19.講師はこの私
「ユーキ君も魔法適性が分かった事で、今日から魔法についての勉強を始める事となった。講師はこの私。“賢者塔”所属の研究員であり、一応王弟であり、君の叔父であるシュナイダー・フォン・エンドロフィアが勤める事となった。宜しくね」
私の魔法の講師は叔父となった。魔法の講師を探してみたものの、適当な人が見付からず、“賢者塔”所属であり王族でもある叔父に白羽の矢が立ったらしい。
何でも、下手にその辺の魔法使いを講師にすると、私をどうにか利用しようとする不届き者が集まるだろうというのが、父と叔父の見解だ。
魔法使いという生物は、自身の魔力や実力を伸ばす事に生涯を懸けているような連中ばかりなため、魔力量が常識外れに多い私は鴨が葱を背負って来たようなモノであるらしい。講師を生粋の魔法使いにすると、私という存在は散々に利用され絞り尽くされるだけだ。とは叔父の言である。
「まず、私が教えるのは魔力の扱い、コントロールについてだけだ。私達王族は保有魔力が高いと言われているが、その中でもユーキ君は別格だ。軽く見積もって、私の数十倍の魔力が在ると言ってもいいだろう。そんな超巨大な魔力を正しいコントロールもせずに放ってしまったらどうなるか、賢い君なら分かるよね?」
つまり、大き過ぎる力を持つ故に正しい力の使い方を学べという事のようだ。叔父曰く、今の私は魔力という巨大な爆弾を持っているようなものらしい。こんな状態で魔法を使わせる事は出来ない。一般魔法であっても、それが万が一にでも暴発してしまえば、文字通り王宮が物理的に吹き飛ぶ。
その位ヤバい魔力総量だという事を自覚するのが第一ステップだ。
「さて、まずは座学だ。属性については教会で軽く説明した通りだが、その中でも特殊すぎる属性、無属性について説明しよう」
まず、無属性という属性は存在しない。分類が難しい魔法を無理矢理、無属性として扱っているせいだ。
叔父によると、伝説で語られる魔法の大多数は無属性らしい。つまり、原理がよく分からず、属性もよく分からない謎の魔法という事だ。
無属性の代表的な魔法は、回復魔法や浄化魔法らしい。勿論、伝説で語られるような大量殺戮魔法もある。前世のゲーム的に言えば、回復魔法とかは聖属性だと思うんだが、件の聖属性というモノは存在していないようだし、少なくともこの国には無い。
その他として、世界を構成する五大元素、火水風地空。それぞれが打ち消し合う光と闇属性。これらは、大体イメージ通りの魔法が当てはまるようだ。それなら、ゲーム脳的に回復魔法も光属性に入るのでは?と思ってはみたが、この世界の光属性はただの光でしかなく、ゲーム内のような宗教的な意味合い等は皆無だった。
これらの属性適性は、普通の人は一つであり、2つ属性を持つ者は1000人に1人程度らしい。それが3つ以上となれば、100000人に1人という割合になる。
因みに私の全属性というのは、伝説上の話であり、実際には存在しないと思われていたようだ。まぁ、それはそうだよな。
という事で、私の魔力コントロール訓練を受ける日々が始まった。
「そうそう。魔法はイメージで作り出すと言ったけど、私の観ていないところで魔法を使うのは禁止だからね。もし、私が監督していない場所で魔法を使おうとして、事故が起こった場合はどうなるかは誰も分からない。さっき言った王宮が吹き飛ぶという話は比喩ではないよ? くれぐれも、くれぐれも自身の魔力の扱いについては慎重を期すように」
大人の監督が無ければ魔法を使う事は禁止という事だ。気軽に手持ちの爆弾で遊んでくれるなよ、という事だろう。
叔父は私を信用してくれている。普通のお子様だったら、在るのかは知らないが魔法を封じるための措置を施されるだろう。叔父の信用を裏切るような事は出来ないな。
才能が抜群でも発揮する所が無ければ宝の持ち腐れよね。タグにチートと付けていないのはそういう事。