第33話 正攻法だと死んじゃいます
俺は魔王フミヤと戦う。
これはもう勇者を召喚する時からリュードたちの中で決まっていること。
その決断が覆ることはないし、俺も勇者として転生した時から、戦わされるハメになると思っていた。
しかし、魔王フミヤと戦うには、どうしても魔王軍との衝突は避けられない。
今もバルチアナ平原では魔王軍と人類軍が戦っている。
俺が魔王フミヤと戦うための正攻法は、バルチアナ平原の戦いをまずは終結させる。
そして各地で戦う人類軍に加勢して魔王軍を倒していき、最終決戦で魔王フミヤと対峙する。
王道の流れはこれなのだが、今の俺がバルチアナ平原の戦いに参加すれば、ほとんどの確率で命を落とすとシャルは言うのだ。
バルチアナ平原で魔王軍の指揮を取るのは、魔王6軍神の1人『爆炎のガランドール』
シャルは俺がガランドールと戦うことを何度もシミュレーションしたという。
しかし、シミュレーションの結果は悲惨。
半身が残ればかなりいい方で、ほとんどの確率で影も形も残らない、灰と化すのだと。
俺がガランドールと戦うのは無駄死にでしかないのだとシャルは言う。
魔王フミヤの側近である魔王6軍神は『白雪のコンコン』、『黒槌のセラフィーヌ』、『爆炎のガランドール』、『雷帝のウダ』、『山吹のトール』、『無色のナナシ』の6体。
魔王6軍神は各々が1つの国を相手できるレベルなのだ。
シャルから見ると、Lv7のシエロ•ギュンターでは、誰にも勝てる未来が想像できないのである。
正攻法で行くと、俺が魔王フミヤと対峙するのは不可能なのだ。
まぁ、勝てないなんてことはシャルから言われる前にだいたいわかってたことだが。
俺、スライムの大群でもきついですし、黒スライムの時なんかは手も足も出なかった。
そんな二つ名のついてる仰々しい敵に勝てるわけないでしょう。
あ、俺も二つ名は持ってるか、勇者って。
『勇者シエロ』、『雨の守護神ヨヨ』、『国軍総長シャル』、『女王シルビア』……全然数足りてねー。そもそも女王のシルビアを戦力に入れたらダメじゃん。
俺は魔王6軍神に対抗できるかもと、二つ名をつけれる知り合いを6人並べようとしてみたが、思いつくのは4人で、実質戦えそうなのはヨヨとシャルの2人だけ。
そもそも魔王フミヤも入れるとなれば、最低7人は二つ名を持てるぐらいの最強さんでないといけないだろう。
「そういや、リュードって強いんだっけ? シャルが言ってたが……信じられない」
王の間で俺に土下座してた時の情けないリュードが頭に浮かぶ。
シャル曰く、リュードは王様でありながら、アスティーナ国においては負けなしの最強武人らしいのだ。
リュードであれば、今バルチアナ平原にいるとされる爆炎のガランドールと1対1で互角に戦えるとシャルは言っていた。
でも俺はなよなよしたリュードしか見てないし、そもそもそんな実力があるなら自分で戦ってるはずだと思う。
本当に最強なら、負けたことがあるわけでもないのに、わざわざ禁忌とかに触れてまで勇者呼び出すかね?
「アリスがなんか知ってるとかねーかな、リュードのこと。いや、あいつなんも知らねーか。アホだし」
俺はアリスにまた頼ろうとしたことに反省。
だがそんなことを考えてる俺に対する怒りの声が届くのだった。
「誰がアホよ、誰が! リュードでしょ、わかるわよそれぐらい!」
アリス!? 監視してたのか?
「はぁ? あんたが言うからちゃんと見てたわよ」
どっから見てた?
「あんたがタオルで股間磨いてたとこからよ。監視してやろうと思ってモニターつけたら裸のシエロって。天界来る前は裸で私の名前叫んでたってことよね。キモコイツと思ったわよ」
独り言でアリスについて言ったつもりだったのだが、まさかのアリス本人が登場。
アリスは俺の言いつけ通りに、神様から新しいモニターをもらい、俺を監視していたというのだ。
風呂上がりにピカピカになった俺の股間を見たということは、俺が天界を去ってから、かなり早い段階から見たということ。
俺はダメ女神でも言ってやればやれるんだと、少し感心してしまった。
キモいとか言うなよ、4日ぶりのちゃんとした風呂だったんだから。磨くだろ、股間。男の股間はな、いついかなる時でも……
「股間、股間うるさいわよ!知らないからそんなの。まだ股間の話するならリュードの話しないで通信切るんだからね!」
すまん、すまん。通信切るのは辞めてくれ
確かに女に話す内容ではないな。
でも珍しいこともあるんだな。
アリスから情報提供すると言い出すなんて。
「私もちょっとは反省してるのよ。転生させといて旅行に行ったのは。でも前々からレームたちと予定してたことだから我慢できなかったの」
我慢できなかったって言ってもな〜。
「だから……ごめん。ごめんごめんごめんごめんごめん!はぁはぁ、ごめん許して!」
アリスの謝罪には驚き。
ズボラな姿しか見せてこなかったアリスが、少しは反省しているというのだ。
俺はアリスの言葉を受けて、自分もやり過ぎたと、今になって反省する。
アリス……今から天界行っていいか?
「え?今?」
俺は面と向かってアリスに謝りたかった。
リュードのことを通信で聞くだけのつもりだったが、こんな謝られたら、直接会って話したくなったのだ。
「ごめんなさい、今はちょっと忙しくて」
そっか、それなら……
「え、あ、今? あっ、待ってまだ始め無いでって、あーーー!?」
忙しいから会えないとアリスは言う。
それなら仕方がないと思い、俺は通信でアリスに謝ろうとした。
でもアリスの後ろから聞こえた声で俺の気持ちは一変した。
「私はシエロくんに賭けるー!」
「フミヤが勝つに決まってるわ! 私はフミヤに賭けるわ」
「ふー、酒うまー! 私はどっちにしよう。まぁとにかく頑張れシエロ、頑張れフミヤ、ワァァァァ」
複数の女たちのドンちゃん騒ぎが聞こえた。
中には聞き覚えのある声もする。
フミヤを応援少女は多分レームの声だ。
お前……まさか。
「シエロ。私は深く反省してます。でも今は忙しいのです。ですから……」
……フン!
「あっ、やばい」
俺はアリスの謝罪をスルーして、今日2度目の天界訪問に行くのであった。
はじめましてゴシといいます。
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