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番長ジュニアのバースデー

前書き

 2019年5月下旬。信源郷町の産婦人科。

 豪農にして的屋の三代目である祭谷(マツリヤ)(ユイ)と、妻の早苗(さなえ)の間に、待望の四代目、(エミ)が誕生した。

 外見は反社会勢力そのものだが、中身は純粋で気の良い男たちが集う的屋の面々は、病院の外で大きな歓声をあげ、祭谷の一家は「愛という名の責任」という、最も複雑で強固な『論理の鎖』に繋がれた。この小さな命の誕生は、血縁を超えた『村の子』思想を育む、温かい『愛のノイズ』の起点となる。

 一方、その『愛のノイズ』を、企業として支援し、最適な形で解決しようと試みる者たちがいた。

 天才・黒木(クロキ)万桜(マオ)が提唱し、CEO・茅野(チノ)舞桜(マオ)が社長命令として全社員必須のスキルに組み込んだプロジェクト。それが、『対夜泣き決戦サービスYONAKI』だ。

 万桜(マオ)の究極の合理性は、子育てという最も非合理な課題に直面する。新生児の皮膚を締めつけるオーダーメイドの紙オムツを作ろうとし、究極の非効率を生み出す過ちを犯し、友人たちに諭される。

 これは、「論理の暴力」を振るってきた黒木(クロキ)万桜(マオ)が、小さな命の誕生と、友人の深い情愛に触れることで、自らの論理を「愛の論理」へと進化させ、『システムの最適解』を見つけ出す物語である。

 2019年5月下旬。信源郷町、産婦人科にて。

「予定日来週じゃねえのかよ?」

 祭谷(マツリヤ)(ユイ)は、ソワソワとしていた。病室前の廊下を、行ったり来たり、落ち着きがない。

 信源郷町の豪農である御神輿(オミコシ)家と、同じく豪農であって、兼業フードワゴン部隊の取り纏めである祭谷(マツリヤ)家の強面(コワモテ)の的屋たちが、病院の外でソワソワしている。

