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女子三年会わざれば  作者: 渦滝まとん
4/7

トランストランスフォーム(下)

 弥生やよい 由仁ゆにという男装の少女について。

 スポーティッシュな首ほどまでの短髪、目尻の上がった、猫目気味な瞳。

 化粧っ気の無いその顔は、やや幼く見える。そのせいで、余計に中性的な雰囲気が増しているのだろう。

 そんな、遠めに見れば男にも見えなくも無いが、近くで見ればそうでない事はすぐ分かる程度に美人な女の子。

 伶ちゃんの事を、敬愛していて、近づこうとする男子を時々脅しているらしい。僕もまたその被害者の一人だ。

 ……弥生については、その程度しか知らない。

 だからまずは彼女を知るべく話し合いをしてみよう。と、弥生を探そうとしていたそんなある日、何やら弥生自ら教室へやってきて、前回と同じように呼び出してくれた。

 ……という事で再び、屋上へ来ている。

 今回は放課後という事もあって、人の姿は見られない。暑いしな、ここ。

「どうした、座らないのか?」

 ベンチに座り、仁王立ちをしている弥生に尋ねた。

「あぁ、この立ち居地で話したい」

 この立ち居地というと、日陰のベンチに僕だけ座り、それを弥生が見下ろす形なのだが。

「いや、物凄く話し難いぞ」

「そりゃそうだろう、正道は僕との約束を破ったんだしね」

 そういう意味でなく。というかバレてたのか。苗字で呼んでない事。

「それとなく焼堂先輩に聞いたよ。伶ちゃんのままになったとね。約束も守れないような男の隣に座って話す程、僕は優しくない」

 うぅむ、きっついな。より一層嫌われてしまったようだ。

「それについてなんだが、弥生に何も言わず反故した事は謝るよ。ただ、一方的だったろ? だから、一つ僕の疑問に答えてくれないか? 答えてくれたら、今度こそ伶ちゃんの事を苗字で呼ぼう」

「信じられない」

 バッサリである。

「まぁまぁ、まず質問の内容を聞いてからでも、いいんじゃないか?」

「……聞こう」

 ほんと、何か偉そうなんだよな。妙な男口調で喋ってるからか?

「どうして伶ちゃんは強くなったのか、教えてほしい。知っているんなら」

「かなりプライベートな事じゃないか。そんな話できるはずないだろう? 交渉決裂だ」

 吐き捨てるような言い草だった。少し凹むな……。

 しかし、ふと思うのだが、この場合、僕にデメリットあるのか?

 前回は、苗字で呼んでも大して問題ないだろう、と思って引き受けたけれど、伶ちゃんが嫌がるので今回はそうもいかない。

「なら僕も、苗字で呼ぶ約束はできないな」

「なら、僕の事を男だと思い込んだ正道に襲われかけた、って焼堂先輩に言いつけよう」

「ホモと強姦魔の称号とか最悪すぎるっ!」

 こいつは、なんて恐ろしい脅しをしてきやがるんだ……。もしや、他の男子にもこんな脅しをしていたのか? 

 どの道、梓達がフォローしてくれるだろうから、ホモ疑惑は取れるだろうし、強姦なんて信じない、と思う。……が対応が面倒だな。

 第一それでも僕は、やっちゃいねぇんだし。自作自演ダメ、絶対。

「わかった。ならこれでどうだ。……最終手段」

 そういって僕はとっておきのモノ、――懐から一枚の写真を取り出した。

「これは……!?」

 一瞬チラリと見せて、すぐしまう。

「そう、伶ちゃん(小学生)の写真だ。これが欲しくば話すんだ」

 あれ? よく考えたら、今の強い伶ちゃんが好きなんであって、昔の伶ちゃんには……。

「ぐっ……。卑怯な手をっ」

 興味あるのか!? こいつ、恋愛感情は無いとか言ってたけど、本当だろうな。

 まぁいい。今は兎に角、話を進めよう。

「どうする? 十数える前に返事を出すんだ」

 そうしてカウントを始め、

「三、二、一……」

「わかった! 話そう!」

 フィッシュ!! 何だか知らないが、勝った気分だ。

「だ、だが正道も焼堂先輩の事を、ちゃんと苗字で呼ぶんだからな!? 分かってるな!?」

「あぁ、勿論だよ。では話してもらおうか」

「くっ。すいません焼堂先輩……」

 何か僕すっごい悪者っぽいんだが。脅されてたのはこっちなのに。

「言っておくが、僕も詳しくは聞いていない。抽象的な言い方しかされなかったからね」

「あぁ、それで構わないよ」

「うん……。あれは三年に上がる前かな? 正道と同じく、疑問を持って尋ねた時だ。殆ど同じ質問をしたら、焼堂先輩はこう答えてくれた」

 

『助けたい奴がいるんだよ。

 そいつは昔っから、理想の自分を信じて戦って、傷だらけになってた。なのにその生き方を変えようとしないんだ。どれだけくじけそうになっても、理想の自分を信じて、戦い続けてた。

 馬鹿みたいだろ? でもな、そんな不器用な生き方を、あたしはかっこいいって思った。

 今は遠く、手の届かない場所へ行っちまったけどさ。

 でももし、そいつが帰ってきたら、その時は、傍で支えてやるんだ。その為にあたしは、強くなった』


「という感じの事を言ってたよ」

「……はっ。惚れてしまいそうだな」

 なんて言いながら、――僕は驚愕していた。茶化したくなる程に。

 弥生の話した内容に出てきた『そいつ』というのは……、恐らく僕だ。

 つまり、なんだ? 僕の為なのか?

「そうか……。分かった。それだけ聞ければ十分だ、ちゃんとこれからは、焼堂さんと呼ばせてもらおう」

「なんだか、……妙に殊勝になってないかい?」

「いや、そんな事は……」

 あった。

「話しながら思ったが、話に出てくる子って、……正道、君の事なんじゃないか?」

 こいつは本当に遠慮がないな……。思慮がないとも言える。兎も角思いやりにかけてやがる。僕相手だからだろうが。

「どうして、そう思う?」

「いや、遠くに行ってしまってた人で、かつ焼堂先輩と仲が良い人、って僕が知る限り正道ぐらいだからだ」

 まぁ……、伶ちゃんに詳しいのなら、分かるか。

「もし、そうだとしたらどうする?」

「焼堂先輩がそこまで想うにふさわしい人間なのかどうか、知りたいね」

 にやりと、口角を上げて、弥生は笑った。

「……どうやって?」

「例えば今日、都合良く焼堂先輩は呼び出されてる。北東高の連中だ。知ってるかい?」

 北東高な……。スポーツは強いが、偏差値は高くないという、分りやすい学校だ。少しばかり気風が荒い、って所もまた。

「知ってるよ。そこの呼び出しって事は、交流を深めたい、なんて理由じゃなさそうだ」

「ある意味、交流を深めようとしてるんだと思うけどね。拳と拳で語るってさ」

「弥生は、それを止めようと思わないのか?」

「思わない。だって、焼堂先輩が圧勝するのは分かってるから。そんな、焼堂先輩なら余裕の相手に対して、その想われてる相手が、どれだけやれるのかを知りたいな」

 ……つまり挑発されてんのか。そんなことよりも、大事なのは伶ちゃんが呼び出されてるって話だ。それを教えてくれた弥生には、――理由はどうあれ、感謝しかない。

 さて、僕はどうするべきだ?

