『ニセモノの妻』(三崎亜記)を読んで
これまで何度か三崎亜記の小説を読んでは、同じようなことを言ってきたかと思います。設定やストーリーは好みなはずなのに、なぜかしっくりこない、と。楽しいはずなのに楽しみきれないもどかしさがありました。
ならば読まなければ良さそうなものですが、やはり、あらすじを読むと惹かれてしまい、なんだかんだでかなりの作品を読んでいる気がします。
慣れというのはすごいものです。一点もそぐわないならば、慣れることもないかと思いますが、少しでもしっくりくる部分があるならば、繰り返すうちに「しっくり」の部分が「しっくりしない」部分へ侵食していくようです。……なに言ってるんだ?と思われたでしょうか。
つまりですね、しっくりこないと思いつつもどこかに魅力を感じながら読み続けていたら、ついに純粋におもしろいと思えるようになりました!
小説のおもしろい、おもしろくないは、内容によるのが普通かと思います。でも、私にとっての三崎亜記作品はそういうことではなかったのです。はっきりとどこがどうとは言えないのですが、文体だったり、表現方法だったりするのかもしれません。内容に左右される場合は当然、小説側に原因があるわけですが、私の場合は読者側の問題でした。ようやく慣れたんです。
記述と口述を照らし合わせた場合、文体は口調に当たると思うんです。筆記の記述なら、筆跡が声質に当たるし。それらの兼ね合いで文章や喋り方の印象が決まりますよね。相手次第で、話は面白いのに聞き取りにくいとかあるじゃないですか。私にとっての三崎亜記作品は、そういう感じだったんです。で、やっと慣れた。
つまり、この本はとても楽しく読みました。
表題作を含む4編の短編集です。
いつも通り、不思議な話です。この方の描く不思議の種類って、なんだかショートショートのネタっぽいです。そう感じるのは私だけなのかな?
どれも夫婦の話でした。
「ニセモノの妻」もおもしろかったのですが、最後に収録されている「断層」がめちゃくちゃよかったです!
断層とは、時間のひずみなんですね。予告なしに時間のひずみが発生するんです。そうなるとどうなるか……それは重要なところなので伏せておきます。でも、すごく切なくて、すごく暖かいお話でした。私は泣きましたよー!
肝心の小説の内容にほとんど触れていませんが、短編集って、内容を紹介するのが難しいですよね!? ストーリー自体が短いから、なにを言ってもネタバレになってしまうし。全ての短編についてひとつずつ語っていくのもどうなんだろうと思うし。
まあ、この読書メモはジャンルがエッセイだし、おしゃべりがメインってことでいいかな。
今回は三崎亜記作品に馴染めたことが一番の収穫でした。しっくりきました。




