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乙女ゲームだコレェ!!  作者:
第一章
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02.転生?した?っぽい?


 ユーキスタス・フォン・エンドロフィアはエンドロフィア王国の王子である。と言っても、現王の子供ではなく王太子の息子だ。

 白磁のような肌に金糸のような髪、空のように蒼い瞳は今は大きく見開かれているが、全体的に整った………いや、整い過ぎた顔だと言えるだろう。

 そういえば、父母や祖父母、親族全員が大分整った顔をしていた。アレ等の子供ならば、こんな美形もあり得るだろうか。将来は顔だけで様々な人を誑かしそうな気がする。我ながら恐ろしい顔面偏差値だ。

 ユーキスタスは姿見に映る自身の姿をまじまじと見る。この9年間見慣れた身体だ。この世界が乙女ゲームであるならば、この整いすぎた容姿は頷けるモノである。いや、将来の話だが。


 ついでに言うと、ユーキスタス・フォン・エンドロフィアは転生者である。

 前世の名前は、相良鉄二。それなりの人生を生き、往生したと思ったら異世界に転生していたという次第である。

 転生当初、鉄二は戸惑った。無理もない。確かに前世も介護される身ではあったが、今の私を介護している者は有り体に言って巨人である。しかし、相手が巨人なのではなく、自身が小さい………いや、赤ん坊なのだと直ぐに気付いた。

 何故なら、目に入ってくる自身の腕と思われる物体がぷくぷくとした瑞々しい腕なのだ。最後に見た自身の腕は、皺枯れた枯れ木のような腕だった気がする。

 成る程。これが転生か。私は確信した。

 実は、私は同年代の友人達と比べてサブカル文化にも明るい方で、若い時分にはその手の小説やゲームにはよくお世話になっていた。まぁ、今迄は無宗教であるが故に転生なんて概念は信じていなかったし、“神”と呼ばれる何かが便宜を図ってくれたとは毛程も思ってはいない。

 何より私は転生するに当たり、“神”とやらに出会った事は無い。こういう場合って、何処ぞの“神”と話して転生するとかじゃないのか。いや、そもそも高次元存在であるところの“神”とやらの目に付くような破天荒な人生は送っていないつもりだ。

 つまり、恐らくこれは、前世………いや、この場合は前前世で積んだ徳が高かったのだろう。生まれ変わるなら蝉になりたいと思っていたが、人間として二度目の生も悪くはないのかもしれない。ただ、何故前世の記憶を引き継いでいるのかはよく分からない。

 赤ん坊の自分は大人の女性に食事の世話から下の世話までされているが、前世でもそうだったため大して気にならない。人によっては羞恥に悶えるのだろうが、彼女も仕事でやっているのである。些細な事を気にする方が、彼女の誠意ある仕事に対して失礼であろう。虐待されている訳でもないし、ここは広い心で凪のように受け止めるのが大人の役目であるとも言える。いや、今は赤ん坊だった。


 いつも世話してくれる女性と身振り手振り(ジェスチャー)等でコミュニケーションを取ろうと試みるが上手くいかない。赤ん坊ではまだ発声器官が未発達なのか、意味のある言葉を出せないし、指が上手く開かないため大雑把に手足を振り回すしかない。

 それに対する反応は微笑ましいモノを見る目であり、私の欲求を理解したようなモノではなかった。

 私の欲求、それは周囲の情報である。恐らくだが、この世話してくれている女性は私の母ではない。私に対する所作が恭し過ぎるのだ。多分、単なるベビーシッターという訳でもないだろう。

 抱き上げられた時に然りげ無く周囲を見渡してみたが、部屋の意匠や調度品から察するに、私は良い所の坊っちゃんであるようだ。

 だが、何だか現代的ではないという事が気に掛かる。この女性の服装も調度品の意匠も、前世の頃よりも文化が大分後退しているように感じられる。もしかしたら、ここの主人は懐古趣味なのだろうか。

 赤ん坊である私は1日の大半を寝ている。体力的に長時間起きていられないのだ。食事を無意識で行っている事もあり、私が目覚めて(思い出して)からどれだけの時間が経ったか分からないが、私の“母”と呼ばれる人に漸く会う事が出来た。


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