「なるほど、面白い話だな。僕が裏番とか呼ばれてるのは知ってるな?」

 答えは……、本腰を入れてみる、だ。

「みたいだね?」

「僕は……、いや、俺は本来、裏番なんてもんじゃないんだよ。正しく番町なんだ。不在の間、焼堂に貸してただけでな。良い機会だ、本当の番町が誰なのか、教えに行こう」

「ふぅん、このさい、三年間居なかったのに? って聞くのはやめとくよ」

「……ちゅ、中学からの繰り上がり制なんだよ」

 自分でも、無理があるなとは思うが、やむを得ない。

「そういえば、正道も何か武道をやってるんだろ?」

 そこまで織り込み済みか。掌で泳がされてる感が否めないな。

「まぁ、少しな。弥生は何かしてたのか?」

「いや、何もしてないけど……。どうして?」

 それでよく、伶ちゃんに近づこうとするような奴らを脅してたな……。

「何となく聞いただけだ。で、場所はどこか知ってんのか?」

「ああいうのは古式ゆかしい集団みたいでね、いつもの場所で待ってるとさ……。って言っても分からないだろうから説明すると、近くに大きな川があるだろ? そこの遊歩道沿いにある低いフェンスの、鍵が掛かってる場所、それを乗り越えてから川に下りて、上流に行けば下に開けた小島が見える、そこが待ち合わせ場所だよ」

「……よし、覚えた。っとそうだ、頼みがある」

「なんだい? 因みに、道具の持ち込みは禁止だよ?」

「元から、持って行くつもりはねぇよ。焼堂に待ち合わせ場所が変わったと、伝えておいてくれ、場所は好きに選んでくれていい」

「さんを……、今はいいか。……仕方ないね、承ったよ」

「終わったら連絡する。携帯の番号を教えてくれるか?」

「どうぞ」

 軽く携帯を操作して、アドレスを交換した。

「時間は?」

「ちょうど一時間後だね」

「そっか。下見を兼ねると、ちょうどよさそうな時間だ。じゃ、焼堂に連絡頼んだよ」

「正道。もう少し喋り方、安定させられないかい?」

「うるせぇ」


 さて、バレバレな予定調和というか、猿芝居を経てから大体三十分と少し。

 件の川の、指定された場所のフェンスを越えて、二メートルほどの壁を降りると、ちょうど干上がった場所に出る。その辺りは高く伸びた草が生え、上からも左右からも見難く、さらに対岸も遠い。なるほど、見られたくない事をするのによさそうな場所だ。

 そして少し上流へ行くと、確かに、ちょうどリングの様に開けた場所があった。

「タイマンに使われるのも、納得だな」

 それから、しばらく周辺を満遍なく歩き回り、時間を見る。と、もう5分前だった。

 時間が間違ってなければ、そろそろ来るはずだが……。

「お、来たか……?」

 草を掻き分ける音の後、ヤンチャそうな格好の男が三人、姿を表した。

 坊主にソリコミを入れた大柄な男を先頭に、特に特徴の無い、どこにでもいそうな筋肉質だが細身の茶髪と金髪。

「あぁ? てめぇだれだ」

 先頭のソリコミが、だみ声を上げた。

「裏番町、改め真番町の正道だ。よろしく」

 苗字まで言うと面倒が起きそうなので、名前だけにしておく。

「はぁ? てめぇが番町?」

「兄貴。自分、裏番が最近やってきたって話、聞いた事ありますよ」

「俺もっす。聞いた姿と似てるから、多分あってるんじゃないっすかね」

「へぇ……」

 遠慮のない視線で、上から下までをじっくりねめ回す、兄貴と呼ばれたソリコミの男。

 彼が今回の相手だろうか。

「そう、俺が裏番と呼ばれてた男だ。でもな、それも間違ってんだ。本当の番町こそ俺なんだよ」

 という設定。

「へぇ、いいねぇ。良い威勢じゃねぇか。最高だよ。おりゃ確かに女も殴れるが、女より男相手のが、勝った時に気持ち良いもんだ。周りの奴らも、喝采をくれそうだ」

 なんともはや……、友達になれそうなタイプじゃないな。

「さて、最初に確認を取るが、これは決闘ではない、とさせてもらっていいかな?」

「てめぇ……」

 ふざけてると取ったのか、ソリコミが眉間に皺をよせて、一歩近づいてきた。

「ま、待て! 理由があるんだ!」

「あぁ?」

 待ってくれた。見た目に反して律儀だな……。

「決闘法っていうのがあってだな、つまりは決闘しちゃ駄目ですよって法律なんだ。だから、これから行うのは、格闘技の練習。組み手という事にしてもらいたい」

「……わけがわからん、好きにしろや」

「それはよかった。よし、じゃあやろう!」

「しまらねぇなぁ……」

 それは僕も同感だが、法は守らねばならぬのだ。

 さて、そんなこんなで荒事の始まり。

 まず様子見をするべく、じりじりと距離を開けて見守る。

 間合いを確認しつつ――、と不意にソリコミが一気に飛び込んできた。喧嘩慣れしてるのだろう、躊躇が無い。

 くそ、やるしかないな。

 体格差的に、まともにぶつかったら、軽く吹っ飛ばされてしまう。

 考えながら、踏み込む。前へ。

 ソリコミが攻撃に移る前に、ぎりぎりで一歩斜めに飛んで交差、同時に左腕を引っ掛ける形で、ラリアットに似た一撃を顔面へ入れる。――が、予定ではこのまま倒すはずだったのに、予想以上の重さに負けて、ただの打撃になってしまった。

 その上、ソリコミは、少し目を気にした程度で、当たり所が良くなかったのか、さほどダメージを感じてないようだった。そう上手くはいかないか。

「速いじゃねぇか、番町さんよ」

「そんな事より、もう少しやせてくれ」

 返事も無いまま、ソリコミはゆっくり近づいてきた。正直困る。真っ向からの肉弾戦はまずい。

 一撃で致命打を与えれなかったのが、かなりの手痛いミスだったな。

 奥の手を早速使うか……。後はそれぐらいしか、手段を知らないってだけだが。

 ゆっくりと近づいてきたソリコミの攻撃を待つ。

 突然飛び掛られても大丈夫なよう、脚は閉じ気味、踵を少し浮かせ、両の掌を開いて構えた。

 ソリコミは強気に拳を構えている。その方が僕にとっては有り難い。

 そのまま何度か攻撃を見る……、つもりだったのに、鋭いステップで一気に入って来られた。

 ボクシングでも習っているのか、綺麗な入り込みで驚かされる。さばけない程では無いが、休まず入り込んで来るので、しんどい。

 そのまま一発、二発と不利の大きなパンチをさばきながら、ステップ。場所が開けている為、すぐに距離を空ける事が出来た。

 さて、しかし今度こそ最後の手段だ。なぜなら下がり過ぎた結果、後ろは川だから。

「もしかして、狙って追い詰めたのか?」

「まぁな」

 そうか、こいつらは何度もここで似たような真似してるんだっけ。常套手段なのかもしれない。

「さて、余裕ぶってるが、もう終わりだ。てめぇ、前の番町より弱いんじゃねぇか? 逃げてばっかでよ」

「俺はスロースターターなんだよ」

「じゃあ火が入る前におしまいだ、番町さんよぉっ!」

 叫んだソリコミは、最初と変わらない速度で入って来る、がワンパターン! タイミングを合わせ左を避け、――今だ。

 続くソリコミの右ストレートを、左手で手前に弾き、ソリコミの体を泳がせつつ、自分は前へ、すれ違い様に右の掌底で目を打ちながら背後を取って、後頭部に左の掌底、横腹に右拳を叩き込み、そして膝裏を蹴った。

