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黒き魔王の避雷針と空中ヨット

前書き

 新年を告げる柔らかな陽光が、福元家と茅野家の間に降り注ぐ。この穏やかな情景に、日本の古き良き正月が宿っているように見えた。

 しかし、その静寂は、突如として空を切り裂く轟音と閃光によって破られる。それは、予期せぬ冬の雷。

 そして、その落雷を制したのは、上空を舞う巨大な立体凧と、それに吊るされた一人の青年だった。

黒き魔王と称される彼の奇行は、単なる遊び心なのか、あるいは未来を見据えた壮大な計画の一端なのか?

 この町で繰り広げられる、規格外な日常と、そこで交錯する人々の物語。これは、常識が通用しない場所で、未来への扉が開かれる、特別な正月のはじまり。

 2019年三賀日。

 福元邸の向かい、茅野(チノ)淳二(ジュンジ)邸の庭に、柔らかな冬の陽差しが降り注いでいた。淳二(ジュンジ)は、向かいに建つ福元邸を感嘆の眼差しで見上げていた。

「なんや。サブリナくんち、えらい立派やな~」

 その言葉に、莉那(リナ)は頭を大袈裟に振って応えた。

「いや、うちプレハブだぜ社長さん?」

「DIYらしいわよ兄さん」

 そう言って、舞桜(マオ)は空き地でハンディグライダーにぶら下がり滑空する万桜(マオ)をじっと見つめ、大きくため息をついた。

「例によって魔王案件…」

「それで、黒木くんらは、なにしてんのや?」

 淳二(ジュンジ)の理解は追いつかなかった。人が上空の立体凧に吊られて滑空している。意味がわからない。

「お正月は、凧揚げてはしゃぐものなんですって」

 舞桜(マオ)は、もはや思考を放棄しているようだった。

「お母さん、この町じゃオセチは買うものなんですってよ」

 舞桜(マオ)の声に、鞠亜(マリア)は子供たちが広げるメニューを眺め、定番の金団、黒豆、チョロギ、そして蒲鉾と、詰まりにくい餅、プレーンとホワイトソースチーズを買い上げた。

泰造(タイゾウ)くんが言ってたから、準備してないけど、凄いね、このシステム」

 鞠亜(マリア)は感心しきりだった。

「お皿まで洗ってくれるんでしょ?」

 オセチ訪問販売サービスは、後片付けまでがワンセットなのだ。子供たちは対価として食券を得て、老人たちはオセチで現金収入を得る。単に届けるだけでは簡単すぎるから、洗い物をして器を引き取ってくれるまでがお手伝いだった。


 その時、上空に異変が起きた。

 空は晴れ渡っているのに、閃光が走り、轟音が響く。

「なんや冬季雷(トウキライ)かいな? 黒木くん、健二や友梨、桜ちゃんら、凧揚げやめときー。オヘソ取られてまう」

 淳二(ジュンジ)が叫んだ瞬間、二度目の轟音が空気を震わせた。

 淳二(ジュンジ)は顔を真っ青にして、子供たちの元へ駆け寄ろうと身を乗り出す。

「大丈夫かいな! 感電しとらんかッ!」

「大丈夫だって、ボッチの兄ちゃん」

 その声に、淳二(ジュンジ)はピタリと動きを止めた。

「雷対策に避雷針凧をいくつも展開してるんだよ」

 ハンディグライダーから降り立った万桜(マオ)は、涼しい顔で、その仕組みを説明した。

「凧の避雷針にさ、水平方向に何本もアース線を360°展開して、それを多層にして、空に放電してんだ」

 淳二(ジュンジ)は、再び言葉を失った。人が上空の立体凧に吊られているだけでも意味がわからないのに、雷の脅威をいなすという斬新なシステムが、彼の常識を遥かに超えていた。

