『わたしの宝石』(朱川湊人)を読んで
今まで言っていたかどうか覚えていないのですが、朱川湊人はかなり好きな作家さんです。私は読むときは完全に読者でしかないので、あまり他人の書いたものを読んで「私もこういうの書きたい」とは思わないのですが、この方の作風は私が書きたいと思うものにとても近い気がします。(むろん、だからこそ似たようなものは書くまいとも思います。個性大事。)
ホラーも書かれますが、柔らかなノスタルジーの描き方が秀逸です。この本は短編集ですが、どれもノスタルジックな香りがします。連作ではなく、それぞれ独立した六編の物語。『わたしの宝石』というタイトルですが、まさに一編一編が宝石のように輝いています。あ、いや、宝石というより、砂金みたいな感じかな。ラスト付近で小さくキラリと光って、また埋もれてしまう。そんなささやかだけど、たしかにあった輝き。
すべて優しい切なさが残りました。
中には「これ、楽しめるかな? 入り込める気がしないな」と若干不安になる話もありましたが(誇張がすぎる印象の性格はいいがとんでもなくブスな女子とか、いい大人になって韓流スターの大ファンになる中年男性とか)、どちらも滂沱の涙でした。
すべてが心に滲みる話です。案外、現実でもみんなこういう人生なんだろうなと思ったり。だとしたら、生きることって尊いなと感じたり。
文章も静かで、派手な展開があるわけでもないのですが、あっという間に引き込まれました。移動中のお供ではなく、おこもり中に読むのに最適な小説でした。いいタイミングで読むことができて満足です。




