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黒き魔王のボーナスタイム

前書き

 二〇一九年八月中旬、甲斐の国大学講堂——

 舞台には、「メガバンクの頭取」という『経済の権威』と、「最高学府の異端教授」という『学問の情熱』、そして「論理の魔王」という『未来の技術』が、混沌としたノイズの中で激突していた。

 土御門ツチミカド晴景(ハルカゲ)による「ハルハゲFlash」という『大人の無駄ノイズの極み』で場は和まされたが、その直後、黒木(クロキ)万桜(マオ)たちがゲリラ豪雨を「雲誘導」によって『水資源回収のボーナスタイム』に変えるという、「自然の理屈への論理の暴力」を炸裂させた。

 この「非合理な事実ノイズ」は、全ての大人たちの常識を打ち砕いた。

 晴景(ハルカゲ)は、「規格外の利益ノイズ」の源泉が、もはや既存の経済学の枠組みを超えた「世界そのものの書き換え」にあることを悟り、「隠の経済陰陽師」として、その技術の『社会的リスク』を極限まで吟味する姿勢を見せる。

 一方、「論理の魔王」は、『水嚢風呂』という「重力ノイズ排除チップ」を、いかに「軍事ノイズ」に流さず、「情愛ノイズ」に満ちた社会(すなわち介護と地域経済)へ『合理的』に受け入れさせるかを問われた。

 血縁ノイズを巡る舞桜(マオ)勇希(ユウキ)のコミカルな対立も、この「論理と感情の境界線」をめぐる緊張感を際立たせる。

「君たちの『技術の暴走』を社会に流すかどうかを、慎重に判断せなあかん」——晴景(ハルカゲ)のこの一言が、次なる「論理のプレゼン」の厳しさを物語っていた。

 今、万桜(マオ)舞桜(マオ)勇希(ユウキ)香織(カオリ)莉那(リナ)たちセイタンシステムズ(アホの子)組は、「究極のノイズ排除技術」が、いかにして「人類にとっての究極の合理性」足り得るのかを、大人の論理と情熱の権威たちに証明しなければならない。

 「世界を変える技術」は、「世界を変える理屈」を持てるのか。

 「論理の魔王」と「経済陰陽師」の、世界観を賭けた大勝負が、今、始まるのであった。


 2019年8月中旬、甲斐の国大学講堂にて。

「あ、ハルハゲ先輩! チャーッス!」

 最高学府、東京本郷大学の異端経済学教授、西岡(ニシオカ)澄夫(スミオ)は、まるで野球部の先輩に挨拶するかのように、土御門(ツチミカド)晴景(ハルカゲ)に朗らかに呼びかけた。

 淳二(ジュンジ)晴景(ハルカゲ)泰造(タイゾウ)たちと同世代である澄夫(スミオ)は、万桜(マオ)たちを圧倒する大人の喧騒ノイズを持ち込んだ。

「ハルカゲやちゅうてるやろ? 澄夫?」

 晴景(ハルカゲ)は主張するが、澄夫(スミオ)は意に介さない。

「さーせん! ハルハゲ先輩! さーせん!」

 万桜(マオ)たちの視線が、一斉に晴景(ハルカゲ)の頭頂部に集まる。

 晴景(ハルカゲ)は、大人の「非合理なノイズ」に吐息をひとつ。

「一回だけやで?」

 彼は、澄夫(スミオ)に念を押した。

 澄夫(スミオ)は目を輝かせて、体育会系のように頷いた。

「あざーす!」

 晴景(ハルカゲ)は、コホンと咳払いをひとつし、両手を広げ、舞台の中心へと進み出る。

「ハルハ〜ゲ、Flash、Flash、Flash、Flash、Flash、Flash、Flash、Flashッ!」

 澄夫(スミオ)の甲高い歌声が響き渡る。

 晴景(ハルカゲ)は、昭和の終わり頃に登場した7人組の男性アイドルグループの替歌に乗せ、キレッキレのダンスを踊り始めた。激しいステップに合わせて、頭頂部の鬘がヅラされるたびに、鬘の下の地肌が、講堂の照明に反射して明滅する。