「もいっちょ!」

 さらに、バランスを取ろうとふらつくソリコミの右手を掴み捻って、体重をかけながら地面へ倒し、

「まだまだっ!」

 膝をソリコミの左肩に乗せて押さえ、掴んだままの右手を後ろで、……極める。

「がっ!?」

 これで、ソリコミの動きは完全に封じた。

「どうだろう、俺が番町だって、認めてもらえるか?」

「はぁ……、ごほっ……。何、だ? 巧い……、技だな……」

「どうも。じゃあ選んでくれ、暫く利き手の使えない生活か、負け――」

「けど……、はっ。詰めが、甘いわ」

 言葉の意味を考える前に、極めた右の肩骨を外そうとして、――瞬間、吹き飛ばされた。

「うおっ」

 体重の軽い僕を、左手と背筋を使って強引に跳ね飛ばしたのか。

 何て、状況を判断してるうちに転がった僕へ、ソリコミがそのままのしかかろうとする。

「おらぁ!」

「男は、勘弁っ! ……ぶぁっ!」

 何とか転がり避ける、……その先は川だった。

 幸い浅く、足首ほどまでしかなかったので、濡れ鼠になっただけだが……。ともあれ、立ち上がる

「けっこう冷たいな……」

「良い男になったなぁ、番長さん」

 ソリコミも立ち上がって軽口を叩く。距離は1m程しか空いていない。

 まずは距離を開けようと、三歩下がったところで、水深が増した。

 ……背水の陣か。いや、水中だけど。

「腹、くくれや」

 ソリコミが、川へ一歩足を踏み入れる。

「首よりは、ましか」

 嘯いて拳を構え、――ソリコミとの殴り合いへ、突入した。


 ――結果。勝った、と言いたい。最後は泥仕合も良いところだった。

 倒した時のダメージが残っていたのか、ソリコミの拳の威力と速度は最初よりも落ちていて、ゼロ距離での殴りあいが何とか成立した。

 でなければ、間違いなく負けていただろう。

 そして今、僕は震える足で何とか立っていて、ソリコミは川に倒れこんでいる。

「はぁ、はぁ、がふっ。はぁ……」

「うっ、ぐぅ……、ごふぉ……」

 お互い息も絶え絶えだった。

 やがて、連れの二人が何も言わず近寄ってくると、倒れこんだソリコミを支え立たせた。

「最高にさっぱりしたぜぇ。今回は俺の負けだ。またやろうや、番町さん」

 実際は、かなり濁って聞き難い声だったが、大体そんな台詞を吐いて去っていった。

 その背に何も答えず、――正確に言うなら答えれず、川へ倒れこんだ。

 冷たい水が、火照った体に気持ち良い。

 ……何とか終わった。

 しかし、弥生に連絡すると言った物の、こんな状態では顔を合わせられないな。

 鏡を見ないと分からないが、全身の変な熱と、薄目しか開けれない感覚、恐らく顔は青痣だらけの血だらけだ。

 痛む手を顔の前に持って来ると、水で洗われたモノの、手指の甲が切れてしまって血が滲んでいた。

 二人には悪いが、もう少し休んだら今日はこのまま病院へ行って、ネカフェかどこかに泊まろう。

 そうすれば明日には、階段でこけた、と言えるぐらいになってるはず、……だ?

 ぼやけた頭で、今後の計画を立てていたのに、何やらまたフェンスの揺れる音と、草を掻き分ける音がしてきた。嫌な予感がする。

「先輩!?」

「正道!?」

 やっぱり沙紗と、案の定の伶ちゃん、それともう一人いるな、弥生か? 起き上がりたいが、まだ少し感覚が鈍く、水の中でもがく程度になってしまった。

「っとと……?」

「先輩!? 大丈夫ですか!? 動かないで! 救急車!! 今すぐ救急車呼びますからね!!」

「正道!! お前、何やってんだよぉ……」

「君、なんで? 武道やってるって、言ってただろう? 何で、そんな……」

「残念、……武道は、武道でも、剣道……、だ」

 弥生の焦りと心配の混じった声に、してやったりと小さな満足感。

「はぁっ!? 君、どうしてそれをもっと早く、……いい、今は病院だ」

 やれやれ、大事になったな。立てた計画は恐らく沙紗のせい、というかおかげで、無駄になっただろうし、後は任せて少し眠ろう。さすがに疲れた……。

「正道!? しっかりしろ!」

「ちょっと、……寝る」

 伶ちゃんの心配そうな顔に、ちゃんと言えたか分からないけれど、答えて。目を閉じた。



「……ん、あれ?」

 目を開けると、天井が目に入った。ここど――

「まー君!」

「いたぃっ!?」

 痛い……。何だ? 頬が痛いぞ……? 叩かれ、た?

「何してるのよ!? お姉ちゃん、本気で心配したんだからねっ!?」

 あぁ、そうだ思い出した。喧嘩したんだっけ……。で、寝ていた僕に、姉さんが張り手を食らわしたわけか。むちゃくちゃするな……。いや、心配かけた僕が悪いんだけどさ。

 さておき。どうやら、自分の部屋のベッドに寝かされてるらしい。

 見渡すと姉さんに伶ちゃん、弥生がいた。

「っとお、おぉ……?」

 体を起こそうとしたが、痛みで上手く起き上がれなかった。

「だ、大丈夫か!? まだ寝てろ! 入院する程じゃねぇらしいけど、怪我してんだから」

「あぁ、ありがとう。結局あれから、どうなったんだっけ」

「救急車を呼んだのは、覚えてんな?」

 そういえば何だか、車の中で意識の確認をされた覚えがある。で、病院へついてから検査うけて……。

 痛み止めの影響か、けっこうボケてたんだな、うろ覚えだ。

 タクシーで帰ってきて、家へに入る時、姉さんが僕を肩へ担いでいたような記憶があるが……。それも気のせいだな。幻覚だ、幻覚。

 兎も角、それから何か飲んでそのまま、またベッドで寝たんだっけ。

「合ってる?」

「良かった。まー君が全部忘れてたら、どうしようかと思ったわ。頭の検査とかも、後でしなきゃならないからね? ほんとにもう……。で、何があったの?」

「あれ、何も話してない?」

 弥生が気まずそうに、こっちを見ていた。

「うーん。別にそんな難しい話じゃないんだよ? 弥生から、伶ちゃんが喧嘩するって聞いて、僕は伶ちゃんより強いって嘘をついた。それで、僕が代わりに行くから、ついでに伶ちゃんへ場所変更の嘘をつくよう、弥生に頼んだんだ」