「雷を分散させて、弱体化させてんだ。怒らない怒らない」

 万桜(マオ)は、まるで雷をなだめるかのように、にこりと笑って見せた。

「意思なき活力如きに、意思ある活力である魔王さまがやられっかよ」

 万桜(マオ)は、そう言って健二にホッピングシューズを譲ってやった。

 淳二(ジュンジ)は、流し掛けた事象に首を傾げた。

 なんの疑問も抱かずに、その現象を自然な事として受け入れてしまっていた自分に、違和感を覚えた。

「あれ、おかしい…おかしいこと言ってる…」

「奇遇ね兄さん。あたしもそう思います…」

 隣で同じように、首を傾げる淳二(ジュンジ)に、舞桜(マオ)も同意する。

「黒木、おまえ、いったいなにをしたの?」

「あん? 空に雷を往なして散らしただけじゃねえか?」

 万桜(マオ)はなんてことないように、今起きた事象を簡潔に説明した。

 淳二(ジュンジ)舞桜(マオ)は、その言葉に、再び呆然と立ち尽くす。

「松の内に、仕事の話はしたくなかった」

 舞桜(マオ)は天を仰ぎ、悔し涙を瞳に飲み込ませた。

 その光景に、淳二(ジュンジ)は再び言葉を失う。

「チックッショー」

 舞桜(マオ)は、泣き笑う。

「後で仕組みをメールなさい。他はやっておくから」

 諦観の滲む声に、舞桜(マオ)は淡々と依頼した。

 万桜(マオ)が起こした、雷の制御は、単なる気象現象の操作に留まらない。その技術は、現代社会に大きな変革をもたらす可能性を秘めている。


◆雷制御がもたらす社会的影響

 万桜(マオ)の避雷針凧システムは、気象制御という新たな概念を現実のものにするだろう。この技術は、雷害による電力インフラの損傷を防ぎ、停電をなくすだけでなく、山火事の発生を防ぐことにも繋がる。

 また、この技術は通信インフラにも革命をもたらす。従来の地上設備に頼らない「空のインフラ」として、災害時や通信網が未整備の地域でも、安定した通信環境を迅速に構築することが可能になる。これにより、緊急時の連絡手段の確保や、遠隔地での医療・教育の提供など、社会的な課題解決に貢献するだろう。

 そして、この技術は自動運転の安全性も飛躍的に向上させる。雷対策ができれば、立体凧による通信中継網の構築は、現実味を帯びる。広範囲の交通状況をリアルタイムで把握し、車両に情報を提供することで、事故のリスクを低減することができる。特に悪天候時でも、天候に左右されない安定した情報提供が可能となるため、自動運転の弱点を補い、より安全な社会を築くことができるようになるだろう。


 茅野(チノ)邸の庭は、庭師による庭園だ。

 莉那(リナ)の家の庭は、莉那(リナ)たちの遊び心が満載で、なによりも自由だ。

 自由な庭とは違って、趣があって落ち着いている。

 そこに、お茶と和菓子を乗せた盆を抱えて莉那(リナ)がやってくる。

「うん。ここ野点とかやったら、めっちゃイイと思う」

 活発を全身から迸らせている莉那(リナ)の意外な一面に、庭でオセチを食べる淳二(ジュンジ)は驚嘆の声をあげた。

「なんや、サブリナくんがお茶とか、なんか意外やね?」

「そうね。サブリナなら球技とかしてそうよね」

 舞桜(マオ)も驚きの声をあげた。

「サブリナは、居合の達人だぞ」

 万桜(マオ)は、莉那(リナ)の高校時代の部活動を暴露する。

万桜(マオ)はバスケだったよね、あたしは剣道だったから、縄張り争いに明け暮れたもんだぜ」

 莉那(リナ)が、それに乗っかり、舞桜(マオ)に視線が向いた。

「黒木は嫁探しが目的だったんでしょうね…」

 舞桜(マオ)は、自虐を交えて答えた。

「あたしはバレーボールだったわ…インターハイとは無縁の弱小校だったけどね…」

 意外なことに、その場にいる全員がスポーツ経験者だった。

「モテたんか?」

 淳二(ジュンジ)の問い掛けに、万桜(マオ)は遠い目をして答えようとする。

「フッ…俺は気づいた、俺がモテなかったんじゃねえ、あれはきっと…」

 その言葉を遮るように、朗らかな泰造(タイゾウ)の声が聞こえた。

「先輩、あけおめ」

「おう泰造(タイゾウ)コトヨロ。玲子さん勇希(ユウキ)ちゃん、あけましておめでとさんなー」

 淳二(ジュンジ)が、泰造(タイゾウ)たちと挨拶を交わす。

「あれはきっと…」

 万桜(マオ)は、再び続けようとした。

「はいはい。黒木はモテたモテた」

 しかし、舞桜(マオ)がそれをバッサリとスルーした。


「あたしと拓矢(タクヤ)は柔道だったぞ。万桜(マオ)は嫁探しを優先させてバスケに行ってしまったが、番長もいたし、インターハイ優勝も狙えたのにな」

 勇希(ユウキ)万桜(マオ)にジト目を貼り付けた。

 万桜(マオ)は、その視線を往なすように、桜に振った。

「あれは競うためのもんじゃねえ。だよな桜?」

「柔道は柔道整体のためにあるんだよ勇希(ユウキ)

