表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
乙女ゲームだコレェ!!  作者:
第一章
16/52

16.ホラーとペットといつもの話


「………コホン。普段の生活が知れたところで、次は私の質問ですね。では、最近何か変わった事などありますでしょうか? どうやら、私達は普段は同じように勉学に励んでいる様子。代わり映えしない日々でのエッセンスとして、その中でも起こった目新しい事を話してみるのは如何でしょうか?」


 確かに、三者共に勉強漬けの日々を過ごしている事を確認出来た。しかも、彼女達は婚約者として選ばれると更に王妃教育がプラスされる。身体的、精神的に大丈夫なんだろうか。

 ふむ。最近起こった変わった事ねぇ。何かあったっけ………。

 私の最近あった面白い事に思いを馳せていると、出題者であるクラリス嬢が口を開く。果たして、クラリス嬢の面白かった出来事とは一体何なのだろうか。


「私の父は稀覯本を蒐集していると話しましたが、先日いつも通り父の書斎に忍び込んだ時の話です。書斎へは入り浸り過ぎて、本の配置も殆ど覚えているのですが、その日は私の記憶と違う箇所があったのです。何と言うか、棚に並べられた本が数冊僅かに飛び出ていると言いますか。恐らく裏側に何かがあるに違いないと私はそれを確かめる事にしたのです。そこで目にしたのは、知らない装丁の本。その本は、羊皮紙ではない材質の紙で出来ていてとても軽いのです。そういえば、最近海向こうの新しい稀覯本を手に入れたと、父が言っていたなと思いながら、本を開きました。………気が付くと私は部屋のベッドで寝ていました。侍女が言うには、私が書斎で倒れているのを父が発見したそうです。そして、私は書斎への入室を暫くの間、禁じられました。………恐らくアレは魔導書の類だったのだと思うのです。本を開き倒れるまでの記憶が一切無いので、記憶を吸う特性もあったのかもしれません。この一件で、魔導書の扱いには注意した方が良いという教訓を得られました」


 まぁ、とりあえず色々と突っ込み所があるが………。ミルキナ候爵が蒐集した稀覯本を読んだら、理由もわからず気絶した? ホラーかな?

 それにしても、羊皮紙ではない紙を使った本か。もしかして、植物で作った紙の事だろうか。この国の主流は羊皮紙か木版だから、植物紙は珍しい部類だ。私も今世では見た事が無い。

 しかし、海向こうから取り寄せた植物紙の稀覯本ね。それを開いたクラリス嬢が倒れ、一部の記憶を無くし、候爵が立ち入りを禁じる………。

 もしかして、例の稀覯本、実は春画だったという説もあるのでは? 魔導書とかピンと来ないし、子供が見てショックを受け、防衛本能で一部の記憶を飛ばすとか有り得そう。


「それは、中々、刺激的な体験だったようですわね。クラリス様の体験と比べると私のは地味なのですが、グルガンシュミットが無事に孵ったのです。獣医師様から心配無いと言われていたのですが、私は心配で心配で………。でも、先日叔父様からの一報を聞いて一安心致しましたわ」


 成程。ペット?の卵が無事に孵ったという事らしい。確かに、クラリス嬢の話とは打って変わって微笑ましい話だろう。ただ、グルガンシュミットという生物が何なのか、私には分からない。


「無知を晒すようで申し訳ないのだが、グルガンシュミットとは何でしょうか?」


「グルガンシュミットはクルシュタット領の護り神であり、豊穣を司ると言われる地竜の眷属と言われる亀です。グルガンシュミットは生態状、クルシュタット領にしか居ないと言われていますから、ユーキスタス様がご存知ではないのも無理からぬ事だと思いますわ」


 地竜? モグラ? 亀とモグラでは大分違うぞ? 一部地域にしか棲息していないのならば、王宮から出られない私が見た事が無くても無理からぬ生物のようだ。………父は知っているのだろうか。

 今の王宮図書館には生物図鑑等の類は置いていない。これを期に図鑑類を揃えるように父に進言してもいいかもな。

 しかし、アンティローゼ嬢のペットは亀か………。貴族のイメージ的に猫とか犬とか、もしくは大型の生物を飼っていると勝手に思っていたのだが、亀とはね。やや派手系のお嬢様のペットが亀………。うーん。まぁ、意外性という意味では………。


「成程。私もグルガンシュミットを見てみたいものです。知らない事を知るのは良い事ですから。では、最後に私の番ですね」


 さて、何を話すべきか。代わり映えしない日々で起こった変わった事ねぇ。私自身に起こった事ではないが、双子の件について話すか? それとも、レイ君とジュリエッタ嬢の進展について? いや、流石に他人の事を本人の了承を得ないで話すのは駄目だろう。


「そうですね。私は軽い護身術程度を、騎士団の元指南役であるオルリオン卿に習っています。その中で、従士相手の組手があるのですが、最近、組手相手に一本取れた事がありました。いつもは一方的に制圧されてしまうので、その油断を誘い勝つ事が出来たのが嬉しかったですね」


 私の相手役の従士は現役騎士見習いであり、勿論私よりも年上で背も高い。騎士見習いという、戦闘訓練を受けている者を相手にした護身術の稽古だ。怪我はさせないように手加減されているが、お子様の身体では割とハードな稽古と言ってもいいだろう。

 これで“軽い稽古”とか言ってくる元指南役、マジクソ爺。

 そんな相手をこの間、床に転がす事が出来た。これは柔術ではなく、合気の類なのだが、上手く決める事が出来た。投げられた相手は目を白黒させて何故投げられたか分かっていない様子だったが、それを見ていたオルリオンに卿は目を爛々と光らせ私に詰め寄ってきた。

 そして、それから“軽い稽古”は激化した………という訳ではなく、私が見せた訳分からん武術を組み込んだ護身術に発展した。

 オルリオン卿は、私の柔術や合気を見た上で護身術に使えると思ったようだ。まぁ、何も知らないお子様が偶然編み出した物が偶然決まってしまっただけだと思っているのだと思うが。


「オルリオン卿というのは、2代前の騎士団長であるダグラス・フォン・オルリオン卿ですか? 確か、曽祖父様と轡を並べて戦ったと聞いた事があります」


 数十年前、隣国と戦争とは言わないまでも小競り合いが数度起きていた。それは、肥沃な大地を持つクルシュタット領を狙っての事だ。その当時、オルリオン卿が率いる第四騎士団がクルシュタット領近くの城塞に待機していたらしい。いつ戦争に発展しても駆けつけられるようにだ。

 その中で、当時のクルシュタット公爵家当主であるアンティローゼ嬢の曽祖父と共に、隣国と戦った事があるようだ。

 因みに、オルリオン卿は80代だ。長生きし過ぎだあの爺。

 まぁ、高齢故の豊富過ぎる経験を買われて私の講師として抜擢されたのだろう。


 ホラー?話、ペットが生まれた話、組手で一本取った話等々。割と面白い話を聞く事が出来たのではないだろうか。

 それからの私達は和気藹々と他愛も無い話を続けていった。今回のお茶会は大成功だな。


春画も魔導書みたいなモン

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