『深泥丘奇談・続々』(綾辻行人)を読んで
京都をモデルとした、現実と少しずれた世界(五山が六山だったりとかね)。ずれているのは世界だけじゃなくて、主人公の記憶も。健忘症のような状態で、当然知っているべきことを知らなくてすっきりしないんですね。ひたすら白昼夢を見ているかのような、正気と狂気の狭間のような、なんとも心の居心地の悪いこのシリーズ。大好きです。
三作目となる本作で完結となるそうですが、へ? あ、そうなの? という終わり方。まあこの世界観からすれば、こんな風にふわっとゆらっと目眩を起こしたようなまま終わるのは自然なのかもしれません。
短編集のようなものなので、いろんな話があります。すっきりしない不気味な話から、ふざけているのかな?と思うような話まで。どれも夢に見るような話でおもしろいです。
主人公から見ると登場人物がみな少し妙な感じなんですけど、特に若い看護師の咲谷由伊は気になります。
『眼球綺譚』などちょくちょく出てくる名前です。『Another』でもフルネームではないけど咲谷という名称は出てきたはずです。ただ、名前が同じなだけで、各作品でリンクしている人物というわけではないです。まったくの別人。短編集の『眼球綺譚』に出てくる咲谷由伊はすべて別人でしたしね。
そうなると、なにかの象徴とか概念のようなものの総称なのかなとも思います。それがなにかはわからないし、そういう解釈で合っているとも限らないのですが。
この人物について、少しばかり解き明かされる点は完結編ぽくはありました。いや、解き明かされはしないな。ヒントの提示といったところでしょうか。私には、それさえでもよくわかりませんでしたが。でもこの小説はそんな読み方でいいような気もします。理解するものじゃないっていうか。
そうそう、リンクという点でいうならば、作中に小野不由美さんの『鬼談百景』との接点が(バラしたところで読むのに影響はないと思いますが、一応、どのシーンだかは伏せておきます)。リンクというのとは違うんですけど、あれ?どこかで見たな……と思ったら、あとがきで言及されていました。どうりで見覚えがあったはずです。
余談ですが、綾辻行人さんのこういうところがすごく好きでして。ツイッターで奥様のことを呟かれることがあって、それを見るとなんとも言えない好感を持ってしまうんですよねぇ。どこがどう響くのか自分でもよくわからないのですが。……すみません、小説の話からだいぶ外れました……。
夢の世界のような、パラレルワールドのような、不思議で、少し不気味な深泥丘。シリーズが終わってしまって残念ですが、あとがきによると「ありうべからざる京都」になんらかの形でいずれ再訪したいそうなので、楽しみに待ちたいと思います。




