第45話 門番がTUEEE!
俺とシャルはフィーネ城に到着する。
シャルはリュードから受け取った、アスティーナ国王の印が刻まれた封書を門番に見せ、中に入れてもらうことにするのだが……。
「それが何だ?そんな物を持ってるからといって、ここを通す理由にはならんぞ」
まさかの門前払い。2人の門番は手に持っていた大きな斧で通せんぼしてくる。
おいおい、王様の手紙ってのは大事だろ。
通る理由としては十分過ぎるはずだが?
確認もしないで通しませんなんて。そんなことしたらダメだろ。
王の封書がダメだったら、勇者ならどうだ。ここは、俺の出番かな。
「俺の名はシエロ・ギュンター。転生した勇者である。サイナス・フィーネ・ランドルグ王に会いに来た。道を開けよ!」
決まっただろ。今の俺ちゃんと勇者らしくできたよな?
ここまですればコイツらも「失礼しました!」って言って道を開けてくれるだろう。
勇者が来たという最大イベント起きてるんですよーって、俺は門番に胸を張って教えてやった。でも
「勇者?……フッ」
門番は俺の姿を見て、鼻で笑うのだった。
「シエロ、すまん。俺我慢の限界なんだが」
「シャルさんや、ここは一発分からせないといけないかもしれませんな」
態度の悪い門番に、俺とシャルの怒りは最高潮。
他国で問題を起こすなんて良く無いのは分かっているのだが。
体は正直なもんで、俺もシャルも力んだ拳をどう引っ込めるかを考えた末、俺とシャルは意見が一致する。
俺も我慢がきかないが、シャルもなかなか交戦的なんだな。
「「くたばれや、雑魚が!」」
俺とシャルは門番めがけて動き出し、2人同時に放つ右ストレート。
シャルは門番の1人を吹き飛ばし、追撃をかける。
「シエロ。こっちのヤツは俺がやるから。そっちは任せたぜ!」
「あ、おう」
シャルは追撃をかけながら、俺からどんどん遠ざかっていく。
ちなみに、俺はというと
「なんじゃ、そのヘナチョコパンチは?」
渾身の右ストレートは不発。軽々と門番に受け止められ、右拳を鷲掴みにされてしまったのだ。
不意打ちで受け止めるとは……こいつ、やるな!
怒りに身を任せて行動している俺は、自分が弱いというのが頭から飛んでいて、勇者の一撃を受け止めた門番が、歴戦の猛者に見えるのだった。
シャルに任された手前、「俺じゃ倒せません!」なんて言えない。ここは俺がやるしか無い。
フィーネの王様には後で謝るとして、ここは力ずくでねじ伏せるしかない!
「アシッドver.フォグスタイル!」
「なんじゃ、今度は!?」
俺は門番の顔めがけて酸の霧を発生。
目が眩んだ門番は俺を離し、顔を塞ぐ。
顔にアシッドは使えない。ムカついたとはいえ、もし死なれでもしたら後悔する。
無力化するだけでいいんだ!
「よし、アシッド!」
門番から離れた俺は体めがけて酸を放つ。
体なら少し溶けても死にはしないだろ。
俺のアシッドは門番めがけて飛んでいく。だが門番は手に持っていた斧を回転させ、俺のアシッドを防ぎきるのであった。
塞がれるのも想定済み。それぐらいのこと、ウレールの戦士ならできるとヨヨから聞いていたからな。
ここからだ、俺の真骨頂は。
俺の姿が見えなくなるぐらいの大きなアシッドを門番目掛けて放つ。そして
「アシッドver.ソリッドスタイル!」
俺は手から放出した酸を手の周りで凝固させる。
リュード戦では披露できなかった俺の新技、アシッドver.ソリッドスタイル。
ボクシンググローブをイメージして作った酸のグローブだ。くらわせればダメージも入るはず。
俺は先に放ったアシッドに身を隠しながら門番に接近し、格闘戦に持ち込むつもりであった。だが
「どこいった!?」
アシッドの死角から門番に近づいたつもりだったが、門番が立っていたはずの位置に来て、誰もいないことに気づく。
いない……どこ行った?
溶けて無くなったわけでもない門番を、前後左右とくまなく探す。そして
「こっちじゃバカたれー!」
声が上から聞こえたと思い、顔を上げる。
すると空高く、俺に向かって落下してくる門番の姿があった。
「闘気!」
「しまっ!?」
門番の姿を目視するとほぼ同時に、俺の左肩に門番の拳が突き刺さる。
俺は地面を1回、2回とバウンドしながら、元いた場所から吹き飛ばされる。
肩にくらった門番の拳は重く、刺さった時にミシミシっと鈍い音がしてるのを体で感じた。
前に黒スライムと戦った際にもらった、腹パンほどの痛みでは無い。それでもクソ痛いのだけど。
でも黒スライムの時と違って、今回は骨が折れてるのは間違いない。現に俺の左肩はピクリとも動かすことが出来ず、左腕はぷらんぷらんの状態。
どうする?この門番……TUEEE!
はじめましてゴシといいます。
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