黒き魔王の水嚢風呂
ノイズの論理的排除
ここは、2019年8月、御井神神社の麓。
魔王的発明家、黒木万桜が作り上げたのは、電力ゼロの熱源と、グルコマンナンで満たされた水嚢風呂という究極の『生体ノイズ最適化システム』であった。
その目的は、被災地での衛生管理、そして介護現場での疲労軽減――人間が抱える「重力ノイズ」、「体圧ノイズ」、「感染症ノイズ」といった、あらゆる非効率な要素を、徹底的な論理をもって排除することにある。
しかし、この合理的すぎる技術は、思わぬ『社会ノイズ』を生み出す。
女性陣の疲労を瞬時に取り除く一方で、汗によって透けてしまうシャツの問題。そして、万桜の「情愛の論理」が、周囲の人間関係に引き起こすさざ波。
「論理の魔王」のシステムが、『母ちゃんの経済』を担うメガバンクと、陽の経済学の体現者である茅野淳二を巻き込み、巨大なビジネスへと暴走し始めたとき、物語は、「情愛の非合理性」と「科学の論理」が織りなす、真夏の喧騒へと突入していく。
2019年8月中旬。御井神神社の麓に建造された地下溜め池のそば。
「舞桜、ちょっと」
黒木万桜は、茅野舞桜を呼び寄せる。
「なに万桜くん」
舞桜の瞳に疲労が滲んでいる。それは、女性特有の非合理なノイズ、女の子の日であることを示唆していた。
万桜は、地下溜め池のそばに設置された超仮設住宅、エアクラの内部へと舞桜を誘う。
「ちょっと、そこへうつ伏せなってみ」
エアクラの内部には、エアバッグ式の寝具とは別に、布団ほどの大きさの透明なシートが置かれていた。中には、薄い黄緑色の、とろみのある液体が満たされている。
「なにこれ? 水嚢?」
舞桜は、その光景に首を傾げた。
「被災地用の秘密兵器、水嚢風呂だよ」
万桜は、舞桜の身体を優しく支え、水嚢の上へと誘導した。
「このグルコマンナンの水嚢は、通常の水の熱容量と浮力だけじゃなく、汚れないという衛生的な合理性を両立させている」
「どういう論理なの? 汚れないって」
舞桜は、液体に身体を預け、うつ伏せになった。
「皮膚がふやけるのは、体液よりも濃度の低い水に浸かることで、皮膚細胞の水分バランスが崩れる、『水の浸透圧ノイズ』のせいだ」
万桜は、淀みなく論理を語り始める。
「この水嚢の中身は、コンニャクの主成分が水と結合した半固形ゲル状の流体だ。皮膚の浸透圧バランスを乱さないよう設計してあるから、『水分透過ノイズ』を極限まで抑える」
「だから、長時間入っていてもふやけない…そういう論理ね!」
舞桜は、その論理の合理性に、感嘆の息を漏らした。
「それだけじゃない。この水嚢は、『断熱圧縮で沸かしたお湯』で温めてある」
「風熱ポットの熱源! 電力ゼロの超高温熱源を、こんなところにまで使ってるの?」
舞桜は、万桜の技術の応用範囲の広さに、目を丸くした。
「ああ。安定した温かさは、『血流悪化ノイズ』を緩和し、血行を改善する『温度ノイズの最適化』だ。特に、生理痛の原因となる『プロスタグランジンによる血管収縮ノイズ』を、根本から排除できる」
「…身体が、重力から完全に解放されているわ」
舞桜は、うつ伏せのまま、目を閉じた。身体にかかっていた全ての重圧が、均等な浮力によってゼロになったのだ。
「人間は、通常のベッドで寝ている間も、無意識に『重力に抗うノイズ』を使い続けている。水嚢に浮かぶことで、この恒常的なノイズを遮断し、脳と身体の休止状態を最大化する」
