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『お文の影』(宮部みゆき)を読んで

単行本『ばんば憑き』を文庫化に際し『お文の影』に改題されたもの。六編の江戸のあやし話。

怪談という程には怨念が強くはなく、けれども闇の存在する江戸時代だからこその、いるはずのない何かや、恐ろしい呪術めいたもの。

表題作『お文の影』は切なくも優しいお話。単行本表題作『ばんば憑き』はぞぞぞ~っと来る恐ろしさ。

どれも宮部みゆきらしく、登場人物が皆、生き生きしていて作品世界にどっぷりはまります。個性が売りのキャラ立ちとは違う、ごく普通の人物までもが生き生きと描かれるのは、さすが宮部みゆき作品。

私が気に入ったのは、六編目の『野槌の墓』。あやかしと幽霊が出てきます。冒頭五行目でいきなり七歳の子が「父さまは、よく化ける猫はお嫌いですか」と問う。この始まり方に一気に興味をひかれる。だって「化け猫はいるんですか」でも「化け猫は嫌いですか」でもなく、「よく化ける猫はお嫌いですか」って(笑) 前半はユーモアある展開、後半は哀しく温か。

文句なしに面白かったです。


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