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第2話 転生しますか?しませんか?

 女神の首を絞めるのにも疲れてきた。そろそろ解放してやるか。

 女神の首から手を離す。

 すると女神は、すぐさま俺に怒りをぶつけてくる。


「はぁはぁはぁ。女神の首締めるって、はぁはぁ。あんた、おかしいんじゃない? バカなの?」


 いや、おかしいのはお前だろ。

 魔王倒せって言ってんのに、自分の好みでキャラ作るなよ。

 あとバカって言うな。

 さっきまでのおしとやかキャラはどこいったんだ?


 転生後の俺になるというシエロ・ギュンターくんについて、首を絞めてる最中に、色々話してもらった。

 シエロは俺の名前、江口えぐちという漢字を文字分解して作った名前。

 言われてみればそうなるな。15年間江口として生きてて、全く気づかなかった。てかそんなくだらないこと、そもそも考えもしなかった。

 女神が遊び半分で付けた名前だが、意外とイケてると思ったらしく、軍太ぐんたもシエロに近づけてギュンターにして、ウレールの世界に合うっぽい名前にしたのだとか。ほんとふざけてるよな。

 そして魅力が高いこと。

 女神が俺の様子を天界から監視するのに「ブサイクじゃ嫌だわ」という極端な理由で、シエロのステータスを魅力に全振りしたらしい。

 勇者ってのを知らないのだろうか?

 戦うんだよ、勇者って。

 本当に人のことを舐めた女である。


 でも嫌だな、このシエロってキャラになるの。

 一応確認してみるか。


「俺はシエロ確定なのか? 他のキャラとかにできないの?」

「ふんだ。他なんてありませーん。私がせっかく作ったキャラが気に入らないなら、今すぐ帰ってくださーい。あんたね、今こんなんなってるんだから。文句言わずにちゃっちゃと転生しちゃいなさいよ!」


 怒る女神は俺の目の前に指を突き出し、そこからモクモクと煙のようなものを出す。

 そのモクモクに写っていたのは、元の世界にいる俺のグチャグチャな姿だった。


「グロいグロい、こんなもん見せるな! 未成年になんてグロいもん見せるんだ! 鬼かお前は?」


 映像に映った俺はかなりひどい有様。

 思春期でモザイクが嫌いな男子でも「モザイク欲しいです! お願いします!」と頭を下げる程のグロさ。

 岩の下で潰れてる自分の姿は見ていられない。

 すぐさま、俺はそのモクモクをかき消した。


 きちーことをしてくれる女神には腹が立ったが、見せられた映像を考えると、転生を受け入れるしかないとも思った。

 でもシエロ・ギュンターか。こいつでどうやって世界救えばいいんだ?

 シエロ・ギュンターのステータスをもう一度確認しよう。

 Lvは1か。はっきり言ってステータスは弱そう。

 あっ、でもスキルとか持ってんのか。

 加護ってのが3つあるけど、どういう加護なんだ?