 軽い声で、雑に説明してみた、が。

「正道……、ざけんなよっ!! なんでそんな事したんだ!!」 

 伶ちゃんがぶち切れだった。

「その答えを言う前に、僕の方の質問に答えてくれよ。伶ちゃん」

 内心すごくビビってるのを隠して、聞いた。

「あぁ!?」

 伶ちゃんは僕の胸倉をつかむと、鬼の形相ですごんできた。

 なるほど、普段はこんな怖いのか。スケバンという呼称に、今更ながら納得。

「今度はちゃんと答えてほしいんだ。伶ちゃんがそんな風になったのはどうして?」

 そっと、伶ちゃんの手を押しのけて、聞いた。

「……なんで、答える必要があんだよ」

 勢いをなくして、けれど伶ちゃんは、真剣な顔で不満そうに言った。

「伶ちゃんがそんな風になった責任は、僕にある。そう思うからだよ」

 冷静に、余裕を持って話すのに大切なのは、言葉を重くしすぎないことだ。軽くしすぎてもいけないが。

「違うっ。正道のせいだけなんかじゃ、ない」

 言う伶ちゃんの言葉は重く。視線を外し作る乱暴な口調は、余りにも分かりやすい。

「ってことは、少しは僕にも責任があるんだよね? 教えてよ」

「………」

 しかし、伶ちゃんは口を開こうとしなかった。

「ごめん、二人とも少し、出ててもらえるかな?」

 姉さんと弥生に向けて言うと、頷き、従ってくれた。弥生は、何か言いたそうだったが。

 あいつともまた、後で話を合わせるよう頼まないといけないな。

 さてと、

「僕はね、海外に行っても理想を見つける事ができなくて、……もう、全て諦めてしまおうと思ってたんだ。でも、帰国したら皆が変わっててさ、そうもいかなくなった」

「いきなり、なんだよ」 

「伶ちゃんの家で話した時の続きだよ。……僕は、気づいたんだ。大事な見落としをしてた事にさ。そもそも、皆は、どうして変わったのか。僕はそれを知る必要があった」

「それ、は……」

 あからさまに、伶ちゃんの顔色が、変わった。

「僕が原因なんだろ?」

「………」

 答えは無い。それが、答えだ。

「伶ちゃん。僕の理想なんかに引きずられて、本来の自分を失ってしまうのはダメだよ。そんな事を、伶ちゃんにさせるぐらいなら、僕が番町になる。僕が変わるよ」

 伶ちゃんが黙ったまま一歩、近づいてきた。

 先程の姉さんみたいに、息がかかるぐらい顔を近づけて、

「っ……!」

 僕を殴った。

 声が出ないぐらい痛い。グーは駄目だろ、グーは……。

「そうやって……、自分の中で勝手にまとめて、自分ばっかり傷ついて、良い格好して、誰にも頼らず解決しようとするから。そんなだから……。そんなお前だからっ! あたしは強くならなきゃいけなかったんだろ!?」

 僕の襟を掴み、額を胸に当て、伶ちゃんは叫んだ。

「あたしはさ、ずっとずっと後悔してたんだ。正道、お前があたしの知らない所で、誰かを守る為に、心も体も傷だらけになってたのに、何もしてやれなかったってさ」

 ……なるほど。昔の僕は知らないところで、余計な心配を大量生産してたわけだ。

 喉にかかった言葉を、けれど飲み込んで、耳を傾けた。

「だから、強くなろうと思った。あたしが、正道を守ってやる為に。……でも考えてる間に正道は海外に行っちまった。間に合わなかったんだ……。それでまた後悔が増えた」

「そんな……」

「正道を助けるためだけに、強くなったのにさ、何もできなかった自分が許せなかった。……それから勉強も鍛錬も、何もかも身につかなくなって、でもどうしたらいいか分からなくて。……結局、学校も行けなくなった」

 薄々気づいてはいたけれど、嫌な事実だ。友達の人生を、悪い方向へ変えてしまったなんて。昔の自分は、助けになるために、やっていたはずなのに。

「でも、留年して気づけたんだ。これで正道と一緒になれる、ってさ」

 伶ちゃんは、涙声ながらも、本当に嬉しそうに言った。

「それから、正道が帰ってきたら、今度こそちゃんと守ってやれるよう必死に勉強して、体も鍛えなおした。すぐに、あたしは昔の自分に戻れた。いや、昔以上になったんだよ」

 伶ちゃんは、僕の前髪を書き上げ、額のガーゼに触れると、顔を曇らせた。

「でも結局これだ。あたしが今どれだけ悲しいか、分かるか? また守ってやれなかった。挙句、今のあたしが負担になってる何て……。一体どうすればいいんだよ。なぁ、正道。教えてくれよ。あたしもう、分かんねぇよ……」

 再び胸元へ、伶ちゃんの額が力なく当てられた。

 言葉はまだ、まとまっていない。けれど、一つだけ分かったことがある。

 僕も、求めなければいけない。まるで、あの日の沙紗のように。

「……海外に行ってもね、皆が僕の理想を、偽善だって笑ったんだ。でも、そんな奴ら、なんの障害にもならなかったんだ。目の前の何一つ助けられない、助けようとしない。そんな奴らに何を言われようと、どうでもよかったよ」

 むしろ、そんな奴らの前で誰かを助ける事を、誇りにすら感じていた。

「でも、そんなのよりもっと……、一番辛かったのは無関心だ。誰からも僕の理想を認めて貰えない。落ち込んだよ。自分のしている事は、本当に無意味なんじゃないかって。……そして、僕は悩みに悩んでやがて、心が折れてしまった。……これが、僕の弱音」

 伶ちゃんが頭を上げようとして、でもそれを手で制し、髪を撫でた。

 まだ終わりじゃない。

「僕は、父さんや兄さんからの言葉を待ってた。そしてそんな自分に気づいて、それでは理想と正反対の、誰かが助けてくれるのを待つだけの人間じゃないか、って思ってしまったんだ。……馬鹿だったよ。子供なんだから、素直に助けを求めれば良かった」

