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『蟻地獄』(板倉俊之)を読んで

インパルスの板倉さん。小説を何作か書かれていますよね。ネタを書いているから小説も書けるなんて単純なものではないと思いますが、トークでも個性的な感性があって頭が切れる印象だったので、そんな人が書く小説に興味がありました。というわけで、ようやく一冊読んでみました。


結論からいうと、おもしろかったです。

次から次へとピンチになり、緊張感が持続します。でもテンポがいいので、飽きたり疲れたりはしませんでした。あ、いや、疲れはしたかな。読んでいて、ずっとどこかに力が入っていたような気がします。表情も動いちゃいます。なんかねぇ、結構暴力的で残虐なシーンが多いんですよ。うへぇ〜、苦手だわ〜、と思いつつもグイグイ引き込まれて、最後のページを閉じる時には、深く息を吐いていました。顔を上げると、部屋が真っ暗! いつの間に!?


主人公は19歳の青年。一人称一視点、しかも頭の回転が速い設定なので語り口もキレがいい。文章は読みやすかったです。

友人と一緒に裏カジノでイカサマをしたら見つかってしまいます。経営者は怖い人たち。友人を人質に取られ、5日後までに300万円用意しないと、友人は殺されて臓器を密売されてしまうことに。脅しじゃない。

お金を作るために主人公が選んだ手段は……。


メロスさながらに走り回ります。ただし、やろうとしていることはとんでもない内容。途中、何度も、このまま人としての道を外れるのではと顔をしかめつつ読む場面も。

それでも、残虐なことをしても非人道的なことを計画しても、ふとした小さなことに人間らしい優しさが垣間見れて、これがある間はまだ平気かもしれないと、かすかな望みを抱くことができました。とはいえ、気が緩んだ瞬間に次の展開に入っているから油断なりません。どこで読書を中断するか悩みました。


気分の悪くなるシーンも多かったですが、ラストはすっきり!

これぞエンタメ、読者に楽しんでもらおうとする意思がひしひしと伝わってきます。


読者を楽しませようとしているポイントはいくつもあるのですが、ひとつ上げるとすれば……、伏線の張り方が親切。「ここ、言わないでおきますね♪」って感じで伏せられているのです。なにかあるけど、それがなんなのかは、後のお楽しみと言われているみたいな気分になります。


私が普段読む小説たちの伏線の張り方には、自然なものが多い気がします。「あれが伏線だったんだ!?」と感じさせる書き方。そういうのはとてもスマートで感心と感動を覚えます。そのため、私はどこかで伏線を張ったことを気付かれない方が優れた小説なのだと思っていたような気がします。

でも、あることはわかっていても、その正体がわからないというのは、先を読み進める牽引力になるのだと、改めて気づかされました。


ほかの小説も読んでみようと思います。

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