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ブレイキング・ローズ  作者: まるマル太
第4章 背後に潜む怪しい影??
29/42

@第25話 降臨!中二病の最強形態!!

@第25話 「降臨!中二病の最強形態!!」




上戸鎖かみとくさりが都内の会議室でレポート作成を行っている頃、

都内の別な場所ではとある男が1人、

スマホ経由で何者かと会話していた。




―――――――――――――――――――――――――――――――――




『無事に到着して何よりです。

 そのまま”バーバレス日本支部”へと向かってください。』

筋肉の盛り上がる、体格の良い男が握るスマホの奥からは、

品のある男性の声が漏れている。


「フッ、よく部外者に勘付かれずに

 あのような巨大地下施設を建設できたものだ。」

筋肉質の男は口元に僅かな笑みを浮かべると、

スマホを耳に当てたまま歩を進め始める。


『権力者たちの協力あっての成功ですよ。

 ・・・それよりも、

 いくらシリアのテロ組織を単独で壊滅させたあなたでも、

 ローズ・ブレイカーの溢れる日本で油断をしてはなりません。

 いつ、何者があなたを狙っているか、

 常に警戒体勢を取ってください。』

その電話の声を聞くと、

スマホを握る男の口元がますます歪む。


「この、時柳宋じりゅうそう 衛久守えくすに警戒しろと?

 俺様ほどのローズ・ブレイカーがこの日本にいるのか?」

『確かに、普通の者ではあなたには勝てない。

 しかし、日本は現在、かなりの激戦区です。

 それに加え、あなたの”原形”もまだ存命・・・。』

歩いていた男はその言葉を聞くなり、立ち止まった。

つい先ほどまでの笑みは跡形もなく消えている。


「あの、伊集院いじゅういん 雷人らいととかっていうヤツの事か?

 それならば、俺様も一度手合わせしたいと思っていたところだ。

 それに・・・」

スマホを握る男の表情が一段と険しくなる。


「社会の調和を乱す”ゴミ”は、誰であろうと潰す・・・。

 それが俺様のポリシーだ。」

『さすがは、バーバレス幹部の中でも

 最有力者にして最高の変わり者ですね。

 しかし、本来の目的を忘れないで下さいよ?

 我々の目的は、世界構築欲を持つ者を集め、

 その者たちに領土を一時的に受け渡し・・・』

「そのエリアの幸福度測定により優秀な構築者を決定し、

 世界を再構築し直す、だったか?」

『・・・その通りです。

 我々バーバレスとあなたの方針が食い違えば、

 すぐにでもあなたを始末します。』

「それは、元から承知の上だ。

 そもそも俺様は、お前ら無しでは存在し得なかった上に、

 お前らの”幸福度”を基準とする変革は気に入っている。」

『それは結構な事です。

 余談になりますが、明日は研究班のNEOネオを用いた実験を行います。

 決して干渉しないよう、ご注意ください。』

NEOネオというのは、あの気持ち悪い人形の事か。

 確か、ブラックマイスターだかっていう組織に貸したらしいな。

 だが、俺様が手を出す理由はない。

 明日の作戦は大人しく見守っておいてやろう。」


そこまで喋ると、

スマホを握る男は電話を切り、

スラックスのポケットへと閉まった。


「・・・今度は・・・日本の社会を”浄化”してやる。」

独り言を漏らし、

誰もいない道に歩を進め始めた。




























―――――翌日、午前9時すぎ―――――




・・・この俺、陽遊ようゆう はじめ

昨日、謎のフォーサー、

”コンセキュエント・デステニ”から得た情報を頼りに、

ブラックマイスターのテロ行為の標的にされているという

都内のとある10階建てマンションの陰に待機している。


俺は1週間ぐらい両腕の怪我で入院していて、

昨日退院したばかり。

それなのに退院早々、新幹線で岩手から東京まで来て、

しかも張り込みをさせられるなんてフザけてる・・・。


そもそもあのデステニっていうフォーサーの

言っていた事が正しいかどうか分からない。

でも、アイツは俺にHR細胞を注入した時、

既に俺がフォーサーになる運命を見通していたんだ・・・。


そうなると、今回のテロの情報も

デタラメであると言い切るのは難しい気がする。




・・・デステニが教えてくれた

ブラックマイスター団員の始動時刻は今日の午前9時。

腕時計を見ると、もう過ぎている。


ある程度の不安と、

また、多少の好奇心を抑え、

俺は何度もチラチラとマンションの入り口を偵察する。

今日の7時半にここに来てから

もう30回以上はこの動作を繰り返したはず。


今も、リアルタイムで特に異常はない。


・・・本当にブラックマイスターのヤツらが

2度目のテロ行為を行うんだろうか・・・?

だんだん疑わしくなってくるのと平行して、

俺はだんだんと自分の行為について疑問を覚えてきていた。


―――なんで、俺はこんな事してるんだ?―――


1週間前、俺はユニコォンっていうアトラクターと戦って

両腕を負傷した。

奇跡的にそれはHR細胞によって回復したけど、

また同じように変なヤツらに喧嘩を挑むなんて

普通に考えれば頭がおかしくなったとしか思えない・・・。

でも、デステニから情報を聞いて、

こうやって東京に来る選択肢以外、俺の中にはなかった。


不思議な感じ・・・。

自分が何をしたいのか、自分でもよく分からない。


ブラックマイスターを倒したいのか?