万桜は、水嚢の上に、さらに布団サイズの水嚢をそっと被せる。
「そして、上部からも熱を逃さない究極の保温。全身にかかる圧力を均等にし、『体圧ノイズ』を排除する」
「ふふっ、これこそ『究極の生体ノイズ最適化』ね…」
舞桜は、かすかな笑みを漏らした。
重力と圧迫から解放された身体は、生理による非合理な痛みを忘れ、極度のリラックス状態へと移行した。
「どうだい? 生理痛という非合理なノイズは、排除できたか?」
万桜が、優しく舞桜の頭を撫でる。
「うん…まるで、『論理的に設計された温熱療法』ね…」
舞桜は、身体を動かすことさえ億劫になるほどの快適さを感じていた。
「よかった。生理痛を経験できない俺にとって、その非合理なノイズを排除することは、『文明の義務』だと思った」
万桜は、舞桜への情愛を、『論理』と『文明の義務』という言葉で正当化した。
「万桜くん…」
論理の魔王の口から出た、究極の情愛の論理に、舞桜は顔を赤らめるのであった。
黒木万桜は、生理の疲労に苦しむ茅野舞桜を、被災地用の秘密兵器「水嚢風呂(蒟蒻・フロート)」へと誘った。
「このグルコマンナンの水嚢は、通常の水の熱容量と浮力だけじゃなく、汚れないという衛生的な合理性を両立させている」
万桜は、グルコマンナンによる「水分透過ノイズ」の制御と、「断熱圧縮で沸かしたお湯」による「温度ノイズの最適化」という、究極の生体ノイズ排除の論理を語る。
「…身体が、重力から完全に解放されているわ」
水嚢にうつ伏せになった舞桜は、身体にかかっていた全ての圧迫から解放された。
「まるで、『論理的に設計された温熱療法』ね…」
舞桜の身体は、『体圧ノイズ』の均一化によって血流阻害から解放され、短時間で『超回復』の状態へと移行した。
舞桜は、その論理の極みにある優しさに、顔を赤らめた。
水嚢風呂(蒟蒻・フロート)の論理的合理性
・重力ノイズの究極の排除: 身体にかかる重力と内臓の圧迫ノイズを、浮力によって完全にゼロにする。
・体圧ノイズの排除: 水の均等な圧力により、体の一点にかかる圧迫ノイズ(床ずれの原因)を分散し、血流阻害ノイズを排除。深いリラックス状態(超回復)を促す。
・温度ノイズの最適化: 「断熱圧縮熱源」の安定した温かさで、血行を改善し、生理痛の原因となるプロスタグランジンによる血管収縮ノイズを緩和する。
・「ふやけない」ことの論理: グルコマンナンを混ぜた半固形ゲル流体により、皮膚と水嚢の界面における「浸透圧ノイズ」を制御し、長時間の入浴でも皮膚への水分透過を防ぐ。
◆ ★ ◆ ★ ◆
「たぶん、これ介護や看護でも使えるぜ。もちろん、被災地でもだ。発熱風車ミニ・ドン・キホーテがあれば燃料も要らねえ」
黒木万桜は、舞桜への情愛という「非合理のノイズ」に赤らむ顔を背け、外に設置された小型の風車を指差した。
風車の回転エネルギーは、粉を挽くかわりにピストンを押して断熱圧縮の熱で湯を沸かすという『電力ゼロの熱源システム』だ。お湯が熱くなり過ぎないように、温度の管理は、クラウド上の人工知能魔王が行っている。ピストンを外せば風車が空回りするだけの簡単な仕組みだ。
「早くも改良版が出たか~」
水嚢風呂から出たばかりの茅野舞桜は、その陽の科学の応用範囲の広さに感嘆した。
「舞桜ぉ…あたしも、ちょっと代わってぇ…」
福元莉那が、全身の疲労ノイズを訴えるように挙手すると、それに合流してきた倉田琴葉が、