 桜は呆れたように勇希(ユウキ)に言うと、

「いひゃいいひゃい。勇希(ユウキ)姉ちゃん」

 勇希(ユウキ)の右手が桜の頬をつねりあげた。

「ちげえよ。身を守る為にあんだよ」

 万桜(マオ)なりに見つけた武道は、それだった。

 感心したように、淳二(ジュンジ)が言った。

「さすが武田信玄公のお膝元やね。舞桜(マオ)以外は武士やんか」

「そうだね。サムライって言うか勇者パーティーと魔王さまだけどね」

 玲子がそれを補足した。

「そや、泰造(タイゾウ)、この子さっき雷消しよったぞ! ホンマ魔王さまやなー」

 淳二(ジュンジ)が、雷制御と言う奇跡を語ると、泰造(タイゾウ)勇希(ユウキ)に視線を向けた。

「そっかー。今年も魔王さまは絶好調かー」

 松の内での魔王案件の発生に、勇希(ユウキ)は諦めたように対応する。

「はいはい、万桜(マオ)、なにを企んでるんだ?」

「企むってなんだよ…立体凧を通信網の中継基地にしようってだけじゃねえか? 中継機自体をドローンにして…」

 万桜(マオ)の考えを、勇希(ユウキ)はアッサリと読んだ。

「なるほどな、立体凧を上空の強い風を受ける空中ヨットと見立てて、長時間滞空を可能にするわけか」

 万桜(マオ)はニヤリと笑う。

「立体凧なら、風の力で滞空できるし、ドローンのプロペラで補助することも可能だ。そこに、通信中継機器を搭載したドローンを格納し、万が一の転落に供え、ドローンの冗長化、パラシュートの冗長化を施す。これで地上への危険を極力排除した、簡易通信網が即時構築できるし、地上に近い目ができる」

 滞空型立体凧による簡易通信網の構築構想を語って聞かせた。

 淳二(ジュンジ)泰造(タイゾウ)たちは、宅配オセチに舌鼓を打ちながら現実逃避。

 そこへ、佐々(サッサ)陸将と倉田陸佐と拓矢(タクヤ)が合流した。

「「雷消すって聞こえたんだが?」」

 陸将と陸佐は異口同音に言う。泰造(タイゾウ)は、

佐々(サッサ)。あけおめ。おまえも食ってみろよ。このホワイトソースチーズ餅!」

 新型洋風の詰まりにくい餅をすすめて、現実逃避に誘った。

「コトヨロ原木。あけおめ先輩」

「あけましておめでとうございます。茅野(チノ)社長、白井市議」

 陸将と陸佐は、大人ふたりに挨拶した。

「「拓矢(タクヤ)。任せたぞ」」

 問題を拓矢(タクヤ)に丸投げした。

「はいはい。雷消すねー。まあ、抵抗の少ないところに流れる特性を利用して、電流を分散させたんでしょう。雷は高所に落ちる特性がある。より上空に滞空させた立体凧に雷を誘導させ散らせたんだ。ちげえか万桜(マオ)?」

 拓矢(タクヤ)はアッサリと、雷制御のカラクリを言い当てた。

「ああ、その通りだぜ。拓矢(ジェイ)。これで高価な機器の雷による破壊は防げる」

 万桜(マオ)は、拓矢(タクヤ)の考察に首肯して答えた。

「いや、おまえ、これデュアルユース確定するヤツじゃねえか?」

 拓矢(タクヤ)が呆れたように指摘すると、万桜(マオ)はなんてことないように、

「確かに誰でも警察戦が可能になるが、海上通信網の簡易構築はデカイし、取り締まりも無効化も簡単だぜ? 高高度気球で見張ればいい。それに自動運転が可能になるし、竜巻の発生を防ぐことだって可能だし、大型動物、例えば熊や羆の位置を把握できるぜ?」