でも、それは何でだろう?


“正義の味方”になりたいんだろうか?

いや、何の見返りも求めずに

他人に尽くすなんておかしい。




俺の考えはたぶんまとまらないけど、

ブラックマイスターを倒した方が良いっていう

謎の命令だけが俺の頭では繰り返し出されている。


ここまで来たら・・・その命令に従おう。




「キャアアアッ!!」

突如俺の耳に飛び込んできたのは女性の甲高い叫び声。


反射的にマンションの陰から飛び出し、

正面玄関に向けた俺の視界に、

不穏な存在は写り込まない。


・・・そうか、マンションの中だ!


俺は玄関へ向けて全速力で走ると、

その勢いで玄関のガラス製の扉を蹴り開けた。

思ったよりドアは頑丈にできているらしく、

ガラスが割れたりはしなかったけど、

引き戸のドアを無理やり押し戸にしたから

接続部分が嫌な音を立てて開いた。


すると、侵入によって内部の人間たちの視線が

一瞬にして俺へと集中した。


・・・そこには見覚えのある怪人が1人、

マンションから出ようとした主婦らしき女性の腕を握り、

人質を取っていた。

さらにソイツの隣には見た事がない謎の怪人が

もう1人棒立ちしている。




「お前は・・・1週間前のユニコォンだな?」

俺は確実にヤツに聞こえる声でそう叫んだけど、

どうもユニコォンの様子がおかしい。


「・・・セカイヲ・・・カエルノダ!!」

ユニコォンの返答は電子音声のような聞き取りにくいもので、

俺は一瞬、それが偽物だと疑ったけど、

体色といい、声といい、どう見てもあの時のユニコォンに違いない。


「お前、何でそんな

 日本語覚えたての外国人みたいになってんだよ・・・。

 クスリでもやったのか、ハハハ。」

俺は挑発したつもりだったけど、

ユニコォンはその問いには答えず、

人質の女性をもう一人の怪人に乱暴に手渡すと、

右脚を一歩前へと踏み出す。


この時点で俺は危険を察し、

右腕の肘を曲げた状態で身体の正面へと突き出す。


「・・・1週間前の借りは、ここで返させてもらうぞ!