「じつはあたしもだサブリナくん…『論理的疲労の極み』に達している。ジャンケンで決めないか?」
名乗り出る。
万桜は苦笑し、
「他にもあるよ。そっちを使いな」
別の超仮設住宅を指差した。
「すごい! 改良版は、より深いリラックスを『論理的に設計』しているわ!」
新しい水嚢に身を委ねた莉那は、まるで全身の細胞が重力から解放されたかのように、恍惚とした表情を浮かべた。
「この『重力ノイズの究極の排除』は、あたしたちの脳の演算効率を極限まで高めるための、最高の準備運動だわ! これで今夜のプログラミングが音速で進む!」
彼女は、水嚢風呂の合理性を、自らの「論理の暴走」を加速させる『ノイズ排除装置』として再定義した。
「グルコマンナンの粘性と、お湯の温度の均一性が、『液体の抱擁』のようね」
琴葉は、その技術がもたらす安心感に、独自の表現を与えた。
「長時間浸かっても皮膚がふやけないという論理は、『生体ノイズ』の制御に対する、万桜くんの『文明の義務』への回答だ。これぞ『論理の愛』!」
彼女は、このシステムを単なる疲労回復装置としてではなく、万桜の『人間性』と『合理性』が高度に融合した「情愛の具現化」として捉えた。
「勇希はいいのか?」
万桜が尋ねると、
「来ていない」
白井勇希が簡潔に答え、
「そっか」
万桜は動じずに受け答える。
「もっと取り乱すかと思ったが?」
勇希が意味深に笑うと、
「取り乱してどうする?」
万桜は泰然としている。彼は、自身の情愛の対象が誰であろうと、その場にいないという「事象のノイズ」に、感情を揺さぶられる非合理性を拒絶した。
「残念ながら、そっちじゃない…あたしのは、もっと先だ…」
勇希は、万桜を『情愛の暴走』へと引きずり込もうとする「非合理の誘惑」が、簡単に通用しないことに、残念そうに苦笑する。
その光景を端から見ていた男性陣、茅野淳二、土御門晴景、そして白井泰造は、
「「「あいつのメンタル鋼鉄か? なんやこの泰然自若!」」」
デリケートな『情愛の三角ノイズ』に動じない万桜に、心底慄いたのであった。
★ ◆ ★ ◆ ★
「まあ、汗はかくだろうから、シーツは必須だな。砂風呂よりは清潔かもな」
黒木万桜は、水嚢風呂の技術的な優位性を確認するように呟いた。
彼は、溜め池のほとりに置かれた水嚢風呂と、それを温める|発熱風車ミニ・ドン・キホーテ《ふうねつふうしゃミニ・ドン・キホーテ》を交互に見つめた。
「汗は、老廃物の排出という生理的な合理性を持つが、同時に『衛生ノイズ』の発生源になる」
万桜は、水嚢風呂が砂風呂よりも優れている論理的な根拠を明確にした。
「通常の入浴と違い、このシステムは、利用者が直接『熱源』や『媒体』に触れない『非接触型』だ。シーツや着衣という『使い捨ての遮断層』を介することで、『感染症ノイズ』を水嚢自体に持ち込むことを、論理的に防いでいる」
この徹底した衛生対策は、特に被災地や病院における「パンデミック・ノイズ」を未然に排除するという万桜の哲学を反映していた。
「着衣で利用して、毛布とシーツで遮断してるがな。それでも全部は防げん」
白井勇希は、水嚢風呂から出た茅野舞桜にタオルを差し出しながら、「砂風呂の不合理性」について冷静に語り始めた。
「通常の砂風呂では、利用者の汗や皮脂が、数トンもある砂に吸い込まれる。砂の持つ熱容量は大きいが、それは『熱による殺菌』というノイズ制御が、『砂の奥深くまで浸透しない』という不合理性を生む」