 まるで「ハルハゲFlash」が点滅しているかのようだ。

「ギャハハハハハ! 最高っす! ハルハゲ先輩!」

 澄夫(スミオ)教授は、最高学府の教授とは思えないほど腹を抱えて爆笑する。

「キレッキレやん晴景、無駄に歌上手いし」

 淳二(ジュンジ)は、そのサービス精神に感心する。

「体張ってんな、土御門先輩…大人の『無駄ノイズの極み』だ」

 白井(シライ)泰造(タイゾウ)は、万桜(マオ)たちの前で「論理の魔王」と「経済陰陽師」という二重の権威を持つ晴景(ハルカゲ)が、自ら「非合理なノイズ」を生み出す姿に、感動さえ覚えた。

「澄夫。わざわざ甲斐の国大学まで来て、陽の経済学の教鞭を振ってるそうやないか」

 晴景(ハルカゲ)は、鬘を元に戻し、一瞬で「メガバンクの頭取」の顔に戻ると、冷静に尋ねた。

「いや、他でもないっす。黒木(クロキ)くんの『水嚢風呂』の件でっす! モンテスキュー!」

 澄夫(スミオ)は、笑い過ぎて涙目のまま、「論理の魔王」に視線を向けた。

「その『重力ノイズの排除』と『断熱圧縮熱源』の技術は、まさしく『陽の暴走』ですよ! これこそ、経済成長の停滞という『構造的ノイズ』を破壊する、究極の『健全な浪費』だ! 社会を安全な方向に導く玩具になり得る! グレンダイザー!」

 澄夫(スミオ)教授は、「浪費は経済が持つ恒常性維持機能で回復する」という彼の持論を、万桜(マオ)の技術に重ね合わせた。

「『純利益5億円』のロットを銀行が買い切ったと聞きました。素晴らしい! しかし、それだけでは足りない!」

 澄夫(スミオ)は、香織(カオリ)の計算した金額すら、「ノイズの極小化」と見なす。

「濃いなー。オッサンたち」

 黒木(クロキ)万桜(マオ)は、オッサンたちの熱量にただただ圧倒された。


「言っとくけど、これはアレやで、ハゲラッタ、バケラッタ、チッチョリーナがコンプレックスとちゃうよ? これはアレやで、いわば兜や。ビジネス・ヘルメットや」

 晴景(ハルカゲ)は、自らの頭髪を指差し、あくまで「論理的な武装」であると主張した上で、彼の頭頂部で機能していた「ビジネス・ヘルメット」とも言うべき鬘の緒を、そっと解いた。

