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第8話「秘密基地の記憶」
港町の小道を雪に足跡を刻みながら進む拓海の心は、幼い日の記憶で満ちていた。灯台の下に隠れた秘密基地――小さな小屋に二人で肩を寄せ合い、笑い、泣いたあの日々。
雨の匂い、木の温もり、窓から差し込む光、そしてあの温かい笑い声が、雪の冷たさを押しのけて胸に迫る。拓海は足を止め、深く息を吸う。指先に残る手紙の感触が、幼い頃の約束の温もりと重なった。
「まだ…間に合うかもしれない」
記憶の中で、幼い美咲が笑って手を差し伸べた瞬間が、今の彼を前に進ませる。雪の白さ、灯台の光、海の香り――五感のすべてが、記憶と現在を結びつける。
拓海は走り出す。雪を蹴る足音、風に舞う雪片、胸の高鳴りがすべて、時間の制約を告げる。幼少期の約束が、今、現実の緊迫感と重なり、心に強く刻まれる。
港が近づくにつれ、思い出の小道、灯台の光、海風の匂いが現実のものとして迫る。手紙を握る手に力が入り、決意は揺るがない。幼いころの誓いを、今度こそ果たすために――。
雪に包まれた港町で、拓海の影は灯台の光に導かれながら、確かな決意を胸に進んでいた。




