。


「準備はできたなァ?殺しに行くぞ?」

そう言うが早く、針熊のザフラストレイターは溶液の塊に向かって走り出す。


「お前はこの場で完全に溶かしてやる。

 この力を持ったバルガインタリ13様に勝てる訳がないんだよ!」

そう言い、溶液怪人は自身の右腕に力を込めると、

その右腕を構成する液体が突如うずきはじめた。


「食らえ、硫酸フルバースト!!」






@第2話 「フォーサーって何?」 完結


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