 有用性を前面に押し出して、押し切ろうとする。

「おい、今度は竜巻消すって聞こえたぜ?」

 佐々(サッサ)は、泰造(タイゾウ)淳二(ジュンジ)に小声で話しかける。

「聞いたで蔵之介。おまえ黒木くん怒らせたんやって?」

 淳二(ジュンジ)が呆れたようになじると、

「いや、もう仲直りしましたよ。それより先輩、あの子、赤いロボ作れるかもしれないッスよ?」

「赤いロボ? 俺が見たのはコンクリート砕く手やったよ?」

 ふたりの話に、

「え、ミシン押すやつだけじゃないの?」

 泰造(タイゾウ)が食いついた。いっぽうで女性陣は女性陣は、

鞠亜(マリア)(ねえ)さん。あれはいい。友梨ちゃんもMRIを撮った方がいいわッ!」

「ま、まことにござるか? いやいや、あ、でも、かめはめ波ビームがあったわね」

 万桜(マオ)をよく知らない鞠亜(マリア)は、玲子の完全オーダーメイドに懐疑的だが、先日の昇華ガスの消火デモンストレーションに、先ほどの落雷の無効化を目にして、考えが即座に変わる。


 やがて日が傾き始めると、子供たちが器を下げに来る。

 家々のキッチンを借りて器を洗い。

 いい感じに酔った大人たちが、

「そうだよなー。これが正しいお子さまだよなー?」

 佐々(サッサ)泰造(タイゾウ)に数千円を渡し、受け取った泰造(タイゾウ)は通信端末の指紋認証をタッチして、子供たちに電子食券IICO(イイコ)を付与した。子供たちは目を輝かせて、端末の指紋認証にタッチする。これで食券の権利は、子供たちに移った。

「いや、勇希(ユウキ)万桜(マオ)ちゃんたちだって、この子たちくらいの時は…」

 泰造(タイゾウ)の言葉を、

「俺らが彼らくらいの時に、ここまでのシステム作れてないやろ? 正しいけど、普通やないねん。そう言うことやろ蔵之介?」

 淳二(ジュンジ)が引き取り、佐々(サッサ)に投げた。

「確かに黒木くんたちは、普通じゃないですね。彼の思考を瞬時に理解し、補強し、不備を指摘するチーム…まるで天が寄越した対策チームだ…」

 倉田の言葉に、

「倉田。思っていても有事が起こり得る可能性を示唆するんじゃない」

 佐々(サッサ)は鋭い言葉で倉田を叱り、

「そうでもないで、俺も倉田さんの言う通りやと思う…海外でな、上下水道インフラ死に始めてんねん…なんか嫌な予感がすんねん…」

 淳二(ジュンジ)は倉田の示唆を肯定した。

「ああ、それで突然、家建ててくれって頼んできたんだ先輩。先輩の勘って当たるよね…昔から…」

 泰造(タイゾウ)はフラグを立て、フラグを立てる泰造(タイゾウ)に、佐々(サッサ)は、

「やめねえか原木!」

 噛みつくよに咎めた。

「落ち着けよ佐々(サッサ)。雷消すような魔王さまたちが、不測の事態に屈すると思うか?」

 泰造(タイゾウ)は、遠い目をして尋ねる。これには4人の大人たちも、うーんと唸って、

「「「「ないわー」」」」

 異口同音を口にする。黒き魔王さまとチーム勇者が、膝を屈する姿が、想像することさえできなかったからだ。


「おい、ラーメン食いに行こうぜ?」

 万桜(マオ)は、正月早々に議論を闘わせたあとに、唐突に言い出した。

「そうだな。こんな時は、ラーメンに限るクールダウンには、最適だ」

 勇希(ユウキ)は頷き、1台の屋台を呼び止める。舞桜(マオ)は、意味がわからない。

 屋台の主は、洗い物をしていた子供とさして年の変わらない子供だ。

 彼はおもむろにカット野菜と麺を一緒に茹で、そして、旨味調味料をたっぷりいれ、鍋に蓋をし、しばらくしてから麺を投じ、頃合いを見計らって粉末スープを投入し、ラーメンを炊く。

