プロローグ
隣の家の中学生、莉央が2階の窓からいつも通り顔を出した。
「ねえおにいさん、クイズしよ」
「また急だね」
「三問全問正解したら、莉央ちゃんが特別に褒めてあげる〜」
「褒めてくれるの?」
「うん、やらないの?」
「やります」
「食いつき早〜w」
そっちが言ったくせにひどいな。
「じゃあ第一問!莉央ちゃんは宇宙一かわいい。 ○か×か」
莉央は両手の人差し指を頬に当てた。
「それはクイズなの?」
「早く答えて」
かわいいと認めるのは癪だが…
「…○?」
「疑問形か〜どうしようかな〜?」
まずい、不正解になってしまう。
「○!○!」
「必死でウケるw せいか〜い」
「ありがとうございます」
「じゃあ第二問。おにいさんの『お気に入り』の香水はオーデコロンである。○か×か」
「…なにその問題」
「わかってる癖に〜w」
くそっ、どうやら莉央は本当に『あのノート』の一部を暗記しているようだ。
『人生再建プログラム』
かつて俺が本気で書いたノートだ。今では莉央に奪われ、ただ俺をいじるためだけのおもちゃになっている。
いつか絶対に取り返して、こいつに「負けました」と言わせてやる。
まずは目の前のこのクイズに勝つ。
「○」
「せいか〜い」
「ふぅ、余裕じゃん」
「あ、調子乗ってる〜w」
「これ正解したら褒めてくれるんだよね?」
「はいはい、じゃあ最後ね。これ正解したらおにいさんの勝ち」
莉央は窓枠に頬杖をつくと、にやりと笑った。
「第三問。おにいさんは今、莉央ちゃんに褒めてほしいと思っている。○か×か」
「…×」
「ふーん」
莉央はあっさりと頷いた。
「じゃあ褒めなくていいね。おしま〜い」
「え」
「だって褒めてほしくないんでしょ?」
「…」
「今だけ答え変えてもいいよ♡」
「…○」
「ん〜? 聞こえなかった〜」
「○です」
「え〜ちょっと遠くて聞こえな〜い」
「○です!褒めてほしいです」
「ふーん♡」
莉央が満面の笑みを浮かべた。
「こんな年下の女の子に褒めてほしいんだ〜」
「…答えあってるの?」
「せいかい〜!」
莉央はぱちぱちと手を叩いた。
「おにいさん、今日もよわよわなのに生きててえらいえらい〜♡」
「褒めてるそれ?」
「え〜、じゃあ嬉しくないの?」
「…まあ、ちょっとだけ嬉しいけど」
「ちょろすぎ〜w」
俺は三問とも正解した。
なのに、なぜか完敗した気分だった。




