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乙女ゲームだコレェ!!  作者:
第二章
34/53

34.隠れ蓑です

 

 学院に入学してからの日々は充実していた。

 教室で皆と共に勉学に励み、アンティローゼ嬢や側近見習い達、その他諸々の学友と共に食事をするのが最近の楽しみの一つだ。普段は一人で食事を摂っているし、月1で行われる“晩餐会”では“家族”という気安い間柄のみでの事だ。そんな訳で、同年代の子達と一緒に食事を摂った経験は、ここへ来る前までには片手で数えられるほどしかなかった。

 ここは前世の学生食堂のような物だ。食堂入口で食券を買い、注文した物が出来上がったら自身で取りに行くシステムだ。

 座席は一人用のカウンター席に、数人が共に食事をするためのテーブル席がある。

 こういった様式(システム)の食堂は、この世界では未だ有り得ない筈なのだが。………まぁ、“乙女ゲーム”だからか。

 まるで前世の時代のような有り得ない食堂だが、流石に“乙女ゲーム”に前時代的な食堂を投入する訳にはいかなかったのだろう。

 因みに、食券の発行から調理まで、全てに魔法が使われている。業務の全てを魔法で自動化している訳ではないが、食堂で働く人間の数は驚くほど少ない。


 今日は、アンティローゼ嬢と共に昼食を食べる事になっていた筈なのだが、何故かアンティローゼ嬢の隣にクラリス嬢とモニカ嬢が居る。キミ達、何処から湧いて来たの?

 これでは、アンティローゼ嬢と2人きりで色々話しながら落ち着いて食事する事が出来ないではないか。私は溜息を吐きそうになるのを押し殺し、2人にここへ来た目的を尋ねる。


「2人は何故ここに? 今日はローズと食事を共にする予定だったんだが」


 アンティローゼ嬢と仲が良いらしいクラリス嬢は分かるが、モニカ嬢は何故来たんだ? 私が知らない内に友人関係にでもなったのだろうか? 何と言うか、平民であるモニカ嬢と貴族令嬢筆頭である2人では、早々共通点なんて無いように思えるんだが。


「私は、端的に言うとアレから逃げて来ました。ローズは良い隠れ蓑です」


 何から?とは聞かない。彼女が逃げる理由は私も把握している。そろそろ慣れても良い頃だとは思うが………。まぁ、これは当人達の問題か。私が口を出す事でもないだろう。しかし、ここへ逃げ込まれても困る。

 私はチラリとモニカ嬢の方を見る。クラリス嬢の、この言い訳はいつもの事なのでスルーだ。次はモニカ嬢の理由でも聞くか。


「私は、ユーキスタス君をお昼に誘おうと思って………。ユーキスタス君、いつも一人じゃないですか。だから、私、色々作ってきたんです。それに、いつも中に居るより、外で食べた方が気分も晴れるんじゃないかなって」


 モニカ嬢の言い分に、アンティローゼ嬢とクラリス嬢の眉がピクリと上がる。顔はどちらも無表情だが、視線は私に突き刺さっているのがよく分かる。いや、私、何もしてないよ。

 しかし、何だ? モニカ嬢は何を言っている?

 モニカ嬢が私を食事に誘おうと思ったのは理解出来る。私もその内、平民の学友を食事に誘おうと思っていたからだ。しかし、それは彼等が学院生活、ひいては貴族達に慣れて来てからの事だと考えていた。王子から食事の誘いなんて、私にその気が無くても彼等からしてみると命令だと受け取られかねないだろう。

 それに、私がいつも一人? 彼女の目は正常なのだろうか? 私は、連日違う人間を取っ替え引っ替えして食堂(ここ)へ来ている。モニカ嬢がそれを見ていないだけなのだと思うんだが………。それに、いつも一人という事は私の警備上絶対に無い。側近見習いの内の誰かが必ず近くに居る。まぁ、大抵の場合は同クラスのエリスティンになるが。

 ついでに、モニカ嬢が昼食を自ら作ってきたというのも不審だ。モニカ嬢に料理センスがある事がではない。学院に入学したばかりの新1年生は、特別な理由が無い限り学院(ここ)から出る事は出来ない。

 彼女は食材を何処から入手した? 食材関連と考えると食堂(ここ)になるが、彼等に融通して貰った? いや、それもあり得ないだろう。彼等、学院の職員は例え王子であろうと、一生徒を特別扱いする事はないからだ。ましてや、モニカ嬢はただの1年生でただの平民だ。

 モニカ嬢(彼女)は何かがおかしい。しかし、何がおかしいのか分からない。もしかして、認識阻害の魔法でも掛かっているのだろうか? しかし、何のために?


書き溜めストックがあと一週間分しか無い。

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