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『深泥丘奇談』(綾辻行人)を読んで
連作短編の形式となっています。京都在住の本格ミステリー作家「私」の視点で描かれるいろいろと歪んだ世界。
「私」は綾辻氏本人がモデルではあるようですが、京都が現実のそれとは異なるように、「私」もどこか曖昧模糊としています。
もう初めからなにやら常識の通用しない世界に連れて行かれそうな怖さがあります。心霊的な恐怖というよりは狂っていくような恐怖。
「私」は読者に近い価値観と感性で次々と違和感をおぼえるのですが、作中では周囲の人たちがみなそれらを当然のこととしています。その辺りのズレが胸の奥に澱を溢れさせていきます。
世界がおかしいのか、自分がおかしいのか……。精神的に徐々に追い詰められていき落ち着かない……
ホラーでも怪談でもなく、まさに「奇談」です。
綾辻行人作品はずっと前に『十角館の殺人』を読んで、好みじゃなかったんだけど、また手にとってみて本当に良かった!




