夢中と夢中
少なめですごめんなさい
【夢中】
そこは、ただひたすらに続く闇の中だった。漆黒に包まれた圭吾はそこが闇の中だと知るのは意識の覚醒が行われて暫く経ってからだった。眠気がのしかかる体を無理やり起こして状況を確認する。
圭吾は自殺をしたのだ。夕日を背に、恐怖を塗りつぶすために過去を思い出しながら。という事はつまり、ここは死後の世界なのだろうか。視界がふらつきながらも、立ち上がって周囲を確認する。あるのは底の見えない闇、そして今自分が立つ地面のみ。
死後の世界。想像に値する世界だった。何もない闇の世界。圭吾は歩きだした。しかし、歩いても歩いてもあるのは黒。次第に不安になってきた圭吾は焦燥感のままに歩を速めた。やはりあるのは前も後ろも左右も全て黒。ふと、足場を見るとそこも黒。
……俺はどこを歩いているんだ……?
疑問が身を襲った。それは最早疑問と言うには強すぎる、今までにない恐怖だった。立ち止まったそこだけが、今信じられる足場だ。これより先にも後にも退けない。少しの間前進することを躊躇っていた。もし、これより先に言ってそこへ落ちたとすれば。
どうなるのだろうか。自分は死ぬのだろうか。もう死んでいるというのに?死後の世界で死ぬのはあるのだろうか。などと思っていると、今まで居座っていた地面が突然沈んでいった。否、沈んでいったのは地面ではなく自分だ。
……闇に飲み込まれている……?
身体を確実に死と言う闇が浸食しているのだろう。この先にあるのは何なのだろうか――そのようなことを言っている場合ではない。
圭吾は必死に掴むものを求める様に空を足掻いた。手が空を切っても、何か解決策はないかと生に縋り付くために、夢中に空を握りめる。
そして圭吾の目の前には光が現れた。一筋の光明。これが俗に言う天国から与えられる糸とでもいうのだろうか。もうなんでもいい、と触れること出来ないはずの光を掴もうと足掻く。
段々光が強くなっていくにつれて、圭吾の体も次第に闇に飲み込まれていくのであった。