 サモン!マイ・・・オウス!!」

俺の超カッコ良い掛け声と共に、

右腕から見る見るうちに

身体が紺色の金属質の皮膚に包まれていく。


左手には”機械”を操る特殊な銃、

両肩からは背中側に垂れた2枚の羽の様なパーツ。

すぐさま俺はフォーサー、

メカニクス・マグニファイアーの鎧を纏った。


・・・昨日の今日でフォーサーの感覚にはまだ慣れていないし、

前のアリエスより強いのか弱いのかも分からない。

でも、アーマーとは使い勝手が決定的に違うのは分かっている。

フォーサーの表皮は俺の身体が変化したものだから、

ラグがないと言うか、俺の予想とはズレなく動いてくれる。




「キエロッ!!」

見た目だけ見たらこの間のままのユニコォン。

でも、ヤツは狂ったように連続で拳を突き出してくる。


俺はそれら全てを交差した両腕で受け止め、

とりあえず敵の拳の威力を確かめる。


・・・確か、ヤツは”蹴り”を主要な武器にしてたはずだけど、

今日は蹴りを繰り出す様子はない。

一心不乱に両腕の拳を突き付ける。




「い、痛ぇ・・・。」

俺は硬そうな自分の皮膚を過信していた・・・。

普通に痛い。

そりゃあ怪我するほどでもないけど

このまま食らい続けてたら両腕が動かなくなると思う。


「オマエヲ、コロシテ、セカイヲ、カエル!!」

「うるせぇ!お前さっきから日本語でオーケーなんだよぉ!!」

俺は瞬時にファイティングポーズを取り、

素早く右フックを繰り出す。

それはユニコォンの拳の脇を通過し、

まっすぐにヤツの腹部へとめり込んだ。


「グオォォ・・・。」

腹を押さえて前屈するユニコォンへと

俺は容赦なくタックルを命中させる。


ユニコォンはすぐに後方へと倒れ込み、

唸り声を上げながら玄関の床を転がった。


「お前、そんなに弱かったっけ・・・?」

1週間前、俺が戦ったユニコォンは

確実にもっと強かった。

今の右フックだって普通に避けていたハズ。

それが、攻撃に集中するあまり、

防御を完全に忘れていた様子に見えた。

今のアイツならアリエスだった俺でも倒せるだろう。


「・・・あと、後ろのお前は誰だ?」

ユニコォンの後方には、

フードらしきものを深々と被り、

藍色を基調とした禍々しい姿の謎の怪人が

人質の女性を捕えたまま棒立ちしている・・・。

彼はさっき、ユニコォンが劣勢になっても、

この戦闘には介入してこなかった。

見た目に反し、完全に傍観者を気取っている。




転がったユニコォンはやおら起き上がると、

腰のホルダーから2本の試験管を同時に取り出す。

片方には緑色の液体、

もう一方には黒い液体が揺れている。


確か、緑色の方は

ユニコォンの片足が巨大になる強化液。

でも黒いのは見た事がない・・・。

見た目でヤバそうなのは分かるけども・・・。




「ウオオオオ!!」

ユニコォンはのけ反りながら叫び声を上げると、

2本の試験管を傾け、自身の口へと流し込む。

と、次の瞬間、

ユニコォンの身体の群青色だったラインが漆黒に染まり、

胸部の球の様なパーツは虹色に光り出した。

右足もこの前のように巨大化している。


・・・バトル漫画で”黒い敵”はとりあえず強い。

その法則でいくと目の前のヤバそうなヤツも・・・。




「ウオオオオオオ!!コロス!コロスウウウ!!」


・・・一瞬の出来事だった。

なんと5mを越える距離を跳躍したユニコォンは

渾身の回し蹴りを俺の腹部へ向けて繰り出した。

当然、度を超えた不意打ちに反応できない!


「うおっ!!」

俺は腹部で身体を折り曲げ、

そのまま背後の玄関入り口へ向けて飛ばされる。


その勢いのまま、俺は玄関の扉を背中で破壊し、

外へと放り出された。


駐車場のコンクリートへと投げ出された俺は

急いで立ち上がろうとしたが、

入り口に開いた穴から

獲物に飛び掛かるようにユニコォンが跳躍して出てきた。

俺の動きはユニコォンの飛び乗りによって封じられ、

そのまま巨大な右足を俺の腹部へと押し付けられる。


「この野郎・・・!」

黒いユニコォンの攻撃は容赦ない。

狂ったような奇声を発しながら、

俺の腹部を繰り返し踏み付けてくる。


「さすがにちょっとは加減しろよ!」

辺りを見回す。

と、駐車場である事もあって、

自家用車が3台、俺の視界に映り込んだ。


俺は腹部を踏まれながらすかさず左手のレーザー砲を

その中のワゴン車に向け発砲。

と、ほぼ同時に俺の脳内にはそのワゴンを運転するための情報が

大量に送られてきた。


「食らえっ!!」

俺が標的にした白単色のワゴン車は

突如エンジンを蒸かして駐車場から発車する。

多少広い駐車場で加速を付け、

突進の準備が完了。


無免許運転にも関わらず、たぶんそのワゴン車の持ち主よりも

上手く運転できている自信があった。

俺の脳の命令で自由に動かせる、

つまりは俺の身体の一部となったワゴン車は、

俺を足蹴にしていた黒いユニコォンを突き飛ばし、

その瞬間に俺のすぐ横で停止した。


「グアアアアッ!」

ユニコォンは撥ねられ、駐車場をゴロゴロと転がっていく。


・・・やっぱり、ユニコォンは注意力散漫になってる気がする。

今のだって黙って撥ねられるとは思わなかったから、

よそ見をしているうちにヤツを下から攻撃する作戦を立てていたのに、

面倒な戦略は不要だった。


この一週間で、アイツの身には何があったんだろう・・・?

と、気にしてる場合じゃないか・・・。




「フザケルナッ!!

 オレハ・・・ハヤク、オマエヲ、コロス!!」

立ち上がったユニコォンは

まだ意味不明な挑発を繰り返している。

・・・もうその台詞、聞き飽きたんだよな・・・。




「もう分かった!分かったから

 いい加減戦いに集中しろ!」

ツッコミを入れる要領でイライラしながら叫んだ。

が、その時、

俺の視線は危険を察知するための情報を捕えた。


さっき中にいたフードを被った怪人がマンションから飛び出し、

両手に巨大な鎌を構えた状態で

俺にまっすぐ向かってきていた。


「くそっ!!」

動きが早くて避けられない。

鎌の斬撃は俺を素早く捕えた。


「って、痛ッ!!」

アーマーでは感じられない

自分の皮膚を裂かれるような感覚・・・。

俺にとっては初めてだ。


傷口を押さえる体勢で、

その鎌使いと対峙する。

と、俺はここでふと思い出していた。


・・・硬質化したはずの俺の身体に、

いとも容易く傷を付けた2本の鎌。

俺はあろう事かその鎌さばきに多少の見覚えがあったんだ。




「お前・・・思い出したけど、

 インステスキムか?」

それは俺がアリエスのアーマーで変身して

初めて戦った死神型フォーサーの名前・・・。

ヤツは死にそうになって逃走した後、

行方が分からなくなっていた。


・・・でも、インステスキムとは見た目が違う。

フードに覆われた顔は確かに死神っぽいけど、

両肩の盛り上がった髑髏どくろの装飾、

そしてクジャクの羽のように

背中に備えられた計7本の鎌。

類似点があるにしても、別物にも見える。




「私の名前は・・・”インスティンクト・ストラゴース”。

 殺す・・・殺す・・・殺す・・・。」

怪人はしきりに”殺す”と連呼している。

ここで俺は、目の前の怪人が、

俺の知っている死神ではない事を悟った。

喋り方はユニコォンよりも人間に近いけど、

何となく、コイツがただの人間である気がしない・・・。


「ソイツハ・・・ジンコウセイメイタイ・・・NEOネオ。」

ユニコォンが死神の隣へと並んで立つ。


「モトモト、ソンザイシテイタ、フォーサー・・・。

 ソノ、モデルヲ、レベルXエックストシテ、サイゲンスル・・・。」

・・・レベルXエックス??