勇希は、砂風呂の構造的な欠陥を指摘する。
「砂の再利用は、『黄色ブドウ球菌』や『真菌』といった、複数の『病原体ノイズ』を砂の中に温存させることになる。利用者がシーツを敷いても、その下に潜む『衛生リスク』は排除できない」
彼女は、万桜の水嚢風呂が、「グルコマンナンとシーツの多層構造」によって、媒体自体を汚染させないという『論理的優位性』を強調した。
「万桜のシステムは、『媒体の衛生』という基礎的な論理を、構造レベルで保証している。砂風呂が抱える『感染症ノイズ』は、水嚢風呂では、『シーツの交換』という極めてシンプルな論理で解決する」
勇希は、万桜の論理の「完璧な循環システム」を、改めて大人たちに示すのであった。
★ ◆ ★ ◆ ★
「万桜くん。さっそくだけど、オフィスで使う場合の弱点を見つけたわ」
茅野舞桜は、水嚢風呂によって疲労が抜けた瞳を黒木万桜に向ける。その指摘は、論理的な切れ味を取り戻していた。
「うん。そうね。それね…」
万桜も薄々は気づいていた。自身の『生体ノイズ最適化システム』が、『社会ノイズ』を生み出すという「論理のパラドックス」に。
「汗よ。水嚢風呂に挟まれると、メッチャ汗かくじゃない?」
この日の舞桜は、幸い黒地のシャツだ。だが、福元莉那は白地のシャツだ。
「スッケスケじゃんか? 万桜、これ狙ってた?」
下着が透けて見えてしまう「視覚ノイズ」に、莉那はジト目を貼り付けてくる。
「いや、おまえら全身包むからじゃん。腰までで止めとけよ」
万桜は、あくまで技術的な正論を振り翳す。
確かに、舞桜の上掛け水嚢風呂は、腰までだった。万桜が設置した時は。ミノムシ状態にしたのは、舞桜自身だ。
「「「できるわけないでしょ? 快適さを求めるのが人間だもん!」」」
舞桜、莉那、倉田琴葉の『被験者三人』は、「情愛の連帯」という非合理なタッグで、万桜に逆ギレした。
人間は、『究極の快適さ』を目の前にすると、『社会的な合理性』を犠牲にする生き物なのだ。
万桜は、この「予期せぬ情愛と快適さのノイズ」を、技術的な論理で処理しようと、すぐに思考を切り替えた。
「シーツを変えたあとは、除菌スプレーで塗布消毒だな。衛生はこれで完璧だ」
彼は乾いた笑みを浮かべて、透けたシャツの莉那から目を逸らし、その場を流した。
万桜にとって、「女性の下着が透けるという視覚ノイズ」よりも、「衛生という論理の破綻」の方が、よほど緊急性の高い問題であった。
しかし、その様子を離れた場所から見ていた土御門晴景は、
「…あれが、論理の魔王の『究極の照れ隠し』か」
と、そのドライな対処に、人間の非合理的な感情の連帯を見るのであった。
★ ◆ ★ ◆ ★
「赤い頭取。これ赤いメガバンクでも導入する?」
杉野香織は、大口の商談を持ち掛ける。汗で透けた白シャツの非合理性をものともせず、彼女の瞳は「金の論理」へと切り替わっていた。
「介護施設、病院、そして災害備蓄。この水嚢風呂は、『非効率な労力のノイズ』を排除し、『感染症リスク』という最大の『経済ノイズ』を制御できる」
香織は、銀行家が最も重視する「安定性」と「リスク排除」を突いた。
「舞桜、これ茅野建設にも納品してやぁ」
陽の経済学の体現者である赤い社長、茅野淳二の判断は、即断即決だ。
「住宅はもちろん、わしらが受注する公共工事の『作業員の疲労ノイズ』を排除できる! 『超回復』は、『生産性の極限最適化』や!」
