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『サブマリン』(伊坂幸太郎)を読んで

『チルドレン』の続編なのですが、その『チルドレン』、例によってぼんやり覚えて……いるとも言えないくらいのうすらぼんやりした記憶しかありません。それもそのはず、このエッセイを始めるはるか前に読んでいたようです。そりゃ覚えとらんわ。

で、続編というからには前作を読み直そうと思って2冊重ねて置いておいたところ、外出のお供に一冊連れて行ったら続編の『サブマリン』の方でした。代わりに読むものも持っていなかったので、読み始めてしまいました。帰宅したら改めて『チルドレン』から読み直すつもりだったのですが、読みかけの『サブマリン』が止まらず、結局最後まで読んでしまいました。とりあえず陣内さんと永瀬さんは思い出せたから問題ありませんでした。


この陣内って人が変な人でして、家裁調査官なんですけど、なんかもうめちゃくちゃなんですよ。語り手「僕」は陣内の部下である武藤。いわゆる普通の人ですから、そのおかげで読者は武藤の身体を借りて物語世界を体験できるつくりになっているように感じました。

武藤が担当することになった案件は、無免許運転事故を起こした19歳の少年。なにを訊いても「はい」しか言わないため、事故を起こすに至った経緯がいまいちすっきりしません。そのうちに、少年自身もかつて身近な人を運転事故で失っていたことがわかります。

一方、保護観察中の15歳少年はインターネットを利用した事件を起こしてこんなことになったにもかかわらず、またインターネットを通じてなにか探っています。


少年たちは確かに罪を犯したけれど、罪イコール悪なのだろうかという疑問に突き当たります。武藤と一緒に読者も。

彼らの罪は法で禁じられているからというだけではなく、善悪の判断からしても悪であるはずです。けれどもそれがなにかと繋がっていると、別の角度から見えてくるものがあります。行為そのものは悪で罪でも、繋がった先を知っていると、納得してしまいそうになります。

善とは。悪とは。

見方によってたやすく変わります。その視点を固定するために法があるのでしょう。しかしそうはいってもやるせない気分になります。


伊坂幸太郎作品らしく、次々と繋がっていく人や出来事。奇跡のような繋がりなのに、それが嘘っぽく感じられないのが不思議です。現実でも、世間は狭いなって感じることがありますしね。そんな感覚になります。


罪は悪なのか。その悪は本当に悪なのか。

うん、まあ、法的には罪だし悪なんですけども。

こういうの好きなんですよね。立場が違えば見え方が違ってくるってやつ。完全なる正義なんてものはないんだなって再確認。

立場が違えば……。これは読んでいて苦しくなります。加害者も被害者も。

最後まで読むと、私の中では誰も悪くないってことになっていました。そのことがまたつらいというか、せつないというか。それでもほっこりあたたかな気分になれます。


いつも迷惑な陣内ですが、なぜか魅力的です。そして、その魅力はこういうところがあるからなんだな、と気づかされることになります。かっこよすぎです。変な人のくせに。


いいお話でした。


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