 彼らの外見は、反社会勢力そのものだ。

 しかし、中身は農業、料理、林業、販売、酪農、畜産、建築、土木、それらの重労働に従事する気の良い男たちだ。

「おい、(わか)ッ! ひっひっふー付き合わねえでいいのか?」

 的屋の親方が、オロオロと尋ねる。

「断固拒否されました! オレは外で待ってろってさ!」

 番長(バンチョー)は、病室前の廊下から、表の的屋たちに声を張り上げる。

「うるせえ! 早苗(さなえ)ちゃんが集中できねえだろうが! 静かに待ってろ!」

 その言葉に、どっと笑いが起こると、部屋の中から、力強い産声があがった。

 番長(バンチョー)は、そのまま立ち尽くす。彼の顔は、喜びと安堵、そして父親になったという実感が混じり合い、複雑な色に染まっていた。

「…生まれた……」

 番長(バンチョー)の口から漏れた、か細い声は、彼の感情の爆発を物語っていた。

 看護師に促され、病室に入ると、そこには疲労の色を隠せない妻の早苗(さなえ)が、小さな命を抱きしめている。

(ユイ)。男の子だよ」

 早苗(さなえ)は、そう言って微笑んだ。

 番長(バンチョー)は、震える手で、その小さな命を抱きしめた。彼の強面な顔も、この時ばかりは、深い情愛に満ちていた。

 その小さな命に、番長(バンチョー)は静かに誓う。

「オレが、オレが必ず、この子を守り抜く」

 看護師が、命名の記入を求める。

(エミ)。これが四代目の名前だ!」

 番長(バンチョー)の達筆で書かれたそれは、まさに喜びの奔流を体現していた。

「野郎ども、ふれまわりやがれ! そんで今日は全商品半額セールの大バーゲンだ!」

 番長(バンチョー)は、見舞いに来ていた親方に、それを投げ渡すと、

「「「「へい! おめでとうございやす! 三代目!」」」」

 的屋たちは、大音声な祝福を鬨であげた。その歓声は、信源郷町中に響き渡り、新しい命の誕生を祝った。

 番長(バンチョー)は、妻の早苗(さなえ)に視線を向け、

早苗(さなえ)ちゃん。約束する。オレは、オレは必ず、この子に恥じない生き方をする」

 早苗(さなえ)は、ただ微笑んでいた。

 その瞳は、夫の情愛に満ちていた。

 祭谷(マツリヤ)(エミ)。その名には、彼の両親、御神輿(オミコシ)家と祭谷(マツリヤ)家の、未来へのすべての願いが込められていた。

 それは、「笑いの絶えない、明るい未来」という、番長(バンチョー)の、そしてこの町の人々の、純粋な希望の結晶であった。

 祭谷(マツリヤ)(ユイ)早苗(さなえ)の間に生まれた、この小さな命の誕生は、信源郷町に、新たな活力を与えることになる。

 彼らの「愛のノイズ」は、この小さな命を育むという、最も原始的で、最も合理的な「システム」によって、これから形作られていく。

 そして、そのシステムの「温かいノイズ」は、いずれ、黒木(クロキ)万桜(マオ)の「論理の暴力」を、より人情味あふれる「システムの最適解」へと導くことになるだろう。

 番長(バンチョー)の「愛の論理」の証明は、今、ここに、静かに始まった。


★★★★★★


 同じころ、甲斐の国大学のキャンパスでは、旧休憩室。

 黒木(クロキ)万桜(マオ)は、通信端末を片手に、興奮の熱量で顔を紅潮させていた。彼の隣には、複雑な財務シミュレーションを光速で回す杉野(スギノ)香織(カオリ)、そして茅野舞桜(マオ)白井(シライ)勇希(ユウキ)がいた。

「生まれたってよ!」

 万桜(マオ)が親方からの吉報を受けて、論理的な抑制を完全に失った歓声をあげた。

 その声は、旧休憩室の静寂を破り、周囲の論理的な空気さえも、非合理な熱量で歪ませる。

番長(バンチョー)、父親になったのね」

 勇希(ユウキ)は、その事実を淡々と受け止める。しかし、その瞳の奥には、友の人生が新たな「愛の論理」によって上書きされたことへの、静かな感慨が宿っていた。

「これで、彼も『愛という名の責任』という、最も複雑で、最も強固な『論理の鎖』に繋がれたってことね」

 勇希(ユウキ)は、その「責任」の重さを、冷静に査定した。

舞桜(マオ)。育児手当てマシマシにしようぜ?」

 興奮している万桜(マオ)は、無意識のうちに、普段の『ボッチ』という愛称を捨て、『舞桜(マオ)』と名前で呼んでいた。

 その瞬間、舞桜(マオ)の瞳に、わずかな優越の光が宿る。

「わかってるわよ万桜(マオ)。あと、これは社長命令よ。セイタン・システムズ全社員は、対夜泣き決戦サービスYONAKIに参加します!」

 舞桜(マオ)は凛とした声音で社長命令を通達した。


 香織は、恐る恐る手をあげる。

「杉野は、なにが不安?」

 勇希(ユウキ)は、香織の怯えた様子を無視せず、優しく諭すように問いかけた。彼女の口調は、厳格な教官というよりも、友人を心配するリーダーのものだった。

「あ、あの…乳児を扱うのは、まだ慣れてなくて…」

 香織の声は震え、彼女の心配の核心が不慣れにあることを物語っていた。

「杉野、みんなを見て。誰もが不慣れだ。だから、場数を踏むんだ」

 勇希(ユウキ)は、そう言って、香織の肩にそっと手を置いた。

 勇希(ユウキ)は全員を見渡し、香織のネイルに着目する。

「だけど、ひとつだけ。杉野のネイル、それからピアスの穴。今日からやめて」

 勇希(ユウキ)の言葉は厳しさを帯び、雰囲気が引き締まった。

「へ? なんで?」

 香織は、思わず指先を隠すように手を引っ込めた。

「考えてみて。赤ちゃんはなんにでも手を伸ばす。とくに目の前でキラキラ光るものには興味津々だ。ピアスなんて、引っ張られて千切れたら、どうなる?」

 勇希(ユウキ)の指摘に、香織は青ざめた。

「ネイルも同じよ。ストーンが取れて、赤ちゃんがそれを飲み込んだら? 爪の間に菌が溜まって、赤ちゃんに感染したら?」

 勇希(ユウキ)の言葉は、論理的な危険性と未来の事故を具体的に示し、誰もがその安全管理の徹底性に納得した。それは、まさに『決戦前夜のブリーフィング』にふさわしい空気だった。