「へいお待ち!」

 少年は威勢よろしくそう言って、万桜(マオ)勇希(ユウキ)は勢い良く、ラーメンを吸い上げる。舞桜(マオ)は、圧倒されつつ、麺を啜り、気づく。

「お、美味しい? 普通のインスタントなのに美味しいッ! え、なんで、止められないッ?」

 舞桜(マオ)は啜り続け、空になった丼に、

「お、おかわりをお願いできますか?」

 懇願するように発注した。

「野菜の栄養素が麺に吸われて、ちょっとした化学変化が起きんだよ」

 万桜(マオ)はそう説明して、

「オニオングラタン雑煮。できるな? タツオ」

 男の子に注文した。男の子は万桜(マオ)の注文にコクリと頷き、作り置きのローストタマネギとをスプーンで御椀に一匙入れ、同じくトースターで炙った新型餅を入れ、お湯を注ぐ。

「できたぜ魔王さま。そっちの姉ちゃんは、どうする? ラーメンでも雑煮でもどっちでもいいけどよ?」

 挑発的な問い掛けに、

「お雑煮でお願いします。タツオくん」

 舞桜(マオ)は、アッサリ切り替えた。

「おい、タツオ。勇希(ユウキ)姉ちゃんは、おかわりプラス、グラタン雑煮だ」

 少年を威嚇する勇希(ユウキ)に、

「魔王さま、俺泣いて良い? あと炎上させていい?」

 タツオ少年は、万桜(マオ)に訴えかける、

「いいんじゃん? 善きに計らえ」

 万桜(マオ)は、他人事に丸投げする。

「タツオ。俺はワルフザケで頼む」

 拓矢(タクヤ)が注文すると、

「わ、ワルフザケだとぉ?」

 タツオは慄く。拓矢(タクヤ)が注文したワルフザケとは、インスタントラーメンに、煮卵、煮込みカット野菜、プラス、サラダチキンがついた、まさに悪巫山戯の産物だ。

「い、いいのかよジェイの兄ちゃん。わ、ワルフザケだぞ? お残しは許しまへんで?」

 確かめるようにタツオが尋ねると。

「育ち盛り舐めんな」

「舐めんな。タツオ、あたしもワルフザケ」

 莉那(リナ)もそれに乗る。

「魔王さまぁ…」

 不安気なタツオに、

「善きに計らえ」

 オニオングラタン雑煮を啜って、万桜(マオ)は丸投げした。


 綺麗に平らげられた丼を、茅野(チノ)家のキッチンで綺麗に洗い、

「お買い上げあざーすッ!」

 タツオは、ホクホク顔で帰って行った。全部で10IICO(イイコ)の売り上げだ。お年玉並みにホクホクだ。

「人工知能制御の空中ヨット。そのうち人が乗れるかもね…」

 舞桜(マオ)は、空から帰還した立体凧を眺め、夢見るように呟いた。

「いや、そんな不安定な乗り物、ヤだわ。どれだけ揺れんだよ!」

 万桜(マオ)は、心底うんざりしたように否定する。

「気球でいいじゃん。あっ、でも球体を二重にしてやれば、安定するか。いや、俺、高いとこダメだしなー」

 その可能性を、一瞬真剣に探り始めたが、途端に現実に引き戻される。



『鋼鉄のポジティブ ~未来の世界のネコ型ロボットを迎えに行こう~』をお読みの地球の皆様へ!

いつも拙作『鋼鉄のポジティブ ~未来の世界のネコ型ロボットを迎えに行こう~』をお読みいただき、本当にありがとうございます!

物語の中で、「魔王」こと黒木万桜は、時には「水嚢の川」で災害に立ち向かい、時には中古スマホを活用したクローズドネットワークなんて突拍子もないアイデアまで生み出しています。

実は、この物語には、万桜のそんな「もしかしたら、これって本当に役立つかも?」と思えるような、たくさんのアイデアが散りばめられているんです。読者の皆さんも、「これ、面白い!」「こんな風に使えるんじゃないか?」なんて、閃いたことはありませんか?

地球のみんなぁ~! オラに「★」をわけてくれーっ!

もし、この物語を読んで、少しでも「面白い!」「次の展開が楽しみ!」「万桜のアイデア、イケるかも!」と感じていただけたなら、どうかページ下部の【★★★★★】ボタンをポチッ!と押して、星評価を分けていただけないでしょうか!

皆さんのその「★」一つ一つが、作者の大きな励みになり、万桜の次の「魔王案件」へと繋がるエネルギーになります!

引き続き、『鋼鉄のポジティブ ~未来の世界のネコ型ロボットを迎えに行こう~』をどうぞよろしくお願いいたします!

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