何の事だ?


要は、実在したフォーサーを強化したモデルで

再現した人形って感じかな?

でも、そんな技術がブラックマイスターにあるとはビックリさせられる。


「ふーん、どうせ人形なんだろ?

 それに、ザコいユニコォンが加わったところで何ができるんだ?

 2人まとめてかかってこい!」

俺は自信満々でそう言った直後、

自分で死亡フラグを立てた事に気が付く。


俺の挑発とほぼ同時に、

目の前のユニコォンと死神が動き出す。


2本の鎌と巨大化した足を同時に受けられる訳もなく、

俺は急いでバックステップで背後へと下がる。

が、その俺の動きを読んでいたのか、

死神の鎌は両サイドから俺を囲うように

切り裂こうと迫ってきた。


咄嗟に両腕を広げ、その両側の斬撃を平手で受け止める。

が、あまりの痛みに思わず体勢を崩した。


その隙を逃さず、黒いユニコォンの右足が俺の腹部を捕える。


「ぐはッ!!」

安定姿勢に移る余裕がなく、

俺はそのまま駐車場のアスファルトへ投げ出される。


「こ、この野郎・・・。」

俺は急いでその場で立ち上がろうとするけど、

痛みでその場に突っ伏した。


・・・立ち上がれない。

それぐらいの痛みに襲われた事は

アーマー装着時には一度もなかった。


「殺してやろう!」

突っ伏した俺に鎌を持った死神が迫る。

立ち上がる事は無理そうだけど・・・。


俺は必死に頭の中でイメージする。

さっきのワゴン車が死神を撥ね飛ばす様子を。

俺の左手のレーザーを浴びせたものは

一定時間、身体の一部と同等なものになるんだ。


「ん?」

停止していた無人のワゴン車は

突然エンジンを蒸かし、

俺を切り裂く直前の死神へとまっすぐに走り出す。


そのワゴン車に向け、

死神は難なく2本の鎌で斬り付ける。

と、車はその場でフロント部分にクロスした亀裂が入り、

その瞬間にただの金属片となってしまった。

砕け散った金属片を弾き飛ばした死神は、

再び俺に向かって走り出す。


咄嗟に他の車を操ろうと左手を伸ばすけど、

もう時は遅かった。


死神は俺の左手を踏み付け、

下から斬り上げるように鎌を振るう。


俺はその斬撃で多少地面から跳ね上がり、

駐車場を転がった。


・・・この死神の攻撃は、

確実に本家の死神よりもパワーアップしている。

でなければここまでの痛みに襲われる事もないと思う。


俺は仰向けの状態で止まり、

全身の感覚の変化に気付く。

俺の身体を覆っていた紺色の金属質な皮膚は

見る見るうちに溶けるように消滅し、

フォーサーの変身が完全に解けてしまった。


・・・フォーサーでも勝てないヤバいヤツに、

どう転んでも生身の人間が勝てる訳がない。

しかも、不運にも俺には逃げる体力すらも残っていない。


詰んだ・・・。

完全に詰んだよ・・・。


地面に寝ている俺に、

死神がアスファルトを蹴り放った振動が伝わってくる。

・・・アイツの鎌で俺は・・・。


叫び声とかは出さずに、黙って目をつぶる。

そして、この一瞬でなるべく多くの事を思い出せるように、

必死に脳を回転させる。


そもそも、何で俺は戦う道を選んだんだろう?

両腕を失くして、それでももう一回手に入れて、

挙句の果てにはもう一度ヤバいヤツらと戦った。

そして、負けた・・・。


普通に考えたらただの馬鹿なんだろうけど、

俺はたった今、気付いた事がある。

・・・不満じゃない。

今のこの状況は、不思議と悔しくも悲しくも何ともない。

むしろ、心地が良い気がする。


・・・何でだろう?

死ぬ事が楽しいのか?

いや、俺の人生そんなつまらないものじゃなかったはずだ。

言うなれば・・・達成感?

そんな感覚が俺を満たす。


そう言えば、俺は、

何のためにアリエスもらって戦ってたんだっけ?

人を守るため?

正義の味方になるため?

いや・・・そうじゃなかった。

俺がアリエスとして戦った理由は・・・。




「何ッ?」

何だかおかしかった。

俺の思考も、現状も。


「・・・貴様、いつまで寝ているのだ?」

死んだはずの俺には意識があって、

横では黒いロングコートを羽織った

不気味なヤツが俺に対して呼び掛けている。

・・・俺は確実に生きていた。

まだこの世に存在していた。


「貴様、確か中二宮Xレア適合者の

 陽遊ようゆう はじめだな?

