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乙女ゲームだコレェ!!  作者:
第二章
47/53

47.何を言っているんだ

 

 学院講師という立場を持つ程の術師ならば、属性というカタチを与える前の段階の魔力ならば霧散させる事も出来た筈だ。しかし、彼等はそれをしなかった。それは何故だろうか。一先ず発動させるようにさせた? それとも、魔力暴走は起こらない確信が有ったのだろうか。

 まぁ、あの場には私も居たし、彼女程度の魔力ならば、例え暴走を起こしたとしても全員無傷にする事は可能だった。

 ニコラ・エラ・ミラース嬢の魔力量は、一般人と比較すれば確かに多いかもしれないが、私からみれば極僅かとしか言えない。大海と水溜りを比較するようなものか。

 となると、講師達は私の事も見当に入れていたのだろうか。いや、流石にそれは無いか。………無いよな?


「え? あそこには王子様も居たし、寧ろ暴発させるのが正解ルートじゃないの? 私の魔力量を見せれば私が特別だって分かるでしょ?」


 こちらに聞こえないようにか、ボソボソと何かを呟いているようだが筒抜けだぞ。

 しかし、ファビーノ教諭の言葉に対しての会話が噛み合っているような、噛み合っていないような? いや、コイツ、暴発させるとか言ったな? 今迄も講師陣が再三再四魔力暴走の危険を説いておいて、他の生徒が大勢集まる場で暴走させるのが目的だった? この娘、危険人物では?

 チラリと見たファビーノ教諭と目が合う。この一瞬のアイコンタクトで彼女も私が言いたい事が分かったようだ。

 私が言いたい事、『この女、危険思想につき、ミラー侯爵に厳重注意の上、退学処分検討の由』という事だ。

 まぁ、これだけで彼女の退学が決まった訳ではないが、この事態は学院長に報告するし、これまでの問題行動も相まって何れは退学処分になるのは免れないだろう。まぁ、それがいつになるのかは一生徒である私には分からないが。


「今、暴走させるのが目的と聞こえたが、それは魔力暴走の危険性を知った上での発言かな?」


「危険性? 聖属性の魔力を暴走させても他の人を回復させるだけでしょ? 寧ろ、聖属性で皆の傷とか病気とかを治癒出来るんだし、良い事じゃないの?」


 何を言っているんだコイツは。魔力暴走は属性が何でも関係ない。

 仮に聖属性なる物が在ったとしても、魔力暴走で引き起こされるのは周囲へ拡散する徹底した破壊だ。高位貴族並にある魔力が暴走してしまえば、周囲がどういう状態になるのか………本当に分かっていないようだな。

 これは、無知から来る物ではないだろう。これまでも講師からの説明が再三と在った筈だ。しかし、モニカ嬢には全く響いていない。正に馬の耳に念仏というやつだ。

 恐らくこれは、認知の歪みなのだろう。問題はこの歪みが何処で形成された物かについてなのだが。

 流石に、ミラー侯爵から教わった事ではないだろう。生粋の魔法使いである彼は魔力暴走の危険性を誰よりも理解している筈だろう。何故ならば、彼等が研究している魔法の多くは、魔力暴走の危険があるからだ。まぁ、大抵が無属性魔法を研究しているからなのだが。

 そういえば、モニカ嬢は外国出身ではなかっただろうか。これは裏を取った訳ではないから私の推測でしかないが、彼女の魔力暴走への認知の歪みは、祖国で形成された物なのではないだろうか。幼い頃に刷り込まれた事柄は大きくなった後にも影響を与えるという。

 もしかすると、モニカ嬢は幼い頃に“魔力暴走は属性によっては安全なもの”として覚え込まされたのかもしれない。

 魔力が低い傾向のある平民であっても、魔力暴走を起こす可能性はある。魔力暴走は、周囲の魔力を巻き込んで暴走するため、発生する時の魔力の大小は関係ない。まぁ、魔力が多いと巻き込まれる魔力も多くなるから被害は甚大になるのだが。過去には、貧民街で魔力暴走が起こり街区が消滅した事態も在ったという。

 故に、子供に魔力暴走の事を教えるのは義務であるとも言える。この国では、平民向けの属性判定の際に教会神父によって一律に説明されるらしい。多くの平民は魔力制御をしなければならない程の魔力は持たないが、魔力暴走という災害に備えるためだ。

 しかし、外国出身であるモニカ嬢には、魔力暴走の危険性を教えられなかったと見える。


 こんな事を考えている際に最悪な想像をしてしまったが………いや、流石にこれは無いだろう。多分。

 私の杞憂であると信じたいが………もしかしたら、モニカ嬢は外国からの工作員である可能性があるのではないだろうか。“魔力暴走の危険性”を知らず、有力貴族の子弟が多く在学する学院内で魔力暴走を引き起こそうとした。これは、テロリズムとも言えるのではなかろうか。


聖なる属性って何だよ(2度目)

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