淳二は、コストと効率という陽の論理で、その価値を瞬時に見抜いた。
香織の指先が、空中に見えないキーボードを弾く。
「毎度ぉ、赤いお面。水嚢風呂、初期ロット1,000台、一台あたり純利益50万円。『純利益5億円』の試算完了! 赤い頭取、どうする?」
香織は、『超光速経理』で瞬時に純利益を試算し、土御門晴景へと決断を迫った。
「「誰がシャアやねんッ!」」
淳二と晴景は、渾身のノリツッコミを炸裂させる。
晴景は、『経済陰陽師』を育成すると宣言したばかりの香織の熱意を、真剣な眼差しで受け止めた。
「万桜くんの技術は、まさしく『陽の暴走』や。しかし、その論理の基礎には、『非効率を許さない隠の合理性』が極限まで浸透している」
彼は、「衛生ノイズの排除」という万桜の論理が、銀行の「リスク回避の論理」と完全に一致していることを理解した。
「水嚢風呂は、被災地や介護の現場で、『不潔という衛生ノイズ』と『疲労という経済ノイズ』を同時に排除する」
晴景は、静かに結論を出す。
「『母ちゃんの経済』を担うメガバンクとして、『未来への成長』という陽の論理を否定するわけにはいかへん。香織くん。発注する。介護・医療・災害備蓄用として、『純利益5億円』のロットを、わしの銀行が買い切る」
土御門晴景は、『隠の権威』として、『陽の科学』を市場へ解き放つという「論理的な決断」を下したのであった。
★ ◆ ★ ◆ ★
「「飯だぞー」」
そこへ、幹部自衛官候補生の斧乃木拓矢と、番長神主であるリーゼントの祭谷結が、水嚢の川に渡したロープウェイ曳舟に乗って降りてくる。
結が掲げる大皿には、『真夏の疲労ノイズ排除メニュー』が豪快に盛り付けられていた。
・猪肉と夏野菜のスタミナ炒め: 栄養ノイズを根絶する濃密なエネルギー。
・キュウリとミョウガの梅和え: 疲労回復ノイズを加速させる『酸味の論理』。
・冷やしトマトと塩麹のスープ: 体内の水分バランスとミネラルノイズを最適化する。
「淳二。わし、あれ、聞いてへん」
土御門晴景は、水嚢の上を滑るように移動する曳舟の存在に、茅野淳二にジト目を貼り付ける。
「あったな~あれだけでも驚いたもんやったけど」
淳二は、その『水嚢の川の移動システム』の合理的過ぎる発明から、目を逸らした。もはや、万桜の技術の異常性にも慣れてしまっている。
「慣れって怖いね先輩!」
白井泰造は、万桜の論理の暴走を前にして朗らかに笑うと、
「番長、今年はスーパー盆踊りやるの?」
番長へと投げ掛ける。
「今年はな~俺んとこ子供生まれたばっかだからな~。赤ン坊に騒音は『非合理なノイズ』だろ?」
番長は腕組みする。赤ン坊に騒音は厳禁だが、番長は的屋の元締め三代目でもある。盆踊りという『経済ノイズ』を発生させないわけにはいかない。
「水嚢でカーテンして囲めばいいじゃねえか?」
黒木万桜は、なんてことないように「騒音ノイズ」を取り除く『論理的な解決策』を提案した。
水嚢の多層構造は、優れた吸音材としての合理性を持つ。御井神神社全体を水嚢で囲めば、騒音は完全に遮断される。
「「「「『遮音ノイズの究極排除』だと!?」」」」
万桜の『情愛と論理の暴走』による、あっさりとした問題解決に、淳二、晴景、泰造、そして拓矢の男性陣は、「論理の魔王」のメンタルの鋼鉄ぶりに改めて慄いたのであった。
★ ◆ ★ ◆ ★
◆非合理な着想の論理
猪肉と夏野菜のスタミナ炒めを、一同が豪快に平らげている最中。