 なぜこんなところにいるのか分からぬが、

 願ってもいない展開だ。」

黒いコート野郎に無理やり右手を掴まれ、

その場に立たされる。

よろめきながら、俺はちゃんと2本足で立ち上がった。


「お前は・・・誰だ?」

コイツは見たところ、今、

俺を助けてくれた事に間違いなかった。

だったら、この場限りの”味方”で良い。


「我が名はドミクロン。

 私は普段アーマー開発を行っているのだが、

 今は偶然にも面白いものを持ち合せている。」

そう言いながらドミクロンと名乗る黒いヤツは

近くに停めてあったサイドカー付きバイクから

銀色のアタッシュケースを取り出し、

俺に差し出した。


「中身を確認しろ。」

戸惑っている暇はない。

俺は素早くケースを受け取り、

2個所の金具を開錠し、中を確認する。


その時、俺らの隙を突いてきたユニコォンが

巨大な右脚で回し蹴りを放ってきた。

が、俺の隣にいたドミクロンは瞬時にそのユニコォンに接近し、

まさに一瞬のうちに

ユニコォンはもともといた位置へと向かって飛んでいった。

・・・このドミクロンっていうヤツ、

どんな技を使っているんだろう?




「・・・フッ、私ならば、そこの2人ぐらいは

 余裕で相手する事もできるのだが、

 今は実験として

 中二病患者でもあり、フォーサーでもあるお前を使わせてもらいたい。」


開けたケースの中には、

紫色単色の電子辞書のような機器と、

それをセットするようなバックルを備えた

黒いベルトが収納されていた。


それを確認すると、

ドミクロンは俺が持っていたケースから

電子辞書型機器を取り出し、

拘束でコマンドを入力して俺に手渡した。




「ベルトを巻き、この機器をバックルにセットしろ。

 通常は声紋認証が必要だが、

 今は管理者権限でその過程を潜り抜けている。」

「・・・分かった。」

俺はベルトを取り出し、空のケースを投げ捨てる。

すかさずベルトを腰に巻いて

右手に握った電子辞書を横からスライドするようにセットした。


《Certified!!》

突然、電子辞書からガイダンス音声が流れたかと思うと、

ドミクロンのバイクからアルミ缶のふたサイズの

円形ユニットが何枚か飛び出してきた。


・・・以前、俺が装着していたアリエスと同じ変身方法だ。


アルミ缶のふたは俺の正面に”おひつじ座”を構成し、

同時に耐衝撃電磁バリアが俺の周囲に構築される。


そうなると、今度はアーマーパーツがバイクから飛び出し、

俺の身体へと次々に装着されていく。


・・・頭部は以前のアリエスと同じように

紫色の羊に金色の湾曲した角が脇から2本生えたデザインだが、

その角が巨大化した上に上方向に何度もロールしていて

芸術的な姿になっている。

そして、両肩部分と、胸部の羊も同様のデザインが採用されていて、

全身の各所のデコボコも前以上に激しい。


特筆すべき点は、

腰の両側に3本ずつ、計6本備えられた紫色の槍だ。

それらは全て同じデザインだが、

以前の槍とは違って2倍ほど太く、

両端が流線型で尖っている。


下半身はその槍を収納するため分厚いホルダーパーツで覆われており、

鎧のかぶとを下半身だけに身に付けたように見える。


そして、背中には大型のジェットパックが搭載されており、

その配色もメインカラーであるメタリックパープルになっていてカッコ良い。




「アブソリュート・アーツ社の中二宮ちゅうにきゅうXレアと、

 私のDEADデッドの技術を集約した新型アーマー、

 中二宮DEADちゅうにきゅうデッド

 夢幻貴王むげんきおうアリエス・ギャランティアーだ。」


変身が完了すると、俺を覆っていた電磁バリアは消え、

アルミ缶のふたもバイクへと戻っていった。

同時に、腰にセットした電子辞書の上画面が

ちょうど中心部で割れて、開いた。

何やら、コマンドを打ち込むためのキーボードが出現する。


「これが・・・俺の新しい力・・・?」

俺は思わず、変貌した自分の身体を見回す。

何だろう・・・この安心感。


「さぁ、早くそのギャランティアーを起動しろ。」

なるほど。

変身が完了しただけでは意味を成さない。

その点は前に使っていたアリエスと同じ。


「フッフッフッ・・・ハアッハッハッハアアアッ!!

 思い出したよ!俺の本当の力を!!」

俺はなんでフォーサーとかアトラクターと戦う事になった?


そう、それは・・・俺が中二病の中でも選ばれし者、

ロイヤル・ハイパワード・チューニクスだから、だったよな!!

そうならば、俺は中二力で目の前のヤツを倒すんだ!

俺の中二力を・・・あらためて見せてやる!


「数学より来たれ!!

 フェルマーの最終定理ィィ!!」

心地良い・・・!

メカニクス・マグニファイアーとして戦っていた時よりも、

そして、もしかしたら、前にアリエスを装着して戦っていた時よりも。


俺が叫ぶと、アリエスの全身の角が金色に発光し始めた。

それは、装着者である俺でも眩しいぐらい。


「フッ・・・やはり貴様が適合者であったか。

 こうも偶然に見つかるとは思わなかったが。」

俺の隣でドミクロンが何か言ってるけど、

そんな事はどうでも良い。

今は目の前のアイツらを倒せば良いんだ。




夢幻貴王むげんきおうアリエス・ギャランティアーとなった俺は、

アスファルトを蹴り、前方20mほどにいる

ユニコォンと死神へと向かって走り出した。





























―――――その頃、上戸鎖かみとくさりの会議室では―――――




「では、これにて失礼します。」

この私、上戸鎖かみとくさり 祐樹ゆうき

長らく本拠地として使っていた一室から、

秘書を務めていた野佐根のざねが出ていこうとしていた。


「・・・後悔していますか?