 反省だ。そして、間違いは繰り返さない。

「だからさ伶ちゃん。お願いがあるんだ」 

 伶ちゃんが、顔を上げ、

「……おぅ」

 赤くなった目で、拗ねた風に、答えをくれた。

「助けてほしい」

「ん……」

 ぐずる子供のように、伶ちゃんが小さく頷く。

「……何でも、言えよ」

「もう辛い事を、一人でどうにかしようとしない。弱音も沢山吐く。だからさ、伶ちゃんも番町を辞めて、昔みたいな、ただのお姉さんに戻ってくれないかな?」

「あたしがそうなれば、正道の救いになれるのか?」

「うん。だってこれは僕の我侭、弱音だしね」

「……あたしは、正道の助けに、なれるんだな」

「……ずっとずっと昔から伶ちゃんには、助けてもらってばかりだった。それだけじゃない。僕の為に沢山思い悩んで、強くなってくれた。……本当に、ありがとう伶ちゃん」

 伶ちゃんは、強く強く僕の襟元を握り、顔を埋めて、

「よか、った……。よかった、よぉ……。ぅ、ひぅっうっ……」

 嗚咽を漏らした。ずっと堪え続けてきた何かを、吐き出す様に。

 そんな伶ちゃんの頭を撫で続けた。手が痛かったけど、撫で続けた。

 きっとこんなの以上に、僕のせいで伶ちゃんは傷ついてきたはずだから。

「もう、どこにも行かねぇよな?」

「頼りになる可愛いお姉さんがいるから、もう逃げ出さないよ」

「くっ。……このっ」 

 僕の生意気な言葉に、伶ちゃんが腕を上げたので、もう一度殴られるかと思ったけれど、手はゆっくり僕の胸に優しく落とされた。

「約束、だからな」

 静かな吐息だけが部屋に響いた。 



 それから、僕は三日ほど学園を休み、検査などを受けた。

 そしてその間に、伶ちゃんは番町の引退宣言をしたらしい。

 誰が引き継ぐのかはわからないので、突然の引退に揉めてるかも知れないけれど、関わらずに居たいので、関係者一同には申し訳ないが、知らぬ存ぜぬを貫こう

 ……さておき、番町をやめた伶ちゃんはというと、すっかり元通り……、何て事はなく。

 学園復帰初日。初めてちゃんと起こしに来てくれた伶ちゃんは、……いつものスケ番スタイルだった。なんでだよ。

「いや、制服こういうのしか持ってねぇし、今さら口調を戻せ、って言われてもなぁ」

 との弁。

 それはそうだが……。何やら沙紗と変わらないような結果で、少しげんなりだ。

 ま、見た目は兎も角、名称は元番町になったっぽいので、良しとして、……いいよな?

 そんな風に、半ば無理やり自分を納得させた僕だが、しかし思いがけない方向から問題が見つかった。

 同日、学園に着いた時の事だ。突然背後から、

「おはようございます番町っ」

 と見知らぬ金髪の女の子に挨拶をされた。

「北東の奴らが、番町は正道って男だったとかぬかしやがって、何を言ってんのかと思ってたら、焼堂先輩が引退するって言うじゃないですか。という事は、その代わりに裏番が表に出てくるんですよね! これからお願いしまっす!」

 金髪ちゃんは一方的にそう述べると、見習いたくなるようなお辞儀をして去っていった。

「さて、説明聞こうか。番町さんよ」

 その後、隣で聞いていた、伶ちゃん他一同から詰問を受け、真剣にこれからを考えるのだった。

 ――で、今回の件は終わりだと思ったのに、残念ながらそれでは終わらなかった。

 弥生の問題がまだ片付いていなかったのだ。




 またまた同日、朝の教室で弥生から昼休みに屋上へ来いと、呼び出しを貰った。

 一体次はどんな命令が来るのやら……、と考えながら、迎えた昼休み。

 今度はちゃんと、お互いにベンチへ座っての会話。

「で、なんで僕の事を、焼堂先輩やお姉さんに話さなかったんですか。個人的には、助かりましたけど……」

 責めたいんだか、感謝したいんだか、どっちなんだこの子。

「なんでって、話さない方が、都合が良かったからだよ」

「都合が良い、ってどういう事ですか?」

 うん? 何か違和感……、あ、そうだ。

「そういえば、敬語に戻ってない?」

「な、何か問題でも?」

「いや、無いけどさ」

 変な奴だな。

「いいから、答えてください!」

「いや、簡単だよ。伶ちゃんに番町を辞めてもらう為には、僕が全部仕込んだって話にした方がよかったって事だ」

 ちゃんとした答えを出したのに、けれど弥生は不満そうに腕を組んだままだった。

「そもそも。焼堂先輩が何故、番町をやっていてはいけないんですか。引退宣言で、揉めたらしいですよ?」

「伶ちゃんが、望んでやってた事じゃないからだ。弥生の想像通り、全てじゃないけど殆ど僕が原因で、その結果としての番町って事らしいしな」

「……。それじゃ結局、あの喧嘩は自業自得じゃないですか」

「狙った訳じゃないけど、その通りだ。だから、庇われたとか、思う必要は無いよ」

「……そもそも僕も被害者みたいなものですよ。……勝手に傷だらけになって」

 何がそこまで気に入らないのか。やたら不機嫌そうに、弥生はぶつぶつと文句を零した。

「嘘は言ってないだろ? それに、僕が負けると思って挑発したんじゃないのか?」

「そういうのを、欺瞞って言うんです。第一、負けるにしても、逃げると思ったんですよ。それがまさか、あんなボロボロになるなんて、……予想出来ません」

 なんだろうこいつ、根っこは良い子なのかもしれないな。

「逃げる、ね」

「思いもよらなかった、って感じですね……」

「いやいや。んなこと、ねぇよ?」

「……。まぁ、兎に角。焼堂先輩を苗字で呼ぶ命令は、撤回します」

 伶ちゃんと連呼してるのに何も突っ込みないな、と思ったら。そういう事か。つーかやっぱ命令だったのかよ。

「助かるよ。苗字で呼ぶと、何だか嫌みたいでね、伶ちゃん」

「でも正道以外の人は、大体苗字で呼んでるんじゃ?」

「そういえばそうだな。付き合いが長いからじゃないか?」

「……そういう事にしておきます」

 なんとなく不満そうな、理由は分かるが黙っていよう、的な雰囲気を感じたが。納得してもらえた様なのでよし。

「あぁ、そうだ。一つ質問があるん――」

 と、言おうとしたと同時に、チャイムがなってしまった。

 この機会だし、ついでに弥生の問題も解決しときたかったんだが、放課後でいいか。

「えっと……、放課後、時間あるか? 聞きたい事があるんだ」

「構いませんけど。じゃあ先にHR終わった方が教室に行く、って事にしましょう」

「了解。そういや、弥生のクラス知らないんだけど」

「隣ですよ……。何で気付いてないんですか」

 まじか。知らなかった……。

「うん。まぁそういう事もある。んじゃまた放課後」

「はい」

そうして弥生と別れ、教室へ戻ると、当然の様に僕の机を囲んでいる女子一同から、何の話をしていたのか詰問された。

 適当に誤魔化し、放課後もまだ話があると言うと、彼女達は小さく「ホモ……?」と零したので、黙って一発ずつはたいた。

 そもそも、あいつは女子だろうに。男装してるけど。



 時は経って放課後。

 HRが終わったので、隣の教室へ向かうと、見知らぬ男子三人と一緒に歩いている弥生の姿が目に入った。

 それとほぼ同時に来たメールを確認すると、弥生からだった。

『上級生の方が用事だそうで、呼び出されました。話が終わったらまた連絡します』

 絵文字も顔文字もない、かなり簡素な一文だった。

「ふむ。大丈夫だとは思うけど、確認だけしとくかなぁ……」

 掃除用具入れから、箒を二本取り出して来てから、弥生の後を追う。

 彼らは学校の外へ出ると、傍の長い坂を下って、途中で舗装されていない砂利道に逸れて、そこを道なりに、僕が沙紗と会話したのとは別の、山の中に作られた公園へと向かっていった。

