『バベル九朔』(万城目学)を読んで
昨日、文庫版が発売されたので、さっそく買ってきました。
単行本の時にも読みたいと思っていたのですが、そのうちそのうち……と思っている間に書店で見かけなくなり、読みたかったことを忘れていました。そこへきての文庫化。今度こそ見つけやすいうちに買っておこうと思い、そのまま読み切ってしまいました。
ところがこれ、文庫化される際に大幅改編されているそうで。角川文庫の特設サイトによると、二〇〇枚くらい削って、四〇枚くらい足しているとのこと。もうそれ別物じゃん!
単行本のあらすじを調べてみたら、やっぱり全然違う。途中から変な空間に入っちゃうのですが、単行本では湖とか塔が出てきてて。文庫はずっと同じビルの中なのに。これは単行本と読み比べてみたいところです。
とりあえず今回は文庫を読んで、ということで。
雑居ビルの管理人をしながら小説家を目指す青年主人公です。この部分は作者ご本人の経験からみたいですね。前述の特設サイトによると、単行本の際には自伝的小説と言っていたそうです。大幅改編して、文庫は100%フィクションとのこと。まあ後半は怪奇的な展開になるので、自伝もなにもあったものじゃないと思いますが。
五階建て雑居ビルは祖父の代からのもので、テナントの入れ替わりも激しく、家賃滞納の探偵事務所があったり、カラスがゴミを荒らしたり、空き巣事件があったりと、バタバタしています。そんな中、巨大ネズミが出現したり。スナックのママが「こんなに大きいの」とありえない大きさを手で示すのを大袈裟に感じていたら、実際に40センチほどのネズミを見かけたり。この辺からなんか妙な雰囲気。黒ずくめのカラス女が出てきたらもう夢の中か狂気の中かのような落ち着かない心地になります。それがだいたい中盤くらいでしょうか。そこからはもう一つの世界に入ってしまっての展開になります。
正直、好き嫌いが分かれる小説じゃないかなと思います。
万城目学といえば、結構突拍子もない設定で楽しませてくれる作家だと思うのですが、その場合でもストーリーは真っ当というか、これってどういう意味?ってところは特に見受けられない気がします。個性的でワクワクハラハラできるエンターテイメントですね。ところが『バベル九朔』は設定がストレートじゃないというか……先ほども言いましたが、夢か狂気って感じになります。
なお、私はこの世界観、好きでした。これまでの万城目学作品とは一風違う感じはしますが、どちらかの雰囲気も大好きですね。
どこか引っかかりが残るというか、もやっとした読後感というか。そんなところも気に入りました。