 私の秘書を務めた事を。」

スーツケースと共に佇む野佐根のざねに問う。


「いえ、後悔はありませんよ。

 思えば、いつかはこうなる時が来ると予想すべきでしたけどね。」

彼女は、いつも通り、キツい目付きのまま

私を見据えている。

正直なところ、彼女は接しにくい人間であったが、

ようやく最近慣れてきたという実感が湧いてきた矢先の出来事だった。


・・・トレディシオン・ルイナーの力を失った私に対して、

野佐根のざねはもう用がなかった。

そもそも彼女はブラッディ・オーバーキラーの使いとして現れたはずだが、

おそらくオーバーキラーが彼女に撤収の命令を出したのだろう。


「2名ほどの私の指揮下にあったフォーサーたちも

 既に解散させています。

 もう私がフォーサーとして戦う事はないでしょうね。

 ・・・野佐根のざねさんはどうするのですか?

 オーバーキラーさんの下で死ぬまで戦うのでしょうかね。」

「・・・それは私の自由です。

 上戸鎖かみとくさり様、あなたには関係がありません。」

彼女らしい応答に、

私は思わず口元を歪めてしまった。


「くれぐれも気を付けてください。

 オーバーキラーさんの目的達成のため、

 尽力する事をお勧めします。」

ブラッディ・オーバーキラーの目的、正体、などは

未だに謎に包まれている。

それ故に、警戒していたのだが、

今の私にとっては彼の事などどうでも良い。


「・・・それでは、お世話になりました。」

野佐根のざねは軽く頭を下げ、

部屋のドアノブへと右手をかけたその時だった。


「何!?」

突然、聞き心地の悪い雑音が

私の耳へと飛び込んできた。

背後を振り返ると、窓ガラスが全て割れている。


野佐根はスーツケースを手放して

私を庇うように室内に戻るが、

この部屋への他者の侵入の形跡はない。


「外ですね。」

私と野佐根は割れた窓ガラスへと近付き、

この5階の窓から外を見下ろした。

と、2人の視界には予想通り、奇妙なものが映り込む。


「・・・あれはフォーサー、ですか?」

外では、数台の車が赤い火を上げながら燃えている。

おそらく窓ガラスの損傷は

車の爆発によるものだろう。

見渡すと、辺り一面の建物にも影響が及んでいる。


そして、車道のほぼ中心には、

何やら見覚えのある白いフォーサーが浮遊していた。


「あれは・・・!」

私は思わず後退し、尻から床へと倒れ込む。


・・・有り得ない。

あの白い”宇宙人型フォーサー”は

私がとどめを刺せなかったにしろ、

死体で発見されていたはず。


それを思い浮かべると同時に、

私の脳内にはあのやかましい高笑いが響いてきた。




上戸鎖かみとくさり様、

 あのフォーサーをご存じなのでしょうか?」

野佐根は尻餅をついた私の肩に手を掛け、

床から立ち上がらせた。


「はい・・・以前とは少し容姿が変わっていますが、

 攻撃の特性的に間違いないでしょう。

 ヤツは城ヶ崎(じょうがさき) (こう)・・・。

 レボリューショナイズ社、元社長です。」

「確か、そのフォーサーは亡くなっていたはず。

 ・・・気掛かりですね。

 何者かが蘇生させたのか・・・。

 上戸鎖かみとくさり様、鎮圧しましょう。」

野佐根は私に協力を求めるような仕草を見せたが、

すぐにハッとなり、背中を向ける。


「すみません・・・前の癖で。」

「いえ、構いませんよ。

 私もあの男の事は気掛かりです。

 外に向かいましょう。」

私達2人は部屋を出て、

急いでその宇宙人フォーサーの下へと急ぐのであった。


・・・まさか、このような形で

あの男と再開するとは考えられなかった。

一体、この日本では今、何が起こっているのだ?





