 そこはかなり大きな公園で、今来た道以外にも、いくつかの入り口がある。

 そういう広い公園だからこそ、人目につかない場所がどうしても増えてしまうようで、今回弥生達が向かったのもそういう場所の一つ。公園の外側の、狭く細い石段を下っていった先、小さな大理石のテーブルがある、穴場だ。――夜になると、怪しげな声が聞こえてくるとか来ないとか。

 彼らはそこに到着すると、まず弥生を突き飛ばした。

「おう。減点一だな……」

 そして地面へとしりもちをついた弥生を囲んで、話し合いを始めた。

 ――内容は簡単。『番町が男になった今こそ、女の時代はきっと多分恐らくほぼ間違いなく終わりだ。なのでまずは生意気なてめぇから締めてやるぜひゃっはー』といった感じ。

 ……うちの学校、偏差値は低くないはずなんだけどなぁ。ピンきりか。

「ともあれ、彼らの主張は大体分かった。そろそろ行くか」

 僕がこっそりと、隠れていた木から姿を現すと、けれどまだ男子三人は話に夢中になっていて、ただ一人、弥生だけが僕に気付き、顔を上げてこっちを見た。いつもの、強気な視線で。

 そして、その視線に気付いて、男子達も振り返り、見た。

 ――箒を二本構えた不審者を。

「な、なんだお前っ!」

 驚きつつも、男子達は予め置いていたらしきバットを拾い上げる。が、遅い。

「何してんだてめぇらぁ!」

 怒鳴りながら、開いた両方の手に箒を携えて、走る。

「ひっ!」

 驚きに身をすくませている三人の内、前に居た二人へ、走った勢いのままに箒の先端を突きこんでいく。

 防御しようとしているが、重たいバットを後生大事に握ってしまっては、間に合うはずがない。

「ァッ」

「ヴッ」

 みぞおちをうまく突いてやると、二人は小さくうめいて、地面にうずくまった。

「二本持ってきておいて正解だったな」

 さて、残った一人はというと、再び箒を構えた僕を見て、戦意をなくしたのか、すぐさまバットを手放した。

「ち、違うんすよ! こいつ前番の時、すっげぇ生意気で!」

「その下りは聞きました。で、先輩はもう戦う気ないんですよね?」

「は、はい!」

 年上から敬語使われると、居心地悪いな。

「じゃあ見逃します。って言いたいんですけ、――っど!」

 先輩の足の間に箒の柄を突っ込み、それをスパコーン、と蹴り上げた。

「アッァァァァ……」

「減点一は、これで帳消しにさせてもらいます」

 女の子に暴力は、だめだ。

「ふぅ……。で、弥生にお話……、があるんだけど」

 回りで男が三人、転がりながらうめき声を上げている状況ってのは、すごく話がしにくいですね。

「移動しよ、――っか!」

 背後へ振り返りながら、箒をスイング。

「ぁっ」

 めきゃっなんて快音と共に、最初に倒れたうちの片方がもう一度、地面へと転がった。

 弥生に話しかけている隙を狙ったのかもしれないが、木漏れ日が僕の味方をしてくれた。

「よし、移動しよう。弥生」

 

 それから、ぼうっとしたままの弥生の手を引いて、別の穴場、草木に囲まれた、小さな池のある、公園の端っこへとやってきた。

「で、弥生。何してんだ?」

「え? ぼ、僕は……、別に、何も……?」

 強気な様子はすっかり抜けて、弥生は何やら抜け殻のようになっていた。

「それが駄目なんだって。上級生に呼び出されたのに、助け求めないで、淡々とメールするなんてさ。最初から弥生が助け求めてくれれば、危ない目にあわずにすんだのに」

 しかしそこまで僕が言っても、弥生は何かを考え込むように、見つめ返してくるだけだった。

「捨てられた猫じゃあるまいしさ、そんなに睨むなよ」

 しかし弥生は何も言わない。黙って僕を、見返し続けている。

「強がらずにヤバいと思ったら助けを求めろって。僕はいつでも力になるから。あ、それに伶ちゃんだって助けてくれると思うぞ? というか何で今回はそうしなかった?」

 携帯通じなかったのかな?