 黒木(クロキ)万桜(マオ)は、「ハルハゲFlash」のあまりの衝撃ノイズに、白井(シライ)勇希(ユウキ)茅野(チノ)舞桜(マオ)の顔を交互に見合わせる。

 澄夫(スミオ)は、勇希(ユウキ)の父親である泰造(タイゾウ)の従兄弟であり、晴景(ハルカゲ)は、淳二(ジュンジ)舞桜(マオ)の従兄弟である。

「兄さんの従兄弟ですからね? 万桜(マオ)くん」

 舞桜(マオ)は、「情愛ノイズの非合理な拒絶」を主張する。

「父の従兄弟だぞ?」

 勇希(ユウキ)も、自身の「論理的な血縁関係」に、感情的な距離を取ろうとする。

「親戚じゃん」

 万桜(マオ)は、「血縁ノイズ」という非合理な問題を、「親戚」というシンプルな論理でバッサリと断言する。

「兄さんのね!」「父のな!」

 ふたりは、「論理の魔王」との「親戚ノイズ」の共有を頑なに無理筋な論理で拒絶し、顔を赤らめるのであった。


★ ◆ ★ ◆ ★


 その時、土御門(ツチミカド)晴景(ハルカゲ)は、彼の頭頂部で機能していた「ビジネス・ヘルメット」とも言うべき鬘の緒を、そっと解いた。

 彼の表情は、一瞬で「ノリツッコミのエンターテイナー」から、「メガバンクの頭取」の、それもさらに深く、「隠の経済陰陽師」の顔へと切り替わる。

「澄夫。おまえ隠の経済学を、既存の学者に任せとんのか?」

 晴景(ハルカゲ)は、澄夫(スミオ)の学問の核心を問うた。

 その言葉に、聴講していた万桜(マオ)たちが頷く。

「そういや陽の経済学、てか経営学よりだよなー。モンテスキュー教授の講義」

 舞桜(マオ)は、澄夫(スミオ)の講義指針が、常に「成長」や「効率化」といった『陽の論理』に偏っていることを思い出した。

 澄夫(スミオ)は、口を開きかけるが、晴景(ハルカゲ)の鋭い眼差しに、一瞬だけ怯んだように見えた。だが、彼はすぐに笑顔へと切り替える。

「トッポ・ジージョ! 待ってくれ、黒木くん、土御門先輩!」

 澄夫(スミオ)は、またしても唐突なキャラクター名を叫び、激しく身振り手振りで主張を始めた。

「隠の経済学に関しては、既に完成されているんだ。今さら私が教鞭をふるう必要はない。私がすべきは、隠の経済学にどれだけ陽の経済学、すなわち経営学をブレンドすべきかにかかっている。君たちの陰陽道は、既に始まっているのだよアンジェリーナぁッ!」

 熱弁をふるう澄夫(スミオ)に、晴景(ハルカゲ)は呆れたように肩をすくめる。

「だから、停滞しとんのやで澄夫…」

 晴景(ハルハゲ)は、澄夫(スミオ)の「既存論理への依存ノイズ」を指摘する。

「わし、言ったやろ? 基本は母ちゃんが主力や、いわばジムやって、スナイパーカスタムやって」

 「母ちゃんの経済」、すなわち家庭と地域の安定こそが、究極のリスクヘッジであり、「隠の経済学の核心」だと彼は繰り返す。

 だが、澄夫(スミオ)は、晴景(ハルカゲ)の「隠の論理」を、ロマンティックな「陽の主張」で突き返す。

「それは違うぞ土御門先輩! 赤い特殊機体が文太(ぶんた)気取りで道を切り拓くからこその浪漫じゃないか?」

 彼は、「非合理な情熱と冒険」こそが経済を牽引すると、独自の主観を主張し、堂々と開き直る。

「開き直るなや。赤い特殊機体、つまり『ツノ付き』の文太(ぶんた)が現れるのに、何年待っとんねん? その間に、何人の『母ちゃん』が生活に困るねん!」

 晴景(ハルカゲ)は、「奇跡のヒーロー出現」を待つ澄夫(スミオ)の非合理性を、鋭く突っ込む。

「ふっ、二十年くらい光陰矢の如しさ…ヘクトパスカールッ!」

 澄夫(スミオ)教授は、質問の論理的な圧力から逃れるかのように、天気予報用語という、まったく意味不明なボケを炸裂させた。

 そのボケの唐突さと派手さに、講堂の空気は一時停止する。

「濃いなー。オッサンたち」

 黒木(クロキ)万桜(マオ)は、論理の極限を追求する自分たちを凌駕する、大人の「無駄ノイズ」の攻防に、ただただ圧倒されたのであった。


★ ◆ ★ ◆ ★


 万桜(マオ)は、「ハルハゲFlash」や「ヘクトパスカール」といった、あらゆる非合理なノイズをひとまず脇に追いやると、核心的な問いを投げかけた。

「てかさ、俺たちは投入できる商品(兵隊)の準備はできたけど、その兵隊を指揮するツノ付き(隊長)が居ねえんだよ」

 万桜(マオ)は、セイタンシステムズに致命的に足りていない「権威と信用、そして実行力」、すなわち「市場への浸透力(営業力)」の欠如を指摘する。

「赤い社長や、赤い頭取、モンテスキュー教授や、北野学長はいわゆる権威だ。だから、信用がある…どうすれば、あなたたちは、俺たちの兵隊を世に推してくれる?」

 彼は、大人たちが持つ「社会の信用ノイズ」を、どう活用できるのかを直球で持ち掛けた。

 講堂に、しばしの沈黙が訪れる。

 淳二(ジュンジ)泰造(タイゾウ)が、その熱意に目を細める中、まず口を開いたのは、「陽の経済学」を体現する西岡(ニシオカ)澄夫(スミオ)教授だった。

「ふっ、黒木くん! それはまさに『陽の経済学』における最重要項目だ!」

 澄夫(スミオ)は、待ってましたとばかりに、全身を使って熱弁を振るう。

「どれだけ素晴らしい『兵隊』でも、『赤い彗星』の『カリスマノイズ』がなければ、市場という戦場で埋もれてしまう! 技術は市場と社会に伝達されなければノイズなのだ! 兵站と士気の伝達こそ、市場経済のすべてだ! それがなければ、君の技術は、地下に埋まった風の谷の飛行機(メーヴェ)で終わってしまうぞ! ナウシカ!」

