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第28話 シバきたいやつら

 ラック村の人たちに再度別れを告げた俺とヨヨはゲートをくぐり、アスティーナ城へと帰還した。

 そしてゲートを抜けた先には煌びやかなドレスを身にまとう、金髪の女神様が俺たちを待っていてくれたのだ。


「シエロ!」

「ユウリ!!」


 俺はユウリと約4日ぶりの再会を果たす。

 ユウリは俺の顔を見るや、俺の胸に飛び込もうとしてくる。

 ユウリの抱擁は俺としては大歓迎だった。

 しかし一つの懸念があり、俺はユウリの抱擁を避け、一度距離を取る。

 ユウリは俺に避けられたと思ったのか。少し涙目になる。

 俺もユウリとハグしたい。

 めちゃくちゃしたい! でも、ダメなんだ。

 だって俺、今臭いかもだから!

 スラ洞窟で何度か温泉には入っているが、服に関しては4日間洗濯していないのだ。

 そんな状態で抱きついたりして、臭いとか思われた日には、絶対に立ち直れない自信がある。


 「ユウリ様。シエロ様は修行から帰られたばかりでお疲れでしょう。お話したい気持ちはわかりますが、今は休ませるべきかと」


 おっ、コロネのヤツ。

 たまにはいいこと言うじゃないか。

 ナイスタイミング!


「それに服も汚いですし。ユウリ様とお話しするなら、シエロ様も一度身支度をしてからの方が…」


 あっ、ダメだこいつ。

 全然空気読んでくれてなかったわ。


「つ、つかれてるからさ。い、一度ふ、風呂にでも入ってからまた顔出すよ、ユ、ユウリ」

「……どんまい、シエロ」


 いい感じにその場をしのげると思ったけど、すぐさま汚いのを空気の読めないコロネにバラされてしまう。

 俺がユウリに好意を寄せていることを知っているヨヨは、涙ぐむ俺の肩にそっと手を置いてくれる。


 俺とヨヨは転送の間からトボトボとアスティーナ城内の大浴場へ向かうのであった。

 そして大浴場に向かう最中、俺は一つの決断をする。


「この戦争が終わったらコロネは1回シバく」


 俺の中のシバくやつリスト二人目として、コロネの名前が追加されるのであった。

 ……あれ、そういえば。


 大浴場につき、体を洗っている最中にふと思い出したことがあった。

 思い出すキッカケはコロネをシバくやつリストに追加したことである。

 あいつの存在をすっかり忘れていた。


「おい! 見てるか、おい! 見てるならなんか言えー!」

「うぉ! なんじゃ急に!?」


 いきなり大声にヨヨは何事だと思う。


「あ、悪い。あいついるかなって思ったら、つい」

「あいつ?……あぁ、それって」


 ヨヨもなんとなく察したあいつ。

 俺がシバくやつリストで思い出したあいつ。

 人がボロボロになって魔鉱石の温泉に入ってる間、のんびりマグマ温泉に入って癒されていたであろうあいつ。

 ユウリと役職変われと思うぐらい、その役職にそぐわない、大雑把で、初めて俺がしばき回してやりたいと思ったあいつ。


「アリーーーーーーース!!!」


 俺を監視するという役目を放棄して、サタン島マグマ温泉ツアー4泊5日の旅に出かけていたショタコンクソ女神、アリス・ハート・ウエディングを大声で呼びつける。


「……」

「シエロ? どうなっとる?」

「……いるわ。行ってくる」

「えっ、行くってどこに?」


 俺の叫びは天界までしっかり届いていた。

 アリスの名前を叫ぶと頭の中に「ヒィィ」となんとも情けない声が聞こえたのだ。

 俺はヨヨに天界に行ってくると伝え、意識を天界に飛ばすのであった。



◇◇◇◇◇



「久々に来たな、ここ」


 神々しく輝く空間に2、3階ほどの高さのある螺旋階段。

 俺は約4日ぶりに天界に足を踏み入れたのだ。

 アリスには聞きたいことが山ほどある。

 文句も沢山言ってやらないと。

 俺はアリスに言うことをまとめながら螺旋階段を登って行く。

 山ほどある言いたいことを頭の中でまとめているうちにアリスがいつもいた、女神に似つかわしくない畳の部屋に到着したのだった。


「アリス……アリース!」


 畳の部屋に着いたはいいが、アリスの姿は見当たらない。

 天界にいるのはわかってたので、俺はアリスの名を連呼する。

 しかしアリスは一向に姿を現さない。


「あいつ隠れてやがるな……ここでもアレ、使えるのかな……お、いけるのか」


 呼んでも姿を見せないアリスに対して、俺の怒りは極限の極限。

 強行手段をとることにする。

 天界でもステータスプレートを開けれることを確認し、そしてぶっ放つ。


「アシッドーーー!」


 俺を監視してないのならこんなものいらないだろうと思い、俺は畳の部屋に置いてある俺監視用モニターをアシッドで溶解し始める。

 すると想像以上に早い段階で、アリスは慌てふためいて、俺の前に姿を現すのであった。


「あんた正気!? 神様から支給されたテレビがあぁぁ!? なんてことすんのよ!」


 上空から舞い降りた女神はごめんなさいも言わず、ただただバカ、イカレ、ショタと罵声を浴びせてくるのだった。

 ……いや、ショタは悪口か?

 まぁ、そんなことはいいや。

 反省してないのはよくわかった。

 アリスにはしっかりとした教育が必要なのだろう。


 俺は畳の部屋の隅に置いてある紙袋に狙いを定め、そしてアシッドを繰り出す。


「何がマグマ温泉だ!癒されねーだろ、そんなもんで! ほら溶けろ溶けろ、溶けちまえー!」

「いやーー、私のマグマまんじゅうーーー!」


 俺は『疲れた体にマグマまんじゅう!』と表記されたアリスのお土産袋を出来るだけ跡形も無く溶かしてやることが、ウレールを救うための第一歩と自分に言い聞かせ、無心で溶解する。

 アリス、ウレールを救うのは癒しでもなければ思い出でもないぞ。これを機に反省してくれ。

はじめましてゴシといいます。

読んでいただきありがとうございます!

この話を読んで面白そうって少しでも思ってくださる方がいてくれると嬉しいです。

まだまだ話は続いて行きます。これからも更新して行きますのでブックマークの方もよろしくお願いします!


下の★★★★★を押して応援してくれると嬉しいです!

応援されてると思うとやる気めちゃ出てスラスラ書いちゃいます。

これからも愛読と応援のほどよろしくお願いします。

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