 旧休憩室の雰囲気は、まるで決戦前夜のブリーフィングだ。特に佐伯、藤枝、琴葉(コトハ)拓矢(タクヤ)たち防衛大学校組の気合が凄い。

「言っとくけど、来月以降だぞ? 焦んなよ防大組」

 万桜(マオ)は気合十分な防衛大学校組を宥める。

「赤ちゃんの身体が外部環境に慣れ、母体の体力が十分に回復するまでは、絶対に、俺たちのサービスは開始しねえ」

 万桜(マオ)の口調は真剣そのものだ。

「産後は、母体と赤ちゃんが心身ともに安定するまで、少なくとも生後二ヶ月、望ましいのは生後三ヶ月までは、専門家のフォローが必須なんだ」

 彼は、感情的な衝動で動こうとする防大組に、「論理的で安全なスケジュール」を突きつけた。

「もちろん、それまでの期間も宝智院(ホウチイン)宿坊に専門家を招いて、万全の体制で早苗さんと赤ん坊をサポートする。おまえたちの出番は、その後の、夜泣きという名の長期戦なんだ。トレーニングはそれに合わせて積んでくれ」

 万桜(マオ)は、そう断言すると、彼らを宥めた。


「出産直後は、妊娠中とは別の栄養計画が必要だ。母乳の主成分は水分だ。まず、水分補給を欠かさねえこと。温かい飲み物で、冷やさねえようにしねえといけねえ」

「そして、母乳は血液から作られるんだ。鉄分が枯渇すると貧血になる。出産で体を消耗した母体の回復と母乳の生成のために、妊娠中よりずっと、高カロリー、高タンパク質、そして、特に、鉄分とカルシウムを意識的に過剰に摂取させる必要がある。番長(バンチョー)が作るものは、その点も完璧だろうけどな」

 その時、杉野が恐る恐る手を上げた。

「黒木先輩。山羊の乳が良いって、聞いたことあるよ? ウチら無駄に資金あるから取寄せる山羊ごと?」

 香織の提案は、資金力に裏打ちされた、少々、突飛なものだ。

 万桜(マオ)は、香織を冷静に見据えて、現実を突きつける。

「杉野。山羊の乳は、母乳生成の栄養としては、大人が飲む分には良質だ。だがな、母乳の質を上げるって言っても、母親が飲む栄養と、赤ちゃんが直接飲む栄養は話が違う」

「そもそも、生後六ヶ月未満の赤ん坊にそのまま飲ませるのは危険だ。ミネラルが多すぎるから、未発達な腎臓に大きな負担をかけるんだ。それに、葉酸も鉄分も不足している。山羊ごとって提案は、資金の無駄遣いでしかねえ」

 万桜(マオ)の合理的な却下に、香織はしょんぼりと肩を落とした。

「それも番長(バンチョー)と相談だな。だが、番長(バンチョー)が一番喜ぶのは、山羊の乳や高価なものじゃねえかもしれねえ」

 万桜(マオ)は、急に声を潜め、現実的な側面を語り始めた。

「祝いで一番喜ばれるものがなにか知っているか?」

 誰もが高価なプレゼントを想像する中で、万桜(マオ)は静かに続けた。

「現金だ。現金が一番喜ばれる理由は、番長(バンチョー)の性分にある。あいつは身内で揃えたいんだよ」

 身内で揃えるという言葉に、全員が疑問符を浮かべる。

「産着、ベビーベッド、ベビーカー。これらは親の趣味だ。他人に勝手に決められたくねえ。だが、現金があれば、あいつらが自分たちの愛と責任で、最高のものを揃えることができる」

 万桜(マオ)の言葉は、論理と人間の感情が入り混じった、彼らしい解だった。

「特に、早苗さんの体を労わるためのベビーシッターの手配や、出産直後の栄養バランスを極限まで高めた食材なんかに、躊躇なく金を使える安心感が、一番の祝いなんだ」

 彼は、祝儀という文化の根底にある『家族の自立への支援』という究極の合理的な愛を語り終えた。


「そうかもね~。あたしもそっち派。自分で選びたい」

 莉那(リナ)がぶっちゃけると、

「あたしもそうだな。政義くんと一緒に選びたい」

 琴葉(コトハ)も続く。そこで、

「消耗品だな。と言っても、YONAKIの宿坊にはあらかた準備してあんだよな」

 万桜(マオ)はあらためて半年前からの入念な準備に思いを馳せる。

 新生児用の紙オムツは大量に備蓄され、おしりふきの山が倉庫の隅を占めていた。授乳パッドや、母体を清潔に保つための清浄綿。さらに、哺乳瓶の煮沸と消毒に必要な器具も完璧に揃っている。