 澄夫(スミオ)は、技術を世に広める「情熱ノイズ」と「市場への積極的な投入」こそが、自らの提唱する「健全な浪費」の第一歩だと主張した。

 澄夫(スミオ)の言葉に、土御門(ツチミカド)晴景(ハルカゲ)はゆっくりと首肯する。

「さすが澄夫はんは熱いな。確かに、ロマンは大切や」

 しかし、晴景(ハルカゲ)はすぐに「隠の経済陰陽師」の顔に戻る。

「だが、わしらは銀行や。ロマンだけでは動かへん」

 彼は、万桜(マオ)の技術を市場へ広めるという「重大なリスク」を、極限まで吟味する姿勢を見せた。

「ええやろ。受けるで」

 その言葉に、万桜(マオ)の目が輝く。

「ただし、条件がある」

 晴景(ハルカゲ)は、静かに、しかし有無を言わせぬ調子で告げた。

黒木(クロキ)くんら、わしらにその商品、つまり『兵隊』が、軍事ノイズに流れず、社会に貢献するという『論理のプレゼン』をして、わしらを納得させたらな」

 晴景(ハルカゲ)は、彼の隣に立つ淳二(ジュンジ)と、目の前の澄夫(スミオ)を一瞥する。

「審査員はわしと淳二、それに澄夫はんや。『陰と陽、そして実務』の論理を、すべて満足させるんや。受けるかどうかは、それ次第や」

 「論理の魔王」は、自身の「究極のノイズ排除技術」を、「情愛ノイズ」に満ちた大人たちに向けて、「論理の論戦」で証明することを求められたのであった。


「それと高転び対策やね…」

 晴景(ハルカゲ)は、そこで一度言葉を切り、表情に深刻な「隠の重み」を滲ませた。

「投入する予算に関して、これは、さすがにわしらオッサンが握らせてもらうで。君たち若人の手にあまるよ」

 万桜(マオ)たちの「陽の暴走」による急速な資本増殖は、晴景(ハルカゲ)にとって最大の「非合理なリスクノイズ」であった。

「なんやねん一瞬で十億って? マンガか? 法人税どんだけかかるかわかっとんのか!?」

 彼は、その市場規模の驚異的な成長速度に呆れ返る。巨額の利益は、同時に巨額の税金と、「バブル的狂熱」という「経済ノイズ」を伴う。

「これもプレゼンや。ええな舞桜、香織くん?」

 晴景(ハルハゲ)に投げ掛けられた舞桜(マオ)香織(カオリ)に否やはない。むしろ、持て余していた資本の「健全な出口」が、ようやく見えたのだから当然だ。

「ぶっちゃけ、ウチらの収支って、マジでヤバいんすよぉ」

 杉野(スギノ)香織(カオリ)は、メガバンク頭取を前にしながらも、まったく怯むことなく、ギャル口調でセイタンシステムズ(アホの子たち)の規格外の収支を語り始めた。

「だって、黒木先輩が『論理のブレンド』で、非効率ノイズを全カット! 生産ラインから開発費まで、全部ゼロコストで回してるじゃん?」

 彼女は、空中に見えないキーボードを弾く仕草をする。

「経理ノイズから言わせてもらうと、『売上高総利益率』が、実質、百分率パーセント超えてくるんですよ! 水嚢風呂(フロート)の原価なんて、『重力ノイズ排除チップ』の電気代くらいだし、あとはただのコンニャク水じゃん? そりゃ、純利十億なんて、『一瞬のノイズ』っしょ!」