「万桜、なにが、この構想を思いつかせたんだ?」
白井勇希は、黒木万桜の顔を真っ直ぐに見据えて尋ねる。勇希は、水嚢風呂やオフィス・シェルターの、究極の論理的合理性の着想源に興味を持った。
「あぁ、藤っちの部屋に行った時に」
万桜は、何の悪気もない無邪気な顔で、衝撃的な着想源を暴露し始める。
「藤っちが観ていたエロクッコロDVDで、セクシーアイドルが水平状態で吊られてたのを観て思いついたんだ」
万桜は、彼の論理の暴走を説明する。
「下腹部が重力で突き出ててさぁ~」
その映像が、彼の頭脳の中で「腹部無圧化」という究極の論理へと反転した。
「ああ、あのシーンね」
福元莉那は、万桜の暴露に即座に食いついた。
「あたしが男に要求されたら、相手の男を埋めるって言ったあのカッコね」
莉那の瞳には、一切の感情がなく、その絶対零度の視線が、幹部自衛官候補生の藤枝誠を、軽蔑的に貫いた。藤枝は、自分の趣味を暴露されたことに、身体を小さくする。
「…ゴミだな藤枝…」
白井勇希もまた、藤枝に冷たい視線を向け、短い言葉で藤枝を責めた。
「まあ、それくらいにしてやってくれ」
防衛大学校3回生である倉田琴葉は、後輩の藤枝を庇おうと、穏やかな声音で制する。
しかし、万桜は、さらなるノイズを投下した。
「そういや倉田さんに似てたな。あのセクシーアイドル」
万桜は、琴葉とセクシーアイドルのルックスが似ていたという、彼の頭脳が認識した事実を、純粋に論理的な情報として暴露した。
「そうか藤枝…あたしにエロクッコロを妄想して、お楽しみか?」
倉田琴葉の声音は、一瞬で絶対零度のコキュートスへと変化する。
藤枝は、琴葉の言葉を聞き、その顔色が青から白へ、激しく明滅した。
「あどけない顔をしてエグいわね。藤枝くん」
童顔の藤枝に、茅野舞桜は引導を渡した。舞桜の言葉は、藤枝のプライドを完璧に打ち砕く。
「ま、藤っちの御手柄だよな~」
万桜は、彼自身の発想が藤枝のDVDから生まれたという事実を、無邪気に断言する。
「俺観ねえもんエロクッコロ」
万桜の純粋な一言が、論理のトドメを刺すのであった。
『鋼鉄のポジティブ ~未来の世界のネコ型ロボットを迎えに行こう~』をお読みの地球の皆様へ!
いつも拙作『鋼鉄のポジティブ ~未来の世界のネコ型ロボットを迎えに行こう~』をお読みいただき、本当にありがとうございます!
物語の中で、「魔王」こと黒木万桜は、時には「水嚢の川」で災害に立ち向かい、時には中古スマホを活用したクローズドネットワークなんて突拍子もないアイデアまで生み出しています。
実は、この物語には、万桜のそんな「もしかしたら、これって本当に役立つかも?」と思えるような、たくさんのアイデアが散りばめられているんです。読者の皆さんも、「これ、面白い!」「こんな風に使えるんじゃないか?」なんて、閃いたことはありませんか?
地球のみんなぁ~! オラに「★」をわけてくれーっ!
もし、この物語を読んで、少しでも「面白い!」「次の展開が楽しみ!」「万桜のアイデア、イケるかも!」と感じていただけたなら、どうかページ下部の【★★★★★】ボタンをポチッ!と押して、星評価を分けていただけないでしょうか!
皆さんのその「★」一つ一つが、作者の大きな励みになり、万桜の次の「魔王案件」へと繋がるエネルギーになります!
引き続き、『鋼鉄のポジティブ ~未来の世界のネコ型ロボットを迎えに行こう~』をどうぞよろしくお願いいたします!




