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『サラマンダー殲滅』(梶尾真治)を読んで

これは、なんというか、濁流に飲み込まれて、ようやく岸に上がって、仰向けになって息を整えつつ安堵している……そんな気分。(わかりにくい…)


梶尾真治作品との出会いは、かの有名な『黄泉がえり』でした。その後、「エマノン」シリーズ、『壱里島奇譚』、『アラミタマ奇譚』と読んできました。解説でも書かれていた通り、抒情的な印象でした。なので、『サラマンダー殲滅』というタイトルを見たとき、一瞬、作者名を読み間違えたかと思いました。だってタイトルからして硬派でハードなんですもん。

最近、徳間文庫から出たので購入したのですが、この作品は1990年に出版されていたんですね。『黄泉がえり』が2000年ですから、以前より広い作風をお持ちだったようです。


小説もアニメも映画も、あまりSFに触れてこなかったので、まずは宇宙規模の設定に圧倒されるという……。

ものすごくざっくり言うと、テロ攻撃の巻き添えで夫と娘をなくした一介の主婦が、そのテロ集団殲滅に立ち上がる話。なんじゃそらって感じですが、間違ってないです。本当にそういう話。

夫と娘を亡くしたショックで生気を失っていた神鷹(こうたか)静香。治療として、暗示をかけるんですね。生きる目標を植え込むのですが、それがテロ集団への憎悪。復讐に燃える心が生きる力となり、廃人のようだった静香はしゃんとした様子に戻ります。でも、本当に復讐に走ったら困ります。そんな危険な殺人行為をさせるわけにはいきませんよね。まあ、ただの主婦だからできるわけはないけど、と言いつつも、医師はストッパーとしてもう一つの暗示をかけます。テロリストを攻撃しようとすると身体が動かなくなるという。

でも、甘かった。

暗示をかけるまでもなく、本来あった憎しみが強すぎたのでしょうね。本当に復讐に向けて訓練とかしちゃうわけです。しかも結構筋がいい。

ここで問題になるのが、ストッパーとなる暗示。これを解除することができる薬を手にするのですが、それを飲むとなると失うものがあり……。


……と、まあ、この辺にしておきましょうか。


静香が主婦から戦士へと変化していく様もおもしろいのですが、夏目という人物の変化も見ものです。夏目は軍人で、ずっと静香に横恋慕していたのですが、これがまたストーカーじみていて、うざくて怖いくらい。で、復讐の手助けをするから、終わったら自分と結婚してくれと言うんですね。静香は復讐できるならなんでもすると答えます。で、夏目が最後までサポートしていくのですが……これがねぇ、かなりかっこよく見えてきます。その変化もまったく違和感なく。

世界観やストーリーも申し分ないのですが、人物の描かれ方が興味深かったです。


終盤は泣き通しでした。

いわゆるボス戦に当たる部分も、王道展開とは少し違う感じで、その外し加減が絶妙でした。

上下巻なので、読み始めはちょっと気合いが必要かなと思いましたが、少しでも時間があれば本を開いてしまうくらい先が気になりました。長編エンタメ映画を観たような興奮が残ります。オススメ。


あ。そうだ。グロいシーンが結構あります。注意。



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