 「論理の魔王」が生み出した技術は、既存の会計原則や常識を完全に破壊し、「非合理な利益ノイズ」を生み出している。

「だから、このバグみたいな利益を放置すると、マジで社会ノイズになるから、赤い頭取に『お小遣い帳』を握ってもらうの、超助かる〜! ま、ウチらの商品は、軍事ノイズには流れないけどね! だって、介護とお風呂だもん!」

 香織(カオリ)は、『非合理なほどの高利益』がもたらすリスクを冷静に分析しつつも、あくまで自らの商品は「隠の論理」に沿っていると、ギャル的な軽やかさで主張したのであった。

「ふむ……」

 晴景(ハルハゲ)は、香織(カオリ)の計算ノイズに満ちた説明に、深い眉間の皺を寄せた。

「おまえらがやってることは、もはや経済やないな……」

 彼は、万桜(マオ)たち若者が、「論理の暴走」によって、『資本主義の根本原理』さえも揺るがし始めていることを理解した。


★ ◆ ★ ◆ ★


「てか、普通は研究・開発費って莫大な金額が掛かるんですけどね」

 香織(カオリ)は、黒木(クロキ)万桜(マオ)たち先輩「論理の魔王」組に、ジト目を貼り付ける。

 セイタンシステムズの研究・開発費は実質ゼロだ。アホの子たちのブレストで常に完結し、アホの子たちの「非合理な行動力」によって直ちに実現してしまう。まるで子供が遊びを始めるように、革新的な技術が実現されてしまうのだ。

「ケンキューって仏教用語だっけか?」

 アホの子代表、黒木(クロキ)万桜(マオ)は、「論理の忘却ノイズ」を撒き散らし、すっとぼける。

「違うよギャル語だよ。たぶん…」

 アホの子代表其の二である福元(フクモト)莉那(リナ)も、満面の笑みで追随し、万桜(マオ)の「無意味ノイズ」を増幅させる。


 その時、甲斐の国大学講堂の巨大な窓の外が、一瞬、白く煌めいた。

 分厚い鉛色の雲が、光を吸収するように膨張し、まるで空の壁が迫ってくるようだ。

 ゲリラ豪雨が、すぐそこまで来ていることを示す稲光だった。

「へっへー。待ってたぜ」

 「論理の魔王」黒木(クロキ)万桜(マオ)は、獰猛な笑みを湛える。その目は、「自然の理屈の暴走」を、「究極の合理性の機会」と見定めていた。

「来たな」

 茅野(チノ)舞桜(マオ)は、万桜(マオ)の思考を完全に読み取り、静かに頷く。

「来たわね」

 白井(シライ)勇希(ユウキ)もまた、稲光を「水資源回収ミッションの開始ノイズ」として受け入れた。

「サブリナ! パラグライダーの準備は!」

 万桜(マオ)の呼びかけに、福元(フクモト)莉那(リナ)が「あざっす!」と元気に返答する。

「既に甲斐の国大学の屋上から、雲押しくん搭載の無人パラグライダーを5機、飛ばしてあるよ! 風ノイズも計算済み! いつドライアイスを射出してもオーケーっす!」

 彼女は、まるでゲームのボーナスタイム突入を告げるかのように、ハイテンションだ。

 万桜(マオ)は、サブリナの魔法の無線から人工知能魔王(セイタン)へと指示を告げる。

魔王(セイタン)。善きに計らえ」

了解(ラジャ)です。万桜(マオ)

 サブリナの魔法の無線に、指揮用パラグライダーの映像が映し出され、講堂のモニターに表示される。無人パラグライダーが、真っ黒に染まった積乱雲の遥か下層へと侵入していく。