 そんな事を考えていると、不意に弥生が口を開いた。

「君は、捨てられた、子猫か? 獣医を探、し……、一ヶ月以上、付きっ切りで世話を……、世話をして、里親まで、探さなければ、ならないような、そんな、弱い存在か?」

「へ?」

 どこか僕のさっきの言葉と似ている部分があって、そして聞き覚えのある台詞を段々と感極まった様に、つんのめらせながら、

「昔、電車で男の、人に絡まれ、てた時、助けてくれた。し、少年から、言われた……、言われた言葉だ。正道、知らないか?」

 言った。

 僕にとって、昔の活動内容とは、すべからく黒歴史みたいなものである。

 言いながら、今も似たような事をしているが。

 兎に角、恥ずべき過去であって、しかもその時した説教まで蒸し返されると、もう穴どころか、すぐそこの池へ飛び込みたいぐらいに、恥ずかしい。

「泣いてもいい、強くなくてもいい。けれど怯えず立て――」

「僕だ! 僕だよ! それ! だからもうやめてっ」

 思わず叫んだ。

 こっちは恥ずかしすぎて池にダイブ秒読みってぐらいなのに、弥生は目を輝かせて見てくるし、……何なんだもう。

「やっぱりそう、なんだ……。なぁ、僕がどうして男装したか、聞いてくれるか?」

「え? あぁ。いいけど?」

 落ち着きを取り戻したのか、弥生はすらすらと言葉を続ける。

「そんな説教をされた時だよ。僕は強くなってやろうと思った。助けて何て言ってないのに、勝手に出てきて、挙句に説教を始めるような奴を、見返してやりたかったんだ」

「……それで、男装なんかを?」

「そうだよ。形から入るタイプなんだ」

 おどけて、冗談っぽく弥生は言う。

 けれど、とてもではないが、僕はそんな気分になんかなれなかった。

「え、ちょっとまてよ……」

「何かな」

「――僕は弥生の人生を台無しにしてしまった、という事か」

 ついさっきとは、まるで立場が逆転してしまっていた。これはもう、何の言い訳もなしに、僕が悪い。やらかし、って奴だ。

「まるで、今の僕の生き方は、間違ってるみたいな言い方をするね」

「いや、駄目だろ。強くいる為だけに男装をするなんて、それじゃあ……」

「なぁ、正道。言う事が二つある」

 呆然と、自分のしでかしたことを考えていた僕へ、弥生が手を伸ばしてきた。

 起こして欲しいのかと思い、深く考えず手を掴み引き起こす、……つもりが、逆に引っ張られ、そのまま弥生の上へ、覆いかぶさる形で倒れこんでしまった。

「いって……」

「正道」

 耳元に、吐息がかかる。

「僕は、こうやって生きて来た事を全く後悔していない。むしろ、このお陰で今まで強くあれたと思ってる。正道は、自分を卑下しすぎだ」

「そんな、事は……」

「あるよ。あぁ、でも一つだけ後悔がある」

 一息、呼吸を入れ、弥生は僕を、……優しく抱きしめた。

「昔、助けてくれた時、言えなかった。ありがとう、助けてくれて嬉しかった。そして今も、僕を助けに来てくれて、ありがとう」

 不意に、涙が出そうになった。僕は間違って無いと、そう言って貰えた気がして。

「それと一つ。お願いがある」

「なんだよ、何でも言え。どんな願いでも叶えてやる」

「僕を男にしてくれ」

「僕の力を超えた願いは不可能だっ!」

 こいつまさか本気でっ!?

「冗談だよ。……男になると、困ることが出来たしね」

 一瞬、本気で焦ったのにこいつは。

「こんなタイミングでそんな冗談言うか? 普通」

「だって、あんまりにも正道が落ち込んでるから」

 ぐっ……。その通りだけど、完全に遊ばれてる感じがして何か悔しい。

「正道。これからも変わらずに、僕の事を助けて欲しい。ずっとずぅっとだ。叶えられるかい?」

「……当然だ」

「うん?」

「僕はちゃんと言った。助けてと言ってくれたら、絶対助けてやるって。だから願われなくてもいいんだよ。助けてやるさ。僕にできる限りでな」

「どこら辺までが可能なのかな?」

「性転換したい、とか言われたら無理だ」

 言うと、弥生は笑って両手の拘束をはずし、今度はその手を僕のあごに当て、……キスをした。唇に。

「お、おまっ、何を!」

 乙女チックに唇を押さえながら叫んだ。

「お礼、だよ」

 冗談めかして言う弥生も照れているのか、顔が真っ赤だった。僕もまた似たようなもんだろう。――くっ、何かしてやられた気分だ。

 何て、僕達はそんな傍から見れば、キャッキャウフフとイチャつくバカップルにしか見えない会話に夢中で気づいていなかった。後ろから、新たに接近していた影に。

「何……、やってんですか、先輩」

「やよい……、まさみち……? お、おまえら……、なに、を……?」

 具体的には沙紗と、伶ちゃん。そして、

「お姉ちゃん、また緊急事態だって聞いたから、来てみたら……、何かしら、これ?」

 姉さんだった。

 姉さんの低い声(それでも女性的だった)が非常に怖い。

「ひぁっ!?」 

 現れた三者に驚いて、弥生は可愛い声と共に僕を突き飛ばし、

「うおっ!? ちょっ!」

 そのまま伶ちゃんたちに、キャッチされた。

「よいしょっ、とぉっ!」

 そして、息の合った行動で池へと投げ込まれ、僕は池の底へと、沈んでいった。

 



 翌日の事だ。

 自室のベッドで目を覚ますと、沙紗が布団へ忍び込んでいた。

「あのさ、沙紗が居るせいで、僕がいつもどんな目にあってるか、分かってる?」

「はい、でも先輩。沙紗と、自分の命。どっちが大事ですか?」

「命に決まってんだろ!? いつも自分の我侭の為に、僕の命を危険にさらしてたのか!?」

「いえ、先輩と沙紗の大事な時間の為にです」

「そのせいで、僕の寿命という大事な時間が縮まってちゃ、意味ないだろうがよ!!」

 そして聞こえてきた。死神の、軽快なステップ。

「ね、姉さんだ! 沙紗っ! 今のうちに出て行けって!」

「やですっ! 沙紗はずっと先輩と一緒にいるんです!」

「その台詞はすごく嬉しいが、こんな日常に潜むデッドイベントで聞きたくねぇよ!」

 もみ合う僕と沙紗、そしてやってきた死神こと姉さん。

 ――ドアを開けた瞬間、姉さんは、僕が沙紗に襲いかかっていると勘違いして、残像を残す速度で接近、僕を壁に叩きつけたらしい。

 僕の意識は、ドアが開いた音と共に失われたので、後で沙紗が申し訳なさそうに、青ざめた表情で語ってくれたのを聞いた。


 さて、僕は意識を取り戻し時計を見て、寝過ごしたと思い込み、急ぎ準備しながら、壁の窪みと、乱れた布団を見て、どんだけ寝相悪いんだ、などと少し自己嫌悪した。

「ダーリン!」

「ダーリン言うな」

「もぅ、だらしないですわね」

 階段を降りると同時に近寄ってきた祈願は、言いながら、甲斐甲斐しく僕の寝癖や、曲がったネクタイを直してくる。

「今起きたばっかりで顔も洗ってない状態なのに、だらしないとか言われても困る」

「そのタイミングを狙ったのですから、当たり前じゃありませんの」

「策士だなっ!?」

 まだ構おうとしてくる祈願を適当にいなして、顔を洗い、食卓へ。

 いつもならすぐ傍に居るはずの沙紗が何故か、今日に限っては、ソファから申し訳なさそうな顔でこっちを見ているのが少し気にかかった。が、時間がないので、さっさと食事に取り掛かる。

 どうやら既に皆は食べ終えてたようで、各々てきとうにくつろいでいる。

 引退式か何かがあるらしく、伶ちゃんはいない。

「まぁ、僕には関係ないか」

「何が?」

 お茶を注ぎつつ、梓が独り言を拾った。

「いや、なんでもない。ありがとう」

「うんっ」

 はぁ……。梓の普通さには癒されるな……。

 それから姉さんの作ってくれた朝食を食べ終えて、準備をし、ぞろぞろと女子三人と女子っぽい一人と一緒に外へ出る。

 と、玄関に、手鏡を使ってやたら襟元とか前髪とかを、軽く緊張した面持ちで気にしてる男子が居た。

 人の家の前で何してんだこのナルシスト、と思ったが、良く見ると弥生だった。

 女子だと分かった途端、身なりに気を使ってるのだなぁ、と思い直してしまう辺り、男女の垣根という物はやはり大きく、差別というのはなくならないのだと実感してしまう。

「どうしたんですか、先輩?」

「いや、ジェンダーフリーという言葉について考えていた」

「……? あれ、弥生先輩ですよね」

「だなぁ……」

 この辺りで漸く僕らに気がついたのか、弥生は手鏡を俊敏にカバンへしまった。

「や、やぁ、おはよう。ちょうど、インターホンを押そうとしたところだったよ」

 今来たところ、とばかりに言うが、完全に見ていたわけで。

 しかし、僕達は優しいので全員が空気を読み、黙っ……

「あら? 今てかが――」

「黙れ」

 一人、残念なお嬢様が居たが、黙らせた。

「そうか。迎えに来てくれたのか?」

「あぁ、一緒に学校へ行こうかと思って」

「うん? でも弥生さんの家って。全然違う道じゃなかったっけ」

 微妙に事態を分かってない梓が、言わない方が良い情報を出してしまった。

「あぁ、そうなんだけどね。正道と一緒に学校へ行きたか――」

「たまたまそういう気分だったんだよな! さ、行こう!」

 誤魔化すかと思いきや、ストレートに返事をする弥生に、何だかやばそうな成り行きを察して、先を促した。

 結局、道中に弥生が僕の鞄を持とうとしたり、何かと世話を焼きたがったせいで、誤魔化した意味とか、昨日のあの後、弥生が感極まっただけだと説明した意味がなくなり、女子一同から疑いの目を向けられる事となった。

