表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
乙女ゲームだコレェ!!  作者:
第一章
15/52

15.出来た令嬢達


 アンティローゼ嬢は、顔が赤いクラリス嬢を胡乱げな顔で見ているが、私の視線を感じ取るとハッとして居住まいを正した。


「次は、私の番ですわね。えぇと、お二方はいつもどのような生活を送っていらっしゃるのですか? 私達は、王家、公爵家、候爵家とそれぞれ身分が異なります。各家で違う点や共通点を探っていけば、共通の話題を出しやすいのではと思いますわ」


 成程。確かに、面白そうだ。ただ、私の生活を話しても面白くないだろう。ものの見事に習い事漬けの日々だからな。朝の軽い運動から始まり、日によるが大体は夜のマナー講習か寝る前の復習で1日が終わる。遊ぶ時間なんて全く無い。

 さて、この状況で何を話すべきか。いや、これそのまま話せばいいのか? 高位の貴族家なんて恐らくどこも同じようなものだろう。


「では、僭越ながら私の方から。と言っても普通の貴族家とそう変わらない生活だと思いますわ。王都にある舘で、一般的な貴族教育を受けつつ、趣味の刺繍に励み、時々友人を呼んでお茶会を開く程度ですわ」


 アンティローゼ嬢は私と同じように勉強漬けの日々を送っているようだ。私と違う点は、偶にお友達と交遊しているところだな。

 そういえば、事前情報としてクルシュタット公爵は領地持ちだと聞かされていた。王家の穀物蔵として名高い肥沃な土地を任されていた筈だ。

 彼女は王都住みだと言うが、領地の方はどうしているのだろう。


「確かに、クルシュタット公爵家は領地持ちですが、領地の管理は叔父であるクルシュタット子爵に任せていますわ。私も何度か領地にあそ………視察に向かった事がありますが、豊かな場所だと思いますわ」


 今、遊びに行くとか言ってなかったか? まぁ、普通に遊びに行ったと言ってもいいと思うんだけどな。子供なんだし。


「クルシュタット領は王国の食を支えていると言っても過言ではない地。代官を務める子爵にはこれからも良い治世を続けて欲しいものですね」


 私はアンティローゼ嬢に笑顔を向ける。アンティローゼ嬢の顔が更に赤くなった。やはり、この美形スマイルは美少女にも効くものなのか。因みに、私は割といっぱいいっぱいだったりする。

 アンティローゼ嬢の話が終わったのを見計らってか、クラリス嬢が口を開く。

 ミルキナ候爵家はクルシュタット家と違い、領地持ちの貴族ではない。領地を持たず王都で活動する、所謂宮廷貴族だ。

 ミルキナ家は、代々優秀な傑物を輩出し続けている事でも有名だったりするらしい。クラリス嬢の父、ハイルデン・フォン・ミルキナ候爵は法務執政官だそうだ。


「私もアンティローゼ様と余り変わらないですね。刺繍の時間が読書時間になるだけです。お茶会は余りありませんが、同好の士を募って読書会なるものを開いております」


 読書会を開催。成程。出来る貴族令嬢はやる事が違う。参加者を募る程、読書が好きな令嬢って多いのだろうか。

 あと、クラリス嬢はアンティローゼ嬢を名前で呼ぶんだな。一応、無礼講という事になっているが、公爵家は候爵家よりも上位の身分だ。こういった時の貴族家は大抵、相手を苗字で呼ぶ。“クルシュタット様”とね。

 これは私達が5歳児だった頃より分別が付き、周囲に色々と気を使い始めた結果だ。

 クラリス嬢は“出来る”令嬢だ。それにも関わらず、名前呼びするという事は、この2人って実は結構仲が良い?

 アンティローゼ嬢は、しばしばクラリス嬢を呆れたような目で見ている。友人が、また変な事をしているとでも思っているのかもしれない。


「最後は私だね。実は、私もお二人と同じようなものなんだ。朝の運動から始まり、算術、史学、文学と、ほぼずっと勉学で1日が終わるかな。側近見習いの貴族子弟達が来た時は、やる事が少し変わる事もあるが………」


 私は言葉を濁す。うーん。やっぱり、これ話しても楽しくない日々の内容だな。私の生活、大分薄っぺらくない? 毎日、同じ事の繰り返しだからなぁ。

 しかも、他の者と比べる事も無いから、自分がどの程度出来るのかもよく分からない。

 ハーバリアス講師は未だに神童説を推しているが、あれも御為ごかしである可能性も捨て切れない。


「その………本当に1日中、勉学に励んでいらっしゃるのですか?」


 おずおずと話し掛けてきたのはクラリス嬢だ。1日勉強ばかりしてて、いつ図書館に行ってるんだと言いたいのだろうか。

 前世では、受験生やらは図書館で勉強しているみたいなイメージがあるが、この時代の図書館はそういった所ではない。

 何しろ本は高級品だ。ここの本は、基本的に装丁が革張り且つ中身が羊皮紙製で、重量も値段も高い。そんな本がそれなりに大量に収められているのであり、余人が入れるような場所ではないのだ。

 王宮図書館も例に漏れず、高価な本がズラリと並び、許可された者しか入る事が出来ない。

 私の勉強漬けの日々の何処に図書館に足繁く通う隙間があるのか。そういう事だろう。

 しかし、足繁く通っているのは事実だ。と言っても、これも勉学の一環。趣味ではない。

 どういう事かと言うと、幾つかの本を選び、それを写本しているのだ。これはハーバリアス講師の授業であり、史学や文学を更に一層学ぶためでもある。

 書き取りの練習にもなるし、文学表現を学ぶためでもある。ついでに、繰り返し書く事によって、馴染みの無い歴史も比較的早く覚える事が出来た。

 という事を、ふんわりぼかしてクラリス嬢に伝える。


「“賢者塔”のハーバリアスですか。噂に違わぬ優秀な方のようですわね。お父様も、私の教育係として“賢者塔”の者を引き抜きたかったのですが、良い方が見つからなかったそうですわ」


 そうなの? てっきり、“賢者塔”と呼ばれる機関には、ハーバリアス講師みたいなのがゴロゴロ居るイメージがあったんだが、そうでもないみたいだな。

 つまり、とりわけ優秀な人材を祖父が引っ張って来た? 当時の祖父は国王だったし、割と有り得そう。実際に引き抜いたのは、祖父の命を受けた別の人だろうけど。


「失礼ですが、ユーキスタス様はおいくつの頃からハーバリアス様に師事されているのですか?」


 いつから? うーん。大体1歳半頃じゃないかな? 前世感覚で考えると早すぎるような気がするんだが、ここでは普通なのかもしれないと余り深くは考えてはいなかった。

 私の回答を受けて、両令嬢はポカンと固まっている。おや? 私、また何かやっちゃいました?

 やはり、2歳にもならない内から貴族教育を施すのは普通ではなかったんだな。………いや、普通に考えてそうだろう。話す事さえ覚束ない幼児相手に、普通は算術とか以前に行儀良く授業を受けるとか無理だから。私はどちらも出来たけど。あぁ、だからハーバリアス講師は私を神童扱いしているのか。


図書館内で資料作り以外の勉強した事無いですが、捗るんですかね。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