第39話 準備しながら反省します
リュードは俺との戦いを二人だけでやるのは面白くないと言い、放送用の宝珠を使って国内に向け、呼びかける。
「アスティーナの民よ、よく聞け!これから勇者シエロが魔王討伐に向けて旅立つ。わしはそれを送り出すことしか出来ない。だが、それだけではつまらんだろ!よってここに宣言する。これから1時間後、わしとシエロの決闘を行う。場所はグラド闘技場とする。皆、わしの勇者への激励をしかと見るのだ!」
リュードは放送を終え、決闘の準備に向かうと俺に言い、王の間から立ち去った。
大事になったぞ、ユウリ。
この出来事で幸せになる未来が、1ミリも想像できない。
俺はユウリのアーツを疑いながら、1時間後に控えた、リュードとの決闘を待つのであった。
◇◇◇◇◇
「で、何があったらこうなるんだ?」
「えっと、実は……」
アスティーナ王国、グラド闘技場控室。
俺は準備体操をヨヨに手伝ってもらいながら、ここまでの経緯をヨヨに説明する。
「国王に喧嘩売るって、バカじゃないのか?」
「だって、ユウリが……」
「喧嘩売れって言ったのか?」
「いえ、言ってません」
体の柔軟のために、俺の背中を押してくれるヨヨ。
後ろにいて姿は見えないが、絶対呆れた顔をしてる。
認めるよ、悪かったよ、俺も。
確かにユウリは回転丸の話をしろとしか言ってなかった。
喧嘩を売ったのは俺の我慢が足りなかったからです。完全に子供でした。
でもリュードの態度に腹が立ったのも事実。
アイツも悪いところはあっただろ。
はぁ、これからどうなるのかな。
この戦いが俺の幸せに繋がればいいが……どう繋がるのやら。
「喧嘩を売ったことは軽蔑してるが、もしかしたら、この決闘で何か得られるとかなんじゃないか?」
「やっぱ軽蔑してるんだな。でもそうなのかなー。意味あんのかな、この戦い」
時間が経つにつれて、後悔が膨らむ。
ムカつくとはいえリュードは国の王。
それにリュードは今まで負け無しの武人って話だったし。
不味かったな、俺の行動。殺されてもおかしくないかも。
「とりあえず俺が戦い方を教えてやる。後はできる限りのことをやってこい!」
ヨヨは罵倒しながらも、俺に勝って欲しいのか、俺の体をほぐしながら戦いのアドバイスをしてくれる。
ヨヨからアドバイスをもらって気付いたんだが……俺ってアシッドしか戦う方無いんだよな。
武器を使ってもいいらしいが、そもそも触ったことある武器って短剣と鍬だけ。いや、鍬は武器じゃ無いか。短剣だって壁に刺しただけで、戦闘に使ったわけじゃない。
人に剣を向けるってのも気が引ける、痛そうだし。今回武器は使えそうもないな。
てか、勇者が剣使えないってどうなんだ。
このままだと本当にアシッドブシャーってだけの勇者で終わるぞ。
ちゃんと剣の練習しないと。剣持って無い勇者とか聞いたことないし、恥ずかしいよな。
そんな俺が無敗の武人、リュードと戦うってどうすればいい?
でもそんなこと言い出したら、今からの冒険も魔王フミヤとの戦いもできなくなる。
転生って、漫画の主人公みたいに上手くいかないもんだな。
転生してトントン拍子に強くなる漫画書いてる地球の作家も、俺のシバくやつリストに入れたいぐらいだ。嘘じゃん、あんなの。
「ファンタジーは現実じゃない」
「なんじゃ、急に。ほれ、行ってこい!」
準備の時間は終わり、俺はヨヨに背中を押され、観客が大勢いる闘技場のリングへと赴くのであった。
アリス、ちゃんと見てろよ。
お前が作ったYOEEE勇者の頑張りを!
はじめましてゴシといいます。
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