 加護持ちのシエロくんなら何とかなるかもと期待を持ち、スキルについて女神に聞いてみる。でも女神は


「知りませーーーん、べーーー」


もうキャラ作りを完全に辞め、恥ずかしげもなく、あっかんべーをしてくるのだった。

 だが、女神も大人気ないと思ったのか


「まぁ、可哀想だから1個だけなら教えてあげる。私の名前の加護だからね。あっ、そうだ。私の名前言ってなかったわね。私アリス、よろしくー」


女神は自身のことと加護のことについて話し始めた。


 女神の名前はアリス・ハート・ウエディング。

 神に使える16女神の1人であり、神の名の元に世界を管理しているらしい。

 そして今回アリスが担当することになったのが、俺が行くと言われてる、ウレールなのである。

 ウレールにいる魔王フミヤ・マチーノがどうやら大規模な世界侵略を進めているらしく、放置しておくとウレールが終わるかもしれないのだとか。

 今回俺を転生者に選んだのは、正直たまたま。

 転生する際にキャラメイクするから、誰を選んでも変わらないからと、ちょうど死にかけてる俺がいたから選んだだけなのだと。

 何とまぁテキトーな女神だこと。俺的には助かってるけど。


 そして加護についても少し教えてくれた。

 アリスが教えてくれたのはハートの加護についてだけ。

 ハートの加護は名前の通り、女神アリスから受ける加護なのである。

 加護はハート、つまり体力に関係する能力であり、レベルが上がれば回復魔法や自己治癒能力が備わるものなのだ。

 ただ、特別なスキルだと思われたその加護は、シエロ・ギュンターだけが持つものではなく、神への信仰心が強い人の中には、たまにハートの加護持ちがいるのだとか。

 俺だけの特別な能力ってわけでもないのは、少しガッカリした。


「ならシエロは最強キャラとかじゃないんだな?」

「そんなことないわよ。ウレールの加護はシエロ以外に持ってる人なんて数えられるほどのはず」

「そうなのか?」

「そうなのよ。あと勇者の加護なんて持ってる人いないレベルの加護なの。まぁ、勇者がいないから、ウレール危ないんだろうけどね」

 ウレールの加護と勇者の加護。

 能力の内容は全然教えてくれないアリスだが、その加護自体は貴重なものだと教えてくれた。

 まぁ、普通は世界救って欲しいって言うなら、最初から全面協力のはずなんだけど。


 色々と思うところはあるものの、死に直面してるんじゃ転生する以外に道は無いだろう。覚悟を決めなくちゃな。


「とりあえず転生しない事には始まらないか。仕方ないよな。アリス、転生頼むわ」

「ア・リ・ス・様じゃないかしら。え・ぐ・ちくん」


 転生する覚悟を決めたのに突っかかってくるアリス。

 この女神はいちいちカンに触るヤツだな。

 目の前に現れた時は「エロかわいい女神様キターーー!」とか一瞬でも思った俺のときめきを返して欲しい。

 あと今、江口って言ったな。シエロじゃなかったのかよ。


「お前に監視されながらの勇者旅って。先が思いやられるよ」

「あっ、今お前って言った! 私女神! あなたを救う慈悲深き女神!」

「………」

「あっ、ちょ、何、え、あーもう、ごめんなさいごめんなさいごめんなさいー。謝るから首絞めに来ないでーーー!」


 俺は手を前に出し、首絞めポーズで生意気を言うアリスを追いかけ回った。


 はぁ、異世界転生の直前って本当はこんな感じなのか?

 アニメとか漫画で見たのとは全然違う。

 生意気言うアリスの首を閉めてやりたかったが、今は転生することを最優先しよう。


 首を閉めるポーズを解いて、アリスに今度こそ転生してもらうことにする。

 追いかけるのを辞めると、アリスは真剣な表情を作り、そして俺に語りかける。


「う、うん、なら気を取り直して。江口……いいえ、シエロ。あなたは今からウレールの世界を勇者として救いに行くのです。その覚悟はありますか?」


 急におしとやかキャラに戻したな。

 しかもまた江口って言って、シエロに戻しやがった。

 シエロ定着してないじゃんか。

 ……でもまぁいいや。やるしかないよな。

 転生しなかったら死ぬの確定だし。


「あります。俺がウレールを救ってみせましょう!」


 少し恥ずかしさもあるが、俺はアリスのキャラに乗っかることにした。

 アリスの前で片膝を付き、頭を下げる。

 アリスは空から降ってくるつるぎを手に取り、俺の肩に剣を添えて宣言する。


「シエロ・ギュンター。なんじを今からウレールに転生させる。ウレールよ、この者を勇者として受け入れよ!開け、召喚の門!!!」


 アリスの叫びに呼応して景色が一転する。

 さっきまで神々しかった空間にいたはずが、今では何もかもを吸い込む、ブラックホールのような暗闇に景色が変わる。


「城で王たちがあなたを待っています。どうか……ウレールを頼みます」


 アリスはそう言うと、暗闇の中で宙を舞い、俺からどんどん遠ざかり、見えなくなっていく。

 それとは逆に、俺は暗闇の中にどんどん吸い込まれていくのだった。

 だんだん遠ざかり、見えなくなってしまうアリス。

 最後に見たアリスの微笑みは、さっきまでのふざけたアリスを忘れさせてくれるほど綺麗だった。


「そんじゃ、やりますか! いざアスティーナ城へ!」


 今日から俺はシエロ。勇者シエロ・ギュンターだ!

 心の中で自分に言い聞かせながら、暗闇に飲み込まれていくのであった。

はじめましてゴシといいます。

読んでいただきありがとうございます!

この話を読んで面白そうって少しでも思ってくださる方がいてくれると嬉しいです。

まだまだ話は続いて行きます。これからも更新して行きますのでブックマークの方もよろしくお願いします!


下の★★★★★を押して応援してくれると嬉しいです!

応援されてると思うとやる気めちゃ出てスラスラ書いちゃいます。

これからも愛読と応援のほどよろしくお願いします。

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