 その挙句、祈願や沙紗が弥生に対抗し、僕の鞄を持ちたがったため、無駄に騒がしい朝になった。

 最終的に姉さんが持つ事で決着がついた。いや、訳が分からん。


「でさ、制服は仕方ないとして」

 僕の身内の女体化に協力してしまったので、もう女子のは持ってないだろう。

「喋り方もそのままなのか」

「男装のままで女言葉だと、余計に変だろう?」

 昼休み。弥生がこれからどうして行くのか等、少し話がしたくて呼び出した。

 さすがに昨日の今日では、女子一同の目を逃れて弥生と二人で、なんてできず、教室で集まるには人数が多いので、屋上にて皆で弁当を広げながらの会話だ。

「でも別に女子の制服も買えない、って訳じゃないんだよな?」

「僕が男装してると、そんなに不都合かな?」

「そんな事は無いけどな?」

「いや、でも確かに、腕組んだり、ご飯をあーんってする時、傍目には男同士に見えるからホモ扱いされてしまって、正道が可哀想だね。まぁ、ばれない様にすればいいさ」

「いやいやいや、話が飛びすぎだ! 僕はそんな事を心配している訳じゃないっ」

 つーか距離が近い。なんでこんな腕が引っ付く距離に座ってんだ弥生は。体を少し横にずらしても、詰めてきやがるし、きりがない。

「う、腕組むんですか!?」

「あ、あーん、だなんてっ! 私だってした事がありませんのにっ!?」

「やっぱり!! ふ、不潔だぞおめぇらっ!」

 ほら、余計な行動と言葉に、面倒な人達まで話に乗っかって来てしまった。

「組まないし、食べさせて貰ったりもしない。弥生の冗談に決まってるだろ?」

「冗談じゃないよ?」

 僕が必死に説明しているのに、きょとん、とした顔で否定してくれる弥生。

「なんでだよっ!? 弥生どうしたんだ!? 何か昨日までと距離が違いすぎるだろ!? 敬語からため口に戻ってるし!」

「いや、正道。普通こうなると思うよ? 昨日助けてくれて、さらに昔に僕を助けてくれたのも正道だっただなんて。こんな少女マンガみたいな展開、惚れない訳がない。タメ口に戻ったのは、親密さをアピールする為だよ」

 弥生の言葉に、女子四名が固まった。珍しく、梓まで硬直してしまっている。

「少女マンガて。いくらなんでも、ストレート過ぎるだろう……」

「だって男三人を一撃で倒して、さらに後ろで起き上がって不意打ちしようとした奴を、ぶっ倒したんだよ? 素敵すぎるよ。少年漫画の主人公か君は」

 弥生は漫画とか、結構好きなんだろうか? じゃなくて。

「いや、僕は剣術の経験者、相手は素人。で、三人居たから一撃で倒すために不意打ちで行ったんだ。勿論、いけるって確信した上でな」

 憶測と嘘が混じってるが、説得のためなので仕方ない。

「ソレを聞いてもっと惚れたよ! 全部、計算だったなんて!」

 仕方ない、が何の意味もなかったな。

「そうだけど……。僕しか出来ない事じゃない、そんな簡単に惚れんな」

「謙虚な所もすごく良いと思うよ! それにあれだけ正道に辛く当たってたのに、当たり前の様に助けてくれるなんて、惚れ惚れする優しさだよね。総合して、こんなそうそうありえない出会いとか経験したら、惚れない方がおかしい!」

 言われて見れば、確かにかなりレアな体験だろうけども……。

「オーケー、分かったよ。けど僕は今、誰かと付き合うとか、そういう余裕はないんだ。だから惚れたとか言われても困る」

「そうですよ! 先輩には沙紗っていう、可愛い女の子がいつも傍にいるんですよ!」

「完全にその沙紗って子が、勝手に居るだけだからな」

「そうですわっ! 私という前世からの婚約者が、いるんですからっ」

「その前世の契約は、今生では全部無しだ。発言も現世の方を優先にしろ」

「ま、正道に彼女なんざ、百年はえぇんだよっ」

「ボクが恋をするには、これから百年以上も生きなきゃならないのか……」

 などと喧々囂々、話はまとまらず、

「あ、チャイムなったよ。正ちゃん、戻らないと」

 昼休みのチャイムが、ゴング代わりとなった。

 話はまとまらなかったが、うやむやに済ませる事に成功したので、よしとしよう。

 あれ、僕は何をしに弥生を呼び出したのだったかな?

 首をかしげながら、皆の後ろに並んで屋上を後にする。と、ふいに袖を引っ張られた。

「正道、僕は本気だよ」

 振り向いた僕に、弥生は決意の篭った強い視線を向けていた。

「なぁ。昨日はあんなに照れてたのに、どうしたんだよ」

「もう強がらなくて良いなら、素直になろうと思って」

「……そうか。でも言った通り、僕はまだしばらく、そういう相手を作る気はないぞ?」

「大丈夫だよ。きっと振り向かせて見せるから」

「弥生は強い、……なっ!?」

 言った瞬間、弥生は再び袖を強く引き、よろけた僕に顔を寄せると……、頬にキスをし、階段へ逃げていった。

「何だかんだ言いながら、やっぱり恥ずかしいんじゃねぇかよ」

 言う僕の顔もまたやはり真っ赤だった。

「……あれ?」

 ふとそこで気付いたがが、伶ちゃんの問題はとっくに解決していたのだから、僕が弥生の男装問題にとやかく言う筋合い、なかったんでは?

 結果的に、僕が関係してると分かった訳だが……。

「ま、いっか」

 呟いて、屋上のドアを、後ろ手に閉めた。


 そうして、弥生をめぐる問題は一つの解決を見た。

 弥生は女の子らしさを、――今のところ僕に対してだけだが、取り戻し始めてくれたので、やがて普通の女の子に、なるだろう、多分。

 ある意味、今までで一番進歩のある解決だった、と言えるかもしれない。

 進みすぎて距離感を間違えてしまっているが……。

 ま、ともあれ漸く今度こそ、本当に収拾がついたのだった。

 ただ、最後に一つだけ、

「あれ? どうした?」

 遅れて階段を下りようとした僕を、

「うぅん……。遅いからどうしたのかなって、見に来ただけだよ……?」

 待ってくれていた梓の様子が、いつもとは明らかに違ったのだけが気にかかった。

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