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乙女ゲームだコレェ!!  作者:
第一章
22/53

22.真心


 学院に入る前に、アンティローゼ嬢や側近達と交流するためのお茶会が開かれる事となった。毎回毎回集まるための口実がお茶会なんだが、もっと別の言い訳で集まる事って出来なかったのだろうか。

 もっとも、お茶会という名目で彼等を集めるのが一番簡単なのだ。これは、友達で集まってお茶を飲むだけ。貴族的な密会でもないのだ。裏で関係各所に話を通す必要もない。………という事になっている。

 私達と側近見習い達は同じ年齢なため、学院入学も同じ年だ。ジュリエッタ嬢だけは二つ年上なため、私達より一足先に先に入学している。

 そんな彼女は、今日もレイレアムスに連れられて歩いて来た。

 学院は王宮からほど近い場所にある。レイレアムスはジュリエッタ嬢を学院へと迎えに行き、そのまま徒歩でやって来たらしい。勿論、近いと言っても貴族が徒歩で来るような距離ではない。以前の状態だったら、彼等は間違いなく馬車でここまで来ただろう。

 まぁ、端的に言うと、ジュリエッタ嬢は歩けるようになった。但し、魔力過多症が治った訳どはない。寧ろ、あれから更に悪化し、彼女の両足の太腿半ば辺りから下は全て結晶化してしまった。

 それにも関わらず、何故彼女は自らの足で歩けるようになったのか? 答えは簡単。魔法で何とかしたのだ。魔法の力ってスゲー。

 ジュリエッタ嬢の今の両足は義足だ。何をどうしても結晶化した足を元に戻す事は出来なかった。

 あの時の彼等の空気は最悪だった。ついでに、現宰相であるグランデスブルグ公爵の様相も最悪だった。父が心配して、とっとと帰れという命令を出す程だったという。

 ジュリエッタ嬢は車椅子という乗り物があるお陰で移動には然程困らないが、両足を失ってしまった事はかなりショックだったのだろう。

 前世でもその手の問題はあった。事故や病気で手足を失い、人生に絶望する人は多く居た。ジュリエッタ嬢は気にしていない素振りを見せていたが、見ていて分かる痛々しさだったという。

 そんな時に、私に声が掛かった。

 現王である父からの依頼である。その内容は『回復魔法でジュリエッタ嬢の脚を何とか出来ないか?』というモノであった。

 私は10歳の頃から、魔力の微細なコントロール方法を直接叔父から指導を受け、かなり精密に魔力をコントロールする事が出来るようになった。イメージ的には、50mプール一杯の魔力を小匙何杯という感覚で測れるようになったのだ。

 そして、私は全属性であり、全ての魔法に適性がある。勿論、回復魔法は私の十八番だ。前世の知識をもフルに活用する事で、回復専門の王宮魔法使いにも引けを取らないと自負している。

 まぁ、それでも完全に結晶化してしまった脚を治す事は不可能だった。もっと早く私に声が掛かっていたら、違う結果になったかもしれないと思わなくもなかったが、如何に優秀であろうと王子である私を頼るのは、彼等には最後の手段だったのだろう。

 レイレアムスから泣いて懇願されたが、無理な物は無理なのだ。それこそ時を戻すでもしないと、ジュリエッタ嬢の脚を元に戻す事は出来ない。そして、この世界に時間遡行の魔法は未だ発見されてはいない。

 という訳で、私は義足を提案した。この世界にも義足はある。車椅子と同じように、私がぽっと出したアイディアを完璧以上に再現出来る技術者達ならば、前世の義足以上の物が出来るのではと思ったからだ。

 しかし、義足は当初渋られた。年頃の令嬢が使う物ではないとも言われた。しかし、このまま絶望に浸る暇は無いとも力説した。足を無くした程度で一生を棒に振る必要は無いとも。

 たった13歳の子供が何を言っているんだと自分でも思っていたが、大人達は私の言葉に一定の理解を示した。巷に流布されていた、聡明かつ神童という肩書が効いたのだろう。脳裏のハーバリアス講師には、その時だけは感謝した。でも、そろそろその説止めてね。

 結果的に、ジュリエッタ嬢は歩けるようになった。グランデスブルグ公爵家が抱える変態技術者達の執念の賜物である。義足は、ジュリエッタ嬢の結晶化した両脚をそのまま利用したらしい。どういう理論でそんな事になったのかは知らないが、レイレアムスが言うには、出来上がった義足は見た目的に結晶化している以外はジュリエッタ嬢の以前の脚と変わらないらしい。

 余談だが、この世界では基本的に女性の素足を見る事は無い。普段の服装からして、足を晒す物では無いためだ。つまり、ジュリエッタ嬢の素足を見るという事は、そういう関係にまでハッテンしているという訳だ。


「いや、俺も技術者として、ジュリアの脚の調整をしたからですが?」


「それに学院の女子生徒は皆、足を晒していますよ。制服の指定ですからね」


 学院の女子生徒の制服はスカートらしい。そういえば、学院という存在があったな。学院の外では素足を晒す事なんて一切無いのに、学院内部だけの特殊ルールはマジで何なの。これも、乙女ゲーム補正というやつなのだろうか。

 尚、そのアンティローゼ嬢とのお茶会で、ジュリエッタ嬢の義足は絶賛されたらしい。勿論それは貴族的な意味合いではなく、アンティローゼ嬢の真心である。


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