 機体からは、密閉されたドライアイス(固体CO2)が高周波の熱線により瞬間的に昇華(気化)させられ、大量の「重いガス」となって噴射された。

 空気の1.5倍の重さを持つCO2ガスの層が、雨雲の底にぶつかり、まるで「目に見えない巨大な手のひら」のように、雲全体を物理的に押し始めたのだ。

「あれは、なんだ? なにが起こっているんだ?」

 西岡(ニシオカ)澄夫(スミオ)教授は、モニター越しの異常な気象現象に、目を丸くする。

 雨雲が、明らかに自然の風向きに反し、「溜め池ノイズ」が集中する甲斐の国市中心部へと、無理やり誘導されている。

「『昇華ガスの重力ノイズ』による、雲の誘導です」

 万桜(マオ)は、誇らしげに答える。

「このゲリラ豪雨は、『負のノイズ』じゃない。『水資源回収ボーナスタイム』だぜ!」

 そして、誘導された積乱雲の直下、古井戸の真上で、昇華ガスの超低温ノイズが『降雨のトリガー』を強制的に引き抜く。

 一時的に視界が真っ白になるほどの激しい集中豪雨に見舞われたが、出来たての地下溜め池の真上という、「論理の魔王」が定めた『絶対座標』にのみ降り注ぎ、インフラの麻痺という「負のノイズ」は一切発生しなかった。

「ふ、ふざけとんのかおまえらは……」

 土御門(ツチミカド)晴景(ハルカゲ)頭取は、自らの眼の前で繰り広げられた「自然の理屈への論理の暴力」に、メガバンクの頭取としての威厳を忘れて絶句した。

「ゲリラ豪雨を、資源回収のボーナスタイムとか……ありえへん……」

 彼の脳裏には、先ほどまで議論していた「規格外の収支ノイズ」の源泉が、この「非合理なほどの技術の暴力」にあることを、否応なく理解させられたのであった。

 晴景(ハルカゲ)は、深く長い溜息を吐き出すと、「論理の魔王」と「経済陰陽師」の顔を同時に見せる、複雑な表情で万桜(マオ)を指差した。

「黒木くん。君たちがやってることは、もはや経済やない。世界そのものの書き換えや」

 彼は、万桜(マオ)たちが『水嚢風呂』で「重力ノイズ」を排除した時と同様に、今回は「気象ノイズ」を排除し、水資源という『隠の価値』を強制的に回収したことを悟った。

「だからこそ、わしらオッサンは、おまえらの『技術の暴走』を社会に流すかどうかを、慎重に判断せなあかん」

 西岡(ニシオカ)澄夫(スミオ)教授は、興奮のあまり眼鏡を拭いながら、甲高い声で晴景(ハルカゲ)に同意した。

「トッポ・ジージョ! その通りですよ、ハルハゲ先輩! これはもう経済学の領域を超えている! まるで『未来の陽の技術』が、我々の目の前で『隠の資源』を強制的に吸い上げているようだ! これこそ、私が求めていた『非合理の極致』だ!」

 澄夫(スミオ)は、「陽の経済学」の視点から、万桜(マオ)の技術を「停滞ノイズを破壊する究極のエンジン」として激賞した。

「論理の魔王」と称される万桜(マオ)も、ここで初めて大人の「権威ノイズ」を評価する。


『鋼鉄のポジティブ ~未来の世界のネコ型ロボットを迎えに行こう~』をお読みの地球の皆様へ!

いつも拙作『鋼鉄のポジティブ ~未来の世界のネコ型ロボットを迎えに行こう~』をお読みいただき、本当にありがとうございます!

物語の中で、「魔王」こと黒木万桜は、時には「水嚢の川」で災害に立ち向かい、時には中古スマホを活用したクローズドネットワークなんて突拍子もないアイデアまで生み出しています。

実は、この物語には、万桜のそんな「もしかしたら、これって本当に役立つかも?」と思えるような、たくさんのアイデアが散りばめられているんです。読者の皆さんも、「これ、面白い!」「こんな風に使えるんじゃないか?」なんて、閃いたことはありませんか?

地球のみんなぁ~! オラに「★」をわけてくれーっ!

もし、この物語を読んで、少しでも「面白い!」「次の展開が楽しみ!」「万桜のアイデア、イケるかも!」と感じていただけたなら、どうかページ下部の【★★★★★】ボタンをポチッ!と押して、星評価を分けていただけないでしょうか!

皆さんのその「★」一つ一つが、作者の大きな励みになり、万桜の次の「魔王案件」へと繋がるエネルギーになります!

引き続き、『鋼鉄のポジティブ ~未来の世界のネコ型ロボットを迎えに行こう~』をどうぞよろしくお願いいたします!

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