―――――その頃、はじめたちは―――――




「ナニィッ!?」

アリエス・ギャランティアーの加速を乗せた拳が

ユニコォンの頭部へと命中。

それと同時にユニコォンの頭に生えていた一本の角が折れ、

彼はフィギュアスケート選手の如く空中でスピンしながら

アスファルトへと叩き付けられた。


「何だ・・・この威力は?」

俺は自分でもビックリだった。

殴ったのは頬部分だったのに、

あまりの威力に、ヤツの頭の角が弾け飛んだ。


「殺す・・・殺す!!」

登場時からずっと同じ事を口走っている偽死神にせしにがみ

両手の鎌で挟むように迫ってくる。


俺はさっきから気になっていた

アリエスの頭の角を使おうと、

瞬時に前傾姿勢に移行し、頭突きを繰り出す。


その隙に死神の鎌はアリエスのボディを捕えたが、

分厚い装甲に弾かれた鎌は死神の手を離れる。


次の瞬間、アリエスの金色の角が死神の腹部を捕えた。

角が貫通し、死神の内部まで食い込む。


「ぐおっ!?」

死神は腹から緑色の液体を撒き散らしながら

急いで後退する。


「これ、めちゃくちゃヌルゲーやん!」

思わず口を滑らせてしまった・・・。

このアリエスの専用武器であろう

腰の6本の両端が尖った槍は

まだ使っていないにも関わらずこの戦況だ。

これならここでYoutube見る余裕もある。


「・・・フッ、素晴らしい適合率だな。」

俺の背後で腕を組んで観戦していた

ドミクロンが近付いてきた。


「どうせなら、腰の”メカ・オヒツジ・ザ・ランス”も使え。

 この戦闘でデータを取っておきたい。」

彼はそう言いながら俺の右サイドのホルダーから

太い槍を引き抜いた。


「この槍・・・何で6本も用意したんだ?

 俺はタコじゃないぞ!」

「メカ・オヒツジ・ザ・ランスは

 お前の腰のキーボードで遠隔操作が可能なのだ。

 やってみろ。」

ドミクロンはそう言って持っていた槍を

回転をかけるように投げた。


回りながら飛んでいく2mほどの槍は、

マンションの壁に向かっていく。


「・・・もしかして。」

俺は念のため、念じてみた。

おいそこの槍!

そのまま進めばマンション壊すぞ!

帰ってこい!と。


すると、まさかの俺の思いが伝わったのか、

回転している槍が俺の方へとUターンをした。




「貴様、どうやってキーボードを使わず、

 槍を操作したのだ?」

隣のドミクロンも不信なご様子。


「俺の隠されし力、かな!」

戻ってきた巨大な槍をキャッチして、

ヘルメットの中でドヤ顔を作り、ドミクロンを見据えた。


・・・俺はメカニクス・マグニファイアー。

フォーサーでもあるんだ。

それは名前の通り、

俺の意思が及ぶ範囲をマグニファイ(拡張)する能力を持つ。

機械仕掛けのランスともなれば、

俺にとっては絶好の武器、という訳だな。




「後ほど詳細を聞くとしよう。

 後は好きにやれ。」

そう言い、ドミクロンは再び観戦場所に戻った。


・・・さて、再開だ。




「ブラックマイスターだか何だか知らないが、

 俺はお前らを倒す!

 そして・・・俺の望む”世界を創る”!!」

俺は20mほど前方のユニコォンと死神に向かって叫ぶ。

ヒーローが何も言わずに攻撃したら

カッコ悪いし卑怯な気がする。

だから俺はどんなにヤバい戦況でも

ちゃんと決め台詞を残したいと思っている。

さすがはロイヤル・ハイパワード・チューニクス!


無双むそう夢想むそう六槍むそう、展開ィィッ!!」

俺は叫びながら腰のメカランスを次々と引き抜き、

空中に放り投げ始める。


宙の槍はまるで意思を持ったかのように

空中の定位置で回り続けている。


「食らえッ!

 “世界変革に伴う最後の警告”!!」

技名のコールに合せて

空中の槍が2人のターゲット目掛けて飛んでいく。


「ぐああああっ!」

槍の動きが読めなかったのか、

死神が3本の槍に次々と身体を切り裂かれ、

損傷部位から緑色の液体を撒き散らしながら

その場に倒れ込む。

数秒で死神は緑色の水たまりとなり、消滅した。




残りの3本は黒いユニコォンへと迫るが、

ヤツは槍を叩き落そうと巨大な右脚を振り回している。

でも、死神を始末した他の3本に瞬時に背中を取られ、

次々と身体中を回転する槍に切り裂かれていく。


「クッ・・・キサマァ・・・。」

苦しそうな声をあげながらユニコォンは

だんだんと動きが鈍り、弱っていく。

それは遠くで見ている俺にも分かった。


「オレハァ・・・リソウノ・・・セカイヲ!!」

遂に立っていられなくなり、

地面に両膝を付いた。

それを見て、俺はメカランスを撤退させる。


「・・・お前らが犯してきた罪は消えない。

 でもさ、だったらせめて償えよ。

 亡くなった人の分まで社会に貢献しろ。」

俺は手元に戻ってきたランスを

腰のホルダーへと収納していく。


「・・・それは不可能だな。」

「ん?」

俺は背後から聞こえたドミクロンの声に反応し、

振り返ったけど、そこには誰もいなかった。


「グワアアアアアアッ!!」

ユニコォンの叫び声で

俺は再び前方に視線を移す。

と、そこにはユニコォンの背中に

黒い巨大な刀を突き刺したドミクロンが立っていた。

いつの間にあんなところまで移動したんだ・・・?