 風呂の準備として、ベビーバスやベビーソープ。そして、小さくて柔らかい赤ちゃんの爪を切るための専用の爪切りセットまで、種類別に箱詰めされている。すべて、想定しうるリスクを排除するための合理的な備えだ。

「そう言えば、おまえ紙オムツをオーダーメイド化しようとしてたな?」

 拓矢(タクヤ)がその入念さに呆れ返る。

「ああ。LDSでサイズ計測して、ロッドロボに作らせようとしてたな」

 勇希(ユウキ)がそれに続く。彼女は万桜(マオ)の思考を先読みした。

「サイズがピッタリだなんてダメに決まってる。締め付けるから」

 勇希(ユウキ)の指摘は、正鵠を射ていた。

「さすがだな、勇希(ユウキ)

 万桜(マオ)は感心したように頷く。

「そうだ。ピッタリはダメだ。俺は当初、漏れを防ぐために、赤ん坊の身体の形状に完璧に沿う、オーダーメイドの紙オムツを作ろうとした。だがな」

 彼は論理的な過ちを認める。

「締め付けはストレスだ。赤ん坊の皮膚はデリケートで、わずかな圧迫でさえ、毛細血管の循環に影響を与える。紙オムツは、適度な余裕を持って、排泄物をキャッチできる空間が必要なんだ」

「究極の合理性は、究極の不快感を生む。サイズを細分化し、最適な『遊び』の空間を設けること。それが、紙オムツの真の合理性なんだと気づいた」

 万桜(マオ)は、紙オムツの設計に至るまで、自らの科学至上主義が壁にぶつかったことを語り、再び、全員を納得させた。

 消耗品の準備一つとっても、そこには、天才の試行錯誤が詰まっていたのだ。


 そこに渦中の人物である番長(バンチョー)が、勢いよく登場し、旧休憩室の壁に備え付けられた大型のディスプレイを点けた。番長(バンチョー)が送信しておいた我が子の写真が、鮮やかに映し出される。

