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乙女ゲームだコレェ!!  作者:
第二章
31/53

31.所感を述べよ

 

「さっきの無礼な女、どうするんです?」


 他クラスに居る側近見習い達に声を掛け、寮の部屋を確認後、私の部屋へと来るように伝えておいた。彼等には、これからの事を色々と話しておかなければならない。

 そして、一足先に私の部屋に来たエリスティンは、私が淹れたお茶を飲みながらそんな事を尋ねてくる。

 別にどうともしない。彼女に限らず、今日初めて貴族と直接触れ合う平民は多いだろう。彼女達は恐らくまだ貴族相手の距離感というものを掴めていないのだ。

 ミラー候爵も、そういうの(礼儀作法)に頓着しないようだし。これから学院生活を通して、貴族との付き合い方を学んでいくだろう。そのためにも、私が“この程度の事”で彼女に何かをする訳にはいかない。もし、私が手を下したとなれば、他の貴族も私に倣うようになってしまうだろう。そして、正当な理由なくとも平民は虐げても良いと曲解する馬鹿が出てくるのだ。

 それにしても、クラス全員分の自己紹介を聞いてみたものの、誰が主人公(ヒロイン)なのか、まるで分からなかったな。いや、私が攻略対象だとはいえ、主人公(ヒロイン)と同じクラスである必要は無いのだ。とすると、もしかして別クラスに居るのか?

 それとなく、側近見習い達に聞いてみるか? いや、何と聞けばいいんだ。乙女ゲームの主人公(ヒロイン)らしき者は居るか?とでも? 馬鹿馬鹿しいと一蹴されるだけだろう。後手に回ってしまうが、主人公(ヒロイン)が分からない以上、これからの流れを注意していくしか無いな。


「ユーキスタス様、お待たせ致しました」


 ノックの後に入って来たのは、エリオットとカストルだ。いつも(実家)ならば、部屋付きの侍女なり召使いが訪問者の応対をしてくれるが、学院内ではそうもいかない。だが、態々王子()がやる事でもない。と、エリスティンが対応してくれた。………次からは自分でやるようにしよう。いつも側近見習い達と一緒に居る訳でもないのだし。


「ユーキスタス様。無礼な平民がクラスに居たとお聞きしましたが、いつ潰すご予定でしょうか?」


 開口一番物騒な事を尋ねて来たのは、王子()強火勢のカストルだ。エリエリ達はそんな彼を呆れた顔で見ている。


「どうもしない。ただ、彼女のような平民への対応法が、君達を集めた理由の一つでもある。まぁ、その話はレイとドナが来てからにしよう。………それで、2人はどうかな? クラスで上手くやっていけそうかな?」


 特にカストル。コイツは何故こうなってしまったのか。………いや、これは元を辿れば私が悪い訳だが。やはり、ハーバリアス講師の『ユーキスタス神童説』を早々に潰しておくべきだったか。まぁ、今更それを悔やんでも遅いんだが。

 エリオットに関しては特に心配していない。エリスティンと組み合わせると色々とやらかしがちだが、双子を別々に分けるとお互いに自重してくれるのだ。


「特に問題ありません。ユーキスタス様の障害になり得そうな輩は、既にこちらに纏めておきました」


 そう言って、書類を机に置くカストル。チラリと見ると、人名とカストルの所感がズラズラと並んでいる。

 やっている事はキモ………おかしいが、これは私を思っての行動なので咎める訳にもいかない。実際、かなり有能であるし、まだ誰の迷惑にもなっていない。それに、こういった物も時々役に立つ事もあるのだ。

 ………まぁ、これはカストルの平常運転だから、とりあえずこのままで………いいのか?


「あー、ありがとう。後で読ませて貰うよ。いや、そうではなく。今日から、私達は親元を離れての折角の学院生活だ。それで、どうだろう? 学友達とは上手くやっていけそうかな? 相談くらいならいつでも何でものるよ?」


「はい。学院内の生徒へのユーキスタス様の広報活動ですね。そちらも抜かりなく進めております。まずは、有力な生徒へのアプローチを計画している最中で───」


「カストル。君が、私の事を第一に考え行動に移している事は、とても喜ばしい事だと私は思っている。君のような将来有望な友人を得た幸運に感謝しているところだ。………但し、“王子()のため”と言いながら、私の意図とは違う方向へ勝手に向かうのは感心しないな? 生徒への広報活動(プロパガンダ)? そんな事に何の意味がある。そのような事を私は君に頼んだかな? 勘違いして欲しくはないのだが、私は、ただ単にカストルに学院生活を楽しんで欲しいだけなんだよ」


 カストルが長ったらしく説明するところを途中で遮り、勘違い部分について注意する。どうして、コイツは私の言葉を曲解するのか。この場に側近見習い達を集めて話をすると思い立ったのは、カストルの暴走癖を正すためでもある。コイツを放っておくと、王子()の名の元に恐怖政治をしかねない。そんな事を私は望んでいないというのに。


「は。失礼致しました。えぇと、はい。何とかやれそうだと思います。手始めにユーキスタス様の素晴らしさを学友に布教したいと思っているのですが、如何でしょうか?」


「友人作りのために私の名前を出すのは止めるように」


 出来れば布教も止めて欲しいところだが、オタクに推しの布教を止めるという選択肢は無い。例え、当の推しに止めるように言われてもだ。


プロパガンダの好意的な言い換えを探したけど、しっくり来る物が無かったので広報活動にしましたが、カストル君が言いたいのは政治的宣伝、誘導です。

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