「貴様は、その死を以て贖罪しょくざいせねばならない。

 それが、何よりの社会貢献だ。」

ドミクロンは淡々とした口調で告げるが、

もはやユニコォンにそれを聞き取る余裕は

残っていないように見える。


「お前のアイデンティティーを確立せよ。」

そう言い、彼は刀をユニコォンの背中から引き抜いた。

ユニコォンは力なく崩れ落ち、顔面からアスファルトへ突っ込む。

それは、ヤツが絶命している事を示すには十分だった。


ドミクロンは刀を収めると、

こちらに向かってまっすぐ歩き始める。


「・・・あんた、ソイツ殺す必要あったのかよ?」

向かってくるドミクロンに向け、

俺は問うた。

さすがの俺でもユニコォンを殺す気はなかった。

それなのに、あれほどまでの迷い無き行動は、

俺にとっては不可解だった。


「フッ・・・社会の”ゴミ”は排除されなければならない。

 手を汚すのは私だけで十分だ。」

ドミクロンは俺の5mほど前方で立ち止まり、

黙って俺を見据える。


「問題があるとするならば、

 今ここで私を倒してみるか?」

「・・・それはちょっと。」

俺が今装着しているアーマー、

アリエス・ギャランティアーは確かに性能が高い。

でも、さすがにその開発者と戦って勝てる自信はない・・・。


「・・・お前らには感謝させてもらおう。」

突如聞こえてきた謎の声に反応し、

俺とドミクロンは駐車場の入り口の方に視線を移す。

と、そこには白いスーツに全身を包み、

髪を右サイドだけ長く伸ばした

20代半ばほどの男性が立っていた。


「貴様は、中仙道なかせんどう 武雅むがか。

 手下が殺されるのを黙って見ていたとなると、

 何かしらの事情がありそうなものだが?」

ドミクロンはその白スーツの男を知っているらしく、

皮肉を込めた様子で問う。


「・・・よくぞお見通しで。

 さすがはあの伊集院いじゅういん 雷人らいとです。」

伊集院いじゅういん 雷人らいと・・・?

どこかで聞いた事がある名前だ。


「俺のブラックマイスターは

 そこのユニコォンによって変革されてしまった・・・。

 それだけの事です。」

「と言うと、貴様は部下の裏切りによって下剋上げこくじょうに遭った、と?」

「・・・そうなります。

 他の団員も1人を除いて俺からでは連絡が取れず、

 ユニコォンに付いたと思われる・・・。

 もう俺にブラックマイスターを指揮する事はできません。」

白スーツを着た中仙道なかせんどうという男は

俺たちとの距離を詰め、

5mほど前方まで歩み寄り、立ち止まった。


「フッ、それは愚かな話だ。」

伊集院いじゅういんことドミクロンは乾いた笑いを漏らす。


「・・・ところで、バーバレスというのをご存じでしょうか?

 どうやら極秘裏に動いているテロ組織のようですが・・・。

 ユニコォンの後ろ盾にバーバレスが付いた事により、

 団員の意思まで捻じ曲げられてしまいました。」

「ほう、バーバレス・・・。

 やはり実在しているのか。」

ドミクロンの笑いが一瞬にして止まり、

真剣な口調へと変化した。


伊集院いじゅういんさん、あなたも情報を掴んでいたと?」

「・・・そういう事ならば、

 あの怪人は生き残らせておくべきだったか。」

ドミクロンはそう言い、

ユニコォンの亡骸に目をやる。


「ユニコォンはバーバレスに通じる唯一の者だと思っていましたが、

 ブラックマイスター事務所の監視カメラにて、

 もう一人怪しい動きを見せていた団員が確認できました。

 ・・・コンセキュエント・デステニ。

 ブラックマイスター唯一のフォーサーです。」

中仙道なかせんどうが出した名前に、

俺は思わず首を突っ込んだ。


「ソイツ、俺知ってるんだけど!

 デステニっていうヤツから

 今日ここでユニコォンが暴れる的な事聞いて、

 俺はここまで来たんだ。」

「・・・そうなると、

 デステニはユニコォンをハメるために活動していたのだろうか?

 いや、そうしてデステニに何の得が生まれる?」

中仙道なかせんどうも困惑の表情を見せ、

黙りこくった。


中仙道なかせんどう 武雅むが

 コンセキュエント・デステニとやらの居場所は分かるか?」

「いえ、連絡もつかないので俺には・・・。」

「おそらく、デステニという者が

 バーバレスへの最後の手掛かりになるだろう。

 見つけ次第、連絡を」

「あ、でも・・・。」

俺が口を挟むと会話が止まった。


「デステニっていうヤツは、

 多少は“未来が見える”らしい・・・。

 だから、そう簡単には捕まらないと思う・・・。」

俺の発言にはドミクロンも、中仙道なかせんどう

続かない。


「・・・とにかく、今はそのユニコォンが率いるブラックマイスターを

 潰す方が先決だと思う。」

「確かに、それは言えている。

 意味のない犠牲を出す必要はない。」

中仙道なかせんどうという男は口調を強める。


「ひとまず、全国でテロが行われている可能性もあるため、

 我々はその鎮圧を優先するとしよう。

 今のブラックマイスターが片付き次第、

 もう一度集まり、私達でバーバレスに至るための作戦を練る。」

ドミクロンこと伊集院いじゅういんの決定に、

俺と、中仙道なかせんどうはほぼ同時に頷いた。













@第25話 「降臨!中二病の最強形態!!」 完結




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