「おひかえなすって! 祭谷一家が四代目、祭谷(マツリヤ)(エミ)でやす。どなたさんも、どうぞお見知りおきを」

 我が子に代わって、番長(バンチョー)は威勢のいい口上を述べた。その顔は、人生で一番の笑顔だ。

「おめでとう、番長(バンチョー)。つか、女の子だったんか~。へ~」

 万桜(マオ)がディスプレイの写真と、名前の響きを交互に見て、素直に感心した声を漏らした。

 他のメンバーも、一斉に「(エミ)」という名前の響きと、写真に映る、なんとなく柔らかな顔立ちから、女の子だと思い込んでいる。

「「お、おぉ! 可愛い! やっぱり、早苗さんの目元に似てるわ」」

 莉那(リナ)は目を細めて、画面を覗き込みながら断言し、

「かわいい娘さんじゃねえか番長(バンチョー)。おめでとう」

 拓矢(タクヤ)は拳を突き上げて、興奮を露わにした。

 防大組の佐伯と藤枝も、恭しげに会釈しながら、

「「さすが番長(バンチョー)! 美人ちゃんになるよ!」」

 と、軍人らしく、最大の賛辞を贈った。その場の全員が、四代目が女の子であると確信していた。

「うん?」

 番長(バンチョー)がディスプレイから顔を上げて、キョトンとする。

「息子だぜ?」

 番長(バンチョー)が放った、たった一言の訂正に、部屋の空気は一瞬で凍りついた。

「「「「女の名前で呼ぶなッ!」」」」

 全員が同時に、某国民的ロボットアニメの迷言を真似て、番長(バンチョー)に対して完璧なツッコミを入れた。そのユニゾンは、あまりに正確で、逆に清々しい。

「あ、お、俺はビダンの呪縛を断ち切れなかった。許してくれ(エミ)くん」

 番長(バンチョー)は、天を仰いで大袈裟に嘆いた。しかし、彼の顔には微塵も反省の色はない。

 「(エミ)」という名前の響きがもたらす、周囲の混乱を楽しんでいる確信犯であることが明白だった。


「そんでよう、番長(バンチョー)。お祝いなにが欲しい?」

 万桜(マオ)がぶっちゃけると、番長(バンチョー)は首を横にふりふり、

「もうもらってるよう。これ以上はもらい過ぎだぜ」

 そう切り返す。対夜泣き決戦サービスYONAKIまで、起ち上げてもらってる。キッカケは番長(バンチョー)だ。

「いいから言いなさい、番長(バンチョー)。セイタンシステムズは、あなたたちを全面的に支援します」

 CEOである舞桜(マオ)は、あらためて宣言する。彼女の声は、単なる友人としてではなく、未来の生活を支える企業の長としての重みを持っていた。

(エミ)くんの世話もあるから、本当なら長期の育児休暇をあげたいところだけど」

 舞桜(マオ)は、番長(バンチョー)と目を合わせる。番長(バンチョー)は、「食」の分野を担う主要メンバーであり、その長期離脱は計画に大きな穴を開けてしまう。

「あなたの代わりはきかないから、長期の休暇は論外ね。その代わり、会社としては、時間と体力を買って支援をする」

 舞桜(マオ)の口から、即座に合理的な対案が提示された。

「あなたと早苗さんの双方の実家の近くに住む、最高のプロのベビーシッターを二人、専属で一年間雇用する。もちろん、経費でね。(エミ)くんの世話だけじゃなくて、早苗さんの体の回復と精神の安定を最優先に考えて、家事のすべても含めて任せる。あなたたちは、睡眠と、赤ん坊との時間を確保すること。それを優先しなさい」

 「最高のプロ」という言葉に、セイタンシステムズの底の知れない資金力と、徹底した「人」への投資の哲学が滲み出ていた。

 それは、番長(バンチョー)に対する最大の労いであり、同時に、YONAKIという重要なプロジェクトを成功させるための企業の戦略でもあった。


「ありがとよ。社長、黒幕(フィクサー)

 番長が舞桜(マオ)万桜(マオ)に深々と頭を下げる。仁義を重んじる彼にとって、これは最大の感謝の表明だ。舞桜(マオ)万桜(マオ)という、天才な二人へのこの構図は珍しい。

 万桜(マオ)は、フフンと不敵に笑って、番長の頭を軽く叩いた。

「おいおい、番長。言っとくけど、ここのみんなに子供が出来たら、当然だけど、おまえも早苗さんも強制参加で支援に回ってもらうんだぜ? お互いさまなんだよ。このサービスはよ」

 万桜(マオ)の狙いは、単なる支援ではない。全員が世話をし、子供を『村の子』にして大切にすることだ。このプロジェクトは、血縁を超えた、新しいコミュニティの形を築くことを目的としている。

「まあ、佐伯くんと藤っちは…」

 万桜(マオ)は、言葉を区切り、番長(バンチョー)と顔を見合わせる。

 ふたりは静かに、佐伯と藤枝というふたりの幹部自衛官候補生に目を向けると、涙目で頭を下げる。

「「ありがどうごぜえます!」」

 それは、ふたりが、今後、結婚も子供も「無理」だという、悲しい前提を含んだ、皮肉に満ちた感謝だった。

「「ぶっ飛ばしますよ? おまえたちぃ?」」

 佐伯と藤枝は、一瞬で顔色を変え、ガルルと威嚇する。

 その威嚇は、自分たちの未来を諦めたわけではないという、意地と怒りに満ちていた。

 同時に、彼らの覚悟がどれほどのものかを、全員に再認識させる瞬間でもあった。




『鋼鉄のポジティブ ~未来の世界のネコ型ロボットを迎えに行こう~』をお読みの地球の皆様へ!

いつも拙作『鋼鉄のポジティブ ~未来の世界のネコ型ロボットを迎えに行こう~』をお読みいただき、本当にありがとうございます!

物語の中で、「魔王」こと黒木万桜は、時には「水嚢の川」で災害に立ち向かい、時には中古スマホを活用したクローズドネットワークなんて突拍子もないアイデアまで生み出しています。

実は、この物語には、万桜のそんな「もしかしたら、これって本当に役立つかも?」と思えるような、たくさんのアイデアが散りばめられているんです。読者の皆さんも、「これ、面白い!」「こんな風に使えるんじゃないか?」なんて、閃いたことはありませんか?

地球のみんなぁ~! オラに「★」をわけてくれーっ!

もし、この物語を読んで、少しでも「面白い!」「次の展開が楽しみ!」「万桜のアイデア、イケるかも!」と感じていただけたなら、どうかページ下部の【★★★★★】ボタンをポチッ!と押して、星評価を分けていただけないでしょうか!

皆さんのその「★」一つ一つが、作者の大きな励みになり、万桜の次の「魔王案件」へと繋がるエネルギーになります!

引き続き、『鋼鉄のポジティブ ~未来の世界のネコ型ロボットを迎えに行こう~』をどうぞよろしくお願いいたします!

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