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乙女ゲームだコレェ!!  作者:
第一章
14/53

14.金髪ドリル令嬢


 と言う訳で、やってまいりました。婚約者候補達との顔合わせ。今回も母の私的なお茶会という名目で、親同伴の令嬢と私が集められた。

 開催の挨拶もそこそこに、母と引き離され、私は2人の令嬢と茶をシバく事になった。

 今回のお茶会は当事者の母親だけでなく、父親やその他の親族が来ているようだ。

 彼等は最初に挨拶した後、何処かに行ってしまった。恐らく、父や祖父の元に行ったんだろう。


 さて、私と同じテーブルには2人の令嬢が座り、互いを意識しながらお茶を飲んでいる。その所作は完璧と言って良い程で、私のマナー講師であるリリネット前公爵夫人も花丸を与えるだろう。

 まず1人目が、アンティローゼ•フォン•クルシュタット公爵令嬢。白磁の肌に、煌めかしい金髪をドリル状に巻き、やや釣り目がちな美少女だ。

 2人目は、クラリス•フォン•ミルキナ候爵令嬢。白磁の肌に、白銀の髪を緩やかに伸ばした美少女だ。

 白銀の髪とは珍しい。彼女のそれは所謂プラチナブロンドという訳でもなく、ましてや白髪という訳でもない。正しく白銀に輝いてみえる。不思議だ。

 因みにどちらも挨拶だけは済んでいるので、今は優雅にお茶を飲んでいるだけだ。しかし、令嬢同士の間では見えない火花が散っているに違いない。

 気が強そうなアンティローゼ嬢は言うまでもなく、気弱という訳ではないクラリス嬢も同じだろう。現にチラチラとお互いの出方を探っている。そして、ここに一石を投じるのが私の役目だ。令嬢達はどちらも厳しい選定を潜り抜けて来た猛者なのだ。能力的には問題なく、後は私との相性といった所。………うぅ、胃が痛い。


「まずは、2人に感謝を申し上げる。私は同年代の子との交流が極めて少なくてね。もしかしたら、何か気に触れる言動を取るかもしれない。その場合は遠慮せずに言ってくれ。………それと、御両親からどう聞かされているのかは分からないが、ここは気安い場として設けられている。どうか、気を楽にして欲しい。あぁ、私を呼ぶ時は名前で構わないよ。私も余り堅苦しいのは苦手だしね」


 まずは、女の子に失礼な事言うかもしれないけど、許してねという先制パンチだ。側近見習い達───特にドナテロ───に効果抜群な王子の美形スマイルも付けておいた。粗相をしたとしても、決して親に言いつけるのだけは止めろ下さい。

 さて、この2人にどういう話を振るべきか。ここはやはり、趣味の話だろう。会話デッキのレギュラーとして組み込まれる定番中の定番だ。それに、世の中の令嬢達がどういった趣味を持っているのか、純粋に気になる。


「このお茶会の主目的は楽しむ事だ。いいかな? だが、私達はこれが初対面。お互いの事をよく分かっていない状態では楽しみは半減だろう。そこで、提案がある。お互いをもっとよく知るために、それぞれで質問を出し合、それに答えていくというのはどうだろう?」


 何だか語りが胡散臭くなってしまった感があるが、もうこれで通すしかない。私も異性の美少女相手に緊張しているのだ。多分。


「ユーキスタス様がそう仰るのならば、(わたくし)は構いません」


(わたくし)も同じでございます」


 うーん。10歳児がこういう………丁寧な言葉を使っているとムズムズするな。まぁ、もっと面妖な喋りをしている私が言えた義理ではないか。


「ありがとう。では、先ずは手始めに趣味についてでも聞こうか。私の今の趣味は、外国語の勉強だよ。主には貿易国での言葉かな。海の向こうの貿易国での共用語は、西大陸共通語ではないからね。講師役を見付けるのに難儀したそうだが、お蔭で実りある学びを得ているよ」


 箱入り息子である私は、王宮から外に出た事が無い。ついでに娯楽らしいモノも見た事が無い。そのため、習い事の一環で行っている事を趣味という事にした。

 まぁ、この言語の勉強は私が希望した事なので、趣味と言えなくもないのか?

 海の向こうの貿易国………日本である事を淡く期待していたのだが、全く違いましたね。えぇ。


 2人の令嬢はお互いに目配せを交わし、

 アンティローゼ嬢が先に口を開く。クラリス嬢は先攻をアンティローゼ嬢に譲ったようだ。


「私の趣味は刺繍ですわ。今はまだお母様に習っている途中ですので、余り上手くは刺せないのですけれど。目下の目標は、素敵な殿方に完成品をお渡しする事ですわ」


 アンティローゼ嬢は顔をやや赤く上気させながら熱く語る。どうやら、刺繍に対して並々ならぬ情熱があるようだ。私のにわか趣味と違って、明確な目標を持っているのが偉い。

 ところで、その素敵な殿方って私の事ですか? 違いますかそうですか。


「成程。刺繍ですか。幼少の頃、母上が刺しているのを見ていた事があります。徐々に絵柄が完成していくのが、面白いと思った事を思い出しました。アンティローゼ嬢も熱心に向き合っているようですし、私も刺繍に興味が湧いて来ましたよ」


「え? あ、いえ。ユーキスタス様も興味がお有りでしたら、是非。私も練習中ですし、お互いに切磋琢磨して行ければ、と」


 アンティローゼ嬢の話に共感を示したら、微妙な返事が返ってきた件。何だ? 男が刺繍をするのはダメな時代なのか?

 何かアンティローゼ嬢とクラリス嬢が私を変な目で見ている気がする。いや、刺繍に興味があるのは事実なんですよ? 私のとは違って、趣味らしい趣味じゃないか。是非やってみたい。

 私がニコニコとしたままナノを見て、若干目を泳がせたクラリス嬢が口を開く。


「えぇと。私の趣味は読書です。父が稀覯本を集めるのが趣味でして。父の書斎に忍び込んだのがきっかけで、本を読む事が大好きになりました。私の腕では重すぎて何冊も持ち運びが出来ないので、書斎内で読むだけに留まっていますが」


「成程。読書ですか。書籍には様々な作品がありますし、本の数だけ世界が広がると言っても過言ではないでしょう。王宮内部にも図書館があります。私も最近は足繁く通っていますよ。今度、父上に相談して許可が下りたら、王宮図書館に一緒に行ってみませんか? 蔵書量も豊富ですし、クラリス嬢の興味を引く物もあるかもしれません」


「えぇ。是非お願いしたいです。王宮図書館ですか………。(さぞ)かし貴重な本がお有りなのでしょうね………」


 クラリス嬢はにこやかに微笑んでいるが、口の端から涎が垂れているのを幻視した。流石に完璧な御令嬢が涎を垂らすとか、無いから。ただ、微妙に欲望が漏れているのが目に見えるようだ。

 クラリス嬢は王宮図書館に想いを馳せているのか、微妙に顔が赤い。

 やはり、趣味の話は良い。人間の欲望が滲み出てくるからな。………私? 実際のところ、アレは趣味という訳ではないので………。


悪役令嬢(予定)といえば、ドリルですね。分かります。

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